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ほぼ読書感想
『フェデラリスト』を読んだときも思ったけど、現代の政治の危うい理由って政治家が皆己が清廉潔白だと主張するのが当たり前になりすぎてるからかも。

政治には理想と現実のギャップがつきもので、そのギャップを常に他者や他国に押し付けるデマゴーグが流行りやすい構図が慢性化してるっていうか。政治に対して信用できないって思うのは、無意識に日々目にする政治家の欺瞞を感じているからかもしれない。

結局、人間社会の本質的な問題は『君主論』や『フェデラリスト』が書かれた時代から何も変わってないんだな。
November 23, 2025 at 11:14 AM
読む前はマキャベリズムの語源となるだけあって、過激な本なのかと思っていたけど全然違った。

君主政体と共和政体があって、「君主制が最適解とも思わんけど現状これが妥当」だろう前提があって話を進めているし、当時の地政学的な例をいっぱい引用してくれるので案外サクサク読める。

集団を動かす力は主に猜疑心と不安であり、集団をまとめる力が綻びれば容易く暴走する。そのために統治者は適宜に自らを協力にして、誠実に見えるよう演出し、時に厳しい処罰や暴力を振るうことで恐れられるべき。
暴君でも聖人君子でもなく、常に中庸をいけという姿勢に貫かれており、徹底的に現実主義。これは現代にも通ずるなと納得しきり。
November 23, 2025 at 11:06 AM
この本はしかし、予備知識無しで読みたかった。昔ケネス・ブラナー版の映画を見てたので、読んでてイメージがちらついてしまうし、何が起きるか分かってしまうのが読んでてちょっと辛かった。

その一方で、怪物の語りのシーンは本で読むからこそ味わえる部分で、映画だと作り手側が割とヴィクター側にドラマの重点を置くので怪物側の心境は映画ではあまり味わえないんだなっていうのが良く分かった。(今やってるデル・トロのドラマもそんな感じだよね)

ともあれ、これでようやくシャーロット・ゴードンのメアリー・シェリーの伝記が読めるぞ。
メアリ・シェリー - 白水社
北村紗衣さん推薦! SF/現代ホラーの産みの母の人生『フランケンシュタイン』はメアリ・シェリーが十代で執筆した代表作だが、人口に膾炙している怪物の視覚的イメージが先行しているからか、この物語が誕生した
www.hakusuisha.co.jp
November 20, 2025 at 12:15 PM
『ザ・フェデラリスト』の前に読んどいてよかったと思う本リスト。いくら読みやすいとは言え、この本はそれなりに背景知識があったほうがとっつきやすいと思う。

ロン・チャーナウ『ハミルトン』
池澤夏樹『憲法なんて知らないよ』
岩瀬達哉『裁判官も人である』
岡口基一『裁判官はなぜ葬られたか』

あとミュージカル、ハミルトンの中にあるNon Stopって曲がこの論文を書いてた頃をテーマにしてるんだけど、マジでよく要約してて驚愕。リン・マニュエル・ミランダ天才すぎんか。
November 10, 2025 at 7:45 AM
読んでて本当に意外だったのが、各人が人間に対して夢見がちなところがないってとこ。
歴史を振り返る必要もないと言わんばかりに、権力の腐敗、民主政があっという間に独裁制へと変貌する例を次々と出してくる。ギリシャを始めとした古典からの引用も、これを補強するためなんだから驚いた。

政治っていうのは完璧ではないし、汚い側面があるというのを念頭に置いて憲法という枠組みを創ったのが伺える。
理想を持たず、でも注視を忘れない。政治に対しての理想的な態度というのを感じさせられた。
今の政治が信用できないと感じるのは、誰もが「我こそは清廉潔白」の看板を掲げているからかもしれない。
November 10, 2025 at 7:39 AM
この本を読むと以前読んだラーラ・プレスコットの『あの本は読まれているか』がなんだか違って見える。
前に読んだときは純粋にエンタメとして読んでたけど、本当にパステルナークを出版するのは命をかけた抗議活動だったんだなって。

アンナ・ポリトコフスカヤとスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチくらいしか知らんくてすいませんですってなりつつ、紹介される女性たちの経歴に食入りました。
プッシー・ライオットってバンドでもあり、活動化でもあるのかとようやく理解した次第です。

何かとネガティヴなイメージの強いロシアをこういう形で紹介する本て出会ったことなかったので、読めて良かった。
あの本は読まれているか - ラーラ・プレスコット/吉澤康子 訳|東京創元社
あの本は読まれているか 冷戦下のアメリカ。ロシア移民の娘であるイリーナは、CIAにタイピストとして雇われる。だが実際はスパイの才能を見こまれており、訓練を受けて、ある特殊作戦に抜擢された。その作戦の目的は、共産圏で禁書とされた小説『ドクトル・ジバゴ』をソ連国民の手に渡し、言論統制や検閲で人々を迫害す
www.tsogen.co.jp
November 8, 2025 at 7:46 AM
読んでてとにかく感心したのは主人公の承認欲求を当時の朝鮮王朝の身分制度に落とし込んでるとこ。

女として生まれついたことと、自分を顧みない父親への劣等感とか、読んでてヒリヒリする。
思春期の子がこれ読んだら「これは私だ!」ってなっちゃうだろうなぁって仕掛けが一杯。いっそベタ過ぎるくらいのロマンスの気配も、見ていて微笑ましいし、作中の事件の凄惨さと宮廷の権謀逆巻く世界といい塩梅でバランスが取れてるんだよね。

歴史小説としても説明しすぎず、事件解決までのテンポも良くて素直に楽しめた。それでいて韓国ドラマのタイトルで聞いたことのある名前もチラホラあるから、韓流好きな人なら一層楽しめるかも。
November 5, 2025 at 4:58 AM
「ハミルトン」はイライザ役のフィリッパ・スーをお目当てに聞き始めたんだけど、いざ全曲通して聞くとむしろアンジェリカとラファイエットに心に持っていかれちゃった。

特にアンジェリカの謳うSatisfied、シンプルに凄い。舌噛まないの?ってなる高速ラップにドラムや金管楽器を用いたリズムがくせになってヘビロテしちゃう。
登場人物としては持ち曲これ一つなのに、ヒロインのイライザより印象に残るんだよね。根底にあるにがーい情感のせいなのかもしれないけど。いや、凄いわ。

ラファイエットが机の上で乗りに乗って謳うGun and Shipsもこれぞ英語のラップの本気だぜ!って感じがしてつい聴いてしまう。
"Satisfied" from HAMILTON
YouTube video by Hamilton
youtu.be
November 4, 2025 at 12:05 PM
全曲聴いてみ思ったけど、原作になったロン・チャーナウの『ハミルトン』を読んどいて正解だった。

伝記を読んでいたから大分歌詞がわかるっていうのもあったし、どこをどう膨らましたのか、捨てたのかってのが分かって良かった。そうじゃないと何の話をしてるのかわからんかったもんな。
劇中何を話しているのか分かったし。(『フェデラリスト』の執筆の下りとか、レノルズ事件とか)
米国育ちの人なら肌でわかるんだろうけど。

それにしても上手いことかいつまんで歌詞を造ったなぁと感心しちゃう。作品としてメリハリをつけるためにバーが語り手で、狂言回し的に顔を出すのがジョージ3世っていうのも芝居らしい仕掛けでお洒落。
November 4, 2025 at 12:00 PM
ディズニープラス入ってないから、公開されてる映画は見てないんだけどミュージカルするうえで大分脚色してる印象を受けた。

スカイラー3姉妹の出番が本よりも多いんじゃないかなって気がする。その名を冠した曲もあるくらいだし、まぁサントラ全部聞いてみないとなんとも言えないけど。
(あと英国王ジョージ3世が登場するのも伝記だと「は?どこにいるの」って感じだし。
何にせよ、祖国の激動の時代テーマに、全部ヒップホップでやろうっていうのがいかにもアメリカらしい作品だと思う。

あと『ハミルトン』とほぼ同時代のフランスを舞台にした『レ・ミゼラブル』っていうのも感慨深いよね。
October 30, 2025 at 5:54 AM
読んでて散々暗澹たる気分にさせられる本なのに、読後はびっくりするほど清々しい。それは著者がハミルトンの生涯を語る前後にイライザの姿を差し込むからだ。

婦人参政権運動すらない時代の女性として、偉大な夫の影に身を隠そうとした妻イライザを著者は世にだそうと尊敬の目を持って描いている。
子育てに奮闘し、その後は孤児や未亡人たちの生活を支える団体を創り奔走したイライザは有名過ぎる夫と同じくらいに、偉大なことを成し遂げた人だった。
時代に奔走されつつも、ハミルトンとイライザが心から深く結びついていたという事実がこの重たい伝記の最後を軽やかに飾っている。それが狙いなんだろうけど、ぐっと来ちゃう。
October 30, 2025 at 5:46 AM
下巻は本当に容赦ない内容だった…。現代のSNSを始めとしたデジタルの中傷合戦も大概いたたまれないけど、この時代はそれが新聞だったとは。

歴代の大統領がフランス革命をどう見ていたか、奴隷制をどう扱ったかという下りはもう心が冷え冷えとしてくる。奴隷制を解体すると言いながらも、自らは奴隷を所有していたジェファーソンが歴史的に「偉大な大統領制」と言われ、根も葉もない噂で「権力を乱用して財を築いた」と批判されたハミルトン。
勝てば官軍、歴史は勝者の語るものという原則は今と全く変わらない。それが読んでて痛いほど実感させられた。

最期までハミルトンの美点も欠点も余さず描いた著者の精神力はお見事。
October 30, 2025 at 5:39 AM