すわぞ
banner
suwazo.bsky.social
すわぞ
@suwazo.bsky.social
140字小説を書きます。『再掲』と付いてるものは、X(Twitter)でも前にポストしたものです。
X、mixi2、タイッツー等もIDは同じsuwazoです。
Pinned
吸血鬼と人間シリーズはこちらからどうぞ
吸血鬼「日本、なんか川の数多くない? 行動範囲めっちゃ狭いんだけど」
人間「故郷に帰れよ」

#吸血鬼と人間
鈴の音とともに少女が言う。「先祖に『虫』が混じっていたようで……私、この季節には無意識に『鳴いて』しまいますの。大丈夫です、どうせ普通の方には聴こえませんから。でもお侍様には聞こえますのね。うふふ。私達きっと遠い親類ね。鳴く虫は雄。聴こえるお侍様は雌ですのよ」
#140字小説
再掲です
November 13, 2025 at 10:58 AM
漁師の少年は人魚と仲良くなった。人魚がいるといつも大漁だった。不老不死を得られるという人魚の肉を欲した者どもに捕らえられて拷問されても人魚の居場所を教えなかった。ついに絶命した少年が三途の川に辿りついたとき、ばしゃばしゃと人魚が川を泳いできた……「迎えに来たわ」
#140字小説
再掲です
November 12, 2025 at 10:29 AM
人喰いの怪物は銀に弱いから銀の品を身に付けるとよい。それは迷信だと、当の怪物である僕はよく知っている。が。……その女は何一つ銀など纏ってなかった。なのに腕の赤子はこれでもかとばかりの数の銀製品を付けていた。僕はその母子を見逃した。まあ怪物とて母の愛とやらには弱いのだ。
#140字小説
再掲です
November 11, 2025 at 11:20 AM
「地上から美しいと思ったものを拾っておいで」命じられた天使たちはそれぞれのものを手に戻ってきました。ひとりが持ってきたものは、ひからびた蛙みたいな小さな黒い塊でした。契約で得た魂を相手に返し天国へ逃れさせ、もはや地獄へ帰れなくなった、低級悪魔の成れの果てでした。
#140字小説
再掲です
November 10, 2025 at 10:37 AM
「あそこは虹の道だよ」突然の事故で死んだ私に、死神が言った。雨にけぶる交差点を指さして。「生前、会いたくてたまらなかった相手に、ひとめ会えるよ」そこにいたのは、行くはずだったライブのステージのあの人ではなかった。待ち合わせて一緒に行くはずだった、あの子だった。
#140字小説
再掲です
November 9, 2025 at 10:52 AM
さてさて、物語はすべて終わってしまいました。勇者も美姫も、彼らに助けられた素朴な村娘も、遠い子孫たちすらも、もう誰もいません。《そしていつまでも幸せに暮らしました》の「いつまでも」すらもう終わっています。もう何もありません。人ひとりいません。私の声は風の音。ぴゅう。
#140字小説
再掲です
November 8, 2025 at 10:54 AM
「ちわー、ご依頼いただいた片付け屋です。最近ご依頼が多いんですよ本当。で、肝心の祠はどこに? ああこちら。うーん。……すんません、これ、だめです。まだじゅうぶん力が残ってて、手が出せません。ぶっちゃけ無理に片付けたら祟ります。俺見て既に怒ってます。すんませんすんません」
#140字小説
November 8, 2025 at 1:50 AM
考古学者が遺跡から発見したのは、もしかすると『神』だった。王の棺の横で膝を抱えて座っていたのだ。何百年も。学者は彼を自宅にひきとり、風呂に入れてやり、食事を与えた。彼は見た目はただの青年だった。そして心細い子供みたいに言うのだ。「お前は死なないでいてくれるか?」
#140字小説
再掲です
November 7, 2025 at 11:03 AM
「永遠の命を得る秘薬がほしいんだが」「そんなもの欲しがってどうするのさ。永遠の命なんてろくな物じゃない」「知ってる」「人と共に歳をとれず、みんなに先立たれて一人残されるんだよ」「知ってるからこそ欲しいんだ。もう、一人で残されるのはいやなんだ。俺は仲間が欲しいんだよ」
#140字小説
November 6, 2025 at 11:45 AM
少女は龍使いの一族の末裔だった。もはや龍を操る力などなかったが、捕らえられ、遠い王国へ運ばれる。少女は、冷酷で横暴な王太子がすすり泣くのを見た。すまなかった。お前をさらったのは俺だ。この国の王族は龍の血をひく。どうか、俺が龍か、父上の実子か、確かめてほしい……
#140字小説
再掲です
November 6, 2025 at 11:14 AM
親戚から山一つ相続しないかなんて話が来て、それが何の役にもたたない二束三文の山で、もてあますのはわかっているのだけど、売れないバンドマンの彼と眠りながら、いつか我慢できなくなったときこいつを埋める場所があると思えば、いろいろ耐えられるんじゃないかなんて思ったりもする。
#140字小説
November 5, 2025 at 11:09 AM
古い料亭で働き始めた。客の食べ残しを大皿にまとめて厨房の隅に置いておくと、夜、真っ黒い獣が現れて食う。「昔からいる妖さ」と料理長は言う。あるとき大皿に綺麗に盛り付けて箸を添えてみた。その夜に現れた獣は人の姿になった。「俺は扱いに応じた形になるのさ」と彼は言った。
#140字小説
再掲です
November 5, 2025 at 10:43 AM
猫カフェに行った。友人でもある店長が耳打ちした。「実は一匹だけ化け猫が混じってるんだぜ」さてどいつか。やけに懐こいあいつか、ツンとすましたあいつか。「おまたせしました」店員の青年が珈琲を運んでくる。とたん、店中の猫が動きをとめて、青年に向かって恭しく頭を垂れた。
#140字小説
再掲です
November 4, 2025 at 10:21 AM
地上に行くにあたり人魚姫は姉たちと約束しました。あの王子が、酔って自分で船から落ちたただのバカならすぐ帰る。政敵に暗殺されかけたのならそいつらを倒す。でも。「私が消えたら、妾腹だけど優秀な兄が無事に王位を継げると思ってね」なんて健気に王子が言うから、姫の恋心はさらに。
#140字小説
再掲です
November 3, 2025 at 10:39 AM
「幽霊を乗せたことある?」タクシーの運転手に話しかけた。「ないですねえ」と返答。「でもタクシー専門の強盗犯を乗せたことならありますよ」「まじ?」「そいつは殺人犯になってお縄に」「へえ」「抵抗したら殺されちゃったんですよ私」「え?」「……この車、どこに行くと思います?」
#140字小説
再掲です
November 1, 2025 at 11:31 AM
盗みに入った豪邸で、腹にナイフを刺して倒れている男を見つけた。金庫から金を貰いついでに救急車を呼んで姿を消した。後日、命を取りとめた男が『美しい天使』を探していると知って大笑いした。美化しすぎだ、絶対見つからねえ。ある日カフェで後ろから抱きつかれた。「君だ。僕の天使」
#140字小説
再掲です
October 31, 2025 at 10:39 AM
ネコティカル・ヒットを決められてしまった僕は、毎日公園に通い、その野良猫を探しては少しずつ慣れてもらい、ついに家猫にすることに成功した。ぷくぷく太りだした猫はますます可愛らしくなって、僕は変わらずネコティカル・ヒットを食らい続ける毎日なのである。
#140字小説
October 30, 2025 at 11:33 AM
少年院行きを免れた代わりに保護司ならぬ保護天使を付けられた。くたびれたおっさんで、煩いことばかり言う。ちゃんと働けとか悪い仲間と手を切れとか。「僕みたいな死に方してほしくないんだよぅ」ただの気弱なおっさんの霊なのに、泣かれると、俺は何だかたまらない気持ちになる。
#140字小説
再掲です
October 30, 2025 at 11:21 AM
「儂はもうじき死ぬんだよ」老ドラゴンは言いました。「永劫に近い命を持つドラゴンにも寿命はあるのさ。あと五十年も保たないだろう」老ドラゴンに拾われたヒトの少女は言いました。「ならちょうど私と同じ位だわ」少女はドラゴンにキスします。だからそれまで一緒にいましょう。
#140字小説
再掲です
October 29, 2025 at 11:02 AM
「海が綺麗だね」と教授。「わん」と犬。「空も綺麗だね」「わん」「空と海しか見えないね」「わん」「ボートにもっと食料を積んでおくべきだったね」「わん」「救助が来るといいね」「わん」「思うんだが、私が君を食べたら一生後悔するけど、逆なら良くないかね」犬は答えない。
#140字小説
再掲です
October 28, 2025 at 11:00 AM
新進気鋭の画家がいると聞いた。病で死んでしまった美しい恋人の絵だけをひたすら描き続けているそうだ。ロマンチックな話ではある。その絵が私でなければ。一向に売れない彼を見限って浮気して出ていった私は、きっと彼の中では死んだことになっているんだろう。夢見がちな人だったし。
#140字小説
October 27, 2025 at 11:42 AM
その機械クジラは金持ち専用の緊急避難移動式シェルターとして造られた。腹の中に狭いが豪華な部屋がある。ただし持ち主は避難が間に合わず、いま住んでいるのは彼が愛した猫だけ。自動運転モードで海中を漂いながら、猫の昼寝を守り猫の餌を用意する。ときどきクジラが歌うのを猫は聞く。
#140字小説
再掲です
October 27, 2025 at 11:12 AM
過去の経験から、友人は空に虹がかかると地面の方を見渡すのだという。「おお虹だ虹だってみんな空を見るだろう。それは人間に限らないんだ」今まで、虫や、鳥や、犬猫、小人などが、人間が空に集中していると油断して虹を眺めているのを見たことがあると言う。どこまで本当やら。 #140字小説
October 26, 2025 at 11:46 AM
「なあ、その出前途中のラーメン、俺にくれない?」「は? 何言ってんの」「すげぇ空腹なんだよ」「駄目だって」「道に迷ってるんだろ?」「でも」「勿体ないじゃん」「……」「ほら、思った通りすげぇ美味いよ」「そうか?」出前の途中で事故死した男の霊は、少し笑って、それきり消えた。
#140字小説
再掲です
October 26, 2025 at 10:50 AM
古本屋へ行けとその番地を教えられた。深夜もやってると。血塗れで飛び込んだら、老店主は無言で店を閉めて、俺を床に寝かせ、ナイフで腹から銃弾を取りだしてくれた。「あんた闇医者か」「元殺し屋さ。後輩」治療料はこれだ、と一冊の詩集を渡された。何年かかってもいい。読め。
#140字小説
再掲です
October 25, 2025 at 10:50 AM