ぽんず
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ぽんず
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最近はアニメより映画をよく見ます。
やってるゲーム:シャニマス、スタレ、FGO
応援してるジャンプ漫画:暗号学園が終わったので鵺の陰陽師
聴いてる音楽:GRAPEVINE、Spoon、柴田聡子
『シャドウズ・エッジ』観た。スタイリッシュでハイテンポなクライム・アクションと、緊張感あふれる追跡捜査という2つの要素がいずれもハイクオリティで、これらが映画の構成に緩急を与えている。チームとしての警察と疑似家族としての強盗団の対比が効いたドラマもあり、ウェルメイドの様相を見せる。
しかし特筆すべきはなんといってもレオン・カーフェイ演じるボスの存在。伝説の暗殺者としての老獪さ、孤児の息子たちを愛と力で支配する家父長の冷酷さ、孤独な老人としての寂しさ。哀愁と貫禄を背負うひとりの男の姿は、それだけでも作品を牽引する強度のあるものだが、この映画はそこからさらに飛躍する。
December 15, 2025 at 10:48 AM
『ナイブズ・アウト: ウェイク・アップ・デッドマン』観た。静謐で地味なクラシック・ミステリに回帰したシリーズ。密室モノの謎を丁寧にやりつつ、禁欲的な信仰と安易な物語化の対比を、SNSを介した陰謀論やデゴマークに動かされ怒りや欲望を駆り立てられる現代社会に重ね合わせる、技巧の光る佳作。現代における教会の無力さ、だからこそ試される信仰心の在り方を、アイロニーの効いたラストカットと、”名探偵のジレンマ”を神の啓示によって乗り越える一幕によって見事に表現してみせたシナリオに満足です。
December 13, 2025 at 11:06 AM
『ズートピア2』観た。ジュディとニックの絆の話と、陰謀と差別で迫害された爬虫類の話と、アメリカの歴史やイスラエルの蛮行にも通ずる植民地主義の話等が、ズラッと並べ立てられ、まるでそれぞれが連動しているかのように矢継ぎ早に繰り出される活劇によって展開していき、最後にはすべてが一緒くたに解消されてハッピーエンドへと。詐術めいた物凄い力業だった。冷静になってみると「それってそれぞれ全く別の話じゃない?」というのを深く考えさせないための洪水のような情報量かと邪推したくなるような作劇で、ポリティカル・コレクトネスに目配せはするものの誠実に向き合いはしない小狡さが今のディズニーって感じ。
December 12, 2025 at 2:45 PM
『ペリリュー ─楽園のゲルニカ─』観た。戦争に出向した若い兵士の”英雄願望”や”名誉ある死”といった甘い幻想を無慈悲に打ち砕く、戦場に残された者たちの凄惨な有り様を描いた作品。美しい自然が赤黒い死屍累々の焦土に変貌し、戦禍の跡が赤錆びて、やがて自然の中で風化していく様を見事に表現した美術が一番の主役だったように思う。
軍国教育を内面化して、死への恐怖を「お国のために」「家族を守る」「天皇陛下万歳」という合言葉で強引に塗りつぶし、愚直に祖国の勝利を信じる兵士たちが、それゆえに終戦の気配を信じきれず戦争に取り残され、まさに”無駄な抵抗”を続ける日々が飢餓や病、味方への疑心暗鬼とともに描かれる。
December 6, 2025 at 1:25 AM
『WEAPONS/ウェポンズ』観た。視点が切り替わり、物語が進むにつれ、ホラーはホラーでも怖さのベクトルが次々を移り変わっていく(だからこその拍子抜け感もあるが)のが新鮮。露骨なオマージュやギャグめいた絵面もちゃんとある”笑える”ホラーで、アイコニックな走り姿が活きたクライマックスの爽快感はかなりのもの。全米No.1ヒットもむべなるかな。物語中で酒や注射器(=ドラッグ)がやたらとフィーチャーされ、それが後半の展開に接続されヤングケアラーの孤独と悲哀に繋がってくるのが脚本の妙味ではあるが、前面に押し出されたテーマと言えるほど緻密に構成されているかというと微妙で、あくまで背景に留まっていた印象。
November 30, 2025 at 5:21 AM
『ブラックフォン2』観た。シチュエーションはがらりと変わり、演出も現実と虚構の狭間を行き来する新たなビジュアルに挑戦しつつ、テーマやドラマは前作と地続きに。思いの外意欲的な続編で、1作目が物理的な密室からの脱出を試みたのに対し、本作では夢の中という”頭の中にある地獄”からの脱却を図る。恐怖に立ち向かう、という芯があるから精神性はブレない。
酒やドラッグ、ケンカといったマッチョイズムを逃避だと断じ、感情をさらけ出した上で向き合う勇気の在り方を男性陣に求めるのは今日的な筋書きだし、その上で「正しい目的のためなら暴力は手段として有効だぜ!」と前のめりになる作劇はブラムハウスに求めているもの。
November 23, 2025 at 2:06 AM
『トリツカレ男』観た。ワンカット目から惹き付ける美術、クレしん以上にぐにゃぐにゃな線のキャラデザ、Awesome city clubの自由度の高いアレンジと主演の見事なハーモニーが折り重なった楽曲、変幻自在の色彩と光により目まぐるしくトーンが変貌する演出、どれも垂涎モノの職人アニメーション映画。毎年尖った企画のアニメを劇場で流してくれる、シンエイ動画の矜持そのもののような作品で、本当に頭が下がる。映像作品としての楽しさだけでも十分魅力的ではあるが、何よりも刺さったのはまるでオー・ヘンリーの短編のような物語の強度。
November 14, 2025 at 11:40 AM
映画『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 完結編 第2章』観た。実在の都市を舞台に、統制されたレイアウトとアンニュイな登場人物の姿が融和し、強靭な画面がスクリーンに映える。相変わらず取ってつけたような苦悩や障害に乗り切れないものを感じていたら、思いがけない飛躍に殴られ一気に目が覚めた。学生のモラトリアムも、グランプリという舞台も、単なる”器”に過ぎず、本質はそこにはない。自分にはどうしてもマクガフィンに拘泥し、自爆していっているようにしか見えなかったラブライブ!シリーズに通底する構造を、虹ヶ咲はやはり巧みに解体し、本来は無いはずの壁を突破して世界を真に広げてみせる。
November 11, 2025 at 12:49 PM
『羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来』観た。演出もアイデアも引出し無限のハイスピード能力バトル、所々で劇場にクスクス笑いを起こす確かなユーモア、軽妙で隙のないポリティカルな駆け引き、軍拡競争や異文化共生に纏る戦争の危機、そして小黒と鹿野を主軸としたエンパシーのドラマ。これらの要素を異様な密度でテンポよく詰め、完璧なまでにまとめ上げた最強のアクション活劇。エンタメとして傑作と言う他ない。みんな、観ろ。
November 8, 2025 at 1:03 PM
『プレデター:バッドランド』観た。ディズニー+のドラマシリーズを劇場版仕様に再編集しました、みたいなダイジェスト構成で、ぶっちゃけ主軸のドラマを語るには諸々積み上げが足りていないんだけど、一つ一つの要素の旨味はちゃんと拾えてるので、娯楽作品としては卒無くまとまっている。チョロかわキャラ萌えに振り切ってるあざとさをどう捉えるかだが、”狩るか狩られるか”というプレデターの持つテーゼを”利用する者される者”という道具たるアンドロイドのテーゼに接続し、『本当の強さ』として生命への敬意に飛躍させる話運びがとても綺麗だったので、トータル好印象です。なんかもうスター・ウォーズとやってること変わんないけど。
November 8, 2025 at 2:08 AM
『爆弾』観た。シナリオや演出が滑っていたら邦画の悪癖として映りそうな佐藤二朗の過剰演技っぷりも、見事な”ジョーカー(ダークナイト)”フォロワーとして機能し完全に映画を掌握していた。謎掛け勝負を仕掛けてくるサイコな爆弾魔、というありがちなプロットながら、事件の流れやディテールがいやに真に迫っているので、テロ犯罪としてちゃんと怖く、終始スリリング。そして佐藤二朗の存在感が強ければ強いほど、それに相対する警察サイドの面々こそが本作のメインである、という構造が良い。とぼけた態度や露悪的な言動で思考を誘導し、感情を弄ぶ知能犯と代わる代わる相対し、皆一様に憔悴しボロボロになっていく刑事や警官。
November 2, 2025 at 11:39 AM
ギレルモ・デル・トロ『フランケンシュタイン』観た。きれいはきたない、きたないはきれいの精神でグロテスクな実験も耽美に映る、作り込まれた美術と音楽によるゴシックな世界観がスクリーンいっぱいに広がる。ヴィクターと怪物、それぞれの人生を通して、「我が子を思い通りにしようと躾ける強権的な父親」の構図を反復し、氷の世界で純化される人の罪と罰を物語る美しき寓話。愛も野心も、すべてを失った男が見る氷上の地平線に佇む怪物、という構図を描きつつ、何もない虚しい世界にも生命の象徴たる太陽は等しく昇る、という計算された演出プランが見事にハマっていた。これは可能なら劇場で観た方がいいですよ……!
October 27, 2025 at 10:41 AM
『ゾンビランドサガ ゆめぎんがパラダイス』観た。佐賀を宇宙人が攻めてくるという、いよいよジャンルもリアリティラインもしっちゃかめっちゃかになるプロットも、たとえ体温が無くとも生命の旗を誰よりも熱く燃やす、最強の地域密着型アイドルにして不屈の偶像”フランシュシュ”の魂のステージを前に問答無用でねじ伏せられる。スケールがどれだけデカくなってもローカルなネタと底力を忘れない姿勢には、劇場版クレヨンしんちゃんのアトモスフィアを感じるし、そもそもずっと彼女たちの持つ偶像性には殴られ続けているので、尺内に収めるのに苦心したのが見て取れる強引な編集も、ゾンビィの継ぎ接ぎ文脈として好意的に解釈しよう。
October 24, 2025 at 3:39 PM
『ナイトコール』観た。一瞬にしてどん底に突き落とされた鍵屋の黒人青年が、命を賭けて夜のブリュッセルを駆けずり回るクライム・アクションの佳作。主人公の機転と巧みな演出によって逃走劇として申し分ない出来でありつつ、”一夜の街”で起こった出来事であることを活かした連続性が本作の鍵だと思う。大規模なBLM運動がずっと背景にあり、それが主人公の物語に直結はしないものの、彼が駆ける街で起こる事象として緊密に活劇に活かされている。ただ偶然そこで出会った人間同士による、共感と連帯。言葉よりも雄弁な視線の交錯が、誰かを救い、救われる切っ掛けになる。偶然同じ場所にいる、という事象と、同じ境遇にある、という共感。
October 23, 2025 at 1:46 PM
『フレイムユニオン 最強殺し屋伝説国岡 [私闘編]』観た。”ちょっと笑えないレベルのクズ”真中を主人公に、意地と努力で自分の未来を掴み取る、泥と汗と古さが臭いたつ男の青春が描かれる。挫折からの奮起、努力からの勝利へ至る流れは間違いなく王道のそれで、やってることがほぼロッキーである。修行パートに必殺技の練習を挟む少年漫画エッセンスを取り入れつつ、何気ない会話一つ一つ、つまり真中が他人と関わり紡いできた青春のすべてを結実させる決闘のアクション構成は出色の出来で、物語性を踏まえた格闘シーンの熱量、面白さで言えば間違いなく今年ベストだと思う。
October 12, 2025 at 11:22 AM
『アイム・スティル・ヒア』観た。軍事政権下のブラジルで、突如夫(父親)を連行され、そのまま行方不明として扱われた家族の記憶と記録を描く。まず、父と母、5人の子供という大家族の騒がしくも満ち足りた日々が克明に描かれており、その時代、その場所に生きた人々という肖像としての彩度が半端じゃない。終盤には家の間取りにすら愛着が湧くほどの鮮明さがあってこそ、政府によって理不尽に奪われたものの重さがのしかかって来る。だからこそ”いまここにいること”だけは奪わせないという表明としての笑顔、記憶が薄れても忘れられないために勝ち取った記録。淡々と描かれる人間の強さと、闘う意義が胸を打つ。シンプルに良い映画だった。
September 26, 2025 at 2:34 PM
『ひゃくえむ。』観た。100m走に人生を捧げてきた男たちの半生を描く群像劇。人間が、ただ走って競争するだけ。一時の名声も栄誉も、いずれどこかで虚しくなる、競技者の頭の中にある地獄。だからこそ彼らは、誰よりもまず自分自身と向き合い、逃避し、打ち勝とうと足掻く。そうしてきたからこそ、それぞれが自分だけの哲学を持ち、たった10秒の時間に自らの存在を刻みつけようとする。自らの虚無と闘い続ける彼らが、それでも走るのを止めないのは、結局は自分が孤独ではないことを知るためなのだろう。そういうことを、観てる分にはあまりにも呆気ない、しかし当人たちにはそれが全てである、ラスト10秒に込める。観客を信頼しすぎィ!
September 26, 2025 at 2:09 PM
『THE MONKEY/ザ・モンキー』観た。おもちゃの猿がドラムを叩くと人が死ぬ、アホみたいな設定通り、アホみたいな死に様の釣瓶打ちを拝める期待を外さないB級ホラー。家族間の複雑な感情がスティーブン・キング原作らしい湿気を放ったり、人はいずれ来る死に対して決して万全に準備はできないというメメント・モリ的なテーマが覗いたりしないでもないが、そういった要素を自ら台無しにするような終盤の終末世界のような絵面がすべてをぶち壊しにする。お前ら全部半笑いでやってるだろ! こういうのが観たくて観に行った映画なので、大満足です。
September 26, 2025 at 1:57 PM
『劇場版チェンソーマン レゼ篇』観た。少年と少女の人夏の恋物語が大人に利用され搾取される子供たちのフィルターを通すことで悲劇として描かれる原作の名篇を、ちゃんと映画として作ろうとする志が観られたことにまず好感。まるで牛尾憲輔のMVの様な映像演出で描かれるデンジとレゼの交流は、その通り儚い作り物に過ぎない。しかしデンジが「俺に泳ぎを教えてくれたことは嘘じゃない」と言う様に、すべて演技だと嘯くレゼの言動にも、彼女の背景を伺わせる一抹の真実が紛れ込んでいる。自分の身体すらも爆弾として放り投げる道具であるはずの彼女の逃避願望は、決してデンジを唆すためだけの方便ではない。
September 26, 2025 at 1:45 PM
『ふつうの子ども』観た。完全に舐めていたというか、まさか邦画で『フロリダ・プロジェクト』や『アドレセンス』の系譜みたいな作品が観られるとは思っていなかったので度肝を抜かれた。異様に解像度が高くあざとさもわざとらしさも感じない”小学校の教室”の描写が、子どもたちの視点に説得力を齎す。露悪的でもなければお仕着せの良い子でもない、等身大にして多様な主役の子どもたち。退屈、正義感、淡い恋心と、それぞれ理由は違えど一様に”何かやらなきゃ”という衝動を持っていて、でも”何をしたらいいかわからない”彼らの視線が示唆する空気読みが、悪童たちのささやかな青春へと発展してゆく。
September 15, 2025 at 9:37 AM
『ヒックとドラゴン』IMAXで観た。物語、キャラクター、ビジュアル、音楽、すべてが最高のエンタメなのに日本ではなぜか「知る人ぞ知る名作」レベルの知名度に収まっていることでお馴染みのヒクドラ、およそ理想的な実写映画化に仕上がっています。単なる理想論ではなく生物学をベースとした異種族との共生、父と息子のドラマによって描かれる男性性の開放、”足りない者””失った者”同士が支え合って生きることをカタルシスに変換して出力する飛行シーンの圧倒的な爽快感。これだけの要素を無理なく活劇として収めている、改めて驚嘆すべき完成度だ。間違いないのでみんな観てくれ。
September 11, 2025 at 11:14 AM
『遠い山なみの光』観た。現実と虚構が入り混じり、時間軸でさえごっちゃになった一人の女性の回想録が、戦後の記憶として語られる。山の向こうは彼岸の向こうで、すなわち海の向こうでもあり、そこで生きる女がふとした瞬間に”死”の気配を纏う広瀬すずの芝居が素晴らしい。靴紐を結ぶ妻の頭を睥睨する夫にカウンターをかまし、戦前戦後を隔てた過去を糾弾される哀れな父親が、しかし自分で靴紐を結ぶカットに繋げるのもナイスで、楽器を手に悪夢の記憶が蘇ってくる一幕も合わせ、自分と他者、世代と時代が混線し形成される個がひとつのカオスとして浮かび上がってくる。
September 7, 2025 at 11:13 AM
『愛はステロイド』観た。筋肉!ドラッグ!銃!セックス!と”男らしさ”の象徴をクソ野郎からレズビアンカップルが簒奪するぜ!というノリかと思えば殊の外おとなしく、愛に惑って暴走する女たちの一部始終、といったこじんまり感がある。家父長制に中指を立てるというのも、露骨な”ウザいバカ女”の顛末があれだしなあ。とにかく、せっかくの筋肉なんだから、ファンタジーで誤魔化さず、もっとめちゃめちゃに暴れてほしかった。こういう思い切りの悪さがA24と決定的に好みが合わないところなんだよな。
August 31, 2025 at 4:08 AM
『8番出口』観た。ワンシチュエーション物の原作ゲームの特徴を活かす長回し多めな演出はハマってるし、映画化にあたって付与された物語性も、家族像の洒落臭さは否めないもののメッセージ自体は否定しようがないし、ラストカットもわかりやすいカタルシスより映画的なキレを重視してて気が利いてる。原作を知ってる人へのサプライズ的な構成もあり、”異変”の緩急も利いてて、90分映画としてはかなり纏まった秀作だと思います。素直に面白かった。
August 31, 2025 at 4:04 AM
『私たちが光と想うすべて』観た。「しまった。予備知識足りてなかったなこれ」というのが正直な感想ではあるが、未だ自由恋愛もままならないインドという国も資本主義にはしっかり取り込まれ、都会の光に夢という名の幻想を見て翻弄される様はなんとなく理解できた。自らも知らずのうちに内面化してしまっていた階級社会から離れ、ただそこにある光として隣人と語らうラストカットは文句なしの美しさで、Topsheが手掛けるED曲の素晴らしさも相まって余韻の深さは今年随一。
August 25, 2025 at 11:14 AM