rukimo.bsky.social
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「歯は磨いてから寝るんだぞ」

タイマーが鳴った。ボタンを押して、湯切りをして、
「あっやべっ」
これは湯切りいらなかった。まあ許容範囲内に残ったスープと麺をすする。味はよくわからない。
あっという間に食べ終わった。空のカップは水につけておいて、箸は洗って、まっすぐ布団に入り込む。
「ちゃんと磨くつもりだったし、」
あいつが言うのがわるい、と目を閉じた。
September 12, 2024 at 2:04 PM
あんなにも無事を願っていた相手がいない、きっと歩けるようになったのだ、何か奇跡でも起きたんだ、と祈る気持ちで上着を持ち上げると何かがころりと落ちた。片手のひらに収まるそれはほのかに温かさを感じたような気がした。
July 12, 2024 at 11:02 AM
講堂に駆け込んできた二人は隅っこに座る脹相に気付くことなく、何やら言葉を交わし、片足を失った者を寝かせてどこかへと立ち去ってしまった。比較的損傷の少ない畳に寝かせられ、上着を被せられた片足のない者はしばらく苦しげな呼吸を続けていたが、ふと首を傾げ、隅の暗闇を見つめた。
「ああ阿弥陀さまよ、わたしを極楽浄土へお導きください」
掠れ声であったが、脹相の耳には確かに届いた。

朝靄がかかる頃、ざわざわと講堂の外が騒がしくなる。「早くこちらへ!」と叫ぶ声と共に、旅人を先頭に医師や村人の一団が講堂へ乗りこんでくる。「もう大丈夫だ、」旅人が目を向けた先に相手はおらず、ただ上着がぺたんと落ちていた。
July 12, 2024 at 10:59 AM