この数日、この件に言及する投稿を見かけて記事を読み返したんだけど、引用したダニエル・ラドクリフのコメントは何度読んでも涙が出る。彼やエマ・ワトソンをはじめとする関係者たちによる、JKRのトランス差別への抗議が、ハリー・ポッターという物語を守り、救っているとずっと思っている。

「地球は太陽の周りを回る」「人はサルと共通の祖先をもつ」「奴隷制は廃止すべき」「女性にも投票権が与えられるべきだ」、これらの「考え」は、ほぼ全員の人間が全く同意していなかった時、一部の人々だけが閉じた情報環境の中で、その「正しさ」を増幅させていったという意味では、まさに今で言う「エコーチェンバー」状態だった。だが、その考えは正しかった。
一方、「ユダヤ人は生まれつき悪」のような間違った考えも、エコーチェンバーによって増幅されていき、現実に大きな力を持ってしまい、惨劇を引き起こした。
つまり「エコーチェンバー状態かどうか」は、その考え自体が正しいか/間違っているかを決める条件ではないということ。

というか現に、Qアノンみたいな最悪の意味での「エコーチェンバー」から生まれた考えが、ごく狭い一部の領域から増幅に増幅を重ねて力を得て、ついには現実世界の権力にこれほど深く食い込む事態になってしまったことを踏まえれば、それらに対抗するためには、「良いエコーチェンバーを意図的に構築する」ということも意外と重要になってくるのではないか…と考えたりしてる。
たしかに「意見が同じ/近い人の間でぐるぐると考えを増幅していくだけ」という言い方もできるが、それがマイナスの方向に社会をねじまげる力をもつなら、プラスの方向に「直す」力にもなりうるのではないか、と。
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