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今日出会った通りすがりの人に、勝手に物語を付けます。「この物語はフィクションです。」
只今、写真と言葉のZINEを作成中。
profile illustration/Marie Mori
あの男、一人でクレープなんて食べているけれど、FBI捜査官に違いない。黒いニット帽被って、背も高い。絶対FBIだ。僕にはわかる。立ち上がった。歩き出す。尾けるぞ。辿り着いたのはカラオケ店。一名で、と言っている。「…僕はわかる、あいつはFBI捜査官だ」
#140字小説 #この物語はフィクションです #作品ごと
May 21, 2024 at 7:10 AM
私は「カジュアルダウン」という言葉が好きではない。クラシカルに可愛いワンピースはとことんその世界観で着ろ。なのにこの店員は、今私が手に持つオーガンジーのドレスに「ジーパン合わせてカジュアルダウンしてもかわいいですよ」と言った。全身ワインレッドの、頭に羽根の付いた帽子を被った店員が。お前ジーパン持ってるんですかと聞きたくなるような店員が。
「今日暑いですよね、出勤する時Tシャツ着てきちゃいました」
着替えてんのか。ジーパン派か。

#創作小説 #この物語はフィクションです #作品ごと
May 17, 2024 at 12:38 PM
「殺生はいけない」と昔から祖母が言っていたから、私は家を出た。先刻部屋の天井を見上げると、蜘蛛が一匹這い回っていた。
私は今、娘を抱きながらスーパーで切花を見ている。芍薬がきれいで一本買った。
さて帰ろうと思い、立ち止まる。家は蜘蛛に明け渡してきた。
私は考える。芍薬と蜘蛛と一歳の娘は共存できるのだろうか。
「ママ」
声が聞こえる。誰の声かは、私にはわからない。

#創作小説 #この物語はフィクションです #作品ごと
May 16, 2024 at 3:02 PM
チェキ撮影。何人も並ぶ子もいれば、人気のないアイドルもいる。私はパイプ椅子に座ってうなだれていた。周りではメンバーがキメ顔で撮影、お喋り。そんな時私の名前が呼ばれる。奇特な客。私は椅子に座ったまま気怠くチェキにメッセージを書く。「ありがとう」。この言葉が、届くといい。
#140字小説 #作品ごと
May 6, 2024 at 9:18 AM
僕は救急車。今日は渋谷のゲームセンターの前まできた。何やらクレーンゲームで景品が取れないことに腹を立てた人が、ガラスを揺さぶって荒ぶって破壊して血みどろになったとか。ああやばい、駐禁をとる緑のおじさん二人組が僕に向かって歩いてくる。渋谷は今日も賑やかだなぁ。
#140字小説 #作品ごと
May 4, 2024 at 1:36 PM
「降ります降ります降ります」
大して混んでもいない電車の中で私は出口へ向かいながら叫んでいる。煙草を吸いたいと思う時ともう吸いたくないと思う時がある。吸いたくなるのはわかる、喫煙者だから。吸いたくないと思いながらも、吸う。私の異常性はそういう所かもしれない。「降ります」
#140字小説 #作品ごと #この物語はフィクションです
April 27, 2024 at 3:06 PM
帰りにコンビニでスコーンBBQ味を買おう。妻には夕食後にお菓子を食べちゃダメだと言われているが、今日はプレゼンも上手くいったし、たまにはいいだろう。そんな私にはスナック菓子を袋から取るときに味の濃そうなものから選んでしまう癖がある。翌日妻が食べる残りは、ちょっと薄いやつ。
#140字小説 #作品ごと
April 27, 2024 at 1:33 PM
ライブも終わりステージ上で物販が行われるとのこと。外のスタンド花をステージに移動し、それを背景にチェキが撮れる筈だった。が、結局花が運べなかったらしい。俺は今、何故かステージ上で煌々と照らされている。フロアでチェキ会。列、ステージ。周りを見れば整然と照らされるオタク達。壮観かな。

#140字小説 #この物語はフィクションです #作品ごと
April 24, 2024 at 1:56 PM
ハラミ、カルビ、タンにロース。俺は肉を次々と運んでいる。食べ放題だけあって忙しい。ハラミ、タン、ガリバタチキン、ソフトクリーム。肉ばかり見ていたら自分の肉が気になってきた。帰ったら筋トレしよう。家には15kgのダンベルがある。もしかして皆、筋トレ後か?あ、ソフトクリーム。
#140字小説 #作品ごと
April 19, 2024 at 11:52 AM
『職場のAさん』
苺のショートケーキをホールで買って、好きなだけ食べたい衝動に、突然たまに襲われる。それが起こると何もかもが嫌になって、仕事も投げ出して帰りたくなる。
そう、私はダイエット中。仕事終わりだ。私が向かう先はケーキ屋。じゃなくてジム。じゃなくてやっぱりケーキ屋だバカヤロー。
#140字小説 #この物語はフィクションです #作品ごと #ダイエット
April 17, 2024 at 10:58 AM

『深夜に吉祥寺の駅で男を追いかける若い女』
今日絶対ホテル行くと迫って、付き合ってはいないけれど、な男を追いかけた。物理的に追いかけた。吉祥寺駅を走り回る。男は5m前。そしてするりとJRの改札を通り抜けた。時刻は23時。
「くそ、撒かれたか」というセリフを、生まれて初めて吐いたかもしれない。
#140字小説 #この物語はフィクションです #作品ごと
April 12, 2024 at 12:41 PM
『パリみたいな匂いのする煙草を吸う女』
今日、加熱式煙草を吸いながら歩いていたら、すれ違いざまに「パリみたいな匂いがする」と聞こえた。パリ?わたしは逡巡する。振り返ると、煙草の香ばしさと、とか言ってる女子高生たち。ああ、パイか。わたしの煙草のフレーバーはりんご。
#140字小説 #この物語はフィクションです #作品ごと
April 12, 2024 at 12:25 PM
『胸元にタトゥーの入った女の人』
今日は日差しが暖かいから上着はいらない。ざっくりとしたピンクのニット一枚で陽光の中を歩く。前から来るおばさんがわたしの胸元を見て怪訝な顔をしている。すぐに目を逸らす。わたしの胸には蝶のタトゥーが。誇らしい。早くお披露目したかった。とっておきの。さっきシールで貼りました。
#140字小説 #この物語はフィクションです
April 10, 2024 at 10:27 AM
『電車の優先席の前で立つ50代の女性』
電車で私は立っている。目の前に座る派手髪の女の子。私はこの子よりは年上なはず。いやでもね私まだ50代だし。席を譲られる程じゃないし。いや、でもこの子よりは年上なはず。荷物が重い。彼女だって譲ったら失礼かなと逡巡しているのかも。そうよ。いや、でも、この子よりは年上なはず私。
#140字小説 #この物語はフィクションです #作品ごと
April 9, 2024 at 12:23 PM
『高円寺の洋服屋の女性店員』
先刻のお客さん、十九歳って言ってたな。
私が十九歳の時は蕎麦屋で働いていた。素敵な老夫婦に「随分きれいねえ、いつから?」と訊かれ、「私ですか?先月からです!」と満面の笑みで答えたら、「いや、お店の話。でももちろんあなたもきれいよ!」と言われたことをふと思い出した。
仕事しよ。
#140字小説 #この物語はフィクションです #作品ごと
April 4, 2024 at 2:38 PM
『喫煙所でやたらと同じ女に会う若い男』
「おい、あの女、さっきもパチ屋の前の喫煙所にいたよな」「いた」「さっき持ってなかったけど服屋の袋一個持ってる」「買い物したんじゃね」
三時間後、俺は友だちと別れた。帰路に着く前に駅前の喫煙所に行くと、またあの女がいた。
紙袋、五つ持ってる。

#140字小説 #この物語はフィクションです #作品ごと
April 4, 2024 at 7:25 AM
『ケーキ屋の女性客』
何故、私は自分の為に5号の苺のケーキなんて買ったのだろうか。一人暮らしなのに。しかも誕生日三ヶ月前なのに。
意味がないようなケーキ。でもこのケーキには意味がある。私は私を祝福する。だってこんな日々を毎日生きているのだから。
もちろん、真ん中のプレートは私だけのもの。
#140字小説 #この物語はフィクションです #作品ごと
April 3, 2024 at 7:48 AM
『どこかでお花を貰ってきたのであろうおばさん』
今日はお天気もいいし、小川さんのお宅でお茶をしてきたの。そしたらお庭に沢山お花が咲いているからって、分けてくれて。
空が青くて空気が暖かい。私がお花を摘むと、小川さんが広告で包んでくれた。この包み紙が及川光博ってとこがまたいいじゃない。もう春ねえ、ミッチー。
#140字小説 #この物語はフィクションです #作品ごと
March 31, 2024 at 8:33 AM
『ライブハウスのDJで踊り狂う女性客』
わたしなんでここにいるんだっけ?何も考えられない。大音量の音楽が気持ち良くて。お酒も飲んだし。DJブースに立つ男の人は満足気な顔。「これが最後の曲です」。オアシスのあの曲。今は朝の五時。四時間後のことがふと頭をよぎる。オフィスの椅子。曲が終わる。
サリーは待ってくれない。

#140字小説 #この物語はフィクションです #作品ごと
March 26, 2024 at 1:49 PM
『ルミネエストの飲食フロアのベンチでうなだれる黒人男性』
何故こんなことになった。こめらく!
ご飯にsea foodが乗っていて、tableには海苔やrice crackers?のtopping缶。trayにはいくつかのsmall bowls。食べ方は少し丼で食べて、出汁をかけてchange the taste. なんということだ。
「My world has changed.」
知ってしまったら、もう前の世界には戻れない。

#140字小説 #この物語はフィクションです #作品ごと #こめらく
March 25, 2024 at 9:28 AM
『写真屋さんの店主のおばさん』
若い女の子がやってきた。注文用のパソコンに苦戦しながらなんとかできたらしく、缶バッチを作りたいとの伝票を持ってレジに来る。「30分くらいでできますから」。彼女は笑顔で出て行く。できたものを見ると、女の子本人の缶バッチ。引き取りにきた彼女は言う。「旦那につけさせるの!」
満面の笑み。
#140時小説 #この物語はフィクションです #作品ごと
March 23, 2024 at 4:44 AM

『スーパーの野菜売り場で硬直する男』
昼時のスーパー。ピーマン158円。袋を確かめる。4つで?高いだろう。しかし今日はナポリタンが食べたい、ピーマンが要る。4つで158円。しかもこれは税抜きだ。税込170円位か。いや、高いだろ。自動ドアの向こうにのぼりが見える。サイゼリヤ、ランチ、500円、ナポリタン。
おれはカゴをそっと戻した。
#140字小説 #この物語はフィクションです #作品ごと
March 21, 2024 at 1:24 PM
『代々木公園の入り口で寝そべる女』
ポートレートの撮影中。公園の前の広場でわたしは今寝そべっている。あらゆる角度から写真が撮られる。わたしは視線を変えたり、手の角度を変えたり。道行く外国人がこちらを見ている。そんなわたしが今何を考えているかというと、今晩の夫の夕食何作ろうかってことです。
#140字小説 #この物語はフィクションです #作品ごと
March 21, 2024 at 8:02 AM
『仕事に行く夫』
「じゃあ行ってくるよ」「はーい、いってらっしゃい」妻はその時トイレに入っていた。ドア越しにトイレットペーパーをからからと引く音と声が聞こえる。玄関を開けて仕事へ向かう。玄関横のトイレの窓が開く。「いってらっしゃい!」妻は笑顔で隙間から手を振っている。
「うんこしてたやろ」
#140字小説 #この物語はフィクションではないかもしれません #作品ごと
March 20, 2024 at 6:16 AM
『パスタ屋で女友達と食事をする女』
人と話しながら食事をすると、何を食べているのだかよくわからない。わたしはさっきからよくわからないパスタをよくわからないまま食べている。友人は会社での話をさっきからしている。パスタを食べ終わって、友人と別れる。わたしはその足でよくわからないまま一人ラーメン屋へと向かう。
#140字小説 #この物語はフィクションです #作品ごと
March 19, 2024 at 6:14 AM