本棚の紙魚
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本棚の紙魚
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本が好き。子供時代から今まで読んだ本を思い出しながら、備忘録として投稿します。
『ぼくらは虚空に夜を視る』
『わたしは虚無を月に聴く』
『あなたは虚人と星に舞う』

上遠野浩平のナイトウォッチ3部作。主人公はそれぞれ違うが、共通して登場する人物もいる。
普通の学生、工藤兵吾がナイトウォッチという機体に乗り、虚空牙と呼ばれる敵と戦い続ける1作目。
記憶から消えた人を探す醒井弥生が、自分たちの「現実」の真実を知る2作目。
虚空牙と戦い続ける鷹梨杏子が過去と未来の為に決断を下す3作目。
異星人との孤独な戦闘と学生達の日常が交錯するSF。戦闘描写はあるものの総じて静謐で物悲しい、叙事詩のような物語だった。

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December 1, 2025 at 9:41 AM
『オーロラ ‐世界で一番美しい光‐』

この冬もオーロラが活発な時期で、観られるチャンスだと聞いた。
前回オーロラチャンスと言われた時期に、一度は自分の目で観てみたいと思ってフィンランドに旅行にした。カナダでなくフィンランドに決めたのは、オーロラの本を色々と読んだ上で、フィンランドの方が早い時間(夜11時から真夜中過ぎ頃)にオーロラが出ると知ったからだった。
幸い、小規模ながらオーロラを観る事が叶い、最初の旅行で観られたのはラッキーですよと添乗員に言われて嬉しかった。いつかまた行ってみたいと写真集を眺めている。

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November 28, 2025 at 8:27 AM
『すみれ屋敷の罪人』

戦後手付かずだった紫峰邸の屋敷跡で2人分の白骨死体が発見される。主の太一郎、その三人の姉妹は東京大空襲で亡くなっているため、一体誰の遺体か分からないという謎の事件が報じられる。
屋敷で働いていた存命中の3人がそれぞれ当時の事を話すのだが、まるで芥川龍之介の『藪の中』さながら、各人の視点によって少しずつ様相が変わっていく。
遺体は誰なのか、犯人は誰なのか、真実はどこにあるのか。
全体像が見えた時の悲しさと、戦争がもたらした理不尽な悲劇が重い。

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November 24, 2025 at 5:56 AM
『戦国吸血鬼伝 信長神異篇』

戦国乱世の日本に吸血鬼が襲来したとの報を受け、ヴァチカンは吸血鬼を倒すため聖堂騎士のステファン達を日本へ送る。柳生十兵衛や織田信長、天草四郎など歴史上の人物が次々と登場する歴史改変伝奇小説。ある程度歴史を知っていた方が断然読みやすい。
なかなかエロティックな描写もあり、何より歴史的な事柄を背景にしている為に文章量が多いので、小説としての好みは別れるところ。そのせいかクリフハンガーで終わったまま続巻が出ていないのが残念だ。

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November 20, 2025 at 9:43 AM
『大江戸えいりあん草紙』

この作品がコバルト文庫だった事をすっかり忘れていた。1988年発行。
舞台は江戸中期。神田極楽横丁のおけら長屋に浪人の父と暮らすお美津と長屋の衆は、花見をしているところに空から落ちて来た絶世の美青年を助ける事になる。自分の名前も、どうしてここにいるのかも分からない青年には超能力まで備わっている。
お美津と、「天平」の名をもらった青年がドタバタ劇の中で事件を解決していくのだが、ナンセンスギャグもありつつで、読み返すと些か恥ずかしい。
水上有理さんのイラストが80年代の少女漫画らしくて、とても良く合っている。

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November 19, 2025 at 9:25 AM
『鏡の国のアリス』

子供時代に『不思議の国のアリス』を読んだが、ディズニーの印象が強かった為か続編を手に取ったのは随分後だった気がする。
暖炉の前で過ごすアリスは、いたずらする子猫達に話しかけているうち、暖炉の上の鏡を通り抜けて向こう側の世界へ行ってしまう。そこは赤と白のチェスの国。アリスは前作同様冒険に次ぐ冒険をする。
今回もアリスというキャラクターが持つ、年頃の少女の空想力が「別世界」で遺憾無く発揮され、少し大人びた雰囲気になっているのも面白い。
手元にあるのは和田誠さんのイラストが可愛い1冊で、定価220円!本が安かった時代に想いを馳せる。

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November 18, 2025 at 9:04 AM
『ハウスメイド』

犯罪歴のあるミリーがハウスメイドとして雇われたウィンチェスター家の大豪邸。雇い主のニーナは言動がおかしく、娘のセシリアは不気味。唯一優しく接してくれるのはニーナの夫アンドリューだけ。
サスペンススリラーの分類になると思うが、ミステリー好きなら「おや?」と思う部分が散りばめられていて楽しかった。終局に向かって加速度的に面白くなり、結末では「そうこなくちゃね!」とニヤリとしてしまった。
続編は来月発売。アメリカでは映画公開も来月予定なので、楽しみが倍増している。

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November 17, 2025 at 8:30 AM
『鳥人戦隊ジェットマン 1〜3』

特撮戦隊作品としては当時色々な面で話題を攫った本作。その小説版で良く纏まっている。
地球防衛軍スカイフォースが新元素バードニウムを基に超人戦士を作り出す計画を進める中、次元戦団バイラムが侵攻して来るという子供向けらしい内容ではあるのだが、戦隊内や敵幹部との恋愛模様が斬新で、一部にトレンディドラマのような人気が出た。そしてあの伝説的な最終回。
群像劇が好きな自分にとって戦隊作品は面白いジャンルだ。今はテレビシリーズ自体も配信などで観られるのがありがたい。

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November 16, 2025 at 8:59 AM
『イシュタルの船』

古代バビロニアの遺跡から発掘された石塊の中に魔法の船が閉じ込められているという、ヒロイックファンタジーの王道を行く作品。主人公の冒険家ケントンは、太古からその船で繰り広げられている女神達の争いに巻き込まれる。
1926年に書かれたと知ると、その頃にもうこんな作品が!と考えてしまう。文章に古臭さはあるものの、冒険に恋、戦いと、ファンタジーらしさ満載。
今の単行本よりも字が小さいのだが、それでも約400ページある。結構な文量ではあるが結末が好みのパターンだったので、読後の満足度は大きかった。

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November 13, 2025 at 9:05 AM
『全員犯人、だけど被害者、しかも探偵』

とある場所に集められた7人。彼らに課せられたのは、商品偽装の責任を問われて自殺した会社社長の、死の真相を解き明かす事。
典型的なクローズドサークル作品と思いきや、7人それぞれに秘密があり、思いも寄らない結末へ突き進む。
微かな違和感を抱かせる単語選びが周到で、犯人には思い至ったものの、転換点ではそう言う事か!と驚いた。
クローズドサークル作品はまだまだ新しい試みが可能なのだなと思えて、久しぶりにワクワクした。

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November 9, 2025 at 9:53 AM
『影のオンブリア』

パトリシア・A・マキリップの幻想ファンタジー。この世で最も古く美しい都オンブリア。大公の死で愛妾リディアは宮殿を追われ、次期大公である少年カイエルと引き離される。大叔母ドミナは都を手に入れるため、裏側のオンブリアに住む魔女の手を借りていた。
表裏一体の都、白髪の青年デュコン、蝋人形マグなど、ファンタジーをふんだんに盛り込んだ作品。派手な戦いなどはなく幻想的な空気感をまとったまま、登場人物達はカイエルと都を救う為に2つの世界を行き来する。これはどこの物語で誰の物語なのか、終章に至って不思議さが増したが、世界の広がりを感じさせた。

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November 7, 2025 at 9:59 AM
『シロツメクサ、アカツメクサ』

森奈津子のエロス漂うホラー味のある短編集。祖父母の家の納戸で出会った美少女に翻弄される少年を描いた「一九七七年の夏休み」は、結末から続く負の連鎖に恐怖する。男の欲望が異界と繋がる「美少女復活」はコメディタッチの流れながら完全なホラー。述懐で綴られる三姉妹の崩壊「シロツメクサ、アカツメクサ」も転換が面白い。
不思議なもので女性作家が描く淫猥さは、男性作家の描くそれとは明らかに視点が異なっている。それを特に感じた作品だった。

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November 6, 2025 at 8:32 AM
『九龍城砦Ⅰ 囲城』

映画の原作本。物語も人物造形も違う事は知った上で読んだ。ジャンルは武侠小説だそうだが、友情・恋・戦いといった、80年代に流行ったバトル漫画物(車田正美など)という印象。
洛軍、信一、十二少の絆と義侠心。龍兄貴の存在の大きさ。王九の異常な強さなどが香港という舞台にはまっている。
時代感は懐かしさもあり、単純で爽快な内容で面白く読めたが、翻訳文体は直訳なのだろうか。感嘆符と擬音があまりにも多く、漫画化前提のプロットか脚本のト書きのようで、個人的にはもう少し文体を整えていただきたかった。
続編の発売も迫っているので楽しみに待つ。

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November 5, 2025 at 3:42 AM
『ホロヴィッツホラー』

『カササギ殺人事件』の著者アンソニー・ホロヴィッツの児童向け短編集。
ホラーと銘打っているだけあって、しっかりと恐怖感を残したバッドエンドの物語ばかりで、怪談を読んでいる雰囲気。
中古のバスタブが少女の身に起こす怪異と破滅「恐怖のバスタブ」は、いかにもイギリスらしいゴシックホラー。田舎を嫌う少年が自然から報復される「田舎のゲイリー」は、子供時代に読んでいれば行いを省みるきっかけになったかもしれない。
「ハリエットの恐ろしい夢」など、恐怖体験の中に“日本人”(?)が出て来るのは何故なのか、解説が欲しかったところではある。

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November 3, 2025 at 6:32 AM
『ギレルモ・デル・トロのパンズ・ラビリンス 異色のファンタジー映画の舞台裏』

先日、デル・トロ監督の『フランケンシュタイン』を鑑賞した。Netflix限定かと思っていただけに、映画館上映は大変嬉しかった。
デル・トロ監督のダークファンタジーに満ちた作品はどれも大好きなのだが、中でも内戦下の少女が異形の者達と出会う『パンズ・ラビリンス』は、物語、造形美術、役者陣、全てがピタリとはまっていて、1冊の本を映像で朗読された感じがする。
この本では数々のデッサン、絵コンテ、インスパイアの源が紹介されていて見飽きることが無い。買って良かったと思えた。

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October 30, 2025 at 8:49 AM
『銀河帝国の弘法も筆の誤り』

SF短編集だが、田中啓文らしいグロテスクさも存分に味わえた。短編ごとに別の作家による解説が付いているところが珍しい。
精神生命体に対抗するため、人類の脳を載せて飛ぶ宇宙船を舞台にした『脳光速』は、結末がうっすら見えていても面白い。意外にも膝を打ったのは『火星のナンシー・ゴードン』。火星に不時着したナンシーを、待ち侘びた「先生」と出迎える者たちの理由。笑えば良いのか、そうきたか!と感心すれば良いのか。

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October 28, 2025 at 9:15 AM
『緋牡丹警察2-O』

警察が民営化された設定の本作はブラックコメディでもあり、80年代色がバリバリに盛り込まれた、今読み返すと少し苦笑いしてしまう内容だ。
主人公はヤクザの親分の娘、女子高生の大田黒沙織。実家のせいで恋愛もままならない境遇の中、借金を残して父が蒸発。返済の為に緋牡丹一家は民営警察『ポリスカンパニー2-O』となるのだが、元がヤクザ達だけに事件解決も乱暴。指名手配犯をテレビで明るく紹介するシーンなどは後の『カウボーイビバップ』を彷彿とさせて面白い。
挿し絵イラストは去年他界された、いのまたむつみ先生。今となっては豪華。

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October 26, 2025 at 7:29 AM
『たまご猫』

皆川博子さんの短編集。タイトルの愛らしさに対して、表題作を含めて全作が幽玄なホラーだった。
前触れもなく自殺した姉のメモに残された〈クライン・キャット〉の意味を意外な形で知る主人公は、その先が気になる。「春の滅び」は毎年同じ時期に旅立ち、ついに戻って来なかった叔母の足跡を辿る物語。「朱の檻」は座敷牢に纏わる一族の仄暗い歴史を書き、特に好きな一編。
微かなエロシティズムも、女性作家が描くと優美で甘美なものになるのが不思議だ。

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October 23, 2025 at 8:53 AM
『プレシャス・ライアー』

VRを駆使して好みの世界に入り込める事が当たり前になった時代。次世代型コンピュータを開発する従兄弟に頼まれ、オリジナリティとは何かを探す主人公詳子。アリスという少女との出会いが現実世界にまで干渉を始める。
長編近未来小説と銘打たれているところがミソ。連載が2002年である事を考えるとAIやVRを扱う作品が多くなってきた頃だ。今読んでも色褪せていないのは、作品内で示唆された世界にまだ到達していないからでもある。
この作品より前、1999年に放送されたアニメ『コレクター・ユイ』もVR世界を描いていたが秀逸な内容だった。

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October 21, 2025 at 9:49 AM
『ウォーターハウス 夢幻絵画館』

ジョン・ウィリアム・ウォーターハウスの画集は、どのページを繰っても見飽きる事がない。美麗で端麗。写実でありながら幻想さを損なう事がまるで無い。
ラファエル前派の画家は元々好きだが、ウォーターハウスの絵から感じられる古い物語の手触りが一番しっくり来る。
表紙の「シャロットの姫」は、他の画家も題材として数々描いている。ウォーターハウスも何作か描いているが、この絵は特に儚く感じられる。「オデュッセウスとセイレーン」「ナイアス」「ミランダ」と、引き込まれる作品ばかりだ。

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October 16, 2025 at 8:59 AM
『よろずお直し業』

時間を巻き戻す能力を持つ主人公サバロが、様々な事情で壊れてしまった物を修復していく短編集。
舞台は架空の世界だが、修復される物と、それを取り巻く人々の心の機微が丁寧に描かれている。「砕けた石」の若夫婦、「溶けた氷」の老人とその友。直す物を通して真に修復されるのが心である事で、読後はただただ温かさに包まれる。
特殊な能力をサバロがなぜ持っているのか、最終話で明らかになる事実にも涙を禁じ得ない。

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October 14, 2025 at 8:50 AM
『ふしあな』

塩川桐子さんの短編漫画集は、最初に小学館から発売(1998年)されたものの次巻が出ず、悔しい思いをしていた。それが2009年に単行本未収録作品を含めた新版が小池書院から発売され、飛び上がるほど喜んだ。
杉浦日向子さんの江戸表現が写実なら、塩川さんの漫画は浮世絵。どの作品も時代小説の一編のように儚い。突然出奔した新妻を探す大工を描く「錆」。好いた男を永遠に手元に残そうとする遊女の誤算「ふしあな」。単行本未収録だった「散る桜」「杜若」も涙を誘う秀作だった。

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October 12, 2025 at 8:37 AM
『鎧正伝サムライトルーパー』(乾坤篇・英魂篇)

サムライトルーパーの新作アニメが放送と聞いて、当時買った本などを引っ張り出して来た。完全なテレビっ子だったのでアニメは片っ端から観ていたが、中でもサムライトルーパーは伝奇物と現代物がマッチした面白い物語だった。
小説版はテレビアニメのストーリーをなぞったものだが、新宿に阿羅醐城が出現するところから輝煌帝の鎧、伽遊羅の登場など、綺麗にまとまっていて読みやすい。キャラクターデザインを手掛けた塩山紀生さんの荒々しい筆致の挿し絵も良い。

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October 11, 2025 at 7:52 AM
『図説 死因百科』

原著がアメリカのものなので、主にアメリカの歴史に沿って集められた「死因」と、その驚くべき「死に至る」までの内容が項目ごとに、時にユーモア混じりに書かれている。
原著は全部で297項目あったようだが、この本では内245項目が訳されたようだ。残りの項目がなぜ日本版に向かなかったのか、少し気になるところではある。
オーソドックスな自然災害から、どうしてそれが死因に?と思われるものまで、読み物としての満足度は高い。

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October 9, 2025 at 9:03 AM
『思い出トランプ』

向田邦子を最初に勧めてくれたのは母だったと記憶しているが、あれは中学生の頃だったか。
男女の、特に女性の心情機微を書き取るのが巧みな作品はどれも胸に刺さる。結末に味わえる何とも言えない寂しさや、さて自分がこの主人公なら、この後どうするだろうという自問自答が心地良い。
田舎育ちの朴訥な愛人の元へ通う男を描く「だらだら坂」。飼い犬を介して親しくなった青年と女子大生の「犬小屋」。子供の怪我が元で姑にいびられる「大根の月」は何度読んでも涙する。

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October 8, 2025 at 9:04 AM