えむぐりあ
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えむぐりあ
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洋画沼に潜むもの。常に何かを編んでいる。責任能力のある成人が、自ら愚かさに足を踏み入れていく表現が好き。
フィクションにおける名画の扱いは難しく、「壮絶に美しい絵」を画面に映した途端嘘っぽくなりがちなのですが、駄目な絵の駄目さも、やはり説得力をもって語るのは難しいように思えます。(Netflixの『リプリー』を想起しつつ)(『リプリー』は頑張ってはいたと思う)

ですが、「ヒトラーの絵」と、「ヒトラーを現代絵画の知られざる巨匠とする、売れないシェイクスピア俳優」とを設定することで、「救いようがなく駄目だね!」という衝撃を与えたのは上手いと思う。
November 17, 2025 at 1:07 PM
気楽に楽しめる、いわゆる「ラブリー」な作品だと思って観たので、犯人が判明した際の衝撃がすごくて倒れ伏している。しんどい。

ラブリーな舞台装置、ラブリーな設定、ラブリーなキャラクターで不法移民排斥はやらんでほしい。いや、でも、そういうやり方が一番効果あるのもわかるんだけど……!
November 5, 2025 at 2:11 PM
これは蛇足なのですが、履いている靴下のセンスがおかしいティルダ・スウィントンも出てきます。運命の破滅がティルダ・スウィントンの形でやってくるのはめちゃくちゃ怖い。

男同士では傷を舐め合ったり、奪い合ったりする一方で、女性はめちゃくちゃ怖くて人間とは思えないか、あるいはめちゃくちゃ美しくて無制限に優しくて面倒を見てくれる若いエキゾチックなキャラクターしか出てこないというのは、ちょっとどうかと思う。
November 1, 2025 at 1:54 PM
とはいえ、冒頭の、終わってるギャンブラーの終わり具合を説明するシークエンスはちょっと素晴らしいです。『西部戦線異常なし』の冒頭、戦死した兵士の軍服のリサイクルを説明するシークエンスでも、ドイツの第一次大戦の詰んでる感がすごかったですが、エドワード・ベルガーは、手詰まりな状況や破綻寸前のシステムの説明がめちゃくちゃ上手い。金融恐慌の話とか撮ってほしい。

あと、賭博場の主みたいな東アジア系女性もめちゃくちゃ怖いです。金持ちの亭主が浮気している面あてにギャンブルに興じているそうですが、あれはもうわりと人間ではなくなってしまっている感あった。
November 1, 2025 at 1:54 PM
落ちぶれたギャンブラー同士の会話で、ギャンブラーの地獄は勝ち続けること、みたいな会話があるので、終盤、主人公が賭博で起死回生を遂げるところは、「もうこいつ死んでいるのでは?」と期待していたのですが、そうではなかったのでかなり残念。
November 1, 2025 at 1:54 PM
ある土地を植民地にして収奪するというのは、いつ、誰が、どのような形でしっぺ返しをくらっても仕方がない、ということなので。

でもなんかいまいち納得できてない。アイルランド人男性が中国人女性を救う、ならまあぎりぎりあってもいいかな、くらいな気持ちにはなるけど、なんで中国人女性がアイルランド人男性を救わなければならないんか? みたいな気持ちはある。
November 1, 2025 at 1:54 PM
主人公のアイルランド人詐欺師の破滅を、若く美しい中国人女性が奇妙なやり方で救うのですが、これはいわゆる「マジックニグロ」と「マニックピクシードリームガール」の合体だと思われます。中国人女性周りの描写はまじでご都合主義すぎてみっともない。

東アジアの男尊女卑慣習の残る村から逃げるために、若い女性が両親の金を盗んで逃げたことと、裕福なイギリス人の高齢者女性を騙して、詐欺師が金を持ち逃げしたことを一緒にするなよ……と思いましたが、詐欺師はアイルランド系なので、ぎりぎり同じにして大丈夫かもしれない。
November 1, 2025 at 1:54 PM
ただ、「これ施餓鬼会か!」と言ったら、仏教の催しに疎いクリスチャンの友人は「セガキエ?」となっていたので、逆にわかる人が少ないという判断があったのかもしれない。
November 1, 2025 at 1:54 PM
『パトリック・メルローズ』は本当に本当に素晴らしかったので、ぜひ強く薦めたいところなのですが、どこも配信していないのが糞なのよね。私は近所のTSUTAYAで借りました。でもエドワード・ベルガー監督の作品では、『パトリック・メルローズ』が一番好きかもしれない。
October 29, 2025 at 3:06 PM
『パトリック・メルローズ』、ベネディクト・カンバーバッチも素晴らしいのですが、主人公に性的虐待をする父親役のヒューゴ・ウィーヴィングが、まじで邪悪できもいです。ヒューゴ・ウィーヴィングは『窓際のスパイ』で主人公の邪悪な父親を演じていて、なんで? と思っていましたが、『パトリック・メルローズ』の父親役を観たら納得でした。『パトリック・メルローズ』ではものすごく情けない悪事に全勢力を注いでいる、ものすごく情けない男なのですが、本人はそれをやることが素晴らしい一大事業だと思い込んでいる、みたいな謎の説得力があった。
October 29, 2025 at 3:06 PM
『パトリック・メルローズ』に比べると、『西部戦線異常なし』や『教皇選挙』、『端くれ賭博人のバラード』では、すり潰し具合がより洗練されているのですが——常にすり潰すのではなく、重大な瞬間に徹底的にすり潰す——、そういう好み的なものを抑制できることに敬意を抱かざるをえません。
October 29, 2025 at 3:06 PM
これでエドワード・ベルガーの仕事を『ザ・テラー』、『教皇選挙』、『西部戦線異常なし』、『パトリック・メルローズ』、『端くれ賭博人のバラード』と観てきましたが、毎回、知性と感受性に優れた白人男性が巨大なシステムにごりごりにすり潰される場面をそれはそれはいい感じに撮っているので、たぶん、そういうのを撮るのがすごく好きで上手い監督、という把握でいいような気がする。『端くれ賭博人のバラード』、何となく常に印象の薄い(ごめんなさい)コリン・ファレルが主人公ですが、今回はものすごくよかった。こういう、鬼気迫る演技できたんだ! と驚きました。
October 29, 2025 at 3:06 PM
e7のラストでリプリーがベネツィアに到着する場面、ショスタコーヴィチの『ジャズ組曲 第二番 第二ワルツ』がかかるところは大変美しく印象的なのですが、あそこでハムスターホイールが壊れてリプリーが解き放たれた、ということなのかもしれない。しかしなぜ解き放たれたのかはよくわからない。ベネツィアすごい、ということなのか。ではなぜローマではそれが起こらなかったのか。
October 17, 2025 at 2:42 PM
リプリーの造型も、同性愛者というよりはAroAceに寄せてあるように感じられて、ちょっとよかった。このひといいな、と感じた相手に対して、恋愛的惹かれや性的惹かれではなく、その人に成り代わりたい、その人のエッセンスを汲みつくしたい、みたいな欲望を感じるところがAroAceっぽい。

その欲望を向けた相手が、それを恋愛的惹かれや性的惹かれだと感じて反応すると、その反応に対して激昂したりパニックになったりするところもリアルだった。リプリーがセックスとロマンスに対して抱くうっすらとした嫌悪、みたいなのも感じられてとてもよかった。
October 17, 2025 at 2:42 PM
作中、リプリーは殺害対象である富豪の息子から教えられたカラヴァッジョに取り憑かれたようになるのですが、最終話のヴェネツィアの場面は要所要所でカラヴァッジョレスクを意識した画面作りをしていて、とにかく最終話を撮りたかっただけなのでは? という気がしてならない。

最終話のアンドリュー・スコットは本当によかったが、本当によいアンドリュー・スコットはアメリカ人には見えない問題はあるかも。とはいえ、e1〜7までのアンドリュー・スコットがアメリカ人に見えたかというと微妙なところではある。
October 17, 2025 at 2:42 PM
そんなことができるなら、最初からそうやっていればよかったのではないか。
October 17, 2025 at 2:42 PM
リプリーこんなに間抜けだったか? いや、25、6で暴力に慣れていない青年のやることはこんな感じか、「リプリー」というキャラクターに対して幻想を抱いていたのかもしれない、しかし、アンドリュー・スコットにこんな杜撰なキャラクターをやらせる意味はあったのか? 途方に暮れた顔でハムスターホイールを廻すハムスターのようなアンドリュー・スコットを期待していたわけではない、確かにかわいいと言えなくはないかもしれないけど……と思っていると、最終話、ベネツィアでいきなりいつもの賢く優雅で冷酷なアンドリュー・スコットになって、抑制のきいた行動で事態を打開するので、いったいe7とe8の間で何が起こったんだろう。
October 17, 2025 at 2:42 PM