前述の通り、生成AIには多くの権利的問題が存在しており、これは到底無視されてはならないところである。また、AI生成物をそうでない（つまり、手書きなど）と偽って公開することは、創作に対して冒涜的であり、許容しがたい。生成AIが利用されることで侵害されるものがあることは重く受け止められるべきであり、その対策については大いに検討されるべきである。
しかし、生成AIを利用することで、間接的に侵害されるものがあることもこれまた確かなのである。
我々がAIに馴染むそのときを待っていては遅く、この問題はもう少し包括的に捉えられていくべきだと考える。

この寛容化の根本には、AIという存在が我々にとって未だ得体の知れないものであることが考えられる。AIに対する否定的な感覚が共有しやすくあるがゆえ、集団心理が作用してこれを激化させている。
おそらく、「犯罪者やネット上で炎上している者ならば、彼らを無制限に叩いてもよい」という命題については、これを偽と答えられる人は少なくないはずである。しかし、この仮定を「AI生成物やその生成者」に置き換えた途端、内在するAIへの奇妙な感覚・忌避感が集団心理によって強く支配的になり、冷静にこの命題を真偽判定する余地を与えない。
こうして、AI生成物の生成者への人格否定までもが軽視されてしまっている現状なのである。

昨今、 AI生成物の生成者やAI生成物という「作品」の投稿に対する非難の程度は明らかに異常と言え、非難という領域を逸脱した意見や感想が多々見られる。そして、これらの否定の対象とするものが、AI生成物そのものなのか、その生成者の生成行為なのか、そしてその生成者の人格なのか、まともに分別されていないのである。例え、あるAI生成物が法的・倫理的に重大な問題を孕んでいることが認められた場合でも、それがその生成者の人格を否定することまでも正当化できる根拠にはなり得ないし、そもそも人格否定の正当化根拠など存在しない。
至極当然なことを述べているが、生成AIが関与するとこの辺りが妙に寛容化しているのである。