しかし状況が分かると、泣きわめいて叫んだ。助けを求めた。しかしこの魅音は現在しない。この叫びは詩音以外に届かない。朦朧とする意識の中、詩音は笑った。
「…あんた、もしかして私の幻影なんかじゃなくて、ほんとの幽霊だったりします？」
と。
「もしそうなら…悪いことしたなぁ。」
詩音は涙を静かに流し、目を閉じた。
部屋は静かなはずなのに、空気が揺れていた。

「ごめんなさい、ごめんなさい」と魅音は繰り返し詩音に謝った。詩音は笑ったかと思えば、魅音を叱った。
「私が興宮に来たのは、味方になってくれる親族がいるからだけじゃない。お姉と会おうと思えば会える距離だから」「なのに久々に会えたと思ったら一年で居なくなるって何？」と。詩音も耐えられなくなったのだろう。幻影の魅音と話すのは幸せだけど、同時に現実が痛くて痛くて堪らなかった。「ごめんなさい」と繰り返し泣く魅音を見て、詩音はもう一度口を開いた。
「…魅音、来世も双子がいいね」
そういった時、詩音は床に倒れた。魅音は意味が分からず呆然とするしかなかった。

なんか始まりそうな月ですね…カッコよすぎる

血が擦れた跡がある。最後の最後まで、犯人を追い詰めようと頑張った証なのかもしれない。それでも。
「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁ…っ！！」
最初に声を上げたのは沙都子だった。私は呆然と立ち尽くすしか出来なくて、レナは口元を抑えていた。
　見てわかる。もう助からない。その現実が目の前に広がる非現実さを強調している。
　今年の連続怪死事件の被害者は三人だった。