奈々瀬
nana-7se.bsky.social
奈々瀬
@nana-7se.bsky.social
ななせだよ。日本酒とオタクと子育て。ゆめにっき、たまにロコンといっしょにっき。
見ちゃいけないと思った。

目をつむって、頭から地面に叩きつけられるまでの僅かな時間、私はふと思った。

――なんで、迎えに行こうと思ったんだろう。

駅に、あと10分くらいだから、急いで、母を迎えに、

――母はもう死んだのに。
October 16, 2025 at 9:37 PM
その下りるときの腕だけが見えているのかな、と直感的に思った。
良くないものだ、とも感じた。

部屋の中をアレコレ言う私に、夫は間に合わなくなるから急ごう、と言った。確かに、途中で思ったより時間をくってしまった。

この階段を下りれば最後、地面に下りられる。狭く急で、手すりのない階段だった。あの腕が見えた。
先を急かす夫に、私はふと言ってしまったのだ。

「少し先に、変な人がいるのよね」

え?と夫は言い、下を覗き込もうとした。その動きに押され、私は足を踏み外した。

階段を落ちる。腕の持ち主を飛び越えるように弾みを付けて落ちる。
October 16, 2025 at 9:35 PM
ダダは、幼稚園の頃からの「夢に出てきて追いかけられる恐怖の象徴」って感じ。幼稚園の頃は何度も夢で追いかけられて、逃げて、隊員も助けてくれなくて、駐車場の車の下に逃げ込んで、ダダが車のまわりをぐるぐる回るのを息を潜めて見ていた。(そこで目が覚める)

夢では久しぶりに会ったなあ……。
October 2, 2025 at 9:44 PM
この部屋の人間はすべて幻なのだ。極限に追い詰められた私が見る夢なんだ。

気付いた途端、古ぼけた部屋には私だけがいて、濁って髪の毛を浮かべた茶碗だけが変わらずに居た。それを飲むのは私だった。

部屋の外にいる誰かの視線を感じながら、私は濁った茶碗の中身を髪の毛ごと呑み込んで、少しの絶望も呑み込んで、そしてソレを見た。

ソレが何かは覚えていない。
ただ呑み込んだ絶望の味と、その後も続いた「差別されるべきもの」としての諦観だけがまだ胸に落ちている。
September 8, 2025 at 11:31 AM
覗き込んだ鏡には、ハルヒにちょっとだけ似ている、でもクマのひどい美人がいた。
慌てて化粧道具でクマを誤魔化して、オレンジのアイシャドウで吊り目も誤魔化して。今だけ私がハルヒになるんだ、と言い聞かせて、休み時間ギリギリに駆け込んだ。

崖のような舞台に駆け上がって、てっぺんから、宙返りと一捻りをしつつ飛び降りる。簡単だった。
生徒はみんなポカンとしていた。
ハルヒも。
私は思わず満面の笑顔になった。その顔はたぶん、一番ハルヒに似ていたと思う。
企画は大成功だったってわけ。
August 11, 2025 at 10:04 PM
 これから彼が、どんな犯罪を犯すのか、私はどんな罪の片棒を担がされるのか、すべてがどうでも良い気がした。もう終わってしまった。脅されて従ったと思われたらいいな、という都合の良い考えが頭にこびり付いていた。

 家に帰ると、玄関先に小さい猫が落ちていた。まだ目の開かない、毛玉みたいな猫。拾うと温かい。
 ミャアミャアと鳴く毛玉を手のひらに乗せて、キョロキョロとしていると、お隣の家から隣人が出てきた。その足元に、猫がいる。
 親猫だった。
 毛玉を近くに置くと、ペロペロと舐め始めてホッとした。舐められて、毛玉の目が開く。綺麗な目。

 つまらない虚勢を見透かされた嫌な気持ちのまま、目が覚めた。
July 26, 2025 at 8:53 PM
 彼はつまらなそうな顔で眺めていた。食事のときの、にこやかでエネルギッシュな感じはどこにもなかった。私への興味も、感じなかった。

「思ったより画角が広くて、思ったように出来なくて、すみません」

 自分でもぶっきらぼうだと思う声で、心のこもらない謝罪をする。彼はやはり何の興味もないような顔でうなずいた。

「これで、私の役目は終わりだった認識です」
「そうだっけ?」

 初めて彼が声を発した。ドキリとする。私はまだ、何かをさせられるのだろうか。
 でも、その後は特に何も言われず、撮影チームと何か話しだした彼は私にもはや見向きもせず、私はコートを着たまま家に向かった。
 暑さも感じなかった。
July 26, 2025 at 8:47 PM
 彼の視線が突き刺さる。やるしかない。コートの前を留めて、フードを深く手で引っ張って、改めてカメラの前に立った。
 映像が切り替わる。
 決められていたセリフを言う。

「ゲームをしよう」
「ゲーム名はエクスプロージョン」
「東京のどこかに爆弾をしかけた」

 もっと楽しげに、ドラマの中の愉快犯みたいに言うはずだった。
 声が震えて、棒読みで、これでは脅されているみたいだ。
 いや、いかにも脅されていると思われた方が、私にとっては良いのかも知れない。

 無理やり映像を終わらせて、計画とは到底かけ離れたクオリティになってしまったことを自覚しながら、彼のところへ向かう。
July 26, 2025 at 8:41 PM
 思ったより画角が広い。
 足元まで見える、視点が低いから顔も見えてしまう。
 その時映像が切り替わった。慌ててスタンバイ映像に戻してもらう。その動きが世界に晒される。情けなさで泣きそうだった。謎めいた人物として映るはずだったのに、今の映像は予想外の配信ミスに慌てる初心者丸出しだった。
 顔だけ映ると思ってコートの前を留め忘れていたから、中の服装で女だということもバレバレだ。そもそも背景から、この場所はすぐ特定できる。家の目の前なのに…。
 一瞬、刑事が訪ねてくる夢想が頭をよぎった。それはきっと、近い将来確実に起こることなのだ。
July 26, 2025 at 8:36 PM
 この期に及んでまだ少しだけ、楽観的すぎる期待もあった。
 私だとバレなければ良い。彼の計画でもそうだった。ブカブカのコートに、フードを目深にかぶって、声も低くして……ああ、そういえば肝心のコートを探さなくては。
 家に入り、クローゼットからカーキのコートを羽織る。思ったよりフードが小さいが、手で押さえれば顔の大半が隠れる。何より、今から用意できるのはこれだけだ。
 髪は結ぶとかえって女だと分かりやすいから、解いてボサボサのままが良いだろう。
 すれ違った父が何か言う。誤魔化して、また路上に出た。
 スタンバイ映像のまま、テストで映ってみる。動揺した。
July 26, 2025 at 8:30 PM
屈したと、怯えていると悟られるのが嫌で、「面白い誘いを引き受けてみせる、ノリの良い女」という虚勢を張った。
 その虚勢も何もかも、彼にはお見通しだったと思うのに。

 これから私は、爆弾テロの犯行グループの一員になる。
 ネットでリンチに遭うような社会的な制裁なんかじゃ済まない、刑事罰を受ける行いだ。今更後悔してもしきれない。

 家の前の路上で、彼の率いる撮影チームがカメラを設置している。インフルエンサーとしての発信力で、既に流れているスタンバイ映像には着々と人が集まっている。
 ネット越しの無数の目に、これから私が晒されるのだ。
July 26, 2025 at 8:24 PM
ほとんど死に体で生き延びた姉は、やはり本国に戻り、その体を銃器に置き換えた。生態兵器として名を馳せる。

やがて時が来る。全員が再び日本に揃って、反旗を翻す。

復活とか大将戦とかめちゃくちゃ面白かったのにもう記憶から抜けてしまった、残念!
May 4, 2025 at 10:35 PM