他国の仏教では、たとえばチベット仏教でもテーラワーダ仏教諸国でもこういった問題は断続的に発生するが、組織としての声明を求められたり、他の僧侶が何か発言しないことを責められるということはない。その発想自体が自然でない。しかし日本ではこれが自明のようにいわれる。まずその発想から見直す必要がある。

特に老師といわれる立場であれば、世間に疎いくらいである方がよく、しかしそれでは娑婆においては不具者でしかないので、行者（あんじゃ）周辺が執り持ってバランスをとるために腐心するものだ。

しかしやはり宗教者たるもの、そして禅者たるもの、世間的な常識の枠に収まっているのはそれはそれで小さくまとまったつまらないものであり、アバンギャルドさに欠けている禅宗などあってもなくても変わらないのではという思いもはるかに深い奥底に沈潜している。

そしてやはりオウム事件に際しての声明のときにも思ったことだが、「世間知らず」といわれる宗教者において、曹洞宗のこういった声明は、むしろ世間よりも腰を据え芯を捉えようという姿勢から、なかなかの識者を抱えていると思う。

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