「おーい、日替わりのBを頼む」
食堂に顔を出したドがカウンターから注文をすると、キッチンの顔ともいうべき赤い弓兵が出てきて一つ頷いた。
「承った。暫く待っていてくれたまえ」
「早く頼むぞー。それにしても今朝はやけに騒がしくないかあ?」
「なに。“いつもの” だ。今回は小規模らしいからすぐに解決するだろう」
「お、ということは暫く休みか!」
「ああ、そうだな。もし良ければ食事かおやつのリクエストを受け付けよう」
「良いのか!?」
「日々のリソース回収で大いに貢献しているんだ。ご褒美があっても良いだろう? 細やかではあるがね」
「お前の料理はどれもうまいからなあ!」
――ガチャンッ
「おーい、日替わりのBを頼む」
食堂に顔を出したドがカウンターから注文をすると、キッチンの顔ともいうべき赤い弓兵が出てきて一つ頷いた。
「承った。暫く待っていてくれたまえ」
「早く頼むぞー。それにしても今朝はやけに騒がしくないかあ?」
「なに。“いつもの” だ。今回は小規模らしいからすぐに解決するだろう」
「お、ということは暫く休みか!」
「ああ、そうだな。もし良ければ食事かおやつのリクエストを受け付けよう」
「良いのか!?」
「日々のリソース回収で大いに貢献しているんだ。ご褒美があっても良いだろう? 細やかではあるがね」
「お前の料理はどれもうまいからなあ!」
――ガチャンッ
やあ。こんな夜更けに珍しい。どうしたんだい? 今日は災難だったみたいだね。噂は聞いているよ。
まあ、そうだろうね。そんなに険しい顔をしてたら横になっても寝付けないだろう。どうかな、ここは私に話してみるっていうのは。悩み事は人に話すと良いらしいし、親しくない方が話しやすいそうだよ。今ならハーブティーもつけてあげよう。
口に合ったようで何より。キッチン期待の新人のお眼鏡にかなうとは私も鼻が高い。
ん? そうだよ。これは私のオリジナルブレンドさ。その日の気分で花を選んで何となく作るんだ。花の魔術師の腕の見せどころだね。同じ味を再現できないのが難点だけど。
やあ。こんな夜更けに珍しい。どうしたんだい? 今日は災難だったみたいだね。噂は聞いているよ。
まあ、そうだろうね。そんなに険しい顔をしてたら横になっても寝付けないだろう。どうかな、ここは私に話してみるっていうのは。悩み事は人に話すと良いらしいし、親しくない方が話しやすいそうだよ。今ならハーブティーもつけてあげよう。
口に合ったようで何より。キッチン期待の新人のお眼鏡にかなうとは私も鼻が高い。
ん? そうだよ。これは私のオリジナルブレンドさ。その日の気分で花を選んで何となく作るんだ。花の魔術師の腕の見せどころだね。同じ味を再現できないのが難点だけど。
夕飯時の食堂の片隅。ひとりで食事を取りに来たドは居合わせた二人の男に声を掛けられ、おしゃべりに興じていた。
他者との交流は新たな価値観、思いがけない知恵、面白い発見があって中々に興味深い。異国の者ともなればひとしおだ。今日の相手の男たち――鬼退治の英雄と情報戦のスペシャリストは、島国の出身と言うこともあってか独特の文化を有しており、興味が尽きない。
やはり、悪くない人選だったな。
相槌と質問の狭間で、ドは目を細めた。
――――ビービービービー
そんな和やかな時間を切り裂くように、緊急を知らせるアラートが鳴り響く。
夕飯時の食堂の片隅。ひとりで食事を取りに来たドは居合わせた二人の男に声を掛けられ、おしゃべりに興じていた。
他者との交流は新たな価値観、思いがけない知恵、面白い発見があって中々に興味深い。異国の者ともなればひとしおだ。今日の相手の男たち――鬼退治の英雄と情報戦のスペシャリストは、島国の出身と言うこともあってか独特の文化を有しており、興味が尽きない。
やはり、悪くない人選だったな。
相槌と質問の狭間で、ドは目を細めた。
――――ビービービービー
そんな和やかな時間を切り裂くように、緊急を知らせるアラートが鳴り響く。
嗚呼、下手打ったな。
とっさに動いた体。胸から舞い散る赤。悲痛に己を呼ぶ声。それらを置き去りにして、風神の子は何処か他人事のようにそう思った。
いつも通り、リソースを求めて籠もったシミュレーター。同じ場所、変わらぬ敵、無味な戦闘。ルーティン化して代わり映えもない。いつも通りに最後の敵を倒し終え、戦利品を確認していると、肩を落とす鱒が目に入る。もう一度か、と気が滅入った。その時。
針穴のような隙をついて一矢が正確に飛来する。
「ビ!?」
飛び散る鮮血が目に映り、追いかけてきた致命の痛みが体を貫く。鱒の名を叫ぶ悲痛な声に、怪我を負った様子が無いことだけが幸いだった。
嗚呼、下手打ったな。
とっさに動いた体。胸から舞い散る赤。悲痛に己を呼ぶ声。それらを置き去りにして、風神の子は何処か他人事のようにそう思った。
いつも通り、リソースを求めて籠もったシミュレーター。同じ場所、変わらぬ敵、無味な戦闘。ルーティン化して代わり映えもない。いつも通りに最後の敵を倒し終え、戦利品を確認していると、肩を落とす鱒が目に入る。もう一度か、と気が滅入った。その時。
針穴のような隙をついて一矢が正確に飛来する。
「ビ!?」
飛び散る鮮血が目に映り、追いかけてきた致命の痛みが体を貫く。鱒の名を叫ぶ悲痛な声に、怪我を負った様子が無いことだけが幸いだった。
キャンキャン。ギャンギャン。
犬の鳴き声で例えてみたが、目の前で繰り広げられている光景はそんな可愛げ一片たりともない。
数日前に鱒に怒られたばかりだというのに懲りない人たちだ。予言の子は壁際に寄り、集合時間までは後どれくらいだったか、と現実逃避をした。
罵倒。反論。煽り。正論。暴言。
被ることも途切れることもなく続く言葉の応酬は一周回って感心すら覚える。とはいえ、そろそろ集合時間が迫っている。止めるか、置いていくか。どうしたものかとぼんやり考えていると鈍い音が響いた。お互いに我慢の限界が来てとうとう手が出たらしい。綺麗なクロスカウンターが決まっていた。
――あ、まずい。
キャンキャン。ギャンギャン。
犬の鳴き声で例えてみたが、目の前で繰り広げられている光景はそんな可愛げ一片たりともない。
数日前に鱒に怒られたばかりだというのに懲りない人たちだ。予言の子は壁際に寄り、集合時間までは後どれくらいだったか、と現実逃避をした。
罵倒。反論。煽り。正論。暴言。
被ることも途切れることもなく続く言葉の応酬は一周回って感心すら覚える。とはいえ、そろそろ集合時間が迫っている。止めるか、置いていくか。どうしたものかとぼんやり考えていると鈍い音が響いた。お互いに我慢の限界が来てとうとう手が出たらしい。綺麗なクロスカウンターが決まっていた。
――あ、まずい。
ビはドに片想いしている。
あからさまな恋情にカルデアではからかいのネタにすらならないほどだ。初めは知れ渡っている事実に悶えていたビも、開き直って健気に、熱烈にアプローチを繰り広げている。むしろ、ライバルが減って好都合と笑ってみせる始末だ。
だが、残念なことに囲い込む勢いの想いはドに一切伝わっていなかった。暖簾に腕押し、糠に釘。響かない、というのはこういうことかと日々まざまざと見せつけられている。その有り様は、他人の不幸を甘味として啜る鯖たちですら同情を覚えるほどだ。
そんなある日、事件は起きた。
ビはドに片想いしている。
あからさまな恋情にカルデアではからかいのネタにすらならないほどだ。初めは知れ渡っている事実に悶えていたビも、開き直って健気に、熱烈にアプローチを繰り広げている。むしろ、ライバルが減って好都合と笑ってみせる始末だ。
だが、残念なことに囲い込む勢いの想いはドに一切伝わっていなかった。暖簾に腕押し、糠に釘。響かない、というのはこういうことかと日々まざまざと見せつけられている。その有り様は、他人の不幸を甘味として啜る鯖たちですら同情を覚えるほどだ。
そんなある日、事件は起きた。
生前から名をつけられぬ感情を抱いていた。
望んだ形ではなかったが、死を持ってこの手に余る感情とは別離できることに安堵を抱き、そのまま安らかに眠りにつく。
そのはずだったのに。
なんの因果か英霊の座なんてものに刻まれて(まあ? わし様ともなれば当然ではあるが!)
カルデアに呼ばれ(全てを背負い笑顔を浮かべるマスターの痛々しさは放ってはおけまい!)
こき使われて(他に働き手はおらんのか!?)
――そして、彼奴と再会した。
生前から名をつけられぬ感情を抱いていた。
望んだ形ではなかったが、死を持ってこの手に余る感情とは別離できることに安堵を抱き、そのまま安らかに眠りにつく。
そのはずだったのに。
なんの因果か英霊の座なんてものに刻まれて(まあ? わし様ともなれば当然ではあるが!)
カルデアに呼ばれ(全てを背負い笑顔を浮かべるマスターの痛々しさは放ってはおけまい!)
こき使われて(他に働き手はおらんのか!?)
――そして、彼奴と再会した。
三の家に試合映像を見に来たらかけるビデオを間違えてホラー映画を見ることになった二人。見終わり、ビビってるくせに強がる三を尻目に帰ろうとすると慌てて引き止められる。
親がいないから泊まってけ。
それで済む話を先輩命令だの何だのと遠回しに言ってくる。なるほど、一人は怖いわけか。貸しにしてやろうと二つ返事で承諾した。
「客用の布団ないから、同じベッドで良いよな」
良いわけあるか! だが抵抗も虚しく同じベッドに入る。心臓がうるさいのは昼間見たホラー映画のせいだ。
「三サンさあ、怖いならホラー映画とか見るのやめなよね」
「ばっ、怖くねえわ!!」
いつも通りに言い合ってこの話は終わり。
三の家に試合映像を見に来たらかけるビデオを間違えてホラー映画を見ることになった二人。見終わり、ビビってるくせに強がる三を尻目に帰ろうとすると慌てて引き止められる。
親がいないから泊まってけ。
それで済む話を先輩命令だの何だのと遠回しに言ってくる。なるほど、一人は怖いわけか。貸しにしてやろうと二つ返事で承諾した。
「客用の布団ないから、同じベッドで良いよな」
良いわけあるか! だが抵抗も虚しく同じベッドに入る。心臓がうるさいのは昼間見たホラー映画のせいだ。
「三サンさあ、怖いならホラー映画とか見るのやめなよね」
「ばっ、怖くねえわ!!」
いつも通りに言い合ってこの話は終わり。
「――好きです」
浮かれて向かった呼び出し場所。告白されることは何となく分かっていた。だが、こんな死にそうな顔をして告げられるとは予想外だ。
――むかつく。
オレを好きなのはそんなにあり得ないか。認めたくないことかよ。だったらなんで告白してきた。フラれて終わろうとでも思ってたのか。自分で断ち切れねえもんを、人にやらせようなんてなんてやつだ。
オレの気持ちまで、捨てられてたまるかよ。
「宮。それは勘違いだ」
今のてめえから好きだなんて、死んでも受け取ってやらねえ。
「――好きです」
浮かれて向かった呼び出し場所。告白されることは何となく分かっていた。だが、こんな死にそうな顔をして告げられるとは予想外だ。
――むかつく。
オレを好きなのはそんなにあり得ないか。認めたくないことかよ。だったらなんで告白してきた。フラれて終わろうとでも思ってたのか。自分で断ち切れねえもんを、人にやらせようなんてなんてやつだ。
オレの気持ちまで、捨てられてたまるかよ。
「宮。それは勘違いだ」
今のてめえから好きだなんて、死んでも受け取ってやらねえ。
思いついたネタとかを主に垂れ流すと思います
ジャンルはたぶんごった煮
思いついたネタとかを主に垂れ流すと思います
ジャンルはたぶんごった煮