ケン・シノハラを「相手役」ではなく「不思議の国のアリス」で言うところのうさぎとして立てているのが良かった。エマニュエルが性の主導権を握れるようになるための案内役であって、偽りない自身の内面の発露なんだなと。
ある種無機質な高級ホテルを飛び出して香港の煌びやかな街に繰り出すところは、なんかゾクゾクしたな。最後の締め方も一見ギャグっぽいけど、描いてきたものの終着点という意味では筋が通ってるんだよなー。パッと見は表層的で荒唐無稽な部分もあるんだけど、結構ちゃんと考えで作られていると思った。
ケン・シノハラを「相手役」ではなく「不思議の国のアリス」で言うところのうさぎとして立てているのが良かった。エマニュエルが性の主導権を握れるようになるための案内役であって、偽りない自身の内面の発露なんだなと。
ある種無機質な高級ホテルを飛び出して香港の煌びやかな街に繰り出すところは、なんかゾクゾクしたな。最後の締め方も一見ギャグっぽいけど、描いてきたものの終着点という意味では筋が通ってるんだよなー。パッと見は表層的で荒唐無稽な部分もあるんだけど、結構ちゃんと考えで作られていると思った。
オリジナルは未見なのだが、調べるに設定や物語はだいぶアレンジされていそう。現代において、女性の主体的にイニシアティブを取る性や欲求の在り方を描きたかったのかな。オードレイ・ディヴァン、女性の生き様を描きながらも『あのこと』からはだいぶ振れ幅のある演出が挑戦的。
オリジナルは未見なのだが、調べるに設定や物語はだいぶアレンジされていそう。現代において、女性の主体的にイニシアティブを取る性や欲求の在り方を描きたかったのかな。オードレイ・ディヴァン、女性の生き様を描きながらも『あのこと』からはだいぶ振れ幅のある演出が挑戦的。
仏頂面ステイサムが「唯一優しくしてくれたんだ」と溢すところや生搾りオレンジジュース飲むところ、「竜巻が通った後みたい」あたりのボケ、養蜂家なのに1ミリも蜂に思い入れなさそうなところなど、マッチョなステイサム映画の端々にほんわか要素を入れるところが人間臭くて良い。
仏頂面ステイサムが「唯一優しくしてくれたんだ」と溢すところや生搾りオレンジジュース飲むところ、「竜巻が通った後みたい」あたりのボケ、養蜂家なのに1ミリも蜂に思い入れなさそうなところなど、マッチョなステイサム映画の端々にほんわか要素を入れるところが人間臭くて良い。
唯一苦言を呈するなら、中盤にシュリーが泊まりにきた晩のママは倫理観のタガが外れていて流石にうーんってなったのと、ラストの「教師の日」の出来事は唐突感があった。「少女漫画的なドラマティックな展開」を当てはめた感があって、折角のめり込んでいたのに冷めてしまったな。
唯一苦言を呈するなら、中盤にシュリーが泊まりにきた晩のママは倫理観のタガが外れていて流石にうーんってなったのと、ラストの「教師の日」の出来事は唐突感があった。「少女漫画的なドラマティックな展開」を当てはめた感があって、折角のめり込んでいたのに冷めてしまったな。
途中まで倫理観疑うようなママの言動にイライラしっぱなしだったのが、ラストのあの出来事とシュリーの言葉の後に彼女の見え方がガラッと変わり、母娘の物語に昇華されていく演出は素晴らしかった。ミラ役のプリーティ・パニグラヒもママ役のカニ・クスルティも良い表情だったな。
途中まで倫理観疑うようなママの言動にイライラしっぱなしだったのが、ラストのあの出来事とシュリーの言葉の後に彼女の見え方がガラッと変わり、母娘の物語に昇華されていく演出は素晴らしかった。ミラ役のプリーティ・パニグラヒもママ役のカニ・クスルティも良い表情だったな。
何より製作中の仏像の前で「南無阿弥陀仏」を末尾に付けながら罵り合う場面、秀逸すぎる。あのシーンだけでも何回も見たいくらいだったな。
何より製作中の仏像の前で「南無阿弥陀仏」を末尾に付けながら罵り合う場面、秀逸すぎる。あのシーンだけでも何回も見たいくらいだったな。
チョン・モンホンが製作と中島長雄名義での撮影を務める作品で、とても出来が良かった。監督自身のナレーション、モノクロに映えるカラーのドライブレコーダー映像、二重の意味で決定的瞬間になるあの映像など、全体的にギャグセンスが高く、作品全体で良いアクセントになっていて効果的。
チョン・モンホンが製作と中島長雄名義での撮影を務める作品で、とても出来が良かった。監督自身のナレーション、モノクロに映えるカラーのドライブレコーダー映像、二重の意味で決定的瞬間になるあの映像など、全体的にギャグセンスが高く、作品全体で良いアクセントになっていて効果的。
ただ、決してそういった視覚的な効果に依存し過ぎたつくりにはなっておらず、根底に流れるのはジョージアの女性が体験するリアルな窮状。あの人物はニナの精神世界における自画像だと仮定すると、とても効果的な演出だと思う。クルムベガスヴィリ監督にしか撮れない作家性の塊のような作品だった。上映してくれたフィルメックスに感謝!
ただ、決してそういった視覚的な効果に依存し過ぎたつくりにはなっておらず、根底に流れるのはジョージアの女性が体験するリアルな窮状。あの人物はニナの精神世界における自画像だと仮定すると、とても効果的な演出だと思う。クルムベガスヴィリ監督にしか撮れない作家性の塊のような作品だった。上映してくれたフィルメックスに感謝!
冒頭と終盤に「これどうやって撮ったの?」という壮絶なシーンがあり、どうやら産婦人科に通い詰めて実際に撮ったみたいなのだけど、その衝撃が忘れられない。中盤のあの一部始終の長回しや随所に出てくるあの人物など、見えるもの/見えないもの含め視聴覚に訴えるインパクトの大きさに絶句。
冒頭と終盤に「これどうやって撮ったの?」という壮絶なシーンがあり、どうやら産婦人科に通い詰めて実際に撮ったみたいなのだけど、その衝撃が忘れられない。中盤のあの一部始終の長回しや随所に出てくるあの人物など、見えるもの/見えないもの含め視聴覚に訴えるインパクトの大きさに絶句。
被害を訴えた女性が警官公認で相手男性引っ叩くとことか、女性警官の草むらでの放尿シーンとか、初めて賄賂もらうシーンとか、純粋インド人監督だったら切り取らなそうな場面も多く、逆にインド映画でフィーチャーされがちなホーリー祭は日常に溶け込ませてあっさり描く塩梅がよい。
サンディヤ・スリ監督、QAで出た「オスカー英国代表に選ばれたの何故だと思う?」という質問に「非英語の資格を満たす作品が英国には少ないだけ。でもインドでは本国代表(花嫁はどこへ?)と本作の2作が選ばれた!って話題なの」という返しがピュアで飾らない人だなと好感を持てた。
被害を訴えた女性が警官公認で相手男性引っ叩くとことか、女性警官の草むらでの放尿シーンとか、初めて賄賂もらうシーンとか、純粋インド人監督だったら切り取らなそうな場面も多く、逆にインド映画でフィーチャーされがちなホーリー祭は日常に溶け込ませてあっさり描く塩梅がよい。
サンディヤ・スリ監督、QAで出た「オスカー英国代表に選ばれたの何故だと思う?」という質問に「非英語の資格を満たす作品が英国には少ないだけ。でもインドでは本国代表(花嫁はどこへ?)と本作の2作が選ばれた!って話題なの」という返しがピュアで飾らない人だなと好感を持てた。
インド社会に蔓延る様々な論点を扱いながら、ミステリーとしても一定の展開を見せようとするので冗長感はある。けど、寡婦の救済制度そのものやQ&Aでもあった細かなワンシーン毎の描き込みに、インド人・非インド人双方への目配せが丁寧なので、シンプルに興味深い場面が多かった。
インド社会に蔓延る様々な論点を扱いながら、ミステリーとしても一定の展開を見せようとするので冗長感はある。けど、寡婦の救済制度そのものやQ&Aでもあった細かなワンシーン毎の描き込みに、インド人・非インド人双方への目配せが丁寧なので、シンプルに興味深い場面が多かった。
クメール・ルージュをこれまでと違った側面から見せようという意図はわかるけど、正面から描かない故に結局描きたいものが希薄になった印象。3人のジャーナリストの信条の違いからドラマが生まれるかと思いきや無風だし、土人形は「予算なかったの?」という感想しか生まれず。
クメール・ルージュをこれまでと違った側面から見せようという意図はわかるけど、正面から描かない故に結局描きたいものが希薄になった印象。3人のジャーナリストの信条の違いからドラマが生まれるかと思いきや無風だし、土人形は「予算なかったの?」という感想しか生まれず。
ハッとするようなショットもあったのだけど、ポエムを唱える演出は上滑りしているし、長回しが決して雄弁でなく蛇足になっている印象。結果的にテクニックに溺れて全然主題が浮かび上がらなかった(散漫になった)感じがする。疲労困憊で見た自分の集中力の問題かもしれないが。
ハッとするようなショットもあったのだけど、ポエムを唱える演出は上滑りしているし、長回しが決して雄弁でなく蛇足になっている印象。結果的にテクニックに溺れて全然主題が浮かび上がらなかった(散漫になった)感じがする。疲労困憊で見た自分の集中力の問題かもしれないが。
ビジュアル的な印象も強い"ビースト”については、その容姿こそ気になるし魅力的なのだけど、創作モードに入った主人公の化身としての役割が与えられるのみでそれ以上でも以下でもなく、なんとなく出オチ感はあったかな。
ビジュアル的な印象も強い"ビースト”については、その容姿こそ気になるし魅力的なのだけど、創作モードに入った主人公の化身としての役割が与えられるのみでそれ以上でも以下でもなく、なんとなく出オチ感はあったかな。
不勉強ながら、ベネズエラの政治状況や社会不安をちゃんと知らずに見たので、いろんな場面に散りばめられた息苦しさや社会不安の片鱗をキャッチし切れなかった。それ故に、主人公の独善的な面ばかり気になってしまった。コンテクストを知ることで印象がだいぶ変わる作品。
不勉強ながら、ベネズエラの政治状況や社会不安をちゃんと知らずに見たので、いろんな場面に散りばめられた息苦しさや社会不安の片鱗をキャッチし切れなかった。それ故に、主人公の独善的な面ばかり気になってしまった。コンテクストを知ることで印象がだいぶ変わる作品。
これマ・ドンソクのドラマが原作なんですね。物語が王道でスッキリしていたので、上田作品らしい癖が良くも悪くもなかったなという印象だったのはそのせいか。内野聖陽演じる主人公のキャラクターは、上田作品の登場人物らしい鈍臭さと人間味が滲み出ていて良かったです。
これマ・ドンソクのドラマが原作なんですね。物語が王道でスッキリしていたので、上田作品らしい癖が良くも悪くもなかったなという印象だったのはそのせいか。内野聖陽演じる主人公のキャラクターは、上田作品の登場人物らしい鈍臭さと人間味が滲み出ていて良かったです。
Xhafer役のミシェル・マティチェヴィッチの激昂するでもなく、身体の芯から怒りが滲み出る演技が素晴らしい。そして、ここにも登場する妻役のザンドラ・ヒュラー。2人の関係性の変化が、被害者であり加害者にもなり得る危うい構造を立体的に浮かび上がらせていて、巧いなーと思った。
Xhafer役のミシェル・マティチェヴィッチの激昂するでもなく、身体の芯から怒りが滲み出る演技が素晴らしい。そして、ここにも登場する妻役のザンドラ・ヒュラー。2人の関係性の変化が、被害者であり加害者にもなり得る危うい構造を立体的に浮かび上がらせていて、巧いなーと思った。
これがドイツにおける移民への差別の実態なのかは分からないけど、万国共通で起きている普遍的な一コマであることは間違いない。繰り返し「クロアチア出身だっけ?」と間違われ苛々を溜め込むXhafer。悪気のない些細な間違いが、受けた方からすると強烈な差別や侮辱にもなるんだなと。
これがドイツにおける移民への差別の実態なのかは分からないけど、万国共通で起きている普遍的な一コマであることは間違いない。繰り返し「クロアチア出身だっけ?」と間違われ苛々を溜め込むXhafer。悪気のない些細な間違いが、受けた方からすると強烈な差別や侮辱にもなるんだなと。
#2023年映画ベスト10
1.🇺🇸バビロン
2.🇫🇷🇳🇱ベネデッタ
3.🇯🇵エゴイスト
4. 🇺🇸スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース
5.🇧🇪CLOSE
6.🇲🇳セールス・ガールの考現学
7.🇫🇷それでも私は生きていく
8.🇫🇷ポトフ 美食家と料理人
9.🇬🇧aftersun/アフターサン
10.🇯🇵少女は卒業しない
#2023年映画ベスト10
1.🇺🇸バビロン
2.🇫🇷🇳🇱ベネデッタ
3.🇯🇵エゴイスト
4. 🇺🇸スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース
5.🇧🇪CLOSE
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7.🇫🇷それでも私は生きていく
8.🇫🇷ポトフ 美食家と料理人
9.🇬🇧aftersun/アフターサン
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