らんどすぱいだー
landspider.bsky.social
らんどすぱいだー
@landspider.bsky.social
1次創作をしています。Xはhttps://x.com/tsutigumo_
「昼間は隠れなきゃいけないしセオのいう通り渓谷なら日陰だらけだしありえる!」
「まずはビクター、そしてエドワード卿、それからバーンシュだな」
 セオとバジルはビクター邸の庭でバロンが出てくるのを待つ。ギルドで買っておいたナッツの詰め合わせと水をセオに渡す。
「ハハ、異世界でもナッツはナッツだな。外れなく旨い」
「俺も好き」
「もうすぐ日が暮れる……」
「ビクターさん大丈夫かな……バロンさんも……テオが居るから何とかしてくれるとは思うけど……」
つづく
November 16, 2025 at 3:32 PM
「西都地方がキナ臭くなってきやがったな」
「ビクターさんを吸血鬼に変えたのは誰なんだろうそれが解れば王都ギルドに報告できるのにね」
「ああ、そしてそのカギを握っているのがビクターと同じ種類の吸血鬼ネスフェリティアの賞金首バーンシュ……」
「バーンシュを捕まえて聞き出すんだね。先行組の行方はエドワード卿が知ってるかも?」
「そうだ。俺の想像だがバーンシュは奴を吸血鬼にした主から渓谷で冒険者を待ち受けろとでも言われたんだろう。元賊の奴が王都地方に行くとは考えにくい、異世界召喚と冒険者がウジャウジャいるしな、そうなると渓谷周辺に潜んでいるだろうな」
November 16, 2025 at 3:31 PM
「ああわかった。満月までまだ時間がある相棒を呼んでくるぜ」
「好きにしてくれ」
***
「相棒!」
 ギルドに駆けこむセオ、反応して立ち上がるバジル。グリムネは慌てて残りのナッツを口に詰め込みバジルの頭に乗った。
「慌ててどうしたの?」
「ビクターの所に行くぞ。シーモンドの行方が分かった……だが」
「だが?」
「事情は移動しながら話す」
セオはビクターの状態とシーモンドの行方、エドワード卿の城に向かう事を。バジルはモンスターの群れが西の森に近いレコ村を壊滅させた事を話した。
November 16, 2025 at 3:31 PM
「満月になったら私は地下室に入る、半刻を過ぎて出てこなかったらエドワード卿の城に行き『あの御方』に会いに行け」
バロンは手紙を書き覗き窓からセオに渡す。
「あの……」
 テオが手を上げた。
「僕もバロンさんに同行させてもらえないでしょうか? もしバロンさんが重傷を負った場合僕なら緊急応急処置できます。地下室の中までとはいいません、スライムですので隙間があれば入れますなにかあった場合すぐに対処できます」
「随分と賢い筒モンだな」
「お褒めにあずかり光栄です」
「どうなんだバロン、テオを屋敷に入れてやるのか?」
「良いだろう、スライムはこの覗き窓から入ってこい。セオお前は悪いが外で待っててくれ」
November 16, 2025 at 3:29 PM
「遠いのか?」
「馬車を使えば半日もかからない。早馬で駆ければ夜までに着くだろう」
「近くではないって事だなさぁどうするか……ビクターが満月を乗り越えられるかどうかを待つか自称シーモンド爺さんに会いに行くか。賞金首バーンシュは俺たちだけじゃなくもう少し人数が欲しい」
 セオはクルガットの蟹吸血鬼との戦闘を思い出す。用心に越した事はないと。
「冒険者セオよ、ビクターを待つのならそれも良いだろう。今夜あいつが乗り越えられなく血の渇望に飲み込まれ怪物となったら私が奴を殺さなければならない。奴の剣の腕はS級だ。ビクターと私の実力は拮抗している、ネスフェリティアの力で上乗せされたのなら危ういかもしれん」
November 16, 2025 at 3:28 PM
「クソ……一体先行組はどこに行きやがったんだ! こうなったらシーモンド爺さんを当たるしかねえな、バロンあんたは知ってるか?」
「西都から北東の漁村に住んでいる、エドワード卿の領地だ。私もそこの出身だ」
「そうだったのか……シーモンド爺さんはどんな奴だ?」
「お前が探しているのがクラーク・シーモンドなのかそれとも自称シーモンドなのかで話はかわって来るが?」
「何? どういうことだ?」
「手短に話すと……王都の先行組と共に現れたのは自称シーモンド。『あの御方』に会いたいのであればエドワード卿の城に行けば良いだろう。私が手紙を書こう、それを持っていけばすぐに会えなくても話をしてくれる者はいるはずだ」
November 16, 2025 at 3:26 PM
「B級冒険者のセオだ。ギルドの緊急依頼でネスフェリティア吸血鬼のバーンシュ討伐を受けた。ビクターと話ができたらありがたいんだが?」
「……そうか、しかし最悪のタイミングだったな。今夜は満月、ビクターの1度目の血の渇望が頂点に達する時。何が起こるか分からん、できるだけ会わせたくないのだ」
 小さなのぞき窓が空いた。バロンの表情は険しい。
「マジかよ……なぁあんた、他に王都ギルドの連中とかシーモンドの爺さんとかは来なかったか?」
「来なかったな。来たのはビクターに差し入れと手紙を持ってきたギルドスタッフだけだ」
November 16, 2025 at 3:25 PM
オルロとギルドスタッフのやり取りを聞いてギルド内が騒めき出す。バジルは周囲をキョロキョロと見回している。
「なんだか凄い事になってきた……俺たちは賞金首追う方でいいのかな……」
「ピッピヨ……」
***
 ビクター邸に到着したセオとテオ。バロンの出迎えは今回なかった。門が開いていたので二人は静かに入り屋敷の扉をノックした。
「……」
「返事がありませんね?」
 しばらくすると扉の向こうから足音が聞こえた。
「誰だ? 今は取り込み中だ、急用でなければお引き取り願おうか」
 バロンの声がした。
November 16, 2025 at 3:23 PM
西都の騎士団は冒険者基準でB~S級の練度の者達である。オルロ隊はオルロ本人がA級、副隊長がA、その他は全てBと決して弱くはなかった。
「巨大コウモリの音波か何かで五感を狂わされ馬も使い物にならなくなりそこに骨戦士の投げ槍と火を噴く狼の火球、大混乱に陥り立て直しをする前に動く鎧、一つ目オーガ、そして一角兜の巨人騎士の猛攻、私は吹き飛ばされたが運よく致命傷を避けられた。伝令筒モンを西都に送ってここまで逃げのびたのだ」「それでギルドに緊急依頼が……!」
「そうだ……騎士団は既に西都の前に防衛線を敷いているはずだ。冒険者諸君は出来るだけ西都に近づけさせないように奮闘してもらいたい……」
November 16, 2025 at 3:23 PM
「……緊急依頼はレコ村を壊滅させたモンスターの群れの討伐。ゴブリン、巨大コウモリ、火を吐く狼、一つ目のオーガ、動く鎧、骨の戦士、それらを率いているのは骨の馬に乗った一角兜の巨大騎士。黄金に輝く異常な大きさのハルバード一薙ぎで5人の騎士が吹き飛んだ。モンスターが種族を超えた群れを組み人間の村を襲撃したなど前例がない……」
「そいつらは何処から来たんですか?」
 ギルドスタッフの治療師が聞いた。
「西の森から現れた……近接するレコ村の警備兵では歯が立たないと伝令筒モンで緊急救援が西都に届いた。それで第3騎士団のオルロ隊が向かったが……私の他は全滅だ」
November 16, 2025 at 3:17 PM
私が……説明……しよう……」
 全身傷だらけの鎧が破損した騎士が倒れこむように西都冒険者ギルドに入ってきた。
「私は西都第3騎士団オルロ隊の隊長オルロだ……西都北西のレコ村が壊滅した……!」
 ギルドのスタッフが駆けつけポーションと蒸しタオルと車椅子を持ってきた。ポーションを一気に飲み蒸しタオルで顔を拭き車椅子に沈み込むように体をあずけるオルロ。ポーションが聞き始め傷は徐々に塞がっていく。このギルド特別性ポーションは金貨1枚する高級品で主に応急措置に使われる。飲んで良しかけて良し包帯に浸して良しの代物。
November 16, 2025 at 3:16 PM
「へぇ~受注中の任務は受付カウンターの後ろの壁に張ってあるんだね。誰か受けたかまで分かるんだ……なんかちょっと照れるね。王都は掲示板に触ったら文字が浮かび上がって見れるタイプだからなんか西都の全部全体公開ってのは慣れないや」
 バジルは王都の冒険者ギルドを思い出しながら注文したナッツを齧る。横からグリムネがキツツキめいてがっついている。
『狂暴化したモンスターの群れ討伐』
 冒険者たちは眺めているだけで下のカードを取ろうとしない。王都であればエンチャント装備を買い自分の実力を過信した者たちが次々と挑戦するのだが。
「どんなモンスターがどの位出てきたのか解れば皆引き受けるのかな?」
「ピヨ~?」
November 16, 2025 at 3:15 PM
「……ドムのおっさんが『張り込みの忍耐力も調査には必要だぞ』とか言ってのを思い出すぜ」
「どうするセオ、このまま夜まで張り込むの?」
「待ってるだけは性に合わねえ、ここはテオとグリムネに任せて俺たちは一度ビクターの所に行かねえか?」
「え、テオとグリムネだけに任せるの?俺たちのどっちかが残った方が良くないかな?」
「じゃあどうする? 俺はもう張り込みは我慢の限界だ」
「セオはテオとビクターさんに会いに行ってよ。俺とグリムネがその間見とくよ」
「名前が似た者同士での別行動だな」
「ピヨピヨ!」「よろしくお願いします!」
 セオはビクター邸に、バジルはそのまま冒険者ギルドに残る。
November 16, 2025 at 3:13 PM
「相棒、何か知らんが西都はお節介な冒険者が多いな?」
「セオ、そんな事言っちゃ駄目だよ。きっと西都地方は冒険者同士で揉めたくないんだよ」
「王都と比べて少ないからって理由はありそうだな。まぁでも『できるだけ』揉めたくないんだろう。譲れないもんがあればさすがに衝突はあるだろうしな。冒険者は命がけだ馴れ合いで生き残れないだろ」
「仲良くなっておけば、もしもの時助けてくれるっていうのがあるんだよ」
「仲良くなったふりして利用されて騙されるかもしれないぜ?」
「かもね……」
「かもな……」
 掲示板とカウンターを見つめるバジルとセオ。数時間が経った。
November 16, 2025 at 3:11 PM
「ああ、だから皆カウンターに押し寄せているの?」
「それもあるだろうな、ギルドからの直接依頼を理由もなく何度も断るのはペナルティの対象だからな。ペナルティ持ちは解除されるまで一般指名の依頼受けれねぇからな。後は俺のように常連依頼主がいると紹介状をギルドに持って行って承認されてるために来ている連中だな。常連を作るとギルド直接指名を回避できる確率が高くなるし収入も安定する。俺は殆ど常連で回して稼いでいるぜ。王都は知らんが西都のB級はそういう連中が多いぞ」
「そうなんだ~……」
「お前らもB級だろう? ならおぼえておくんだな」
「うん、ありがとう!」
 去っていくシャン、バジルは手を振って見送った。
November 16, 2025 at 3:10 PM
「今までああいう依頼はあったの?」
「極々まれにな。狼王ミロが現れた時も赤い紙の討伐依頼が張り出されたな。それまでに冒険者35人、貴族の兵士、衛兵、騎士団が犠牲になった。S級2人を加えた総勢40人による討伐メンバーでようやく討伐できた。『悪魔の城攻略』『海獣討伐』『賞金首:魔剣聖ベロス』などもあったらしい。探せばもっとあったかもな」
「緊急依頼で全然人が集まらなかったら?」
「報酬を上乗せして指名するだろうな。赤紙ならとにかく人数を集めるだろう、S、A、B級で空いてるやつに声をかけるはずだ。俺はもう依頼を受けてきたからな、こんな怪しい依頼に捕まらなくて良かったぜ」
November 16, 2025 at 3:10 PM
「ほう、それはまた大変なのを選んだな」
「うん、けどこの依頼は受けたかったんだ」
「へぇ~……ま、色々事情はあるよな冒険者は」
「ねぇ、シャンさんモンスターの群れ討伐が危険な臭いってどういう事?」
 バジルは澄んだ目でシャンを見つめる。
「ああいうのは普通ギルドが冒険者を指名するんだ。どんなモンスターが出てどんな冒険者が最適か考えてな。それをしないであんな依頼の仕方をするってのは……本当に人手がすぐに欲しいか未知のモンスターが現れまずは冒険者をぶつけてみるかって判断した貴族の依頼かだな」
November 16, 2025 at 3:10 PM
その後、受付嬢が他の依頼と一緒に霧の森と賞金首の紙を掲示板から取り外す姿を目撃する。
「残るはモンスターの群れ討伐か……」
「みんな眺めているけどやらないのかな?」
 バジル達の席に近づいてくる戦士風の人物。
「あの依頼は危険な臭いがプンプンするんだ、だから皆警戒してるんだ」
 隣のテーブルに着いた。
「ん? 確か……護衛の仕事よくやってる戦士の……」
 バジルは首をかしげる。
「シャンだ! また会ったなアンタら。今日は髭の男は居ないのか?」
「ドムさんは別の依頼を受けてるんだ」
「そうかい。で、アンタらは?」
「俺たちは賞金首バーンシュの依頼を受けたよ」
November 16, 2025 at 3:09 PM
「王都とはえらい違いだ……イライラするぜ」
 依頼書にメンバーの名前を書き込み番号を呼ばれるの待つこと数十分。
「番号札77番の方! ギルドカウンター3番までお越しくださーい!」
 その後西都での依頼の為の書類、報酬についての説明を受けようやく解放された。
「めんどくせぇ……次からはテオが並んで書類も書いてくれよな」
 セオは水を飲んで大きくため息をついた。
「了解です」
「セオ、それって王都のギルドの人みたいだね」とバジル。
「適材適所だな」
November 16, 2025 at 3:08 PM
「ちょっと待った、その賞金首の依頼俺が貰った!」
「ほう、こんなちんけな賊の賞金首に飛びつくのか? 緊急依頼ってのが怪しいが」
 リザードマンの剣士が言った。
「そのバーンシュの事は知ってるんだ。奴は俺たちがぶっ殺す!」セオは腰のホルスターの銃に手をかけて言った。
「因縁の相手って訳か、いいぜ。俺たちはもっと名声が上がる首を求めているからな」
「おう」「その通りだ!」と射手とフード男が言った。
「よし……」
 セオは掲示板の下のカードをとってカウンターに並ぶ。数十分後ようやくセオの番が回って来た。そこで番号札と依頼書を渡されバジル達の席に戻ってきた。
November 16, 2025 at 3:08 PM
「ところで……賞金首の名前、聞いたような気がするんだが?」「俺も……」「ピヨ」
「ギルドマスター・ビクターさんが言ってましたよ。先行組が渓谷の山小屋で出くわした賊の名前です。バーンシュ」
「そいつだ! ならヤバくねえか? 吸血鬼と知らずに接触したら……」
「でもどうやって説明するの? ビクターさんの事は秘密だし……」
「クソ! やめとけとか言うか?」
「俺たちがあの依頼引き受けちゃう?」
「……ありか? ありかもな! ビクターに相談するのも手だしな!」
 セオは立ち上がり賞金首の依頼を眺めている冒険者に近づいていく。
November 16, 2025 at 3:07 PM
「こないだの会議室みたいな場所があるのか」
「ええ、そうです。酔っ払いを閉じ込めるのにも使ってたりするのを見ましたね」
「案外雑だな……」
 バジルとセオが掲示板を離れたところから眺めていると賞金首の依頼の紙を触っている男達が目についた。長い刀を背負ったリザードマン、腕にボウガン、肩に弓を携えた長髪の男、白いフードの小柄な男の三人組だった。
「賞金首ハンターかもしれませんね」
「そっちの専門家もいるんだな」
「ええ、元衛兵や貴族雇われの兵士、現職の騎士団にも賞金首ハンターがいるようです。身なりからして東都地方の人達でしょうか」
November 16, 2025 at 3:06 PM
「後は奥で筒モンのお世話をするかですね」
「そうなんだ……西都はあんまり筒モンを見ないけどなんでなんだろう?」
「連れている冒険者も少ないですね。僕の考えでは……王都は豊富なエンチャントで筒モンの育成グッズが充実してて育てるのが難しくないのではないでしょうか? 西都は見た所、筒モンセンターも小規模でしたしあまり育成の環境が整ってないのかもしれません」
「そうだったんだ……」
「どうりで王都のギルドは張り出してある依頼が少ない訳だ。冒険者が来てすぐに手続きを済ませて出発するからか」セオはテオを見て言った。
「相談室もあって話が長くなりそうな場合はそっちに移動してるのも混雑しない理由の一つですね」
November 16, 2025 at 3:06 PM
「そうだね~」
「それはですね……」
 テオが少年の姿に変身して隣に座った。
「王都の受け付けはカウンターの奥の部屋で筒モンが主に処理しているからなんですよ。受付嬢は冒険者の身分を確認して書類を奥に渡しています。以前は西都よりも多い人数の受付嬢が居てみんな過労に苦しんでいたようです」
「今度は筒モンが過労に苦しむんじゃ?」とバジル。
「大丈夫です、記憶するのが得意な筒モン、精確な記録を得意とする筒モン、確認が得意な筒モンが3交代制のシフトで揃っていますから。受付嬢は人間しかできないような仕事をします。あまりに筒モンが仕事出来すぎるので暇になって受付嬢は給仕の仕事までやり出したんです」
November 16, 2025 at 3:04 PM
「そっちの専門家って訳か……」
「ああ、だが霧の森は俺たちでも油断できねぇ。コンパスも狂うし濃い霧は昼でも暗い。あまり長く入っているのは危険だ。じゃあな兄ちゃん俺は仲間と相談してくるからよ」
 傷跡だらけの冒険者は冒険者をかき分け去って行った。
「相棒、しばらくこのギルドに居ようか。もしかしたら先行組がくるかもしれねぇ」
「そうだね!」
 セオとバジルは飲み物を頼み掲示板が見ながらしばらく待つことにする。
 受付カウンターは王都とは違い人海戦術で5人の受付嬢が依頼を捌いていた。
「王都はここまで混雑してなかったよな?」
November 16, 2025 at 3:03 PM