吉本 俊二
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吉本 俊二
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おもに書物について投稿します。
「熟視し、黙想し、芸術作品の深みへと沈潜していくこと。
 対話し、ときには笑い合い、隣にいる人たちとのコミュニケーションを含めて作品を楽しむこと。人は、その両方を求めてきたし、現在も求めているのではないか。芸術作品はこれまでその両方の求めに応じてきたし、現在も、そして未来も、応じ続けていく力を備えているのではないか。」
対話と沈黙をめぐる芸術論・権力論〜『「お静かに!」の文化史』|吉本 俊二
◆今村信隆著『「お静かに!」の文化史 ミュージアムの声と沈黙をめぐって』 出版社:文学通信 発売時期:2024年11月 ミュージアムではいくつかの行為が禁じられています。例外もありますが、原則的には写真撮影や携帯電話の使用禁止といったことに加えて「静かに鑑賞すること」も求められています。それらは会場内で鑑賞者の目に入りやすい場所に明示されていることが多いようです。 しかしミュージアムにおいて「...
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December 2, 2025 at 8:53 AM
「あいまいな情報に対して、すぐに結論を出したり不用意に拡散したりせず、その不確実性や宙ぶらりんの状態に耐える力のこと」。その力をメディア学では「ネガティブ・リテラシー」というが、日中米間をめぐる情報が錯綜している昨今の状況をみていると、あらためてこのリテラシーの重要性を再認識させられる。
情報に対してすぐに反応しないこと〜『あいまいさに耐える』|吉本 俊二
◆佐藤卓己著『あいまいさに耐える ──ネガティブ・リテラシーのすすめ』 出版社:岩波書店 発売時期:2024年8月 「ネガティブ・リテラシー」とは「あいまいな情報に耐える力」をいいます。真偽を即断できない情報をやり過ごし不用意に発信しないこと。フローベールは愚か者を「すぐに結論を出したがる者」と定義しましたが、それに通じる能力といえましょうか。 帚木蓬生の『ネガティブ・ケイパビリティ』が話題に...
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November 27, 2025 at 10:51 PM
「学生の頃の僕は、中原中也、吉田一穂、長谷川四郎といった詩人たちをじっと見ていました。そして、学びました。「言葉」というのは、こういう風に使うのかと。」
作曲家が望んだものの真の姿を求めて〜『音の世界のそのことを』|吉本 俊二
◆吉田秀和著『音の世界のそのことを』 出版社:音楽之友社 発売時期:2025年10月 クラシック音楽の演奏に関する批評家の文章はたいてい退屈なものですが、吉田秀和は私にとってその数少ない例外です。本書は月刊誌「レコード芸術」に連載していたCDやDVDに関するレビューとインタビュー(聞き手は白石美雪)から構成されています。 吉田の文章を名文と呼んでいいのかどうか私にはわからないけれど、その独特の...
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November 22, 2025 at 10:21 PM
「一個の人間を見舞う問題を、政治的に考えるというのは、自己責任論から脱する、という意味でもある。私たちには確かに、自分自身で対処しなければならない問題もあるが、対処のしようのない問題は、不毛な精神論などではなく、システムの改良を通じて解決策を模索しなければならない。」
文学者の責任、すべての市民の責任〜『あなたが政治について語る時』|吉本 俊二
◆平野啓一郎著『あなたが政治について語る時』 出版社:岩波書店 発売時期:2025年8月 文学者の政治への関与は、歴史的に見れば珍しいことでも何でもないが、むしろ文学者であればこそ、と言うべきではあるまいか?──文学者・平野啓一郎はあとがきでそのように述べています。  一個人の人間を見舞う問題を、政治的に考えるというのは、自己責任論から脱する、という意味でもある。私たちには確かに、自分自身で...
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November 4, 2025 at 9:05 AM
Reposted by 吉本 俊二
岩手大学構内にクマが出現し、今日の午後の講義がすべて中止になりました。盛岡では中心市街地でのクマ出現が相次いでいていますが、大学にまで入って来るとは驚きです。
私は宮沢賢治の講義の中で『なめとこ山の熊」を取り上げ、賢治はクマと人との共生を望んでいた、などと話しているのですが、現実の世界では難しいですね。 #岩手大学 #宮沢賢治 #なめとこ山の熊
October 28, 2025 at 6:39 AM
全世界に存在するあらゆる事象・現象の中から「あっ」と驚くような共通点を探りだす。「だからこそ、誰も考えつかないような会心の「これ、アレ」を見つけた瞬間には天にも昇る心地がするのである。」
「あっ」と驚く「これ」と「アレ」〜『誰でも、みんな知っている』|吉本 俊二
◆高橋源一郎著『誰でも、みんな知っている これは、アレだな』 出版社:毎日新聞出版 発売時期:2025年8月 〈これは、アレだな〉シリーズの4冊目。既刊書では「これ」と「アレ」の思わぬ結合や連想が一つの読みどころとなっていたように思うのですが、前半はその両者の関係をめぐる意外性はあまり追求されていません。ニット・デザイナーの三國万里子には橋本治、今和次郎の考現学には赤瀬川原平と、むしろ積極的に似...
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October 26, 2025 at 12:15 AM
SNSを見ていると、民主主義=多数決と考える人が未だに多くてビックリする。前者は政治理念や制度であり、後者は意見集約のルールの一つにすぎない。多数決を採用しない民主主義は論理的にも現実的にも存在しうるし、多数決を採っているからといって民主政が実現しているとも限らない。両者の関係について意見するなら、せめて坂井豊貴『多数決を疑う』くらい読んでからにしよう。
October 19, 2025 at 1:05 AM
「これもおもしろい、あれもおもしろい、どれもこれもおもしろいというふうに多様なものに関心が向かうままに、どんどん枠組みを外していったんですね。」
あれもこれも多様なものに関心が向かうままに〜『世界のほうがおもしろすぎた』|吉本 俊二
◆松岡正剛著『世界のほうがおもしろすぎた ゴースト・イン・ザ・ブックス』 出版社:晶文社 発売時期:2025年8月 版元によれば松岡正剛の「最初にして最後の自伝的インタビュー」ということらしい。断章として節目節目に発表したエッセイを合間に挿入して凝った作りになっています。 例によって豊富な語彙を自由自在に駆使しての達者なトーク。「香ばしい失望感」というわかったようなわからないような言葉を作った...
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October 11, 2025 at 12:55 AM
名誉と栄光につつまれた者たちは、やがて人々から見捨てられ、忘れ去られる。人間という存在の本質に宿る「零落」について論じた好著。
人間存在の本質に宿るもの〜『零落の賦』|吉本 俊二
◆四方田犬彦著『零落の賦』 出版社:作品社 発売時期:2025年8月 『摩耗の賦』『愚行の賦』につづく〈賦〉三部作の完結編。人間存在がつねに可能性として孕んでいる「零落」について、文学・演劇・映画の領域を横断して縦横無尽に論じています。あらゆる分野で専門分化が進む御時世にあって、四方田犬彦の自在な議論の運びには感服するしかありません。 そもそも零落とは何でしょうか。凡庸な書き手ならまずは辞書を...
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October 5, 2025 at 9:52 AM