ぺけ子🦀
hokoodashi.bsky.social
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雑押壁打ちアカ
ネタ置き場
雑押 出られない部屋

半月が中天に懸かる頃、忍務が滞りなく終わった。月明かりが木々の隙間から細く差し込む。仲間への合図の後、山中を歩く雑渡と押都は帰路を急いでいた。
前を進む雑渡が足を止める。視線の先、立ち並ぶ巨木の根元に埋もれるようにして一宇の祠が佇んでいる。
屋根を覆う苔は夜の湿気を吸って黒々と光り、土台の石は長い年月の重みに耐えかねたように、わずかに傾いていた。周囲には、古びた注連縄が蛇の抜け殻のように地面を這っている。
January 31, 2026 at 11:28 PM
記憶を失った組頭の話 雑押

物見をしていた反屋より報告を受け、押都はタソガレドキ忍軍の陣屋に足を向けていた。組頭である雑渡が忍務中に怪我を負ったと話を聞き、珍しいこともあるものだと思いながら治療部屋へと辿り着いた。中途半端に開け放たれた障子の向こうに声をかけるよりも早く、室内から半ば焦ったような表情の山本が飛び出て来た。
「……組頭の容態は、」
押都が山本に声をかける。山本は部屋の中と押都を順番に見たあと、焦燥をため息として吐き出した。
「大事ない、と言いたいところだが……」
何とも歯切れの悪い言い方である。
January 27, 2026 at 9:59 AM
雑押の合戦話

血と煤の匂いが川霧に溶けていた。
焼けた地面は熱を帯び、足の裏から骨へとじわじわ噛みつく。雑渡は甲冑を鳴らし、刃を収めずに歩いていた。戦場では影もまた牙を持つ。油断は死よりも重い。
押都は一歩先を行き、振り返らずに言った。
「お前ほど手のかかる男は他に知らんな」
その声音には責めと諦観、微かな安堵が混じっていた。血腥い戦場にあっても、押都の背筋は真っ直ぐだった。雑渡は一瞬、初陣の記憶を辿った。あの時もまた、この男は自分を導いて同じ事を言っていた。勝ったはずの戦、仲間の名を数えられなくなった夜。過ぎ去った様々な経験が今の雑渡を形作った。
January 23, 2026 at 6:50 AM