武内和人/Takeuchi Kazuto
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武内和人/Takeuchi Kazuto
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政治、国際関係、安全保障を中心とした人文・社会科学の研究紹介を中心に、時事や歴史の解説、私自身の記事などを投稿します。このような時代だからこそ、学知を大事にしたいと思っています。
メインのnoteアカウント:https://note.com/takeuchi_kazuto
日本を取り巻く国際情勢がさらに厳しさを増してくると、外交・防衛関連の政策論争もそれに応じて今よりさらに激しくなるはずです。私はこの政策論争を建設的な方向へと運び、有効な政策形成を促すためには、党派対立に終始させないという意識を持つことが重要だと考えています。国家安全保障を達成するために、日本国内の政策知識の供給や交換を活発にしていくべきだと思います。
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November 12, 2025 at 2:33 AM
さらに付け加えておくと、独裁体制で統治されている国家は、民主主義国に比べてより頻繁に武力行使を行うため、そのような国々と隣接している場合、さらに軍備を整える必要が高まります。中国やロシアは交渉可能な相手ですが、極めて権威主義的な体制を持つ国家であって、その指導者は日本の政治家とは異質な思考と行動様式を持っていることを認識すべきだと思います。
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November 12, 2025 at 2:33 AM
もちろん、非武装中立主義の議論にも擁護意見があります。例えば最初に私が述べた安全保障の前提を批判し、軍備さえを持たなければ攻撃対象にならない、という見解が正当化に使われることがあります。人間は武器さえ持たなければ平和愛好的に振舞うはずという信念を持たれることについては、私は敬意を払いたいと思います。ただ、戦争の歴史を踏まえると、人が無条件に平和愛好的だったわけではなかったと考える私にとっては説得的な議論ではありません。侵略者に対して非暴力で抵抗するという提案についても、占領軍の統治政策によっては深刻な犠牲を出す恐れがあるので現実的ではないと思います。
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November 12, 2025 at 2:33 AM
日本の政治史では中立主義に非武装という要素を加えて、より一般に受け入れられやすい提案が出されることもありました。確かに、これなら防衛負担は発生しません。しかし、肝心の国家の安全が確保されないという問題が残ります。非武装中立主義は安全保障政策の目的を無視することで、手段を正当化する議論に陥りがちであり、このような理由からこの政策が実現可能と見ている研究者はほとんどいません。
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November 12, 2025 at 2:33 AM
冷戦以降の米ソ対立の中でいずれの陣営にも属さないことで中立主義の政策を採用したアジア・アフリカの新興独立国の例はありますが、日本は冷戦を通じて米国との同盟を維持してきました。確かに日本の地理環境は海に囲まれているという点で非常に有利ですが北でロシア、南で中国の領域と近接し、いずれも非民主的な政治体制の下で大規模な軍備を増強しています。このような状況で中立主義を採用すると、国民には大きな防衛負担が発生することになります。戦後復興の時代の日本にとって、そのような負担は耐えがたかったと思います。
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November 12, 2025 at 2:33 AM
補足資料:中国のパブリック・ディプロマシーと国内政治の関連を分析した研究では、国内で党の支配体制を正当化するために推進している民族主義イデオロギーの影響も指摘されています。
doi.org/10.1057/s415...
Digital diplomacy and domestic audience: how official discourse shapes nationalist sentiments in China - Humanities and Social Sciences Communications
Humanities and Social Sciences Communications - Digital diplomacy and domestic audience: how official discourse shapes nationalist sentiments in China
doi.org
November 10, 2025 at 1:30 AM
OECD加盟国の中国外交官が使用するトーンには軟化の傾向が見られたようですが、そのデジタル・コミュニケーションのあり方が劇的に変化したとは認められませんでした。オープンアクセスの資料として以下を挙げておきます。
doi.org/10.1017/S030...
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Leader of the Pack? Changes in “Wolf Warrior Diplomacy” after a Politburo Collective Study Session | The China Quarterly | Cambridge Core
Leader of the Pack? Changes in “Wolf Warrior Diplomacy” after a Politburo Collective Study Session - Volume 254
doi.org
November 10, 2025 at 12:56 AM
スペースパワーが安全保障にとって非常に重要なのは、外国の軍事行動の兆候を早期に察知できれば、潜在的な挑戦国が奇襲の効果を利用して攻撃する事態を防げるためであり、その結果として勢力均衡の安定性を改善することができます。3/3
November 9, 2025 at 1:28 AM
冷戦時代に米ソが運用していた偵察衛星については、すでに多くの研究が蓄積されており、日本でも翻訳された資料が少なくありません。興味あある方は『世界史を動かすスパイ衛星』などを一読してみるとよいでしょう。スペースパワーの意義が具体的に認識できると思います。
note.com/takeuchi_kaz...
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宇宙領域の冷戦史『世界史を動かすスパイ衛星』(1990)の紹介|武内和人
1992年9月、アメリカ国防総省は初めて国家偵察局(National Reconnaissance Office)の存在を認め、その活動の一端を明らかにしました。国家偵察局は、偵察、通信、観測などの機能を備えた人工衛星を管理、運用する組織であり、1960年代からソ連軍の情報を収集してきました。 それまでアメリカ軍は、偵察機でソ連領域を偵察しようとしていましたが、1957年にソ連が人工衛星スプート...
note.com
November 9, 2025 at 1:28 AM
抑止戦略を実行するためには、有事に際して自分たちがどのような防衛活動を遂行する用意があるのかを信頼できる形で伝えるコミットメントが非常に重要です。
戦争に備えることが平和の維持に寄与するというのは直観に反すると感じられると思いますが、これは機能します。3/3
November 7, 2025 at 1:33 PM
現在、日本は対外政策として現状維持を目指しているため、中国が武力で台湾の現状を変更する事態を思いとどまるシナリオが望ましいといえます。
ただ中国は台湾の現状変更を試みてきた場合には対日攻撃の可能性を否定できないため、米国と協力しながら抑止戦略を実行に移しているところです。2/
November 7, 2025 at 1:33 PM
戦争は自らの意志を強制する手段の一つであって、その形態や期間は交渉の運び方次第です。

元記事へのリンクはこちらに置いておきます。
Michaels, J. & M. J. Williams. (2025). A Wargame to Take Taiwan, from China’s Perspective. War on the Rocks,
warontherocks.com/2025/10/a-wa...
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A Wargame to Take Taiwan, from China’s Perspective
In August 2025, 25 international experts gathered at Syracuse University to do something unusual: plan China's invasion of Taiwan. For two days,
warontherocks.com
November 5, 2025 at 2:18 AM
中国はグレーゾーンの範囲で既成事実化を積み重ねることで、抵抗を受けることなく自国の立場を強制したいはずです。
このような行動が繰り返されると抑止のコミットメントに対する信頼が損なわれますが、米国としても武力紛争のコストは避けたいので対抗するか譲歩するか悩むことになります。2/
November 5, 2025 at 2:18 AM
フィリピンはすでに日本と円滑化協定を締結し、安全保障協力の枠組みを強化していますが、今日の日経で環太平洋経済連携協定に加盟申請したことも報じられており、より重層的な協力相手になることが期待されます。
www.nikkei.com/article/DGXZ...
TPPにフィリピン・UAEが加盟申請 トランプ関税に対抗、自由貿易推進 - 日本経済新聞
フィリピンとアラブ首長国連邦(UAE)が環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟を申請していたことが分かった。韓国も申請の検討に入った。トランプ米政権による関税引き上げや米中対立で保護主義が世界に広がる中、日本などのTPP加盟各国は欧州と並び自由貿易を守るとりでになりつつある。フィリピンとUAEは8月に事務局機能を担うニュージーランドに申請書類を提出した。日本政府関係者が明らかにした。新たな申請
www.nikkei.com
November 4, 2025 at 7:59 AM
補足しておくと、軍事機能は抑止を達成する手段の一つでしかありません。フレイヴェルの『中国の領土紛争』で指摘されているように、これまで中国は国内で体制存続を危うくする事態に直面すると、内政を立て直すため対外的に妥協する傾向を示しており、これは再現性がある事象だと私は考えています。
November 3, 2025 at 8:26 AM
将来の国力低下を予想して、勝算が乏しかったにもかかわらず大規模な戦争を起こす場合があることは1941年に日本が自ら経験したことでもあります。このパターンから抜け出るための方法が必要であり、軍事機能だけでなく、外交・情報・経済などの機能を連携させる戦略が必要だと思います。3/3
November 3, 2025 at 2:28 AM
2030年代の後半より先送りにすると基礎的国力の低下が見込まれる場合、もし中国指導部がイデオロギー上の理由から台湾統一を絶対に譲れない問題であると考えていると仮定するのであれば、戦争のコストがどれほど大きいとしても、武力を発動することには一定の合理性があると考えられます。2/
November 3, 2025 at 2:28 AM