岡田一実
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岡田一実
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俳人・岡田一実。句集に『境界ーborderー』(2014)、『新装丁版 小鳥』(2015)、『記憶における沼とその他の在処』(2018) 、『光聴』(2021)、『醒睡』(2024) 単著に『篠原梵の百句』(2024)HAIKU,for its own sake.
相良奈美香『行動経済学が最強の学問である』(SBクリエイティブ、2023)、読了。

アダム・スミスは「人間にはさまざまなな激情があるが、共感する力がある。義務と道徳を知れば正しく行動ができる」と説き、それを受け経済学は「市場メカニズムの中で動く人間も、常に理性的で正しい判断をする」という前提で構築されてきた。
しかし、それには限界があるとして生まれたのが「行動経済学」。すなわち「人間の『非合理な意思決定のメカニズム』を解明する学問」である、と。
本書は、人間が「合理的に判断する存在ではない」ことを前提に、私たちの意思決定を歪める癖や偏りを、行動経済学の主要概念を用いて解説。
#読書
November 16, 2025 at 8:11 AM
マイケル・リンド/中野剛志解説/施光恒監訳/寺下滝郎訳『新しい階級闘争 大都市エリートから民主主義を守る』(東洋経済新報社、2022)、読了。

本書は、戦後実現した「民主的多元主義」の安定した政治が、1970年代に始まった新自由主義に基づく「上からの革命」の影響を受け、機能不全に陥った結果、今日の米国では国民統合が揺らぎ、分断が深刻化していることを指摘し、その分断の解消をどのように図っていくべきか論じるもの。
現代社会の対立を「都市の専門職エリート」と「大多数の労働者階級」との権力格差として捉える。
#読書
November 15, 2025 at 7:36 AM
マシュー・ホンゴルツ・ヘトリング著/上京恵訳『リバタリアンが社会実験してみた町の話――自由至上主義者のユートピアは実現できたのか』(原書房、2022)、読了。

本書は、アメリカ・ニューハンプシャー州のグラフトンで行われた「自由至上主義者(リバタリアン)」たちによる社会実験の顛末を描いたノンフィクション。
2000年代初頭、「国家の干渉を最小限にした社会」を理想とするリバタリアンたちが「フリー・ステート・プロジェクト」を立ち上げ、同州に移住して独自の自治社会を築こうとした。彼らは税金を拒み、政府による福祉や規制を否定し、個人の自由を最大限に尊重する「ユートピア」を目指した。

#読書
November 5, 2025 at 12:34 PM
急に秋が深まりましたね。
岡田一実最新12句『闇処(やみど)』をお送りします。
お楽しみ頂けると幸いです。
#俳句
#季語
#読書
October 31, 2025 at 8:38 AM
リチャード・O・プラム/黒沢令子訳『美の進化 性選択は人間と動物をどう変えたか』(白楊社、2020)、読了。

著者は、ダーウィンの性選択論を拡張し、「美」が進化を動かす力であるとする。雌が雄の外見や行動に感じる「快」や「美しさ」に基づいて配偶者を選ぶことで、審美的感覚と装飾形質が共に進化するという「審美進化説」を提唱する。
孔雀の羽や鳥の求愛舞など、生存には不利でも魅力的な特徴が進化した理由を説明し、人間にも理論を拡張する。性的魅力やオーガズム、同性愛、女性の性的自律性などを、美意識と快楽の進化の産物として読み解く。

白眉は第5章から第7章。

#読書

#読書
October 13, 2025 at 7:37 AM
『文藝春秋』11月号、新作6句「端」をご掲載いただいております。短歌は東直子さん、自由詩はカニエ・ナハさん。どちらも読み応えのある作品です。
お手にとってご覧いただけると幸いです。
#俳句
#文藝春秋
#読書
October 9, 2025 at 8:16 AM
ようやく秋めいてきましたね。
岡田一実最新12句『人ごゑ』です。
お楽しみ頂けると幸いです。
#俳句
#読書
September 25, 2025 at 5:59 AM
水野太貴『会話の0.2秒を言語学する』(新潮社、2025)、読了。

「ゆる言語学ラジオ」のスピーカーの水野さんの単著。
前半の基礎的な言語学のパートも十分面白かったが、「手話」、「先天盲とジェスチャー」、「言語常識が文化によって異なる」、「ASDと定型発達」、「吃音」、「会話の流暢性と能力主義」など、文化相対主義と人間特性の多様性に話が及んでいくところが非常に興味深った。
「普通に話せないことがおかしいとは限らない。むしろ普通に話せるのは、ある意味で奇跡ではないか」という結論が素晴らしい。
#読書
September 11, 2025 at 8:39 AM
山本圭『嫉妬論 民主社会に渦巻く情念を解剖する』(光文社、2024)、読了。

私たちは、なぜ嫉妬という感情を手放すことができないのか。嫉妬感情は、 政治や社会生活、とりわけ民主主義とどうかかわっているのか。嫉妬にかんする古今東西の言説を分析しながら、この「厄介な感情」を掘り下げて考察。

#読書
September 10, 2025 at 6:20 AM
角川『俳句』9月号、「新刊サロン」にて大塚凱句集『或』について「音楽的な平熱、その抒情」と題して句集評を寄稿しております。
お手に取っていただけると、幸いです。

#読書
#読了
August 25, 2025 at 6:46 AM
高田裕美『奇跡のフォント教科書が読めない子どもを知って―UDデジタル教科書体開発物語』(時事通信社、2023)、読了。

書体デザイナーとして歩んできた32年間の軌跡。
アナログからデジタルの過渡期を邁進して、ユニバーサルデザイン(UD)と出会い、イメージだけではなくエビデンスも加えて「読みやすさ」を追求していく……。
専門的な情報も興味深く読んだ。
本書においてもUDデジタル教科書体がフォントとして選ばれている。

#読書
August 17, 2025 at 1:12 PM
門脇篤史『歌集 自傾』(現代短歌社、2024)、読了。

現代的な風物や繊細な情感を文語の豊かさで捉える。絶妙に「イマココ」から解放してくれて、でも「イマココ」でもある。
とても好きな歌集でした。

バスのおもてに描かれてゐる空を見つ乗客からは見えざる空を
室外機の上に置きたるコーヒーの水面は昏く小刻みに揺る
手のひらにあらはれ過ぎたフリスクをひと粒ひと粒戻してゐたり
火曜日に旧き年度は消え去りて水の曜日におとなふ四月
駆け足になつてしまつた説明の足跡あさくみづの溜まりぬ
蚊のこゑは不意に聞こえてまた消えて思ひ出したる殺意がひとつ

#読書
August 12, 2025 at 6:51 AM
水島治郎『ポピュリズムとは何か 民主主義の敵か、改革の希望か』(中央公論、2016)、読了。

ポピュリズムとはデモクラシーに内在する矛盾を端的に示す。現代デモクラシーを支える「リベラル」な価値、「デモクラシー」の原理を突きつめれば突きつめるほど、それは結果として、ポピュリズムを正当化することになる――。
ポピュリズムとは伝統的な右派や左派に分類できるものではなく、むしろ「下」に属する運動。既成政党は右も左もひっくるめて「上」の存在であり、「上」のエリートたちを下から批判するのがポピュリズム、という定義に沿って論が進む。
#読書
August 7, 2025 at 11:34 AM
國分功一郎『手段からの解放 シリーズ哲学講話』(新潮社、2025)、読了

カントをヒントに能力の低次の実現である「享受の快/快適なもの」について分析し、同次元の「間接的に善いもの/設定された目的として有用なもの」を区分けする(その過程で、能力の高次の実現である「端的に善いもの/道徳存在としての人間の目的形式(定言命法)」と「美しいもの/目的なき合目的性」、「崇高なもの/人間性という目的」も区分けがなされる)

#読書
July 28, 2025 at 7:25 AM
小原奈実『声影記』(港の人、2025)、読了。
文語の豊かさと自然への眼差し、さまざまな闇の表情が面白かった。

水溜りに空の色あり地にいろありはざまに暗き水の色あり
夕闇に汗にじみゆく 洋梨の軸はあやふく宙に凭れて
切り終へて包丁の刃の水平を見る眼の薄き水なみだちぬ
白梅の八重ゆるみゆくまひるまにゆるみあまりしひとひらの落つ
遠き日となりし講義に馬が指をうしなひゆきしさまを聴きゐき
曇天はけじめなく暮れ路ごとに樹のはなどきの憶えある街
道順はながく直進 炎天に蜻蛉(とんぼ)の筋(きん)のふるへみちつつ
駿足のごとくレモンの香りたち闇のふかみへ闇退(すさ)りたり

#読書
July 27, 2025 at 4:04 PM
暑中お見舞い申し上げます。
岡田一実最新作「十方」12句です。
お楽しみいただけたら幸いです。
#読書
#俳句
#季語
July 26, 2025 at 8:33 AM
國分功一郎『中動態の世界 意志と責任の考古学』(新潮社、2025)、読了。

文庫版。かつてインド=ヨーロッパ語に存在していた中動態、あるあは能動態と中動態の対立に注目することで、能動態と受動態の対立の自明性に疑問を呈するとともに、歴史上この後者の対立と強く結びついてきた意志の概念を批判する。
中動態には、自動詞によって記述される側面、受動態によって記述される側面、再帰的に記述される側面の三つがある。
「能動態でも受動態でもない」という中動態の概念的イメージを超えて、スピノザの「自由」の概念を定式化することで、概念的イメージを積極的なものにする。

#読書
July 16, 2025 at 8:25 AM
「俳句界」7月号、特集「『第一句集』大解剖」にて執筆しております。
第一句集『小鳥』は、多くの方の第一句集とはちょっと違う船出をしております。
お手に取ってご覧いただけると幸いです。
#俳句
#俳句界
June 21, 2025 at 10:58 AM
高橋則夫『刑の重さは何で決まるのか』(筑摩書房、2024)、読了。

刑法の任務は「法益」(法によって守られる利益)を保護すること。刑罰について、「応報論」は「犯罪に対する反作用として、刑罰を科すことそれ自体に意味がある」。「消極的一般予防論」は「これから犯罪を遂行する(かもしれない)潜在的な行為者(潜在的な犯罪者)に対して犯罪をしないように抑止することを目的」。「積極的一般予防論」は「国民に規範意識を覚醒させるため、あるいは法的平和の回復のため」。「特別予防論」は「行為者の改善・教育のためにあり、行為者を社会に復帰させるために処遇してふたたぶ順応させる(社会化させる)ことを目的」。
#読書
June 14, 2025 at 8:01 AM
若林哲哉句集『漱口』(文學の森、2025)、読了。

抑えた表現であるが、語彙選択の的確さのなかに美意識が光る。些末を超えた「あわれ」と、微量のユーモアによる立体感。

夕星や梅の香深く梅の陰
花篝串に蛇腹の鶏の皮
麻服の肩に鞄の紐の痕
まばたきに眉連れうごく時雨かな
望潮うたかたに陽の瞬ける

#読書
June 12, 2025 at 6:04 AM
いしいひさいち『ROCA コンプリート』(徳間書店、2025)、読了。

帯の「泣ける、いしいひさいち。」に「?!」と思って手にとってみましたが、まんまと泣かされました……。このシスターフッド、素晴らしい!「この二人はこのあとどうなったのだろう……」と余情が深く終わるのも、さすがとしかいいようがない……。いしいひさいちらしい機知とユーモアがしみじみとした情感と合わさるなんて……。
良かったです!!

#読書
June 8, 2025 at 6:22 AM
鈴木牛後句集『鄙の色』(書肆アルス、2025)、読了。

前作を凌ぐ牛の迫力。詩的眼差しと知的な批評眼の両方を併せ持つ。独創的なオノマトペが響く。

春来たる牛より近く空を見て
木が霧に浮かび鴉が木に浮かぶ
汗の子のあららこららと失せにけり
迎火やぬしやりと濡れて不在票
秋深し父といふ字を火と思ひ
June 2, 2025 at 6:50 AM
楠本奇蹄句集『グッドタイム』(現代俳句協会、2025)
言葉がするする逃れていくようで、しかし何かが心にしんと入ってくる不思議。この世の用から遠く連れ出してくれるよう。

著莪の花素読のやうに日の翳り
春の雨ひよこに渦があり眠る
山風の手に置きかはり郁子の花
いんそむにあ日は白魚に泥みゐて
May 30, 2025 at 5:59 AM
岡田美智男『〈弱いロボット〉から考える 人・社会・生きること』(岩波書店、2024)、読了。

従来の「強くて万能なロボット」という概念を覆し、「弱さ」を持つロボットが人間との豊かな関係性を築く可能性を探求する。
「弱いロボット」は、意図的に不完全な設計を施されており、その「弱さ」が人間の関与を促す。例えば、子どもがゴミを自ら拾えないロボットに助けを求められると、意図を汲み始め、解釈が生じ、自然とゴミを分別し始める。
ロボットの「弱さ」が、人間の共感や思いやりを引き出す要因となる。
あり合わせのモノをかき集めて、当面の課題を解決していく「ブリコラージュ」が重要。
#読書
May 29, 2025 at 3:59 PM
薔薇の季節もそろそろ名残ですね。
岡田一実最新作「薔薇園」12句です。
お楽しみいただけたら幸いです。
#俳句
#季語
#読書
May 27, 2025 at 8:32 AM