サードロウ
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Cinema, Music, etc.
グラハム・フォイ『メイデン』。16㎜フィルムの粗い粒子で捉えられた、カルガリー郊外の自然に囲まれた町で生きる3人のティーンエイジャーが抱える弱さ、孤独、悲しみ、そして生と死までもが、量子力学的な空間として立ち上がる世界に再定義されるかのような、映画の力を静かに感じさせる傑作だった。
April 29, 2025 at 2:26 AM
ラウラ・シタレラ『トレンケ・ラウケン』。昨年末以来二度目の鑑賞。前回は次々に現れる挿話の予測不能の展開に振り回された(その心地よさに酔った)感じだったが、実はそれぞれの章が時系列的に重なり合い、全体では短い期間を描くタイトな構成の映画でもあることに気付かされた。

もうひとつ。女性の失踪を主題とし、彼女を追う二人の男性を主体的に描くパート1に対し、パート2では彼らの存在感が薄れ、主体が女性たちへと移行していく。その意味でこの作品は(画面から)男性が消えていく映画という見方もできるのではと感じた。
April 27, 2025 at 11:01 PM
意表をつくタイミングで流れるフアナ・モリーナの音楽も良かった。彼女の名前は知っていたが、ちゃんと聴いたのは初めて。フォークトロニカ、と言っていいのかな? 暖かさと鋭さが同居するような独特のサウンド。残念ながら配信にはなく、フィジカルも出ていなさそう。とりあえず、今配信で聴ける彼女の別のアルバムを聴いている。
April 26, 2025 at 2:18 PM
ラウラ・シタレラ、ベロニカ・ジナス『ドッグ・レディ』。町外れの森で、犬たちと暮らし、共に行動する女性の四季を描く。ひとりの女性と家族のような犬たちが、現代の世界の中で共生する姿を、台詞/言葉に頼らず、神話的と呼びたくもなる映像そのものの力で見せる手腕に、最後まで見入る。傑作。
April 26, 2025 at 2:18 PM
マノエル・ド・オリヴェイラ『夜顔』。ルイス・ブニュエル『昼顔』のセヴリーヌとユッソンの38年後の再会を描く。あの映画で残された二つの謎──ひとつは物語上取るに足らないけれども印象に残るもの、もうひとつは物語の核心に関わる重大なもの──が、ついに明かされるのかと期待が膨らむ。

とはいうものの、その答えを(二次)創作してまで明かしてしまうのはどうなのか…と思っていたところ、さすがはオリヴェイラ、一筋縄ではいかなかった。会話劇としての面白さ、鏡の使い方、光と影の演出など、やはり見事というしかない。ただすべてを楽しむには『昼顔』を見ておいた方がいいと思う。
April 20, 2025 at 10:02 PM
マノエル・ド・オリヴェイラ『アブラハム渓谷 完全版』。若い時分に一度観ているものの、正直ほとんど記憶に残っていない。今回は完全版ということだし実質的には初見。そうなるだろうとはわかっていたが、やはり圧倒された。簡潔でありながら、緻密に考え抜かれたであろう構図と色彩。すべてのカットが見どころと言っていい、驚くべき映画体験だった。
April 20, 2025 at 10:01 PM
『IT’S NOT ME イッツ・ノット・ミー』レオス・カラックス監督Q&A付き先行上映に行ってきた。色々と良い話を聞けた。

例えばこんな発言「映画は決して1人で作るものではない。自分のカオスを理解し、共有してくれる存在が必要だ。それが、この作品を捧げたジャン=イヴ・エスコフィエであり、ドニ・ラヴァンでもある。彼らに出会わなければ、まったく違う映画を作っていたかもしれない。今もそういった人に出会うチャンスを探している」

あと、常に本を2冊づつ、昼と夜で分けて読んでいるという発言も興味深かった。
March 24, 2025 at 10:11 PM
先月出願していた放送大学から、合格通知書が届いた。1年間の選科履修生として、まずは1学期、2科目を受講する。

・映画芸術への招待(まあ、これがやりたくて初めて放送大学に入るようなもの)

・日本語リテラシー(文章力をもっと上げたく)

文学や歴史も考えたけど、それは次学期以降で。まずはこの2科目をしっかりとやりたい(ホントに、ちゃんとやれよ自分)。
March 10, 2025 at 9:49 PM
テレンス・マリック『バッドランズ』。すべての行動が明白ながら、内面の奥までは読めないマーティン・シーン。一方で、自発的な行動はほとんど取らないものの、ボイスオーバーによって思考が明確に伝わるシシー・スペイセック。この対照的な組み合わせが面白い。

人物のキャラをことさらドラマチックに誇張せず、彼/彼女を取り巻く自然=世界と共に描く。テレンス・マリックの特徴的なスタイルがこのデビュー作ですでに見られる。全編に渡ってさまざまな動物が登場し、後半にかけては地平線が忘れ難い印象を残す(やや画面の中央に据えられがちな気もするけれど)。
March 9, 2025 at 2:02 PM
新宿ピカデリーで行われた『ANORA アノーラ』のショーン・ベイカー監督とプロデューサーのサマンサ・クァン氏の登壇回へ。名目上は舞台挨拶だったが、実質的には30分近くにわたる充実したトークショーとなった。内容は、撮影現場でのマイキー・マディソンの凄さ(その時点でオスカーを獲れる予感がしたとのこと)、日本の映画監督(鈴木清順と今村昌平)からの影響、自身にとっての編集の重要性、エンディングを決めてから制作を始める手法、そして観客同士の対話を生む、解釈の余地がある作品への思いなど。
March 8, 2025 at 2:46 PM
未見だったユホ・クオスマネン『コンパートメントNo.6』をU-NEXTで鑑賞。ロキシー・ミュージックで始まり、ロシア歌謡で締めくくられるオフビートなロードムービー。何もかもが思い通りにならなかった旅のすぐそばに、本当に大切なものがあった。最後のラウラの表情が、それを物語っているように見えた。
March 7, 2025 at 10:21 PM
ジェームズ・マンゴールド『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』。1964年のニューポートでの『時代は変わる』の場面に唸らされた。観衆はいまだにディランを世代の代弁者として見ているが、彼自身はすでにそのシーンとの決別を決意しているかのように映る。その結果、この歌の歌詞は二重の意味を帯びる。

この曲が持つ「これからは我々の時代だ」というメッセージは、本来は親の世代や政治家たちに向けられたもののはずだが、この場面ではディランがそれを観衆に向けて歌っている。その解釈は自分にとっても新鮮で、まったく考えたことがなかった。
March 6, 2025 at 10:32 PM
上映後には、小田香監督と出演の吉開奈央さんによるトークイベントが開催され、渋谷哲也さんを聞き手にベルリン映画祭の話を中心に語られた。パレスチナ支持の帽子とバッジを身に付けて参加した小田監督に対し、映画祭側の対応は厳しいものではなく、周囲の反応からもさりげない連帯を実感したとのこと。

映画の内容については、森の中で吉開さんと沖縄の語り部の方が突然話し始めるロングショットの場面について、小田監督が「二人が勝手に話し出した」と語ると、吉開さんが「いや、監督の指示があった」と返し、記憶の相違をめぐってやり合う(もちろん和やかに)場面では、会場が大いに沸いた。
March 2, 2025 at 9:52 PM
小田香監督『Underground アンダーグラウンド』。冒頭の、ポスターと同じトンネルのショットに一瞬で映画の世界へと引き込まれた。明確な物語がなくとも、シークエンスのパーツなどではない独立したショットの強さが圧倒的で、いつまでも見続けていたくなる。

主演(ととりあえず呼ぶ)の吉開奈央さんの役名は「シャドウ」だが、洞窟や地面に映る影そのものもそれ自体の存在が魅力的だった。沖縄の平和ガイド・松永光雄さんの語りは、その重い内容とともに深く引き込まれ、映画全体の音響(あの軍用機?の轟音など)もまるで立体音響のような凄みを持っていた。
March 2, 2025 at 9:52 PM
パンフのマイキー・マディソンのインタビューによると、彼女が監督から(役作りに)勧められた幾つかの映画の中の一本として、ピアラの『ルル』があったとのことで、なるほどと思った。他にも『女囚701号 さそり』など、どれも女性の主体性が描かれている映画。溝口はなかったのかな? 『赤線地帯』とか、ショーン・ベイカー絶対好きそうだけど。
March 2, 2025 at 9:31 PM
ショーン・ベイカー『ANORA アノーラ』。愛情は単なる取引に過ぎないことを重々承知していたはずのアニーが、これまでの客とは違うロシア人御曹司のアプローチに、もしやと思ってしまった……。実質2部構成のシンプルなプロットの中に、喜怒哀楽が濃密に詰まっている。コメディとシリアスのミクスチャー。終わりそうで終わらない長いシーンの演出にカサヴェテスを思う。
March 2, 2025 at 9:31 PM
アラン・レネ『ジュ・テーム、ジュ・テーム』を角川シネマ有楽町にて鑑賞。自殺未遂をした男がとある研究所でタイムリープの被験者となるが、一分間だけのはずだった実験が不具合を起こし、彼は一年前の記憶の断片をランダムに何度も再体験することになる……。一見親しみやすいSFとはいえ、そこはやはり『去年マリエンバートで』や『ヒロシマ・モナムール』の監督らしい、硬質で歯応えのある一作だった。
March 1, 2025 at 2:59 PM
現在進行形のアパルトヘイト。イスラエル側のブルドーザーによって家が破壊され、建て直してもまた壊される。特に後半、子供たちの学校が平然と壊される場面には胸が痛む。そして軍の後ろから次々と現れる、銃を構えた入植者たちの姿には、言いようのない嫌悪感を覚える。

バーセルに協力するユヴァルは、この状況を本気で変えたいと考えているが、イスラエル国民である彼には通行の自由があり、安全に帰ることのできる家がある。二人の対話は微妙にすれ違う。この問題の難しさを痛感する。上映時間が過ぎても、この映画に本当の終わりはまだ訪れていない。
February 27, 2025 at 9:39 PM
『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』。バーセル・アドラー、ユヴァル・アブラハーム、ハムダーン・バラール、ラヘル・ショールによる共同監督。TOHOシネマズシャンテにて。
February 27, 2025 at 9:39 PM
超久し振りにミュージック・マガジンを買った。傑作音楽伝記映画50選面白く読んだけど、『24アワー・パーティ・ピープル』は入っているのに、『コントロール』が入っていなかったのが意外。
February 27, 2025 at 1:13 PM
東京日仏学院「フランス映画入門」にてジャック・リヴェット『アウト・ワン スペクトル』を鑑賞。13時間に及ぶ完全版『アウト・ワン 我に触れるな』の別編集による短縮版(それでも4時間半近くあるけど)。
February 23, 2025 at 2:58 PM
外出を禁じられた娘たちにとって、スマホの小さな画面は外の世界を眺める窓となる。そこに映し出されるのは、女性たちによるデモと、それに対する警察の激しい弾圧を撮影した実際の映像。その壮絶さに言葉を失うが、しかし、屈することなく大勢の女性たちが一斉に声を上げる姿には心が揺さぶられる。

後半で映画のスタイルが大きく変わるとはいえ、室内の場面が多いため、母と娘たち三人の女性のヒジャーブを着けない姿が長く画面に映り続ける。そしてクライマックスでは不可抗力的にそのまま屋外に出てしまう(街中ではないが、映像として外に出た、頭に何も被らない女性の姿が映り続ける)。ここにラスロフ監督の企みを感じる。
February 18, 2025 at 11:25 PM
モハマド・ラスロフ『聖なるイチジクの種』をTOHOシネマズシャンテで鑑賞。2022年にイランで起こった「女性・命・自由」運動を背景に、官憲である父親と、密かに運動を支持する二人の娘たちとの対立が描かれる。その対立はシステムに対する個人、男性に対する女性といった構図にも見え、その狭間で葛藤する母親の姿が印象に残る。
February 18, 2025 at 11:25 PM
東京日仏学院でジャック・リヴェット『アウト・ワン スペクトル』上映後の大寺眞輔さんによる講義「リヴェットとヌーヴェル・ヴァーグのポスト68年」に参加。作品の制作過程から、どういう作品なのか、NVの映画作家たちに共通するもの、1968年という時代背景など。キーワードは「結集と離散」。

映画の方は来週観る予定だけど、今日の講義を聞いてから観るという順番は、意外と良いかもしれないと思った。上映トラブルがあったとのことで、最後にエンドロールの部分も見せてもらえて少し得した気分。
February 16, 2025 at 11:24 AM
この次に上映されたドキュメンタリー『鏡の中のマヤ・デレン』も観たかったのだけど、予定があったため今回は断念。来週のスケジュール次第ではあるけどなんとか観たいな。

ちなみに今ちょこっと調べていて知ったのだけど、『暴力についての瞑想』で華麗な中国武術を見せてくれるChao Li Chi氏は、その後も俳優として活躍されていて、イーストウッドの『ブラッド・ワーク』なんかにも出ていたみたい。
February 16, 2025 at 8:36 AM