#タソガレドキ忍軍
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14.【オマージュ】伊雑伊
14．オマージュ 「最近領内に侵入しては辻医療行為をして去っていくものが確認されております」 「何て？」 　聞き慣れない言葉に思わず書類から顔を上げ、報告してきた押都の顔を凝視する。 「しかも曲者と名乗ってるとか」 　黒鷲隊の小頭は表情を変えない。雑面を被っているからではない。あの雑面は押都の感情で自由に表情を変えるのだ。タソガレドキ忍軍七不思議の一つである。 　如何なされますか、と問われても答えようが無い。というか、何だ辻医療行為って。普通に怪我人を助けるだけでは無いのか？ 「まあ、医療行為自体はきちんとしているんでしょ？　毒を塗られたりではないんだよね？　じゃあとりあえず放っておいて。私が対応するから」 　怪我人に近付く白い影。テキパキと薬を塗り、包帯を巻く。「ありがとうございます。貴方様は？」と怪我人が問えば「曲者です」と答えてすぐにその場から去っていく。常人には追いつけない足の速さで。 「著作権の侵害じゃない？　伊作くん」 「やだなーこれはオマージュですよ」 　そう言って辻医者は笑った。
November 14, 2025 at 10:01 AM
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15.【録音】伊雑伊
　十五．録音 　 「雑渡さんの声を保管することが出来たらいいのに」 「声を？」 「姿は絵に残せます。乱太郎にでも頼めば生き写しのように描いてくれると思いますよ」 　かつての後輩は今も絵の腕を磨いているらしい。半忍半農にしておくには惜しいくらいの絵の才があるが、本人は忍者である事を誇りに思っているので伊作が口を出すことでは無い。 「まあ、この仕事をしている限り姿が残るのは困るけどね」 　ただの戯言ですよ、と伊作は笑う。でもいつか、タソガレドキ忍軍組頭で無くなった時、唯の雑渡昆奈門となった時、その姿を写したものが欲しいと伊作は思っている。 「雑渡さんの痕跡はきっと何処にも残らない」 「忍者としてはいただけないが、名前は結構知られてしまっているけどね。牽制に役立つから良いけど」 　だがその名も忍者の間にだけ流布しているに過ぎない。警戒するべき相手として。 「声は記憶から早くに消えていくそうです。だから、いつでも雑渡さんの声が思い出せるように出来たら良いなって」 　自分で言い出しておいて酷い話だと思う。まるで雑渡が伊作より先に死ぬかのような言い草だ。どちらが先に命を落とすかなど分からないのに。 　それでも、もし伊作が後に遺されるのであれば、雑渡の全てを記録しておきたいと思ってしまうのだ。姿も、声も、匂いも、何もかも。 「忘れてしまった方がいいんじゃ無い？」 「どうしてですか？」 　心臓が冷える。そんなこと言われるだなんて思ってもみなかった。 「私なんてさっさと忘れて、新しい思い出をたくさん作ればいい」 　閨の中、慈愛に満ちた微笑みで雑渡は残酷な言葉を放つ。 「そんなこと言わないでください。僕は雑渡さんの全てを覚えておきたいんですから」 　そう言って強く抱きしめる。強く、強く。その形も何もかも忘れてなるものか、と。
November 15, 2025 at 1:13 PM
koyone.bsky.social
まぁまた久しぶりに何書いてんだよってやつです。雑高要素少なめですが雑高と言い張る。 #新書ページメーカー https://sscard.monokakitools.net/shinsho.php
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。 以下は本文の内容です。 お昼休みはウキウキウォッチングあっちこっちそっちどっちいいとも～♪ お馴染みの曲で始まったのは今日から１ヶ月という期間だけ完全復活のお昼の番組、笑っていいともだ。 私は今年１年目の番組ＡＤで初仕事がこんな伝説の番組で、諸先輩方からも「お前はラッキーだ！」と言われるほどだった。 大役すぎて既に緊張しまくりだけれど、楽しみの方が優っている。 台本もう少し読んでおこう…と台本を拡げる。 自身の担当は番組後半部分の街で見かけた有名人そっくりさんのコーナーだが、１番メインのテレフォンショッキングはやはり番組の目玉なので先輩が担当している。 なので目を通してなかったが…今日のゲストは…ん？？？誰だ？ 室町からタイムスリップ！雑高カップルの２人…？ 頭が完全に？？？？状態だが…あ！本番が始まる！！ 先輩の後ろで見学させてもらうことにした。 タモリさんの掛け声でお客さんも大盛り上がりだ。 「今日は暑いね！」 「「「そーですね！！」」」 「でも来週から寒くなるらしいよ」 「「「そーですね！！」」」 「その翌週はまた暑くなるってよ！」 「「「そーですね！！」」」 「本当にわかってんのかねぇ」 いつものつかみでお客さんのボルテージも上がりまくりだ。 「早速ね、ゲストお呼びしますよ。室町からいらっしゃったという雑高カップルのお二人です！」 チャーラッチャチャッチャラッチャ！ お馴染みの登場曲で現れたのは全身包帯で忍者の格好をした大柄の人と、目元しか見えていないが切れ長の美しい目の細身の男性２人だ。 ２人の登場に拍手はするが、完全にお前誰やねん状態の客席かと思ったら客席の一部が大盛り上がりだ。 客席から「ジンザーーー！！！！」と声が上がると、 切れ長の美形が「その名を呼ぶなーー！！！」と声を上げる。 それでも客席の一部はキャッキャと盛り上がっていて「くみがしらー！」とか「コーサカー！！」と声が上がる。 タモリさんもすかさずそこを見抜く。 「高坂くん？はジンザって呼ばれてるの？」 「無礼者！その名を呼んでいいのはここにおらせられる雑渡様だけだ」 「すみません、タモリさんこの者は私以外にはどうも気が強くて。こら、陣左。メっだよ。」 そのやりとりに客席の一部から「コーサカ可愛いよー！！」とか「組頭私も叱ってー！！」とか黄色い声が。 「室町からきたって本当？」 「つい先日別の番組に読んでいただいてそのままホテ ルというところに居させていただいております。」 「へえー、ところで２人とも髪切った？」 定番のやりとりに客席がドッと笑いが上がる。 その様子に２人は戸惑っている様子だ。 「髪ですか？私は一部やけどでもう生えませんけどまぁ切ってはいませんね、時々この陣左に切ってもらっていますが。」 「私は自分で髪を梳くくらいで切りはしないな。」 真面目だ、この２人真面目だ。 最初は忍者の格好をした芸人かと思ったんだがな… 「雑渡くんが組頭ってことは城の忍者の１番偉い人ってこと？」 「そうですね。タソガレドキ城の忍軍の１番偉い人です。」 タモさんの目がキラキラ光る。 あ、これはもしかして… 「わたしね、忍術に興味あるんだけどさ、教えてくれない？火遁、水遁、煙遁、金遁、隠形術、木の葉隠れ、観音隠れ、ウズラ隠れ…喜車の術、怒車の術、哀車の術、楽車の術、恐車の術…！！！」 「タモさん…落ち着いて………」 「ウズラ隠れってこうでしょ！？こう！」 手足を縮めて興奮ながらに実践する姿に２人はてんやわんやで。 「高坂くん！！火遁の術！！お願い！！」 「えっえっ！！？？」 タモさんのオタク魂が加熱してきたところでフリップでそろそろお友達を…と出す。 「え！？もう終わり！？もう少し話したい！雑渡くん！煙玉見せて！！」 「えっええっ！？」 フリップにまた大きく、時間が推してます！！早くお友達を！！ 「仕方ない…じゃあお友達紹介をお願いします…」 「お友達といえるかは分かりませんが、照星を呼びたいと思います。」 「あー照英くんねぇ…忍者の次は普通のタレント…はぁ…」 タモさんタモさん照英さんに失礼です！！ あれ？でも照英さんだっけ？ なんか設定していたのは違う人だった気がする… 「照星です、タモさん。火縄銃の名手です。」 「え！？火縄銃！？名手！？楽しみぃー！！！」 電話をかけると激渋の声が響く。 「なんだ、雑渡。」 「明日アルタに来い。いいな。」 「聞いている。わかった。いいとも。」 明日も変な人来るの…？俺のコーナーの時間、無くなりそう……
October 27, 2025 at 2:48 AM
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落乱49巻、潜入してたタソガレドキ忍者の顔がみんなかわいかったのでタソガレドキ忍軍顔選抜かもな…の顔してる、お目目まんまるの可愛い顔ばっか集められているので土井先生もさもありなん…
January 17, 2025 at 2:37 AM
potamayon221b.bsky.social
そういや忍軍ってあまり自称するものではないと思ってる（真田忍軍とかも外からのラベリングだろうし）。なので、映画で言ってた、タソガレドキ軍の忍び、が自称だと思っている
February 9, 2025 at 8:59 PM
toandfro.bsky.social
山田先生が部屋に入ってきた時のタソガレドキ忍軍の会議？みたいなやつあまりに格好良くてそわそわした。一旦シン…って会釈するやつ。会釈しつつ視線はずっとこっち見てるの、空手やってた時に対戦相手にお辞儀をする時も目線は下げずに相手を見たままにしろって言われたのを思い出すね
January 1, 2025 at 11:45 AM
tt-san.bsky.social
4「今日がその日と」（2/2）
「さん？　はあ、はい」 「あんたね、教師におなんなさい」 「はあ」 「なに気の抜けた返事してるんですよ。うちはあんたんとこに教師をやるつもりはない。だけどあんたは教師が欲しい。じゃあ、自分が教師になるしかないでしょうが」 　雑渡がぱちぱちと目をしばたかせて、は、と百人の配下を持つタソガレドキ忍軍の組頭らしからぬ声を出した。伝蔵は片目を眇め、唇の片側をぐいと引き上げて笑ってやる。 「なーに呆けてんだ、わたしゃね、三十五を前に戦忍を止めたんですよ。それから教師になった。なんだって、やろうと思ったらできんですよ」 　隻眼がきゅうと丸くなり、それから糸のように細くなる。雑渡が腹から響くような大声で笑い、それはそれは、と笑みのにじむ声で言う。考えもしなかった。教師か、私が。 「あんたがやらんで誰がやるんです。変えたいんだろう？　じゃああんたがおやんなさい」 　だけどね、簡単じゃないですよ。通いで少しずつ教師の勉強をやってくんだ、一年がかりでも終わるかどうか。伝蔵が続ければ、雑渡が起坐に直って背を伸ばす。頭を深々と下げ、ご助言、ありがたく頂戴いたす。凪など忘れたような、戦場を前に策略を練る組頭の声で言う。 「まあ、学園長先生がいいと言えば、だ。私が決めることじゃない。熱意と袖の下でうまくおやんなさい」 　米だの味噌だの、子らが食うものを贈んなさいよ。そう告げれば雑渡が顔を上げる。なるほど、そうしましょう。口布の下にあっても三十六の男の顔は晴れ晴れと笑んでいて、私も戦忍を辞めると決めた日にはあんな顔をしていたか、と伝蔵は声を上げて笑った。まあ、うまくおやんなさい、雑渡先生！
March 30, 2025 at 6:28 AM
shikano.bsky.social
雑渡さん二次創作の平和的解決策としてタソガレドキ忍軍の話を読めばいいということに気づきました
January 10, 2025 at 2:55 PM
liebhaber-apfel.bsky.social
次の映画は、是非とも「タソガレドキ忍軍」と、何らかの『対決』があるようなストーリーが欲しいですね〜(´｡✪ω✪｡｀)✧*。
February 12, 2025 at 8:44 AM
itsuki-sub.bsky.social
タソガレドキ忍軍は組頭のおかげで職場環境よさそう。
忍務時以外定時上がり♪
※忍務で数日〜数週間潜伏することがあれば代休を取得していただきます。
無料の食堂あり♪
忍務によってはインセンティブあり♪
年間休日125日以上♪育休取得率は他所より実績があります！
February 16, 2025 at 1:05 AM
sabakuhana.bsky.social
5/3四象八卦絵巻GW2025のスペースを【東６の29a】でいただきました！「インド・エジプト神話好きから見た『劇場版モノノ怪』のモチーフ考察」の本が出る予定です。
「嵌まって3か月の資料調査好きがまとめた『タソガレドキ忍軍』の情報・考察本」も一緒に持っていきます。原稿頑張ります😂

FGOマハバ組は5/18インテでスペースを取っています☀️スペース番号はまたわかり次第、（おそらくGW後）にお知らせします。
sabakuhana.bsky.social 玄米 @sabakuhana.bsky.social · Feb 24
【サークル参加します!!】
05月03日（東京）SUPER COMIC CITY 32-day1-内 四象八卦絵巻 GW2025｜
05月18日（大阪）SUPER COMIC CITY 32-day3-内 SUPER COMIC CITY 32 -day3-｜ akaboo.jp/event/item/2...

5月にモノノ怪とFGOでスペースを取りました！！FGOは今までに出したFGOとインド映画考察本の再録＋描き下ろしです。
あと、同じタイミングで🥷🥚タソガレドキに突然沼落ちしたオタクの調査本も出ます生きるッ
April 3, 2025 at 11:33 AM
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4「今日がその日と」（1/2）卒業を目前にした春の日、山田先生と雑渡
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。 以下は本文の内容です。 　甘い菓子を持ってやってきたので、あんたね、私みたいなのにこんなもん持ってきてどうするんですよと伝蔵は返したが、ありがたく頂戴しますけどねと受け取る。角のきっちりと立った箱に詰められた菓子は一年は組のよい子たちに行き渡る数があるのだろう。 「山田殿は昆奈門のこんなもんをお気に召されませんでしたか」 「しょうもないことを言いなさんな」 　うちの安藤先生といい勝負だと顔をしかめてやると、雑渡は眉の辺りをくっと上げてから勝手知ったる他人の部屋とばかりに腰を下ろす。教師用の居室を共に使っていたのは秋の一か月ほどに過ぎないが、その後もなぜか時折顔を出すようになった。気まぐれにクルミでも放ってやったカラスに顔を覚えられたのならこんな調子だろうと伝蔵は思う。 「で、なんで菓子折りなんですよ」 「今年度はまことにお世話になりました、の心ばかりの礼です」 　足を横に流して、懐から竹筒を取り出してちゅうと吸っている雑渡は気易い雰囲気だが、園田村の一件より前には忍術学園とタソガレドキ忍軍は没交渉だった。成立が他領の忍軍より古く、地侍集団が基となっていることから、忠誠心のある忍者を領内から充分に調達できる。わざわざ他から忍者を受け入れる必要はない。忍術学園側からも卒業生の斡旋の声をかけることをしなかったため、近隣にありながらも交流を持たれなかった。 　だが、今はこうして組頭自らが忍術学園へとやってくる。半助の代わりに教師となって授業を受け持ったこともあるのだろうが、どうにもこれは変わった男だ。伝蔵は顎に手をやり、髭をしごく。 「私はねえ、おまえさんが青田を刈るつもりかと思っとったが」 　伊作くんですか、と返した雑渡の声は笑みを含んで 聞こえる。開け放したままの戸からは、春の盛りのほんの手前の光がわずかに射し込む。六年生の卒業まではあと十日ほどを残すばかりだ。何年教師をやっていても伝蔵は、この時期には六年を育てきったという安堵と充足を感じる。 「彼はうちでは手に余りますよ、山田殿。矯めて、剪定して、たわめないと到底使えない」 　あんたのことは慕ってるでしょうよと伝蔵が返せば、他の大人と同じくらいには親しく思ってもらってますがと雑渡が竹筒を懐にしまってから腕を組む。身の丈六尺の大男にふさわしい筋肉のついた、恵まれた骨格をした体だ。タソガレドキの忍者はどれも体格のいい者が多いが、その中でも雑渡昆奈門は頭抜けている。職能を持った家を領が抱える、というのはそういうことだ。忍者に適した体を持つ家同士をかけ合わせて子を産ませる。入学金を支払えば誰であっても受け入れる忍術学園とは違うやり方での育成を行う。 「彼は、組頭のためなら命を懸ける、とは言わないですよ」 　伝蔵は片目を眇める。言ってほしいのかね、雑渡殿。いいえ、全く。返してタソガレドキ忍軍の組頭は、手当てをするから死なずに戻ってこい、と言ってくれる医師になるんですからね、伊作くんは。と目元で小さく笑む。そして、さて。と短く息をついてから腕組みを解き、頬に手を当てる。 「前回のお話、考えていただけませんかね」 「いただけませんねえ、全然だ」 「土井殿ではいかがか」 「あれは私に輪をかけて全然でしょうよ。いただけませんよ」 　有休あり、年一度の温泉旅行もあり。忍術学園よりも給料を高くしてもですか。雑渡が続けたが、分かっていてこう言っているのだ。だーめだめ、全くだめ。顔の前でひらひらと手のひらを振ってやって、伝蔵は かいたあぐらに頬杖をつく。 「にんたまの友を一年生から六年生の分の六種お譲りいただければ足りるか、というとそうでもない。実技の教え方は教師の頭の中だ」 「教師用の覚書はありますがね、私らの飯のタネを渡すわけにはいかんでしょう」 　山田殿、少しよろしいでしょうか。と雑渡が秋ぶりにやってきたのは冬の終わりを迎えた頃だ。タソガレドキ忍軍に教師を派遣していただくことは叶いますか。と切り出されて以来、同室の教師の不在を見計らったようにやってくる。忍軍でも子らに同じようなことを教えるが、体系立ったものではない。隊が役割によって分かれており、知識にもばらつきがある。それを均して教えたい、と静かな声で告げられた。 　―――家格の高い家が権威のために一子相伝の知識を持つ。そうやって勿体ぶって隠すから、知識を持たないがために配下が死ぬ。 「夏休み、秋休みがあるとお聞きした。その間、タソガレドキにお越しいただくのはどうか」 「妻が、ぜひに帰ってこいと私を恋しがりましてなあ」 　雑渡が長いため息をついて、こうなればかどわかすより他あるまい。物騒なことを言いだすが、やれるもんならおやんなさいよ。笑いとばしてから腰を上げる。茶でも飲みますか、雑渡殿。私はこれで、と懐から竹筒を出して返されたので、じゃあ私だけでも飲みますよ。伝蔵は部屋を出る。 　それはなんとも馬鹿げてますな、とあの時は返したのだったか。雑渡は、他人に圧を与えるような体つきをしているのに穏やかなものだ。あの秋の一か月、幾度か目にしたタソガレドキの忍者たちの軍議でも聞き役に回っていたのは記憶に新しい。配下が死ぬ、と言った雑渡の声は凪いだ湖面のように静かだった。ひたと向けられた目にも怒りや焦りなどは見えず、ただ、静かだった。だが、全身に巻かれた包帯が語る。部下 を庇って大火傷をし、三年に渡って姿を見せなかった、というのは近隣の忍者ならば誰でも知ることだ。噂はどこにでも広がる。父親も部下を庇って死んだと聞く。タソガレドキ忍軍には死を名誉とする気風があるのだろう。地侍集団を基として、自領に生え抜きの忠誠心ある忍者で構成されるのであれば、物事の考え方に新たな流れは入り込まない。死を恐れない忍者であれば、領主にとってこれほど戦には使いやすいこともない。 　戦忍であった頃には、私だってそんな忍者だったさ。 「難儀ですなあ、雑渡殿」 　湯飲みを一つ持って戻り、腰を下ろして伝蔵は言う。あんたひとりが死ぬなと言ってる。雑渡は何も言わずに目をつぶり、みな、よく働いてくれる部下ですよ。しばらく黙ってからそう返した。ふう、と冷まして伝蔵は茶を飲む。外からはのどかな鳴き声がして、うぐいすですか。雑渡が目を開ける。私が寝ついていた頃、こうして季節の巡る気配を聞くのを寝床で楽しみにしていたものだ。懐かしい。体ごと庭を振り返って、すっかり春だ、と独り言のように呟く。 「おいくつでしたか、雑渡殿は」 「三十六になりました」 「偶然ですなあ。私が忍術学園の教師になったのも三十六の時でした。その時から単身赴任をしていてね」 　雑渡が振り返る。隻眼がひたりと向けられる。色の変わった皮膚は大火傷を生き抜いた証だ。あんたね、と伝蔵は心の中で囁く。それほどの大火傷を負っても生きてやろうって思ったんだろう。音でしか外の様子を伺えないほどに長く寝ついて、それでもどうにか取り戻した。立って、走って、手裏剣を打って安藤先生みたいな洒落を言って、そんな生きることをあんたはね、取り戻したんだ。じゃあなんだってできるさ。伝蔵は、一年生のよい子を前にした時のようにすうっと息を吸ってから口を開く。 「雑渡さん」
March 30, 2025 at 6:28 AM
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12「われらここに在り」（1/2）押都と雑渡
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。 以下は本文の内容です。 　タソガレドキ城主の黄昏甚兵衛は戦好きの殿様だが、タソガレドキ忍軍の雑渡昆奈門は戦好きの組頭ではない。けれど戦の下準備の任務を与えるのも、戦に勝ちを導く忍者の策も得手とする。目が効く、思考の速さがある、賢さがある。その上で欲がないのだと、雑渡昆奈門という少年に初めて興味を覚えた出来事を押都は改めて思い出す。狼隊の小頭が戦死し、残されたのは元服も迎えていない十四の子どもだ、と聞いてわざわざ見に行ったのだ。タソダレドキ忍軍は役割を別にする四隊で構成されるが、必ずしも美しい協力関係にあるわけではない。この隊の活躍で戦に勝利した、この隊の暗躍で戦わずに利を得た。評価を得る隊もあれば落とす隊もあり、足を引っ張りあうことはないが張り合う動きは常にある。たかが一つの領で、と思いながら押都は、思惑を持って事が運ばれ、それがどう効果するかを見るのを昔から好んでいた。それこそ十四の子どもの頃からですら。だから、これはどうだろうか、と見に行った。 　―――この十四はどんな十四の子であるか。 「そりゃあ、飲むでしょう」 　うん、そうなんだけどね。笑いながら言うのは四十をとうに超えたかつての十四の子どもで、あれがこんなに育つんだからなあと押都は杯を片手に機嫌のいい横顔を眺める。なに、ほしいの、と振り向いて言うので、私は酒の方が好きなのでと断る。みなそう言うね、尊奈門だってちょっと前までは喜んで受け取ったのに、今はむくれるものね。子ども扱いはお止めくださいって。忍者装束より着替えた姿、夜の気易い雰囲気をさせて笑う。 「組頭は甘酒の方がお好きですね」 「酒はね、頭が鈍るし」 　すぐ醒めるけど、と目を細める。酔い方には人それぞれ体質がある。若い頃はそれでもお飲みになってい たでしょうと思うが、そうは返さずに押都は顎に手をやり、短く整えた髭を指先で撫でる。酒にあえて手を伸ばさなくなったのは組頭に就いてからだ。正しくは大火傷から復帰して以降。痛みを酒で紛らわす者もあるが、酒よりも意志で痛みを律した方が当人にはやりやすいのだろう。 「善法寺先生はもう二十三におなりでしょう」 　そうなんだけど、やっぱりねえ。杯を持たない方の手を頬に当てて目を閉じて、傷を手当てしてくれた行者は忍術学園の生徒だったのか、って衝撃が大きかったからね。十五の子が合戦場にひとりで怪我の手当てに赴いた理由が、保健委員だからです、ってほら。そう言ってから目を開け、笑う。すごいよねえ、伊作くん。 　十四の子の方が、私にとっては「すごい」でしたがねと押都は初めて言葉を交わした日を思い出す。雑渡の継嗣は先代の弟に家督を巡る裁判を起こされ、狼隊の何某からは稚児になれと言われたぞ。黒鷲隊の中では面白半分の風見鶏たちが権力の風の流れを眺めては手に入れた情報を取引して遊び、押都はそれには加わらずに十四の子を直接見るために屋敷まで忍んだ。昼の、まだ日の高いうちの庭先には十四に見えぬ体格の、それでも顔つきは大人とは言えない子どもがいた。 　これは、どうだろうなあ。先代も大柄だったが、中身はどうだ。闘鶏でどちらに賭けるか思案するのと変わりないまなざしを向けていると、視線がひたりと向けられる。気配はそう隠してもいなかったし、気付くのはまあ、あるだろう。押都は姿を現してやり、どうも、と無作法な挨拶を投げた。十四の子は、ふ、と口元を引き上げて笑った。人好きのする顔だ。臆したところのない顔だ。反応に迷った素振りも見せずに十四の子どもが言った。―――判例の水はこちらに利する。 「組頭は四十四で」 「おまえとも三十年の付き合いだよ」 　長いねと甘酒を飲むかつての十四の子どもに、押都は惚れたのだ。家督をめぐる裁判の、勝ち筋は十四の子の方にあるだろうと近年の判例を繰ればわかる。それすら調べずにいずれ小頭となる相手に対し、稚児になれ、とは全くものを知らない阿呆だなと何某を押都は鼻で笑っていた。それと同じものが十四の子どもに見えているのだと、短い言葉だけで理解した。だというのに才を鼻にかける様子もない。目の前に現れたのが策謀を巡らす黒鷲隊であると認識しながら、味方につけよう、とするでもない他人事の顔をしている。少しも欲のない顔で、だというのになぜか面白がる顔をしていた。 「これからも頼むね」 　は、と短く応えて押都は目礼する。十四の子どもはすぐに元服して裁判で認められたとおりに家督を継ぎ、さほど長く待たずに狼隊の小頭となった。押都は任務ではなしに雑渡の屋敷の庭へと通い、集めた情報を、取引ではなく伝えた。返される言葉は押都と同じものが見えていると知れて、同じ速さで物事を見て語るのはこれほどに心躍るものかと顔の前に垂らした布の奥、言葉を交わすたびに押都は笑った。 「定年までお仕えします」 「うん、それがいいよ」 　肉体の欲は知っていたが、好感を抱くことはあれどそれ以上のものを覚えることは誰に対してもなかった。黒鷲隊は諜報を任とする隊だ。元服前から自領の人間関係を見て、入隊しては他領の情報を探るうち押都は、ひとにも様々な在りようがあることを知った。男と女がつがうだけでなく、相手を稚児ほどの年齢に限らない男同士の関係があること、手を繋ぎあってひそやかに愛を語らう女たち、平らかな情だけを持って生涯を一人歩むもの、二より多い数で育むめおとの情、それぞれはこの世には当たり前でないとされるために当人たちによって隠され、押都の得た情報となり、しかし 使われずに秘匿された。 　―――おれには恋情のないものかと思っていたが、賢い相手には惚れるのか。 　この世に少ない方へ身を置くものとしての肩入れだ、と押都が誰にも言わず、記さず終わりにしたものは齢を重ねるほどに少しずつ増えた。数は多くはない。だが、おれたちは確かにこの世に在るのだ。十四の子どもの頭の中身に惚れて、肉体の欲とは結び付かない心でまだ惚れている、そんな「当たり前でない」おれとて在るように。 「私への用向きがありましたらまたお伝えください、組頭。甘酒かっぱらってこいでも何でも構いませんよ」 　はは、じゃあまたお願いしちゃおうかな。おまえ以外に頼むと、甘酒じゃなくて酒を飲めって言われちゃうからねえ。身の丈六寸、相対すれば誰しも畏怖を抱くだろうタソガレドキ忍軍の組頭は目を細めて、頼むね、と言う。押都は目礼して、お望みどおりに、と返した。 　我ら忍軍の誰もが組頭を敬愛している。大火傷から復帰されてはなお、この世の幸せの何もかもが組頭にありますようにと誰もが願う。だが、と押都は視線を上げ、甘酒をゆっくりと飲んでいる大男を見やる。みなが願う。優しい妻、健やかな子ども、継嗣のあとに生まれた愛らしい娘の嫁ぐのを寿ぐ。死ぬまでお仕えしたい、どうか我らの組頭であってほしいと。だが、それは多くのものの願う形ではあるものの、全てのものの幸福ではないのだ。 「善法寺先生をお呼びしますか」 　視線で示して問えば、うーん、でも十日もしないで次の往診だしねえ。そう言って笑んだ目で否を言う。横座りは悪ふざけや酔狂ではないのに、痛みを表に出すことをしないから溜め息を向けられる。杯を持たない方の手のひらが膝頭を撫でて、大丈夫だよ、と続けるが、押都の視線で短く息を吐く。いつものだから大
April 12, 2025 at 1:26 AM
hg-anko.bsky.social
💮新刊あります‼
08/17GOOD COMIC CITY 31 忍FES.32のお品書きです🥳
6号館B T15b【文華堂】配置は🥷🥚
💮zatさんの概念ピアス＆イヤリング
🌸手裏剣ノンホールピアス
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🌸水木さん💧ゲゲ郎👁沙代さん🎀の概念ピアス＆イヤリング
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よろしくでーす♪
インテックス大阪GOOD COMIC CITY 31 忍FES.32のお品書き1/2枚目です。雑渡昆奈門の概念固めたピアス・イヤリング、手裏剣ノンホールピアス、刀剣男士履歴書本の頒布をします。一年生、二年生、三年生、四年生、五年生、六年生、土井先生、山田先生、タソガレドキ忍軍、天鬼、プロ忍、桜木清右衛門イメージの手裏剣、刀剣乱舞の収録キャラは愛染国俊 明石国行 秋田藤四郎 厚藤四郎 和泉守兼定 一期一振 鶯丸 大倶利伽羅 大典太光世 大包平 加州清光 歌仙兼定 亀甲貞宗 江雪左文字 小烏丸 小狐丸 後藤藤四郎 小夜左文字 獅子王 信濃藤四郎 燭台切光忠 千子村正 宗三左文字 太鼓鐘貞宗 鶴丸国永 蜻蛉切 鳴狐 鯰尾藤四郎 にっかり青江 日本号 博多藤四郎 平野藤四郎 へし切長谷部 骨喰藤四郎 前田藤四郎 三日月宗近 陸奥守吉行 物吉貞宗 山姥切国広 大和守安定 です インテックス大阪GOOD COMIC CITY 31 忍FES.32のお品書き2/2枚目です。概念固めたアクセサリーと、真生版のリテイクカ所検証本を頒布します♪ ・水木さん概念ピアス・イヤリング ・沙代さん概念ピアス・イヤリング ・ゲゲ郎の下駄ピアス・イヤリング 水木、ゲゲ郎、鬼太郎、鬼太郎の父、龍賀沙代、長田時弥、龍賀乙米、龍賀時貞、龍賀時麿、 龍賀孝三、長田庚子、長田幻治、ねずみ、鬼太郎の母、岩子、山田、目玉おやじ、ねこ娘、 考察、調査研究、評論、 イメージアクセサリー、概念アクセサリー、ピアス、イヤリング、アレルギーフリー、サージカルステンレス
August 15, 2025 at 1:35 AM
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タソガレドキ忍軍は何かを狂わしてくるな…なんか組織としての設定もガッチリしてるし…
陣左が明らかにキレーな顔してんの、良いですよね…(若いの3人組も良き…)
January 8, 2025 at 10:33 AM
ho-22.bsky.social
忍で死にそうな萌:
どい先生とりきちさんの義兄弟、
教師と生徒（は組と土井先生　土井先生と6年）
親子（山田親子、山田先生とどい先生他たくさん）
でかちい（ざっとさんと忍たまたち）
同室（大量　らんきりしん、6年いろは、5年）
タソガレドキ忍軍（みんなざっとさん大好き）
January 16, 2025 at 4:46 AM
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""俺らの知らんところで何かがとっくの昔に進行していて俺らがその出来事の一端知る頃にはもう終わってるから俺らにはどうにもできない感のある二人が好き””という趣旨をデフォルメ化した漫画です。
保健委員の善法寺伊作くん鶴町伏木蔵くんこんにちは。 タソガレドキ忍軍狼隊小頭の山本陣内さん 今日はどうされたんですか 伏木蔵くんに景品を渡しにね 景品？ そう 実はちょっと前から購買部の新しい試みでタソガレ春の組頭祭りを開催していてね。組頭からもらえる組頭ポイントが一定数貯まる毎に景品として組頭グッズが貰えるんだ。　伏木蔵くんは組頭ボールプレゼントまでポイントが貯まったのでこうして届けにきたというわけだね ちなみに1000ポイント貯まった時の景品はタソガレドキ忍軍内定。ではね。 ……伏木蔵。ちなみに今何ポイント貯まってるの？ ほええ？ 伏木蔵！答えなさい！！伏木蔵ってば！！
March 10, 2025 at 3:29 AM
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3「春にして君は離れ」（1/2）雑渡と進路を決めた伊作の話
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。 以下は本文の内容です。 　宣伝してあげようか。戦傷の手当てがうまいお医者です、軟膏の調合の腕もいいですよって。雑渡が言えば笑い声が返る。はは、それはいいですね。タソガレドキ忍軍の組頭の折紙付きなら名がすぐに売れてしまいそうだ。そう言いながら医務室の棚から振り向き、柔和な笑みを浮かべて伊作が、一つ余分に用意しました。軟膏を乗せた手のひらを向ける。 「近くの長屋に部屋を借りるつもりですし、忍術学園にも定期的に通う予定ですが、必ず連絡が取れるとも言い切れないですから」 　調合を保健委員たちに伝えておこうかとも思ったんですけど、と続けると伊作は一旦言葉を切った。目尻のこころもち上がった丸い目をふっと細めて、僕の定収入のために秘伝の軟膏にしますと言って笑い、雑渡の向かいに腰を下ろす。 「フリーのお医者さんになるんだもんね」 　はい、と伊作が頷く。蝋梅の香る頃になって、決めました、と告げられた。僕は忍者にはなりません。なりますと言われていたら逆に驚いたところだと雑渡は思った。忍者に向いていないからではない。能力としては適職と言えるだろう。それに金創術を知る忍者ならばどの領でも採りたがる。でも、きみの心は満たせなかっただろうね。十五だというのに、自らが進む道のはるか先を見ている目へと雑渡は返した。患者を生に引き戻す、いいお医者になると思うよ、きみは。 「利吉さんにも助言をいただきましたし、まあ、どうにかはなるかなと」 　忍術学園の出身者は多いですし、まずは忍者隊の伝手を、そこから武士にも呼ばれるようになればいいかなと思います。楽観的過ぎると思いますか？　と聞かれたのでいいやと首を振った。いいと思うよ。 「戦のない時期は薬草を採って、薬種問屋に卸します」 　現実的だねと雑渡は頷いてやって、心の中で続ける。きみは理想主義者ではないからね。 　合戦場で負傷した足軽の手当てをしている姿を見た時には、行者が信仰のためにおこなっているのだろうと理解した。功徳を積んでいるのだろうと。けれど忍者装束を身につけた姿で再会し、園田村のお堂で理由を問えばふざけた答えが返った。保健委員だからです。忍者の作戦のためだと言われれば納得もいっただろう。けれど冗談の顔や声でなく告げられた。馬鹿げたことをとその時には半ば呆れたが、金創術の実践を積むためと思えば頷けた。戦闘も手合わせを重ねて実力がつく。書物に学ぶだけでは、忍術学園の生徒の傷を見るだけでは確かに経験は足りないだろう。 　だが、それだけがおまえの理由ではないだろうと雑渡は思った。きみは、そのためだけに合戦場に赴いているわけではない。他の保健委員を伴う時には薬を売るだけということもある。だが、行者姿で向かう先は軟膏では手当ての足りない戦傷の多く見られる戦場だ。戦とは縁のない身であると明確に見てとれる白の装束を選ばなければ矢で射られ火縄銃で撃たれ、槍に刀に斬りかかられる恐れのある合戦場にわざわざ単身で立つ理由は、雑渡には一つしか思いつかなかった。 　―――おまえ、ただ負傷者の手当てをしたいだけでこんなことをしているの。 　それは雑渡にしてみれば理由ではなかった。けれどいくら世に通る道理を並べ立てても否定しかできない。それでは行いの説明がつかない。身を捨てるほどの善心かと最後に挙げてみて即座に捨てる。そうだというのならこんな目はしないだろう。もう助かる術はない、と判断した足軽に向けた目は慈悲でも許しを請うのでもなく、燃え盛る火のように雑渡には思えた。一番近いものならば怒りだろう。己へと向けられる怒り。 「伊作くんは現実をちゃんと見据えてるから大丈夫だと思うよ、私は」 　救うのだ、という驕りはみじんも見て取れなかった。生きろ、と叫ぶように目が言う。生きろ、と傷を探る 指先が吠える。治療を続ける手は優しく、語りかける声は穏やかだというのに身の内に火を飼うようだと雑渡には感じられた。不思議だ、と思った。そうしなければ爆発してしまう、とでもいうようじゃないか。それを選ばなければならない、という衝動のようなものがある。足軽の手当てなど誰が求めたわけでもない。戦の旗を振る者にとっては織り込み済みの減数だ。 　だから、きみはただ手当てがしたいだけなんだろう。怒りにも似た強さで、あるいは切実さでいてもたってもいられない。ならば忍者には向いていない。忍者であることよりも医者であろうとする衝動が勝る。 「実は、雑渡さんからはタソガレドキ忍軍に誘われるんじゃないかと思ってました」 　軟膏も手に入りやすくなるし？　雑渡はからかいに語尾を上げると、きみはうちなんかにきたらすぐに有休を使い果たすよと返した。そうでしょうね、お休みの日ばかりに合戦があるわけじゃないでしょうし。同意して伊作が笑う。尊奈門さんより先には有休がなくなっちゃいますね。 「有休がなくなったら無断で休むだろう、早々に抜け忍だ」 　解雇じゃなくて抜け忍ですか、それは困るなあ。追手が来ちゃいますもんねと呑気なこと言う。そうだよと雑渡は返し、蔵に縛って転がしておくしか止める方法はないだろうからねえと返す。 「まあ、そんなことしても縄抜けして出ていくだろうけどね、伊作くんは」 　十四のきみはもう合戦場へと手当てに赴くことを知っていて、十四の私は稚児にならずに雑渡の家を継ぐためには何ができるだろうかと計略を練っていた。いずれ狼隊の小頭になる、というそれ以外を一つも考えなかったのは、それ以外がある、と知らなかったからだ。私を取り巻く誰もがそれを教えなかった。可能性ではなく示されていたのは必然性だけだったから。 「きみは、これと決めたこと以外はやらないだろうし」 　選択肢が欲しかったとは今でも思わない。適性があった。忍者であること、雑渡の家を継いで狼隊の小頭になることは明らかに己に向いた道だった。だからこそ四隊を従える忍軍の組頭を任ぜられたのだ。でも、と雑渡は思う。私はいいけれど、タソガレドキの子らには忍者に向かない者もあるだろう。忍たまたちのように、その子らに可能性を示してやりたい。他にだって道はあるのだと、それを選ぶことがおまえにはできるのだと知らせてやりたい。 　十四の子に真っ先に継ぐ家のことを考えさせるのではなく、失った親を惜しみ、泣き、葬るための時間をまずは持たせてやりたい。みなが私のように立ち回れるものばかりではないのだから。 「いいお医者さんになれるよ、伊作くんは」 　なります、と伊作が頷く。たくさん書物を読んで、たくさん手当てをして、南蛮の技術も学びます。伊作が座りなおして背を伸ばす。僕はフリーの医師になって、呼ばれればどの領でも診るようになります。口元は柔らかく笑んでいるというのに、ごうごうと燃え盛る意思の火の目をして伊作が言う。 「戻ってきてくれさえすれば、診ます。僕で足りなかったら新野先生のお力を借りる。だからどこで傷を負っても戻ってきてください。内臓が腹からこぼれ落ちても、折れた骨が皮膚を突き破っていても戻ってきてください。僕を呼んでください」 　傷はかさぶたになってふさがります。治ります、と告げる声が刷くのは理想の光ではない、善き行いの輝きでもない。戦の旗印のような熱だ。熱病の熱、煽り立てる火の熱。 「そうしますよ、善法寺先生」 　でも、まずはそんな傷を負わないようにするねと続けると、あっそうですね、それがいいと思います。年相応の顔になって笑う。
March 29, 2025 at 2:29 PM
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これを買いました。建築系の出版社なので建物の図版に寸法が載っている。どの時代も均等にページ数が割り振られているので中世のページは限られていますが、時代の移り変わりはシームレスなので古代（〜平安時代）と近代（江戸時代）も資料となりますね。
土井先生の家、天井を張ってないから屋根が見える構造ですが「竃がある土間は煙が溜まるので、天井は張らない（p35）」ということかな。
タソガレドキ忍軍の住居については「城下町の構造」（p48〜49）が参考になる。侍町/足軽町のように忍者町を城下に形成していたのではないかと思っています。
P73には「暖簾の発達」という項目もある。
May 4, 2025 at 5:00 AM
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💮新刊あります‼
08/16 夏コミ #C106お品書き です🥳
土曜日東6ホールカ-21b【文華堂】配置は🥷🥚

💮zatさんの概念固めたピアス＆イヤリング
🌸手裏剣ノンホールピアス
🌸ゲ謎 真生版のリテイク検証本
🌸水木さん💧ゲゲ郎👁沙代さん🎀の概念ピアス＆イヤリング
🌸刀剣乱舞の履歴書本

よろしく話しに来てくださ～い♪ #C106
夏コミC106のお品書き1/2枚目です。雑渡昆奈門の概念固めたピアス・イヤリング、手裏剣ノンホールピアス、刀剣男士履歴書本の頒布をします。一年生、二年生、三年生、四年生、五年生、六年生、土井先生、山田先生、タソガレドキ忍軍、天鬼、プロ忍、桜木清右衛門イメージの手裏剣、刀剣乱舞の収録キャラは愛染国俊 明石国行 秋田藤四郎 厚藤四郎 和泉守兼定 一期一振 鶯丸 大倶利伽羅 大典太光世 大包平 加州清光 歌仙兼定 亀甲貞宗 江雪左文字 小烏丸 小狐丸 後藤藤四郎 小夜左文字 獅子王 信濃藤四郎 燭台切光忠 千子村正 宗三左文字 太鼓鐘貞宗 鶴丸国永 蜻蛉切 鳴狐 鯰尾藤四郎 にっかり青江 日本号 博多藤四郎 平野藤四郎 へし切長谷部 骨喰藤四郎 前田藤四郎 三日月宗近 陸奥守吉行 物吉貞宗 山姥切国広 大和守安定 です 夏コミC106のお品書き2/2枚目です。概念固めたアクセサリーと、真生版のリテイクカ所検証本を頒布します♪ ・水木さん概念ピアス・イヤリング ・沙代さん概念ピアス・イヤリング ・ゲゲ郎の下駄ピアス・イヤリング 水木、ゲゲ郎、鬼太郎、鬼太郎の父、龍賀沙代、長田時弥、龍賀乙米、龍賀時貞、龍賀時麿、 龍賀孝三、長田庚子、長田幻治、ねずみ、鬼太郎の母、岩子、山田、目玉おやじ、ねこ娘、 考察、調査研究、評論、 イメージアクセサリー、概念アクセサリー、ピアス、イヤリング、アレルギーフリー、サージカルステンレス
August 15, 2025 at 1:33 AM
kotokoto88.bsky.social
本当に今回の映画でプロ忍とか大人組気になってる人いたら先生方も癖強な先生いっぱいいるし☠️ササコの凄💪さんと白目くんとかドスマスとかひょ〜ご🌊軍とかせ〜八さんとか照🌟 さんとか他にもいっぱい魅力的なキャラが沢山いるので是非タソガレドキで止まらず色々見てほしい
January 14, 2025 at 2:50 PM
tt-san.bsky.social
タソガレドキ忍軍お餅祭りが開催されるというわけで…
「雑渡さん、これは仕事では」「……かろうじて福利厚生の」「仕事ですよ」「うーん」「おもちおいしいですね」「おいしいね」
March 31, 2025 at 3:39 AM
mizu0415.bsky.social
雑渡さんはタソガレドキ忍軍のアイドルだと思ってる。尊奈門は末っ子
April 17, 2025 at 2:18 AM
laugardag.bsky.social
宿題ネタで「タソガレドキ忍軍忍び組頭の褌を盗ってくる」て云われたら、伊は「穿いてないんでムリです」て云っちゃう。
教師陣がざわめくけど、単純に治療中に見ただけ。これはきっとn番煎じだよなぁと思いつつ。

そんな感じで「糸且豆頁穿いてないアンソロジー」読みたいんですけど、どこかにありませんかね？　なんなら企画編集してもいいんだけど、私がこの界隈でネームバリューもなんもないんで人集まる気がしない。
April 15, 2025 at 11:19 PM
sk56rn.bsky.social
にんたまアプリゲー無限のツボで星3雑渡さんを入手したんだけど、強化すると星3伊作くんだけを異様に強化してくれる…ﾂﾖｲ
当然おまけのストーリーも伊作くん相手ですわみたいな顔になってる
にんツボ星3雑渡さんの絵柄 Lv10で追加される効果⇒タソガレドキ忍軍の攻撃力アップ Lv30で追加される効果⇒星3善法寺伊作の攻撃力アップ
February 25, 2025 at 10:46 PM