em-thread.bsky.social
@em-thread.bsky.social
そして、祐一の代わりにあの場所を訪れる光代とばあちゃん。祐一を、何があっても大事な人だと思えるこの二人だけが、その贖罪を引き受けることができるのだから。
やがて、宙ぶらりんの光代の愛が、祐一に守られている事でゆっくりと彼女の中に根を下ろし、彼女を支えてくれるだろう。祐一を支えて救うように。
June 18, 2025 at 1:16 AM
心から大事だと思える人を持てない者は、自分の空虚さに怯え続けるしかない。怯えながら足掻く。執着や傲慢や孤独に苛まれながら。佳乃や増尾や祐一の母や、かつての祐一がそうだった様に。
けれど光代と祐一は違う。あの灯台での、輝かしく満たされていた日々は確かにあった。それでええやないか、と思う。ただ、祐一との間に生まれた希有な愛だけが真実やないか、と。かけがえのない人が居るという、その事だけが。祐一は光代を守り切ったその事で救われているのだから。光代の存在そのものが、彼を救っているのだから。
光代が「その悪人を私が勝手に好きになっただけなんですよね?」と、何度人に問うても、それは何も変わらない。
June 17, 2025 at 1:25 PM
ばあちゃんが呟く「恐ろしかかも知れんけど、正しいと思う事をせんといけん」という言葉そのままに、祐一は彼が正しいと思う事をした。ようやく見つけた心のあり場所を手放し、光代を自分から解き放ち、そして、彼女を守る。祐一は光代という人が居ること、ただそれだけで良かった。それ以上を求めてはいけない。だって、彼は殺人者なのだから。彼が光代を心から大切だと思うのと同じく、彼が手をかけた佳乃もまた、誰かにとってかけがえのない人だった。その事を知った祐一はもう、光代を手放すしかない。
じゃあ、光代は? 祐一をかけがえのない人だと知った光代は?
人殺しの彼を愛した光代は?
June 17, 2025 at 1:25 PM
宮部みゆき「模倣犯」4
そして高井和明。ピース&浩美連合の悪の深さと同じくらいの善良さを持つ高井和明。高い知性を持ちながら自分のそれに気付いていない。自分を犠牲にしてでも幼なじみを救おうとする、そしてそれが自己犠牲だという事さえ考えない。死の間際でも。全き善って、こういう物なのかも知れない。グリーン・マイルの「コーフィー」みたいに。だから、その全き善が滅びてしまうのを観るのは辛い。それは、地上に善はない、と宣言されたような気がするからかも知れない。そしてそれが、このやるせない読後感に繋がるのかも。
June 8, 2025 at 4:08 AM
宮部みゆき「模倣犯」3
物語が始まった時にはもう死んでいて、彼女の描写が常に隔靴掻痒だったのが残念なのが古川鞠子だ。美しく聡明な彼女も理不尽な暴力の前には儚いと言う事実が辛い。そしてその鞠子の祖父である有馬義男。混乱の時代を生き抜いたこの老人が見せる、大人の矜持と知恵。高井和明に並んで、この物語にある救済の形なのだろうけど…。物語の最後の、彼の独白。なんでそれ、わざわざ言わせるかなあ。そうなんだけど。彼は救われない。真一や水野久美が傍に居ても…と思うと本当にやるせない。
June 8, 2025 at 4:08 AM
宮部みゆき「模倣犯」2
高井由美子、そもそもしっかり者の妹だったはずなのに、何であんなヘタレになってしまったのだろう。それも謎。
前畑滋子とその夫も苦手。滋子はちょっと頭が悪すぎる。なのにあの逆転ホームラン。納得行かない。夫もどうよ。調子が良すぎてゲンナリする。
塚田真一も途中までグニャグニャしてるけど、まあこれは若いからしょうがない。この子が周りの支えを得て成長するのを観るのは楽しかった。
そしてそんな塚田真一の正反対にいるのが樋口めぐみ。この話の中で「こんな奴おらんやろ」と思いつつ、だからこそ「居るかも…」と内心思えた。居るよな、きっと。
June 8, 2025 at 4:08 AM