干し菜
kansouyasai.bsky.social
干し菜
@kansouyasai.bsky.social
成人済。雑伊が好きです。
感想はいついかなるときでも嬉しいです!ありがとうございます!
支部→ https://www.pixiv.net/users/2197144
マロ→ https://marshmallow-qa.com/sb_hoshina?t=KDQnM5&utm_medium=url_text&utm_source=promotion
養×酒、商品名だった!申し訳ない。中国薬酒って意味で捉えていただければ!そして伊の手作りなのでつまりは脱法酒!大学では品行方正ちょっと芋いけどいい子、あれよく見るとイケメン…?と思われがちの伊ですが、研究ガチ勢かなり芋い変人であることが身近な友達には知られている。同級と完全徹夜脱衣麻雀をやるときにはしれっと自分の脱法酒を持ち込んで被験してる。合法のものしか入ってないけど合法の掛け合わせで際どい薬効をつくりだしている。こへが来ると卓が荒れるから滅多に席につかせず長のとなりでするめ与えとく。仙は同級の無様な姿を笑ってる方が好きなので見る専門。
November 26, 2025 at 2:04 PM
「いや、すまない、こんな……さっきまで生き死にの瀬戸際やってたのに……っ」
「ご無事で何よりです」
キリッと真顔で頷いた伊がおかしくて、とうとう空を仰いで笑い声を響かせる。伊のだいすきな、清々しい雑の笑顔。
「助けられたね。名前は?」
「いさくです」
「いさくくん、この恩はかならず」
そう言って立ち上がった雑は、ふ、と笑みを残して、人混みに紛れてしまった。いつの間にやらたくさんのひとが周りで動き回っていて、肩に毛布をかけられてやっと伊は現実に戻った。そして、ぼんやりとつぶやいた。
「連絡先、聞くの忘れた……」
November 26, 2025 at 1:49 PM
ずっと探していたひとを前に伊は思わず見惚れた。そして疎かになった足運びではカメを持った不安定な体勢の全力疾走には耐えられず、結果、伊は、雑の頭に、カメごと、中身をぶちまけた。雑はもちろんバックパックも酒浸しだ。
「うわぁああ!?!!!ごめんなさい!!!!」
雑はポカンとして手元を見ていた。
「……は……はは」
「雑さん……?」
「止まってる」
「?」
「爆弾、止まったみたい」
雑は伊を見、そしてもう一度爆弾を見下ろすと、とうとう耐えられないと腕で顔を覆って声もなく肩を揺らした。
「……あの大丈夫ですか?」
笑っているようだ。
November 26, 2025 at 1:36 PM
解体するのか?ここで?心臓が痛い。ここが分岐点なんじゃないか。雑の生きるか死ぬかの、最後の分岐。じゃあこの日のために自分は生きてきたのだ。
伊は全力で駆けた。そして『不運にも』足元に転がって来た養命酒のカメに躓いて、額を打ちながらハッとする。そらをがむしゃらに持ち上げると、雑の元へ駆け戻る。
「なんで戻って--」
驚愕に見開いた目。フルフェイスを外した顔は、やっぱりずっと会いたかった雑だった。
November 26, 2025 at 1:00 PM
雑は耳に手を当てると冷たく言い捨てた。
「じんざ。右足」
甲高い発砲音。間髪入れず男が膝から崩れ落ちた。どこから狙撃されたのかわからない。少なくとも伊には人影なんて少しも見つけられない。血溜まりにうずくまる男を一瞥すると、雑は伊の背中からバックパックを引き剥がした。
「あの馬鹿が言ったことが真実ならあと2分」
上から覗き込むと、液体の入ったボトルが二つ繋がっているのが見えた。
しゃがみ込んで見ようとする伊の首根っこを掴んで無理やり立たせると雑は出口を指差した。
「全力で駆けろ。私の仲間がいる」
「ざっとさんは?」
「いいから行け!」
雑がどこからかドライバーとニッパーを取り出した。
November 26, 2025 at 12:52 PM
「爆弾はあと5分で爆発する!お前ら諸共地獄行きだ!」
剥き出しの目には狂気がありありと浮かんでいる。
雑の銃口が動いた。
「どういうこと」
「無実が晴れてよかったです」
伊はニコニコと雑の側へ駆け寄った。
「警戒心どこに行ったの。私銃持ってるんだけど」
「ざっとさんは大丈夫って知ってますので。それより、聞いてください。あいつが持っているバックパック、僕のです」
「は?」
「あの人の横っ面を叩いて気絶させてしまって。寝かせるのに枕がわりに置いておいたのですが」
「じゃあ本物は」
「僕が背負ってます。大事そうでしたので床に置くのが申し訳なくて」
「……君の荷物、中身なに」
「養命酒です」
November 26, 2025 at 12:41 PM
「あなたなんて」
知らない、が喉にひっかかる。直感としか言いようのない確信。フルフェイスのヘルメット。がっしりとした体型の長身。そしてこの声。
「ざっ……と……さん?」
「よく調べているようだ」
顔は見えないが苦笑いを含んだ声。カチリ、と安全装置がはずれる。銃口は少しもずれないまま、ゆっくりと雑が近づく。
「手を挙げてゆっくり伏せなさい。これが脅しであるうち」
「あの!僕以外にもひとがいます!そこのベンチに--」
雑の死角になっていた。指差したさきは誰もいない。
「どうして」
中年はバックパックを大事そうに腹に抱えると、ちょうど伊が射線の邪魔になるような位置まで下がると叫んだ。
November 26, 2025 at 12:32 PM
冒頭で怪獣にはたき落とされるヘリのひとみたいだな、とぼんやり思っていた。
「あなたは?」
「くせものだよ。おまえにとってはね」
ふと男が片手にさげているのが拳銃だと気づいた。おお。ドラマで見るのと同じ形をしている。
「え……銃…?」
「抵抗せずに爆弾をわたしなさい」
「ばくだん」
「連続爆破魔が君のような若者だとは。黒鷲のプロファイリングもたまには大外れするらしい」
銃口が伊を捉える。
「ぼぼぼぼくまったく無関係です!」
「ここには犯人しかいない。そうなるよう誘導した」
「ひとちがいです勘違いです!僕はただひとをさがして」
「すいぶん熱烈な脅迫状ありがとう。お望みどおり私がこうして来たよ」
November 25, 2025 at 3:48 PM
おかしな点は他にもある。大学病院の屋上だ。いつもなら死んだ目の研究室仲間や夜勤明けの腐臭漂う先輩が徘徊しているはずなのに、こんなに綺麗な夕焼けに、伊とこの中年のほかには誰もいない。ありえない。伊はひとまず中年男性に回復対位を取らせると、脈を図る。ただ気絶してるだけだ。つぎにあたりをうかがう。静かすぎる。ぐるりと辺りを見回そうとからだをひねったとき、いつの間にかひとつの影が立っていた。
「やあ、こんばんは」
コンビニで会った知人への挨拶みたいな軽さだ。男が一歩、伊に踏み出す。日陰から出ても、男は全身が黒かった。それは見るものが見れば特殊急襲部隊の戦闘服だとわかるが、伊は特撮映画の、
November 25, 2025 at 3:30 PM
前世の記憶はただの思い込みで、雑は本当は自分が作り出した妄想で、そんなことを幼い頃から信じて生きてきた。絶対に今日がその日だとおもったのに、もう日が暮れる。この黄昏時が終わったら本当に終わるのだと強くおもった。あーあ、とひとり声に出す。「でも最後の悪あがきしないと!」と思いっきり背伸びしたところ、誰かにぶつかった。正確には今日一日中背負っていた養命酒のカメが、誰かの横っ面にクリーンヒットした。
「だだだいじょうぶですか!?」
中肉中背の中年男性だった。あわてて介抱するもなにかが引っかかる。ストレッチで身体をねじっただけ。つまりこのひとは声もかけず伊の真後ろに忍んでいたということだ。
November 25, 2025 at 3:17 PM
「とにかく探しに行かなきゃ」
伊はこたつから這い出ると脱衣麻雀の残骸を拾い集めた。
「午後の授業には必ず出るから!」
そう言い残して颯爽と街に繰り出した伊。文に「俺の部屋に置いて行くな持って帰れ」と待たされた養命酒のカメをバックパックで背負いながらこっちな気がする!と思いつくまま街をうろつく。信号待ちすればトラックが突っ込み、バスに乗ればバスジャックが起き、商店街を歩けば任侠沙汰に巻き込まれ。それでもなんやかんや無傷でしかも死人ゼロの奇跡の連発を実感しながらも、毎回人影に雑を探す。そうして会えないまま夕方、大学病院の屋上で「もしかして全部が夢だったんだろうか」と
November 25, 2025 at 3:10 PM
雑にはぜんぜん会えずにどこにいるかもわからずに大学2年になった冬休みの徹夜麻雀明けの朝8時、伊はふと気づく。
「うわっ、うわ最悪!最悪だぁ!」
傍のコタツで寝落ちする留文長を叩き起こして
「今日だ!」
「あー…うるせぇぞ伊…お前が作った度数45の養命酒割りで全員二日酔いだっての……」と文
「雑さんに会う日!今日!」
「あ〜…幼稚園の頃からずっと言ってる運命の日ってやつか」
「留〜寝ないで聞いてくれよ!」
「肩を揺するな、吐くぞ……しかし会ったこともどこにいるかも知れねぇ奴を助けるんだ!って、話も聞き飽きたが、突然それが今日って言われてもなぁ」
「ほんとなんだよぉ」
November 25, 2025 at 12:57 PM
「すみません、飼い主さんだったんですね。警察にも届けてないので、不審に思われたでしょう」
「ああいえ、ぜんぽうじくんを疑っているわけではないんです。ただ少しどういう状態かもわからなかったものですから。朝早くにこんな大人数で押しかけてすみません」
伊がとりあえず中へどうぞ、と招き入れると、男は固辞した。
「いまはその分からず屋を引き取って失礼します。昆、行きますよ」
「……」
「昆」
きつめに呼ばれたハスキーもとい昆くんは、お利口にも伊のエコバッグを加えるととぼとぼとやってきた。最後、伊の横を通り過ぎる時、大きい体躯をすりつけるようにして。
「お礼はまた後日伺います」
「はぁ、どうぞお構いなく」
November 24, 2025 at 11:57 AM
月曜日の早朝、ボロアパートのノックで目が覚める。
「すみません、ここにうちのがいると思うのですが」
四十過ぎの温和そうな男だが、後ろの若い2人はいまにも殴り込んできそうな剣呑さがある。黒スーツなのも威圧感たっぷりだ。
「……どのようなご用件ですか?」
男は笑みのまま、扉の隙間を覗き込むと「昆!」と大きな声を出した。
するとこの二日間、一度も鳴かなかったハスキーが拗ねたように、犬がそんなことするわけないのだが、不貞腐れて、ヴァ、と吠えた。
「あれはうちのでして。車で移動中に逃げ出して探していたんです」
そこでハッとする。もしやイヌ泥棒と疑われていたのだろうか。あわてて伊は頭を下げる。
November 24, 2025 at 11:49 AM
ただ一つの、取り返しのつかない誤解があるとすれば、20歳の伊の考える全部と、四十路の考える全部の深さと重さがあまりにも違うということ。パシャパシャ水遊びできる深さだと思って踏み込んだら、足がつかないどころか底が見えない深さだったら、という。年齢は今書いてる雑伊の話です。
November 24, 2025 at 7:47 AM