栗林
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栗林
@mi-duun.bsky.social
終わるまではすべてが永遠
言わんばかり、白人たちを葬っていく。それからリンチ事件をずっと記録してきたのだという105歳のママZという人物の存在。彼女はできうる限り惨殺された人々を記録し、保管してきている。それもまた、忘れるなというメッセージ性を強く感じる。ママZのひ孫の友人で、シカゴ大学の助教授のデイモンがその記録のために訪れるのだが、記録に刻まれた被害者たちの名前を手書きするくだりがある。そこで彼が口にした名前を書くことの意味を述べた際のセリフが印象的だった。
訳文がちょっと自分に合わず、全体の評価としてはなんとも言い難い。
February 4, 2026 at 9:57 AM
しかし“被害者を殺害してから自死したはずの犯人”が蘇ってまた別の白人を殺めている。不思議なことが起きているのは明らかだが、本作はそこにまつわるトリックや真犯人などを特定する推理小説/ミステリ小説ではないのがポイント。じゃあ何を読むものなのかというと、この背景にあるアメリカの歴史なのだ。今や忘れられようとしている過去に起きた無数の黒人リンチ事件。作中でははっきりと言及されている“エメット・ティル”という名前。これは実在し、そして現実にリンチにより惨殺されてしまった黒人少年の名前なのだった。著者はかの少年に酷似している黒人少年を紙面に登場させ、そしてかつての一方的で不条理なリンチ事件を忘れるなと
February 4, 2026 at 9:57 AM
これは小説なので文字列だけの構成なわけだが、知らない人が見たときのふたりのキャラクター印象と、現実のゆっくり解説の喋りを聞いたことのある人の印象と、絶対的に違うと思うんですよね。小説は一から百まで何の補足もなく進んでいるから知らない人はゆっくりという合成音声が使われている前提の短編だなんてわからないだろうし。せいぜい「〜だぜ」はともかく「〜なのぜ」とかの語尾に疑問を抱くくらいでしょう……
January 16, 2026 at 4:52 PM
ふたつめの構成の妙は、序盤にある女が語りかけた「家族とは?」という問答に出てきた「夫婦」と「血縁者」という間柄の家族愛と“家族”間の愛が、終盤で身を結んでしっかり対立するという話の運び方である。血縁者はともかく、この小説で夫婦間の愛を歪でありながら成立させてしまうのがまず筆の力を感じるし、この夫婦間の家族愛の実在が担保されているのもまた、澄視点が欠けているせいなんだよなと思う。彼女が実際にはどう思っていたか、口に出していること、行動や仕草、態度で推定できること、不思議な力から確かそうな本心などで「愛はあった」ように見えるが、それでも視点人物として追ってはいないわけで……。
January 6, 2026 at 2:54 PM
が、「こっち側」には快か不快かの二つの基準しかなく、不快に針が振れた瞬間にはもう手が出ている。よろけて自分にぶつかった澄を、「不快」という理由だけで散々に痛めつけたように。
そもそも、雪に有間家を嫌いになって然る具体的エピソードがあるのと同様、澄にも何か言い分や裏の理由がある可能性はある。勿論ないかもしれないけれども、あると考えてもおかしくない。おかしくないが、作中では(おそらく意図的に)そのようなパートは削られている。だからこそ雪側の不満、それを理解して癒したのが瑠璃子の愛であるという一連の流れが際立つ。雪は家庭で不当に扱われた可哀想な子で、澄はずるい姉だったから。
January 6, 2026 at 2:54 PM
これがそう見えるだけにおさまってしまうのは、澄の視点パートが一切入っていないからだと考える。鉄は自分の居る場所と普通の社会を「あっち側」「こっち側」と雑に線引きし、「あっち側ではどんな理由があろうと手を出した方が悪いらしい」と、これも不当性を訴えていた。が、本来彼が「あっち側」と言う社会にも我慢や歩み寄りがあり、そもそもそれをすることで人は円滑に生活を回しているという観点は抜けている。快か不快かを表に出したり抑えたりしながら、手探りで人間社会を生きている。雪が損な役回りだろうが「不出来ながら要領がいい妹」として楽しく生きていたのも似たような生存戦略だ。軋轢ばかりでは生活は送れない。
January 6, 2026 at 2:54 PM
ひとつは澄の感情描写がほとんどないことだ。小説の時間軸を動かす語り手は巻き込まれた男である宗太で、読者は彼と一緒に事件に巻き込まれ、複雑な“家族”の模様を追う。合間で「供述」の章と、大勢の事件関係者の視点が挿入される。群像劇といっていいほど様々な周辺人物が細切れに視点を担っている。印象的なのが澄の妹である雪のパートで、普通の家庭で普通に楽しく生活していた彼女が瑠璃子と出会い、如何に自分が元いた家族の中で損な役回りをしていたかに気付いてしまう。――と、彼女視点ではそういう話だ。一見、“家族”たち側の主張にも正当性があり、ある意味雪が可哀想な娘として不当に扱われていた呪いを解いたふうにも見える。
January 6, 2026 at 2:54 PM