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ワ　太刀出　20↑
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#新書ページメーカー https://sscard.monokakitools.net/shinsho.php
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。 以下は本文の内容です。 　在室を示す赤く光るランプを見て太刀川が抱いたのは、安堵のような焦燥のような、複雑な感情だった。 　このランプが消えたところを太刀川はしばらく見ていない。もちろん、入れ替わり立ち替わり様々な職員がそこを訪れ、結果としてそこに人が常駐している可能性はもちろん捨てきれない。ボーダー本部自体が２４時間営業だ。防衛施設であるからして、それ自体は何らおかしいことではない。けれど、ここ開発室について言うならば、この場所に２４時間人が詰めている必要があるかと言えば否である。だが、ここに配属されるような人間には必要の有無などは顧みる価値のない些末な基準だった。自分がやりたいかやりたくないか、夢中になれるかなれないか。本質的には戦闘フリークの攻撃手連中とさして変わらない類いの人間たちなのだ。だからこそ、自分の恋人にも水が合ったのだろうと思う。ちょっと合いすぎたくらいに。 　今では古いデザインとなってしまった、けれどひどく手になじんだトリガーホルダーを扉に近づければ、それは音もなく開いた。 「出水」 　侵入者にも気がつかず、自分に割り当てられたデスクでなにやら分厚い資料の束を見つめていた出水が、太刀川の声に顔を上げる。あらゆる関節が錆び付いているんじゃないかと思うくらいのぎこちなさで。 「ぁ、あー太刀川さん」 　掠れた声は彼が久しぶりに声を出したのだと物語る。一度確かめるように発した声はしゃがれていて、出水の声じゃないみたいだった。 「おう、久しぶりだな」 「久しぶりって、大げさすね、前会ったのなんて……」 　言い掛けてふと、糸が切れたように動きを止める。きっと、以前会った日付どころか今日が何日かもわかっていないことに気づいたのだろう。 「５日前」 「あーそうそう、食堂でごはんたべた」 　遠距離恋愛ならともかく、互いに同じ職場で働いていてこれは、さすがに久しぶりと言っても良いだろう。その５日前の逢瀬だって、たったの１時間弱、食事も忘れているらしい出水を太刀川が無理矢理連れ出したのだった。配属されたばかりの頃は、換装体で食べ過ぎて寺島みたいになるなよ、なんて笑っていたのに、いっそその方が良かったかもしれないと思い直すほど、出水は戦闘員だった頃に比べて（その頃だってさして健康的だったわけでもないくせに）如実に痩せていった。換装体で食欲と体型を誤魔化して毎日研究に没頭する姿は、戦闘員だった頃に新しい技を試そうと訓練室に閉じこもっていた頃と、傍目には何も変わっていなかった。 「お前、今が何時かもわかってないだろ」 「まっさかそんなわけ……」 　言いながらさりげなくモニターにやろうとした視線を太刀川は掌で塞いでやる。 「うわ、ずりぃ」 「ほら、言ってみろ」 「ええ、あーだいたい９時くらい？……よる、」 　遠慮がちに付け足されたそれが、こいつ昼夜の区別も曖昧なのかと余計に太刀川を不安にさせる。窓のないボーダー本部の作りは要塞として正しく、特に不満を感じたことはなかったが、不健康では
December 7, 2025 at 1:39 PM
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印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。 以下は本文の内容です。 　在室を示す赤く光るランプを見て太刀川が抱いたのは、安堵のような焦燥のような、複雑な感情だった。 　このランプが消えたところを太刀川はしばらく見ていない。もちろん、入れ替わり立ち替わり様々な職員がそこを訪れ、結果としてそこに人が常駐している可能性はもちろん捨てきれない。ボーダー本部自体が２４時間営業だ。防衛施設であるからして、それ自体は何らおかしいことではない。けれど、ここ開発室について言うならば、この場所に２４時間人が詰めている必要があるかと言えば否である。だが、ここに配属されるような人間には必要の有無などは顧みる価値のない些末な基準だった。自分がやりたいかやりたくないか、夢中になれるかなれないか。本質的には戦闘フリークの攻撃手連中とさして変わらない類いの人間たちなのだ。だからこそ、自分の恋人にも水が合ったのだろうと思う。ちょっと合いすぎたくらいに。 　今では古いデザインとなってしまった、けれどひどく手になじんだトリガーホルダーを扉に近づければ、それは音もなく開いた。 「出水」 　侵入者にも気がつかず、自分に割り当てられたデスクでなにやら分厚い資料の束を見つめていた出水が、太刀川の声に顔を上げる。あらゆる関節が錆び付いているんじゃないかと思うくらいのぎこちなさで。 「ぁ、あー太刀川さん」 　掠れた声は彼が久しぶりに声を出したのだと物語る。一度確かめるように発した声はしゃがれていて、出水の声じゃないみたいだった。 「おう、久しぶりだな」 「久しぶりって、大げさすね、前会ったのなんて……」 　言い掛けてふと、糸が切れたように動きを止める。きっと、以前会った日付どころか今日が何日かもわかっていないことに気づいたのだろう。 「５日前」 「あーそうそう、食堂でごはんたべた」 　遠距離恋愛ならともかく、互いに同じ職場で働いていてこれは、さすがに久しぶりと言っても良いだろう。その５日前の逢瀬だって、たったの１時間弱、食事も忘れているらしい出水を太刀川が無理矢理連れ出したのだった。配属されたばかりの頃は、換装体で食べ過ぎて寺島みたいになるなよ、なんて笑っていたのに、いっそその方が良かったかもしれないと思い直すほど、出水は戦闘員だった頃に比べて（その頃だってさして健康的だったわけでもないくせに）如実に痩せていった。換装体で食欲と体型を誤魔化して毎日研究に没頭する姿は、戦闘員だった頃に新しい技を試そうと訓練室に閉じこもっていた頃と、傍目には何も変わっていなかった。 「お前、今が何時かもわかってないだろ」 「まっさかそんなわけ……」 　言いながらさりげなくモニターにやろうとした視線を太刀川は掌で塞いでやる。 「うわ、ずりぃ」 「ほら、言ってみろ」 「ええ、あーだいたい９時くらい？……よる、」 　遠慮がちに付け足されたそれが、こいつ昼夜の区別も曖昧なのかと余計に太刀川を不安にさせる。窓のないボーダー本部の作りは要塞として正しく、特に不満を感じたことはなかったが、不健康では
December 7, 2025 at 1:38 PM
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少し前に食べた美味しいものたち
March 11, 2025 at 4:59 PM
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蝋梅の花をいただいた
January 30, 2025 at 10:08 AM
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とりあえず自分用の記録に
privatter.net/p/11354169
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January 23, 2025 at 8:45 AM
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あんまりひと様に読んでいただけない文章ばかり書いていてなんかなーって悶々としてるのでこっちに少し篭ろうかなと思ってます
January 23, 2025 at 8:43 AM
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初日の出
January 11, 2025 at 1:23 AM