#140字小説
悪魔に会って、男は涙を流して歓喜した。「お前はなぜ喜ぶのだ。私に願い事でもあるのか?」「違います。悪魔がいるなら地獄も天国もあると信じられるからです」「天国に行けると思うからか?」「違います。最後の最後に、悪人がその罪をちゃんと裁かれる場があるとわかって嬉しいのです」
#140字小説
February 13, 2026 at 10:01 AM
ファミレスの後ろの席で別れ話が始まった。聞き耳をたてた。男の言い分がひどい。始めから遊びだった。お前、気が利かないし、頭も良くないし。女の子が泣き出す。私は立ち上がった。「彼女の方が利口だよ。あらかじめ私を呼んだんだから」夫にそう言った。
#140字小説
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February 12, 2026 at 10:01 AM
……俺は『神』だ。山奥の村でそう呼ばれたのでそうなのだと思った。やがて村は廃れ、山を降りた。……俺は『妖怪』だ。町でそう呼ばれたのでそうなのだと思った。嫌われたので悲しくて別の姿をとった。……俺は『可愛い』だ。今はそう呼ばれている。毎日撫でられて愛されてニャアと鳴く。
#140字小説
February 11, 2026 at 1:12 PM
父親から変身セットを渡された。「俺の跡を継いで正義の味方になってくれ」それって世襲制だったの!?と驚いた。友人に話すと、何と友人も父親から似たことを言われたという。「俺の跡を継いで最初は正義の味方の敵だが途中から親友ポジのライバルになってくれ」それも世襲制なの!?
#140字小説
February 13, 2026 at 11:11 AM
さる有名な名探偵の奥方と話をする機会を得た。「あの人、人ごろしの気持ちはよくわかる癖に女の気持ちはまるでわからなくて」「ははは」「最近やっと私のことはわかり始めたみたい」「女性の感情を学ばれたと?」 「まさか。私がなってあげたの。彼にとってよくわかる興味深い種の存在に」
#140字小説
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February 11, 2026 at 10:00 AM
「雪女でも病なぞに罹ってしまうのか」病で寝込んでいる女にそう言うと、くすくすと笑われた。「あんた、私が雪女だと思ってたのかい?」「だってお前が冬しか姿を見せねえから……」「間抜けな人だねえ。でもそんなところが好きだよ」女が息絶えたあと、そこには白鳥の骸だけが残った。
#140字小説
February 10, 2026 at 1:01 PM
#140字小説
残されたもの
February 7, 2026 at 2:59 PM
人魚をだまくらかして、海底の沈没船から宝石を取ってきてくれと頼んだ。「宝石って?」「綺麗に光るものだよ」笑顔で海に潜っていった人魚が、やがて持ってきたのは人骨だった。「あの船でいちばん綺麗なものよ」と人魚は言った。「救命ボートの最後の隙間を譲って死んだ人の骨よ」
#140字小説
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February 9, 2026 at 10:01 AM
山で銀色の大狐に逢った。大狐は私を見て目を細めた。「取って喰いはせん。お前の一族は代々、みな儂の友だ。お前の母も祖母も曾々祖母も、その前も」一つ引っ掛かった。「ひいお婆ちゃんは?」大狐は顔を歪めた。「お前の曾祖母とは友になれなんだ」「なぜ?」「儂が惚れたからよ」
#140字小説
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February 10, 2026 at 10:01 AM
雪が綺麗だと感じる
#140字小説 #oc #drawing
February 7, 2026 at 1:50 PM
「お前、何歳だ」と問われて「ドラゴンで言うと400歳かな」と答えるとドラゴンはハハハと笑った。「意外と年寄りだな、人間は歳がわからん」それから何十年か過ぎた。「お前、何歳だ」と問われて「ドラゴンで言うと1000歳かな。もう寿命だから仕方ない」と答えるとドラゴンが泣きだした。
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February 8, 2026 at 10:01 AM
「私を書いてくださいな」夜な夜な現れては泣く女幽霊。僕が作家と知って嘆願してくる。聞けば本当に哀れな一生だったらしく、僕はそれを小説にしてやった。途中まで。途中から、彼女が最低な奴らに反撃してぶち倒す滅茶苦茶な物語にした。女幽霊はぽかんとして、それから笑って、消えた。
#140字小説
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February 7, 2026 at 10:00 AM
彼は国中の誰もが知る有名人で大金持ちだが、心を許せる友人は一人もいなかった。ある日滞在先のホテルで見知らぬ男に馴れ馴れしい態度を取られる。男には病があり、彼を毎日電波で人生について語り合う親友だと思い込んでいたのだ。住む世界の違う二人の奇妙な友情はそこから始まった。
#140字小説
February 12, 2026 at 11:40 AM
古い屋敷を買ったら幽霊が憑いていた。屋根裏部屋の窓際で椅子に座っていつも外を見ている。昔の奥方で、病弱で閉じ込められていたらしい。「祓うか?」「いや」庭園を整え、中央に東屋を建てた。そこにお茶とケーキを用意して、椅子ごと奥方を運んできた。光の中で彼女は消えていった。
#140字小説
February 8, 2026 at 12:36 PM
#140字小説

女が触れた先から木々は花を咲かせました。暦の上では春ですが、まだ凍えるような寒さで、つまりはまだ花が咲くような季節ではありません。咲いた花々は寒風に吹かれ凍り付きます。女は哀しい顔をしました。女は凍った花に触れます。氷は融け、花は彩りを取り戻しますが女が手を離せばまた凍るのです。
February 10, 2026 at 8:28 PM
「ご注文は?」猫カフェを見つけてふらっと入ったら、ふさふさした黒い毛、くりっとした緑色の目、ツンとすました顔の猫が、二本足で盆を片手に注文を取りに来て、「あ……じゃ……珈琲を……」僕の注文に頷いて「マスター、珈琲」と言った。カウンターの向こうのマスターも猫だった。
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February 7, 2026 at 11:32 AM
#140字小説

ぬいぐるみが「やあ」と話しかけてきたのでびっくりする。これは夢、かと思えば「夢じゃないよ」とぬいぐるみは表情を変えずに続けてきた。「えっとね」と言うところによると、お尻が痛いらしい。ふむ、と手に取り見てやると、なるほど、座らせるために押し付けたのが凹みになっていた。もみほぐした。
February 12, 2026 at 7:58 PM
#140字小説

とぷん、と記憶の中に沈んでいく。あれは恋、あれは安らぎ、あれは憧れ、あれは信頼。ゆらゆらと私を傷付けることがない思い出たちが浮かんでいて、心地いいだけの潜行。このまま底まで、と一瞬願ってしまったけれど、潜っているのはそのためではない。意志を持って宝石を拾う。傷という名の、痛みを。
February 8, 2026 at 9:06 PM
子供の頃、友達と少年探偵団を結成したんです。あ、笑ったでしょう。大した娯楽もない小さな田舎町でしてね。みんな大真面目ですよ。同級生の女の子が死体で発見されたんですから。絶対に犯人を捕まえるって。結局あなたにたどりつくまで十年以上かかった。僕らはお前を絶対に逃がさない。
#140字小説
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February 6, 2026 at 10:01 AM
雨の日だけ開くパン屋。
雨蛙みたいなおじさんと、小柄な奥さんがいる。

「なぜ雨の日だけ?」
「雨に打たれた人の雨宿りになりたくてね」

焼きたての匂いに包まれて、
濡れた心まで少し乾いた。
#140字小説
February 11, 2026 at 11:08 PM
#140字小説
構ってほしくて
February 5, 2026 at 2:09 PM
少年は遠国の王の落し胤だという少女の護衛に雇われた。無事国まで行けたら大金が貰える。変装して旅立った二人に追っ手が迫った。少女を庇って銃に撃たれた少年の傷を治したのは少女の魔法だった。少女は少年に跪く。「まことの王の子は貴方です。私の役割は貴方の王の器を見極めること」
#140字小説
February 6, 2026 at 11:52 AM
#140字小説

銀行は15時で窓口が閉まる。
世界の金融を支えているのにだ。

「平日だけなんて不便じゃない?」
「人間はエルフほど働けない」

異世界から来たエルフの通帳を作るため、
14時59分に駆け込む。
文句を言っている暇はない。
February 10, 2026 at 5:56 AM
#140字小説

風切り羽が再び生えそろった鳥は、けれど逃げ出すことはありませんでした。鳥籠からひょこりと顔を出し、様子をうかがい、それから主の姿を見つけます。鳥は翼を広げることなく主のそばへとことこと歩み寄り、歌を歌い始めました。それは愛の歌でした。鳥は歌い続け、主は涙を流しながら聴いています。
February 7, 2026 at 11:00 PM
「子供の頃からシンデレラの物語が好きだったわ。ある意味でね」老婦人は語る。「皆が私を馬鹿にした。誰も私の夢を理解しなかった。でも私は諦めなかった。頑張って夢を叶えたの」「シンデレラになった?」「まさか。魔法使いのおばあさんになったのよ」彼女は女子奨学金の創設者である。
#140字小説
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February 5, 2026 at 10:01 AM