そりゃ夫は生きてるからね… 生きていればどんなことも糧にできるよね… でも死んだら　大切な人が死んだらその出来事の中には良いところなんて絶対に一つも見ることができないよ　と思って帰りながら泣いてしまった　悲しい　悲しい

妹の最後の誕生日　姉の家で私と妹の誕生日会をした　妹は25に、わたしは29になった　みんなでいちじくのケーキを作った　私と夫と子供達、姉の家族、妹と妹の夫となる人、わたしたちの父とその妻、みんなで庭で肉を焼いて食べてケーキを食べた　もうすぐ結婚する妹とその夫となる人に花束を渡した　トルコキキョウとユーカリの可愛い花束　その妹が死んだ　あんなに幸せだったのに　妹の夫にも私にも姉にも父にもその妻にも愛されていたのに　それと生きていけるかは全然関係がなかったんだよね

大学進学を理由にわたしは家を出たけど　大学2年の春　死ぬ少し前に母は電話で「あんたと話すと家族だなって感じがする　そう感じられるように頑張ってくれてたって知ってたよ　だから私もあんたの前では家族らしい顔をしていられた　ありがとう　今も話したら少し明るい気持ちになったわ　また電話してね」と言っていた　母としても一生懸命茶番に付き合ってくれていたんだよね　それなのに途中で逃げてごめんね　悪かったなと思う

「本当に？本当に生きててよかったと思うときなんて来るの？そんなこともうずっとない、ずっとないよ」と泣く母に　家族みんなで美味しいスパゲッティを食べたでしょ、妹がこのあいだ⚪︎⚪︎できるようになったでしょ、和菓子屋の練り切り美味しかったでしょ、このあいだ夕焼け綺麗だったでしょ、などと話をしながら家まで歩かせた　そういうことでいいじゃない、小さいことでなんとか日々を繋ごうよ、手伝うよ、と励ましながらなんとか家の玄関まで歩かせたんだった　はたして4年後に死ぬまでに、そういうことはあったんだろうか　苦しみを引き延ばしただけだったんだろうか　いずれにしても周りは死ぬなとしか言えないんだ

その日、私は普通に高校で授業を受けて、部活の練習に出て、帰ってきたところだった　恋や友達関係のありふれた悩みがあった　それなのに道に母が寝ていて、全然動かなくて困って、「私だって投げ出したいときがあるよ、死んだら楽なのにって思うときがあるよ、みんなあるよ、でもなんとか生きてる、そしたら時々ご飯美味しいとかいい景色とかのいいことがあって、死んでなくてよかったって思うこともある　お母さんもどうにか頑張って生きてたら、生きててよかったって思うことが必ずあるよ、あるから帰ろう、一緒に帰ろうよ」と言った　母は泣きながらなんとか家まで歩いてくれた　鮮明に思い出した　高校生の私、悲しかったね　えらかったね

わたしは死は救済だと思っている　どんな人にも等しく用意されているやさしい救い　死んだ人にはもう会えないとも思う　でも生きていく中で自分の中のその人に会うことができると感じている　星野源と同じだね　でもメンクリの先生が「ぼくは、亡くなった方が雲の上で見守ってくれてるって思ってるんです。」って言ったこと、そうかもしれないねって思ってもいるんだよ

家の子供や仕事の子供に死んだ後のことを聞かれたとき　わたしは「死んだ後のことを知ってる人から話を聞けないから私も知らないんだ、どうだと思う？」って聞く　「また赤ちゃんになると思う」とか「他の動物になるかも」とか「なにもないかも」とか「天国は楽しいといいな」とか様々だけど　様々でいいと思う

何歳のときにも戻れない　母にも妹にももう会えない　かなしいね　かなしいまま続きを生きて行くだけ

そういう配慮のない発言を重ねた結果、夫の状態はより悪くなり、管理職は夫本人への電話が禁止になり、私が窓口となった

お風呂に入れますように！

彼らの言う「死ね」や「消えろ」にはそういう意味はなく、ただ不快感や不安感を他の言い方に置き換えるスキルがないだけであり　適切な言い方を根気よく教えていくしかないんだけど　私も毎日浴びていて何年もやって慣れきっているのに時々心にまっすぐ刺さり「ほんとに死ねたらいいのにね」「ほんとに消えられたらいいのにね」と思ってしまうことがある