歌姫が東京に来て暇そうにしていたから、生徒にいい刺激になるだろうと、半ば強引に体術の授業に誘った。
術式や呪力量こそ多くはないが、弱いながらの身体の動かし方や攻撃の入れ方など、経験から学ぶことはたくさんあるようだった。
歌姫からの視線は、だいたいいつも同じようなもので、ムカつきとか、呆れとか、そんなようなものだった。でもそこに、いつからか少し柔らかいものを含むように感じるようになったのは気のせいだろうか。
それが無意識か、どんなものかは分からないが悪い気はしなかった。少しだけ、過去の自分が満足したような気がした。
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歌姫が東京に来て暇そうにしていたから、生徒にいい刺激になるだろうと、半ば強引に体術の授業に誘った。
術式や呪力量こそ多くはないが、弱いながらの身体の動かし方や攻撃の入れ方など、経験から学ぶことはたくさんあるようだった。
歌姫からの視線は、だいたいいつも同じようなもので、ムカつきとか、呆れとか、そんなようなものだった。でもそこに、いつからか少し柔らかいものを含むように感じるようになったのは気のせいだろうか。
それが無意識か、どんなものかは分からないが悪い気はしなかった。少しだけ、過去の自分が満足したような気がした。
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歌姫とはこのまま変わらぬ関係でいいと思った。一時は、知らないうちに結婚でもしてたらとか考えていたが、知らない誰かと結婚しても、変わらず揶揄い続けるだけだと思った。
お互いがお互いの人生に深く干渉しないままで、たまに会ったらいつものコミュニケーションをするような、そんな関係で居られるはずだ。
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歌姫とはこのまま変わらぬ関係でいいと思った。一時は、知らないうちに結婚でもしてたらとか考えていたが、知らない誰かと結婚しても、変わらず揶揄い続けるだけだと思った。
お互いがお互いの人生に深く干渉しないままで、たまに会ったらいつものコミュニケーションをするような、そんな関係で居られるはずだ。
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どうやら歌姫は彼氏と別れたらしい。それも前硝子から聞いた彼とは別の彼。昨日テレビ通話で聞いた別れ話の愚痴が面白くてと、硝子は思い出し笑いをしていた。
硝子がこんなに楽しそうに笑ってる所を見るのいつぶりだっけ、とまた2人の関係の深さにいっそ感心すらしてしまった。
次歌姫に会ったのは、京都校のお爺ちゃんとの打ち合わせに赴いた時だった。体術の授業らしく、弱いながらもきちんと教えているようだった。少し見るくらいならいいだろうと歌姫の隣に立ち、組み手をしている生徒たちを眺める。
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どうやら歌姫は彼氏と別れたらしい。それも前硝子から聞いた彼とは別の彼。昨日テレビ通話で聞いた別れ話の愚痴が面白くてと、硝子は思い出し笑いをしていた。
硝子がこんなに楽しそうに笑ってる所を見るのいつぶりだっけ、とまた2人の関係の深さにいっそ感心すらしてしまった。
次歌姫に会ったのは、京都校のお爺ちゃんとの打ち合わせに赴いた時だった。体術の授業らしく、弱いながらもきちんと教えているようだった。少し見るくらいならいいだろうと歌姫の隣に立ち、組み手をしている生徒たちを眺める。
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同僚という関係でも、東京と京都で、直接会う機会は昔よりだいぶ減っていた。
会わないことで、聞かないことで、歌姫と自分のかつて抱いていた気持ちを考えないようにしていた。
仕事に忙殺される毎日でもうほとんどそんなことを忘れた頃に、歌姫が東京に来ていた。
久しぶりに顔を見て話すと、またいつものコミュニケーションをした。
むしろ久しぶりな分、いつもより調子が乗ってしまった。
彼女の知らない面があっても、こうして変わらずしてくれることにひどく安堵していた。
このままで居られると、そう思った。
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同僚という関係でも、東京と京都で、直接会う機会は昔よりだいぶ減っていた。
会わないことで、聞かないことで、歌姫と自分のかつて抱いていた気持ちを考えないようにしていた。
仕事に忙殺される毎日でもうほとんどそんなことを忘れた頃に、歌姫が東京に来ていた。
久しぶりに顔を見て話すと、またいつものコミュニケーションをした。
むしろ久しぶりな分、いつもより調子が乗ってしまった。
彼女の知らない面があっても、こうして変わらずしてくれることにひどく安堵していた。
このままで居られると、そう思った。
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会えばいつもの応酬があって、自分と歌姫は変わっていないようで安心する。それだけだ。
歌姫がどこぞの男とどうにかなっていようと、今の自分にはあまり関係のないことだった。初めから分かっていた。硝子に対するふやけた笑顔も、自分には向けられない。そういう選択をしてきたはずだ。自分の知らない歌姫を、どこぞの歌姫の彼氏とやらが知っている。彼氏でもなんでもない自分がとやかく言う権利はない。
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会えばいつもの応酬があって、自分と歌姫は変わっていないようで安心する。それだけだ。
歌姫がどこぞの男とどうにかなっていようと、今の自分にはあまり関係のないことだった。初めから分かっていた。硝子に対するふやけた笑顔も、自分には向けられない。そういう選択をしてきたはずだ。自分の知らない歌姫を、どこぞの歌姫の彼氏とやらが知っている。彼氏でもなんでもない自分がとやかく言う権利はない。
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