note: https://note.com/mayuqix
「結婚を祝うべき晴れの場とし、葬儀を暗く悲しむべき場としない」。「当事者がいない所で、勝手にそのひとのことを話さない」。「理不尽を感じたら怒るのも大事だが、『はて?』と疑問をぶつけてみてもいい」。本作は、あたかも自然のように描かれてきた様々な事柄から一歩引き、それでいいのか? と私たちに問うドラマだった。また、共亜事件裁判、戦時中の言論弾圧関連裁判、総力戦研究所の存在、原爆裁判、尊属殺違憲裁判などを通して、権力に虐げられるひとびとや、戦争の被害者、社会構造がもたらす理不尽に苦悩するひとびと、総じて「マイノリティ」に寄り添う作品であった。それが「 #虎に翼 」だ。
「結婚を祝うべき晴れの場とし、葬儀を暗く悲しむべき場としない」。「当事者がいない所で、勝手にそのひとのことを話さない」。「理不尽を感じたら怒るのも大事だが、『はて?』と疑問をぶつけてみてもいい」。本作は、あたかも自然のように描かれてきた様々な事柄から一歩引き、それでいいのか? と私たちに問うドラマだった。また、共亜事件裁判、戦時中の言論弾圧関連裁判、総力戦研究所の存在、原爆裁判、尊属殺違憲裁判などを通して、権力に虐げられるひとびとや、戦争の被害者、社会構造がもたらす理不尽に苦悩するひとびと、総じて「マイノリティ」に寄り添う作品であった。それが「 #虎に翼 」だ。
不当解雇に遭ったらしい女性に、労働基準法のことを教え、弁護士事務所を紹介する優未。その相手は、美雪だった。おそらく、その事務所とは「山田轟法律事務所」だろう。「特別な何者か」の幻影を追っていた美雪も、ひとりの労働者になっていた。「どんなありふれた話でも聞く」と寅子が投げかけた言葉は、優未を通して、未来の美雪に少しだけ届いたのかもしれない。
航一に「私の中にお母さんを感じた。法律ってお母さんなんだよな」としみじみと話す優未。「清水が湧く泉」、「人権や尊厳から生まれるもの」そして「多様なひとたちが乗る船」へと変化してきた寅子の法律観
皆さんにとって、法とは?
雨垂れは花びらへ
不当解雇に遭ったらしい女性に、労働基準法のことを教え、弁護士事務所を紹介する優未。その相手は、美雪だった。おそらく、その事務所とは「山田轟法律事務所」だろう。「特別な何者か」の幻影を追っていた美雪も、ひとりの労働者になっていた。「どんなありふれた話でも聞く」と寅子が投げかけた言葉は、優未を通して、未来の美雪に少しだけ届いたのかもしれない。
航一に「私の中にお母さんを感じた。法律ってお母さんなんだよな」としみじみと話す優未。「清水が湧く泉」、「人権や尊厳から生まれるもの」そして「多様なひとたちが乗る船」へと変化してきた寅子の法律観
皆さんにとって、法とは?
雨垂れは花びらへ
桂場等一郎のモデルとされる、第5代最高裁長官の石田和外は、退官後、元号法制化実現国民会議を結成。組織は改称後、97年に日本を守る会と統一し、「日本最大の保守団体」日本会議となる。
桜には、軍国主義や戦死を美化する「散華」のイメージがつきまとう。「ご婦人が法律を学ぶことも、職にすることも反対」との桂場に、自身の新たな法律観を語り、「君のような女性が特別だった時代は終わったのだな」には「私のような女性はいつだって五万といる。ただ、時代が特別にしただけ」と返す寅子。
桂場等一郎のモデルとされる、第5代最高裁長官の石田和外は、退官後、元号法制化実現国民会議を結成。組織は改称後、97年に日本を守る会と統一し、「日本最大の保守団体」日本会議となる。
桜には、軍国主義や戦死を美化する「散華」のイメージがつきまとう。「ご婦人が法律を学ぶことも、職にすることも反対」との桂場に、自身の新たな法律観を語り、「君のような女性が特別だった時代は終わったのだな」には「私のような女性はいつだって五万といる。ただ、時代が特別にしただけ」と返す寅子。
英文学者の小川公代氏とのトークイベントで、脚本の吉田恵里香氏は、「寅子は家父長制を内面化していますよね」との小川氏の言葉に、頷いていた。そう、寅子は「良家の箱入り娘」。「結婚した女性は無能力者」との民法の規定に疑問は感じても、家父長制自体を批判する視点はない。一方、よねは貧農の生まれ。女でいることを拒否し、家を飛び出した。直感的に家父長制の弊害がわかっている。「自分を曲げざるを得ないひと」と「自分を曲げないひと」。寅子とよねは、育った環境も信念も異なっているが、それゆえ、共に相手を必要とするバディだ。そして、寅子が折に触れ、法律観を語ってきたバディが桂場だ。
英文学者の小川公代氏とのトークイベントで、脚本の吉田恵里香氏は、「寅子は家父長制を内面化していますよね」との小川氏の言葉に、頷いていた。そう、寅子は「良家の箱入り娘」。「結婚した女性は無能力者」との民法の規定に疑問は感じても、家父長制自体を批判する視点はない。一方、よねは貧農の生まれ。女でいることを拒否し、家を飛び出した。直感的に家父長制の弊害がわかっている。「自分を曲げざるを得ないひと」と「自分を曲げないひと」。寅子とよねは、育った環境も信念も異なっているが、それゆえ、共に相手を必要とするバディだ。そして、寅子が折に触れ、法律観を語ってきたバディが桂場だ。
#虎に翼
#虎に翼
美雪の不敵とも見える態度に、音羽が制止しようとしたが、寅子は「続けて」と促した。また、美雪が、母・美佐江がそんな乱暴な答えに納得するか、と問うた時、今、あなたの質問に答えている、母親の話はしていないと返している。穂高が寅子の素朴な疑問を受け止めた時、そして、穂高が目の前の寅子を素通りした言葉を発した時と関連している。後者は、穂高を反面教師とし、目の前の美雪と向き合っている。母親の言葉に捕らわれず、どんなあなたでもいい、どんなありふれた話でも聞くと告げるが、これは優三の「どんなトラちゃんでもいい、好きなことに一生懸命なら」の感染。寅子イズムだ
#虎に翼
美雪の不敵とも見える態度に、音羽が制止しようとしたが、寅子は「続けて」と促した。また、美雪が、母・美佐江がそんな乱暴な答えに納得するか、と問うた時、今、あなたの質問に答えている、母親の話はしていないと返している。穂高が寅子の素朴な疑問を受け止めた時、そして、穂高が目の前の寅子を素通りした言葉を発した時と関連している。後者は、穂高を反面教師とし、目の前の美雪と向き合っている。母親の言葉に捕らわれず、どんなあなたでもいい、どんなありふれた話でも聞くと告げるが、これは優三の「どんなトラちゃんでもいい、好きなことに一生懸命なら」の感染。寅子イズムだ
#虎に翼
よねが最高裁で弁論した際、寅子の口癖「はて?」が重要なアクセントになっていた。作中で寅子以外に「はて?」を口にしたことがあるのは、娘の優未とライアン、そして小橋だった。が、小橋は「昔のお前なら、『はて? はて?』と言ってただろうな」と寅子をからかう文脈だったので、実質2人。そして、よねが3人目だ。よねは一貫して怒り含みの感情的な「は?」が口癖だったが、認知的レベルで対処する「はて?」が弁論のトーンを落ち着かせている。他者にミメーシス(感染的模倣)をもたらす寅子は、しかし、自身も他者から感染している。それは穂高であり、優三だ。美雪との対話に、それは表れていた
#虎に翼
よねが最高裁で弁論した際、寅子の口癖「はて?」が重要なアクセントになっていた。作中で寅子以外に「はて?」を口にしたことがあるのは、娘の優未とライアン、そして小橋だった。が、小橋は「昔のお前なら、『はて? はて?』と言ってただろうな」と寅子をからかう文脈だったので、実質2人。そして、よねが3人目だ。よねは一貫して怒り含みの感情的な「は?」が口癖だったが、認知的レベルで対処する「はて?」が弁論のトーンを落ち着かせている。他者にミメーシス(感染的模倣)をもたらす寅子は、しかし、自身も他者から感染している。それは穂高であり、優三だ。美雪との対話に、それは表れていた
#虎に翼