本当は彼も例に漏れず「悪いが先約済みだ」と牽制したし、ぶっちゃけちょっと離れた場所とはいえ従者に声をかけようとするとすごい勢いで睨んでくるから周りも「あぁ、駄目なんですね」と察してたけど、本人にはそんなこと言わないのである

やぶさかではないんだけど実際のところこの女ぜんぜんひっかかってくれないしそれっぽい距離感を匂わせても「このひとが私をそういう目で見るわけがない」という固定観念があまりにも強すぎて全く効かないし（でも照れるは照れる）、かと思えば従者の方は「私はあなたのこと大好きだからね」と臆面もなく日常的に言ってくるので、最終的には本懐後にしれっと「連れ合いだ」と称することで事実から先行して存在させる作戦に落ち着く。作戦なのかそれは

その場限りのお姉さんがたには全然ばれたのに肝心かなめの唯一だけが全く気付かず「楽しくなかった？」などと聞いてくるものだから「誰のせいでそういう場に関心がなくなり誰のせいであまり乗り切れず誰のせいでとっとと帰ってくる羽目になったのか」とめちゃめちゃになっちゃう戦士。でもその日のうちに帰ってきたらきたで見るからにご機嫌になって「お姉さんたち綺麗だった？　お酒おいしかった？　今度は私も行ってもいい？」とるんるんで言ってくるからもうどうにでもな～れの心境。たぶんそのうち連れてって察したお姉さんがたに「あぁ、あの子が例の……」みたいな微笑ましい顔される

急にはしゃいで嬉しそうな様子に不意を突かれて毒気を抜かれ、ついさっぎでのくさくさした気分もどっか行っちゃって、思わず笑いながら「寝てからにしろ」と答える戦士のひと幕。仲良しでとっても可愛い

従者が出迎えながらもすご〜くびっくりしてたからカチンときて「俺が戻ってきたら不都合でもあるのか」と聞いたら「あなたといられるならいつでもどこでも私は最高の気分だけど、今日はもう戻ってこないと思ってたから……もしかして楽しくなかった？　あなたはああいう場所、好きだとばっかり思ってたんだけど……」と言われ、なんかもうめちゃめちゃになっちゃって自棄で「お前は」と聞いたら「うん？」「お前が行きたい場所はないのか」「私？　うーん……今ぱっとは思いつかないかな」「俺が連れて行くとしてもか」「！？！？　エッあなたが連れてってくれるの！？」「おー……」「待って待って、明日まで待って！　寝ずに考える」と言われ、

従者の「私があなたといるのはぜんぶ私のためで私のせいだし、私があなたのこと大好きなだけだからあなたがいらないと言うまで私はあなたの従者だよ」というスタンス、一方では「俺がどうなろうとこいつは俺を選ぶ」と戦士を安心させるし、一方では「だがもしこいつがそう判じたら、こいつは容赦なく俺を捨ててどこかへ立ち去るだろうな」と不安にもさせてる。こんなに強く偉大で賢明なかつて英雄だった戦士が、武器もまともに持てないくせに怪我や食事や寝床にはたいそう口うるさいよわっちい従者にこんな感じでめちゃめちゃになってるの、無限に見たい。でも、腹の奥底では強烈に自分のものだとも思っているらしい