浪々の日々を送る、才能のない(と思われる)主人公が、ひょんな事からお家騒動に関わり、自分でもびっくりするくらいの活躍をする。おそらく、藩から藩への放浪を続ける内に得た知見が役に立ったのだろう。そして事が成りいよいよ士官となったとき、彼は尻込みしてしまう、その様子が可笑しい。結局、藩には藩の論理があり、それ故に、留まることが出来るのだが、その藩の論理までは彼に思い至らない、というのが楽しい。思わず、ふふふ、と声を出して笑ってしまう物語の閉じ方が素敵。干し草小屋の匂いとか、汚れた火打ち石袋、とかの小物使いも行き届いている。大好き。
浪々の日々を送る、才能のない(と思われる)主人公が、ひょんな事からお家騒動に関わり、自分でもびっくりするくらいの活躍をする。おそらく、藩から藩への放浪を続ける内に得た知見が役に立ったのだろう。そして事が成りいよいよ士官となったとき、彼は尻込みしてしまう、その様子が可笑しい。結局、藩には藩の論理があり、それ故に、留まることが出来るのだが、その藩の論理までは彼に思い至らない、というのが楽しい。思わず、ふふふ、と声を出して笑ってしまう物語の閉じ方が素敵。干し草小屋の匂いとか、汚れた火打ち石袋、とかの小物使いも行き届いている。大好き。
世間からは放蕩息子、ろくでなし亭主と思われているだろうぼんぼん育ちの男。それに比べて、貧しい出自ながら、秀でた頭脳と真面目さで商家で着々と出世している男の対比。この、ろくでもない男をよく理解する女が、そのひとりごとで、彼の心の中に秘められた苦しさや葛藤を明らかにする。読後は、知らず知らず、非道と思われたこの悲しい男と誠実な女の幸せを祈るような気持ちになる。江戸という閉塞した世間から、海辺の漁師町へと移り住もうという女の「海は良いわよ。嫌なことが有ったら海に出れば良いのよ。」というひと言が秀逸。
世間からは放蕩息子、ろくでなし亭主と思われているだろうぼんぼん育ちの男。それに比べて、貧しい出自ながら、秀でた頭脳と真面目さで商家で着々と出世している男の対比。この、ろくでもない男をよく理解する女が、そのひとりごとで、彼の心の中に秘められた苦しさや葛藤を明らかにする。読後は、知らず知らず、非道と思われたこの悲しい男と誠実な女の幸せを祈るような気持ちになる。江戸という閉塞した世間から、海辺の漁師町へと移り住もうという女の「海は良いわよ。嫌なことが有ったら海に出れば良いのよ。」というひと言が秀逸。
祐一はセックスが上手だ、と佳乃。光代とのベッドシーンも、嫌な感じが全くしない。とても良いセックスだと思う。でも、どのレビューでもこの点について触れていなくて、私的には???だった。すごく大事なことなのに。優しくなければ良いセックスは出来ないから。祐一は相手を大切にしている。愛そうとしている。
そうしたら、あるブログでこんな一文を見つけました。
祐一のセックスについて
「祐一は無口で口下手ですが、一生懸命伝えようとしていたと思う」
本当にそうなんです。思わず膝を打ちました。そやねん、それが言いたいねん。
ああ、やっぱり。私、祐一が好きやなあ。
祐一はセックスが上手だ、と佳乃。光代とのベッドシーンも、嫌な感じが全くしない。とても良いセックスだと思う。でも、どのレビューでもこの点について触れていなくて、私的には???だった。すごく大事なことなのに。優しくなければ良いセックスは出来ないから。祐一は相手を大切にしている。愛そうとしている。
そうしたら、あるブログでこんな一文を見つけました。
祐一のセックスについて
「祐一は無口で口下手ですが、一生懸命伝えようとしていたと思う」
本当にそうなんです。思わず膝を打ちました。そやねん、それが言いたいねん。
ああ、やっぱり。私、祐一が好きやなあ。
さっきAIで、祐一の実際の刑期をざっくり計算したら、最悪無期刑だった。衝動的殺人と死体遺棄だけなら長くて15年前後で済む。
祐一が光代をマインドコントロールして逃亡に利用したなら、何で土壇場でわざわざ、あんな事するだろう?死刑になるかもしれんって怯えてたのに。
祐一は、光代を守るためだったら、死刑になっても良かったんやね。あと、本当に罪を償おうとも思ったんやろなあ。
いや、さすがにこれには気づくでしょ、光代。おいおい。
さっきAIで、祐一の実際の刑期をざっくり計算したら、最悪無期刑だった。衝動的殺人と死体遺棄だけなら長くて15年前後で済む。
祐一が光代をマインドコントロールして逃亡に利用したなら、何で土壇場でわざわざ、あんな事するだろう?死刑になるかもしれんって怯えてたのに。
祐一は、光代を守るためだったら、死刑になっても良かったんやね。あと、本当に罪を償おうとも思ったんやろなあ。
いや、さすがにこれには気づくでしょ、光代。おいおい。
小説中に「ちくわ」が2箇所出てくるの、検索して何かの伏線かと探ったり、三瀬峠をマップで検索したり。
とはいえ、そろそろ離脱したい。話が話だけに、しんどくなってきたよー。
小説中に「ちくわ」が2箇所出てくるの、検索して何かの伏線かと探ったり、三瀬峠をマップで検索したり。
とはいえ、そろそろ離脱したい。話が話だけに、しんどくなってきたよー。
ひとつの物語を読み終えると、そのお話の「その後」を考えてしまう。今回は光代の事ばかり。
彼女が裕一に感じた「離れた途端にすぐ会いたくなる」というあの気持ち。ただ一緒にいるだけで満たされる。どうしてこんなに人が好きになれるのだろう?と自分の感情に戸惑いながら、あふれ出る思いをとどめることが出来ないあの感じ。
昔、うんと若かった頃、私を支配したあの感情が、光代と祐一の逃避行中にちりばめられていて、胸が苦しくなった。何物にも代え難い、生きる喜び。
その頂点で引き裂かれた光代はそのあと、どうしたのだろう。
宙ぶらりんのまま放り出された光代の愛は?
ひとつの物語を読み終えると、そのお話の「その後」を考えてしまう。今回は光代の事ばかり。
彼女が裕一に感じた「離れた途端にすぐ会いたくなる」というあの気持ち。ただ一緒にいるだけで満たされる。どうしてこんなに人が好きになれるのだろう?と自分の感情に戸惑いながら、あふれ出る思いをとどめることが出来ないあの感じ。
昔、うんと若かった頃、私を支配したあの感情が、光代と祐一の逃避行中にちりばめられていて、胸が苦しくなった。何物にも代え難い、生きる喜び。
その頂点で引き裂かれた光代はそのあと、どうしたのだろう。
宙ぶらりんのまま放り出された光代の愛は?
何の問題もなく全てが完璧なツルツルピカピカの「家族」なんて無い、と、予て私は思っているのだが、だからといって人がそれを求めないかと言うとそんな事はなく、だから家族はしんどいのだけれど、この歳(完璧なシニア)になると、それもまた味わいかもなあ…と、ぼんやり思える程度には楽になる。このお話に出てくる家族は皆それぞれに瑕疵を持つけど、結局のところ、その家族さえ持てなかった人物は何も救われる事なく破滅する。その、ぽっかりと空いた大きな穴に飲み込まれて、みたいな。そんなお話だった。ああ、しんど。
何の問題もなく全てが完璧なツルツルピカピカの「家族」なんて無い、と、予て私は思っているのだが、だからといって人がそれを求めないかと言うとそんな事はなく、だから家族はしんどいのだけれど、この歳(完璧なシニア)になると、それもまた味わいかもなあ…と、ぼんやり思える程度には楽になる。このお話に出てくる家族は皆それぞれに瑕疵を持つけど、結局のところ、その家族さえ持てなかった人物は何も救われる事なく破滅する。その、ぽっかりと空いた大きな穴に飲み込まれて、みたいな。そんなお話だった。ああ、しんど。
長かった。そして苦しかった。何でこんなにしんどい思いしてまで読まんとあかんねん…と思いながら、なんとか読了。でも、頑張った割に充足感がないのは、ちょこちょこ感想文をつまみ食いしたりした影響かしらん。
ピースの自滅が納得行かない。彼自身が心を病んでいるから、どこかで暴発するのは当然としても、こんなに一気に破綻するだろうか?もう少しジワジワと破滅させて欲しかった。
高井由美子の知る真実がピースの演出した「嘘」だと言うことも気に入らない。どうせなら、兄を殺した真犯人に心を許してしまった自分を責めて…くらいにして欲しかった。どちらにしろ、救い無いけど。
長かった。そして苦しかった。何でこんなにしんどい思いしてまで読まんとあかんねん…と思いながら、なんとか読了。でも、頑張った割に充足感がないのは、ちょこちょこ感想文をつまみ食いしたりした影響かしらん。
ピースの自滅が納得行かない。彼自身が心を病んでいるから、どこかで暴発するのは当然としても、こんなに一気に破綻するだろうか?もう少しジワジワと破滅させて欲しかった。
高井由美子の知る真実がピースの演出した「嘘」だと言うことも気に入らない。どうせなら、兄を殺した真犯人に心を許してしまった自分を責めて…くらいにして欲しかった。どちらにしろ、救い無いけど。
とにかく、とことんまで落ちぶれた娼婦の描写が容赦ない。その描写が物凄すぎて引き込まれてしまう。そして直ぐにこの娼婦が、主人公が探し続けている初恋の女だろうと思いあたる。主人公が語る初恋の物語は美しい。けれど居合わせた老人が語る「本当の話」は正反対の強欲な女の話だ。だが、主人公はそれでも良いという。この酔い潰れた娼婦を自分が連れて帰って面倒を見る、と。彼と娼婦が去ったあと、老人は泣き伏せる。
「わたし、つーちゃんよ」という言葉が、何ものにも穢される前の幼い彼女の言葉こそが、ただひとつの「本当」なのだろう。
美しく、悲しいお話。
とにかく、とことんまで落ちぶれた娼婦の描写が容赦ない。その描写が物凄すぎて引き込まれてしまう。そして直ぐにこの娼婦が、主人公が探し続けている初恋の女だろうと思いあたる。主人公が語る初恋の物語は美しい。けれど居合わせた老人が語る「本当の話」は正反対の強欲な女の話だ。だが、主人公はそれでも良いという。この酔い潰れた娼婦を自分が連れて帰って面倒を見る、と。彼と娼婦が去ったあと、老人は泣き伏せる。
「わたし、つーちゃんよ」という言葉が、何ものにも穢される前の幼い彼女の言葉こそが、ただひとつの「本当」なのだろう。
美しく、悲しいお話。
「剣聖」などと呼ばれながら、さも無い者をを切って捨てる宮本武蔵。半端者のイワタがその剣聖を「見栄っ張りの老いぼれ」と喝破し、その権威に群がる世間を利用して、念願の料理屋を手に入れる。その料理屋を世間の人たちは「よじょう」と呼ぶ。宮本武蔵が末期に張った大見得、「豫譲の故事」が所以だ。世間にはその故事の意味などどうでも良いから平仮名なのだ。
山本周五郎、宮本武蔵が嫌いやってんやろな…と思わずにいられない。そしてそんな宮本武蔵を持ち上げて更には落として楽しむ世間の浅はかさも。
「剣聖」などと呼ばれながら、さも無い者をを切って捨てる宮本武蔵。半端者のイワタがその剣聖を「見栄っ張りの老いぼれ」と喝破し、その権威に群がる世間を利用して、念願の料理屋を手に入れる。その料理屋を世間の人たちは「よじょう」と呼ぶ。宮本武蔵が末期に張った大見得、「豫譲の故事」が所以だ。世間にはその故事の意味などどうでも良いから平仮名なのだ。
山本周五郎、宮本武蔵が嫌いやってんやろな…と思わずにいられない。そしてそんな宮本武蔵を持ち上げて更には落として楽しむ世間の浅はかさも。
映画化されていると知って、YouTubeで検索したのが悪かった。主人公・伊兵衛が寺尾聰、妻のおたよが宮崎美子。おたよはまあ、我慢出来るとして、寺尾聰は…無いわ。なんかフニャフニャしていて不潔だ。でも、見てしまったものは取り消せない。良い話なのになあ。あと、原田美枝子ってどうしてあんなに…以下略。
映画化されていると知って、YouTubeで検索したのが悪かった。主人公・伊兵衛が寺尾聰、妻のおたよが宮崎美子。おたよはまあ、我慢出来るとして、寺尾聰は…無いわ。なんかフニャフニャしていて不潔だ。でも、見てしまったものは取り消せない。良い話なのになあ。あと、原田美枝子ってどうしてあんなに…以下略。
「妹の縁談」→「湯治」→「おたふく」の順に話は繋がっている。ここでも主人公おしずの善良さ、可愛さ、女きょうだいの睦まじさが微笑ましい。それにしても、この出来た姉妹にくらべ、嫁を貰ったきり近寄らない長男と言い、たかるばかりのえいちゃんと言い、おとっさんとおっかさんはどんな子育てをしたのだろう。謎。
この一編も朗読が見事で最後の主人公の絶叫は見事。心がしーんとして終わる、この感じが。朗読って良いなあ、と思わされる作品でした。
「妹の縁談」→「湯治」→「おたふく」の順に話は繋がっている。ここでも主人公おしずの善良さ、可愛さ、女きょうだいの睦まじさが微笑ましい。それにしても、この出来た姉妹にくらべ、嫁を貰ったきり近寄らない長男と言い、たかるばかりのえいちゃんと言い、おとっさんとおっかさんはどんな子育てをしたのだろう。謎。
この一編も朗読が見事で最後の主人公の絶叫は見事。心がしーんとして終わる、この感じが。朗読って良いなあ、と思わされる作品でした。
この短編集で出て来た女の人はみんな、健気で善良で聡明だ。それに比べてこの短編の主人公はとんでもなくだらしがなく、薄っぺらで弱い。女房なんてものはぶん殴ってなんぼだ、と、酔ってくだ巻く碌でなし。惨めだった父親をディスっているが、実はそれが等身大の自分…と言うオチで、読み手の私は思わず嘆息するが、何故かこの主人公を馬鹿にする気がしない。人間とは弱いもの。愛されたいもの。「ちゃん、入りなよ」と行ってくれる息子が居る、その一つ事で許されるのだろう。彼自身がそうだったように。
この短編集で出て来た女の人はみんな、健気で善良で聡明だ。それに比べてこの短編の主人公はとんでもなくだらしがなく、薄っぺらで弱い。女房なんてものはぶん殴ってなんぼだ、と、酔ってくだ巻く碌でなし。惨めだった父親をディスっているが、実はそれが等身大の自分…と言うオチで、読み手の私は思わず嘆息するが、何故かこの主人公を馬鹿にする気がしない。人間とは弱いもの。愛されたいもの。「ちゃん、入りなよ」と行ってくれる息子が居る、その一つ事で許されるのだろう。彼自身がそうだったように。
「おたふく」の前日談。妻の過去に嫉妬する義兄に、姉がどれだけ彼を想っていたかを掻き口説く妹が、何故それ程までに姉を思いやらずにいられないか…がこの話で分かる、と言う仕組み。ここにも悪人は出て来ない。ブラックシープの兄「えいちゃん」でさえ、本当に悪い人ではない、と主人公は語っている。主人公と妹が日帰りで行楽に出かけた先の茶店で交わす会話に溢れる、いかにも善良な彼女たちのユーモア。この人たちにこそ幸せになってほしいと想わせる、そんな造形が見事。周五郎は「おんなのひと」が本質的に好きだったのではないか?とちらっと思った。
「おたふく」の前日談。妻の過去に嫉妬する義兄に、姉がどれだけ彼を想っていたかを掻き口説く妹が、何故それ程までに姉を思いやらずにいられないか…がこの話で分かる、と言う仕組み。ここにも悪人は出て来ない。ブラックシープの兄「えいちゃん」でさえ、本当に悪い人ではない、と主人公は語っている。主人公と妹が日帰りで行楽に出かけた先の茶店で交わす会話に溢れる、いかにも善良な彼女たちのユーモア。この人たちにこそ幸せになってほしいと想わせる、そんな造形が見事。周五郎は「おんなのひと」が本質的に好きだったのではないか?とちらっと思った。
ちょっとシニカルなコメディ。登場人物の誰もが…強欲な大家、おっちょこちょいの駕籠かき、恐妻家の殿様まで…いかにも面白い。そして、金に汚く浅はかな大家一家は、終わってみるとやや気の毒なところも。自業自得ではあるけれど。
この作品でも読み手が素晴らしい。殊におもらい若様の口ぶりが秀逸。可愛げのある阿呆というか、ともかく笑わせてくれる。
ちょっとシニカルなコメディ。登場人物の誰もが…強欲な大家、おっちょこちょいの駕籠かき、恐妻家の殿様まで…いかにも面白い。そして、金に汚く浅はかな大家一家は、終わってみるとやや気の毒なところも。自業自得ではあるけれど。
この作品でも読み手が素晴らしい。殊におもらい若様の口ぶりが秀逸。可愛げのある阿呆というか、ともかく笑わせてくれる。
何より主人公が愛らしい。その明るさと可愛さ、健気さ。彼女を自分でも意外なほどに愛してしまういかにも職人堅気な夫(ここまで想われたら女冥利に尽きるなあ)も、姉を心から想う妹も、とにかく登場人物で嫌な人間は誰独りとして居ない。それが嘘くさくなく、読後も心地良い。さすが山本周五郎、と拍手したくなります。
何より主人公が愛らしい。その明るさと可愛さ、健気さ。彼女を自分でも意外なほどに愛してしまういかにも職人堅気な夫(ここまで想われたら女冥利に尽きるなあ)も、姉を心から想う妹も、とにかく登場人物で嫌な人間は誰独りとして居ない。それが嘘くさくなく、読後も心地良い。さすが山本周五郎、と拍手したくなります。
剣の腕は飛びきりで、その上心が真っ直ぐで優しい。だからこそ生き辛い侍が、人情溢れる裏長屋に生きる場所を見つけ、やがて自身の道を見いだしていく…という、読後感爽やかな逸品。読み手が素晴らしい。殊に主人公が赤ん坊を溺愛するくだりなど、思わず声を出して笑ってしまいます。
剣の腕は飛びきりで、その上心が真っ直ぐで優しい。だからこそ生き辛い侍が、人情溢れる裏長屋に生きる場所を見つけ、やがて自身の道を見いだしていく…という、読後感爽やかな逸品。読み手が素晴らしい。殊に主人公が赤ん坊を溺愛するくだりなど、思わず声を出して笑ってしまいます。
主人公・主馬の従姉妹「みち」。「おたふく」のヒロイン、おしずの原型みたいな女性。山本周五郎はきっとこういうひとが好きだったんだろうなあ。ピュアで可愛くて素直で、ちょっと間が抜けているけれど決して愚かではない。実は聡明。でもそんな自分の聡明さを誇る事はない。そして何より、主馬の事を想っている。その良さを主馬が理解出来るようになるには、大変な試練が必要だった…と言うことかなあ。こういう純愛譚は大好き。ラストでにんまりしたいが為に3回以上聴きました。
主人公・主馬の従姉妹「みち」。「おたふく」のヒロイン、おしずの原型みたいな女性。山本周五郎はきっとこういうひとが好きだったんだろうなあ。ピュアで可愛くて素直で、ちょっと間が抜けているけれど決して愚かではない。実は聡明。でもそんな自分の聡明さを誇る事はない。そして何より、主馬の事を想っている。その良さを主馬が理解出来るようになるには、大変な試練が必要だった…と言うことかなあ。こういう純愛譚は大好き。ラストでにんまりしたいが為に3回以上聴きました。
コメディ。何となく、作者もにやにや笑いながら楽しんで書いてるような気がする。ハッピーエンドでオチも可愛い。ちょっと落語みたいだなあ。
コメディ。何となく、作者もにやにや笑いながら楽しんで書いてるような気がする。ハッピーエンドでオチも可愛い。ちょっと落語みたいだなあ。
「紅梅月毛」がこの上ないハッピーエンドだったのに較べ、この「野分」はあまりにつらいバッドエンド。他人様を不幸にしてまで…ってお爺ちゃんは言うけど、心の中にずっと最愛の人を抱きしめたまま、お紋は幸せになれるのだろうか?又三郎はいつか誰かを愛せるんだろうか?お爺ちゃんは、お紋の若さが癒やしてくれる…と思っていたけど、又三郎が心底彼女を愛していたと知ってしまっては、癒やされるなんて無いだろう。
出会わなければ良かった、という又三郎の一言に尽きる。誰も悪く無いのに、みんな不幸。ひたすらつらい。でも、この話も好き。
「紅梅月毛」がこの上ないハッピーエンドだったのに較べ、この「野分」はあまりにつらいバッドエンド。他人様を不幸にしてまで…ってお爺ちゃんは言うけど、心の中にずっと最愛の人を抱きしめたまま、お紋は幸せになれるのだろうか?又三郎はいつか誰かを愛せるんだろうか?お爺ちゃんは、お紋の若さが癒やしてくれる…と思っていたけど、又三郎が心底彼女を愛していたと知ってしまっては、癒やされるなんて無いだろう。
出会わなければ良かった、という又三郎の一言に尽きる。誰も悪く無いのに、みんな不幸。ひたすらつらい。でも、この話も好き。
一生懸命馬の世話をする素朴な娘も心底馬を愛してる若い武将も、とても素敵なのだけれど、何より、主の思いに必死にこたえ、老骨に鞭打って賞獲得しちゃう、かつての名馬「紅梅月毛」が可愛くていじらしい。馬って良いよなあ。ワンコもそうだけど。飼い主冥利に尽きるよなあ。
紅梅月毛が「とことこ走る」って。御前試合なのに。そして、「勝負など、どうでも良かった…」っていう台詞。ええ話や…。
一生懸命馬の世話をする素朴な娘も心底馬を愛してる若い武将も、とても素敵なのだけれど、何より、主の思いに必死にこたえ、老骨に鞭打って賞獲得しちゃう、かつての名馬「紅梅月毛」が可愛くていじらしい。馬って良いよなあ。ワンコもそうだけど。飼い主冥利に尽きるよなあ。
紅梅月毛が「とことこ走る」って。御前試合なのに。そして、「勝負など、どうでも良かった…」っていう台詞。ええ話や…。
「蕭蕭十三年」の片想いに比べ、「水戸梅譜」は最後は両思いで、ホッとする。さすがは黄門様。それにしても、庭先貸してくれ…って、即切腹。水盃で一方的に主従の契りを結んだり、江戸の行き帰りに付き纏ったり。ストーカー並みの思い入れが凄い。そしてそれが評価されるしなあ。
「蕭蕭十三年」の片想いに比べ、「水戸梅譜」は最後は両思いで、ホッとする。さすがは黄門様。それにしても、庭先貸してくれ…って、即切腹。水盃で一方的に主従の契りを結んだり、江戸の行き帰りに付き纏ったり。ストーカー並みの思い入れが凄い。そしてそれが評価されるしなあ。
とことん主に仕えたい家来の過剰な奉仕が主に疎まれ遠ざけられる。切ない恋愛みたい。誰かが自分を謀って讒訴したのではないか…と疑心暗鬼になり、それを言っちゃってさらに嫌われるとこも。主が彼の献身に気付くのは、全てが終わった更に後。でも仕方ない。こういう恋愛って玉砕しか無いもんね。やれやれ。
とことん主に仕えたい家来の過剰な奉仕が主に疎まれ遠ざけられる。切ない恋愛みたい。誰かが自分を謀って讒訴したのではないか…と疑心暗鬼になり、それを言っちゃってさらに嫌われるとこも。主が彼の献身に気付くのは、全てが終わった更に後。でも仕方ない。こういう恋愛って玉砕しか無いもんね。やれやれ。