門脇智子
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門脇智子
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英語翻訳者。ウクライナ語学習中。編み物好き、着物好き。共訳書『そして私たちの物語は世界の物語の一部となる インド北東部女性作家アンソロジー』(ウルワシ・ブタリア編)など
ちなみに英語版も読んでみたところ、日本語版にない部分(作中の謎が解明される)があってびっくりしたのだけど、原著の版が違うようだ。日本語版の方が最新の版を元にしているので最新の作者の意図を反映しているのだと思う。ミステリー的な興味で読むと初版にあって最新版にはないその部分があった方がすっきりするのだけど、作者は思うところあってあえてオープンエンディングにするという判断をしたのかな。
January 8, 2025 at 1:07 AM
登場人物の人生についてあまり詳しく書き込まれていないので、気になって読み終えた後も想像をめぐらせている。たとえばパーシャ・フメレンコ(「〜ンコ」で終わる名字はウクライナ系)はどのようにして今の彼になったのか。セルゲーイチ(これは父称で、名字は明かされない)の両親はどういう人たちだったのか。ガーリャの村の人たちはどういう経緯でその地域に住むようになったのか。こういう時間も読書体験の一部だよなあ。
January 8, 2025 at 1:07 AM
作者クルコフはオレンジ革命に参加した立場ながら、ヤヌコーヴィチが慕われている地域の人々のメンタリティを想像して書いた小説で、そのこと自体も立場の違う人々との対話の試みといえると思う(フィクションだから作者が自分と違う人について書くのは本来当たり前のことだけど、今ウクライナを応援したい気持ちで読むとそのことを忘れやすそうなので心に留めておく)。
January 8, 2025 at 1:07 AM
考える前に体が動いてしまう主人公セルゲーイチが衝動的にやらかしたことによって物語が動いていくのが面白く、セルゲーイチとあまり一体化せずに少し引いた視点で読んだ方が、作者のユーモアと皮肉を感じられ、またセルゲーイチが涙ぐむ場面(たびたびある)でも却って胸を打たれるように思う。結婚してから開眼したボルシチ(ウクライナが本場)に子供の頃からの好物のペリメニ(ロシアの水餃子)を入れて食べたいというセルゲーイチの願いが切ない…。
January 8, 2025 at 1:07 AM
そんなこんなで、そこに暮らしていた人たちを想うことで歴史とつながりたいという気持ちはあるのだけど、どうも自分にとってつながれそうな回路がないという感じだったと思うのだけど、この本を読んで少し風通しが良くなったような気がする。
January 7, 2025 at 6:08 AM
そしてウェルズと関わりを持った女性たちがなんと魅力的なこと。ウェルズのどこがいいの?とサマセット・モームに聞かれて「胡桃の匂いがした」と答えた、20世紀最高の散文の書き手と言われるレベッカ・ウェスト、ウェルズが発表した文章について文法が間違っていると指摘することもあった、「意識の流れ」手法を使った初期の作家の1人ドロシー・リチャードソン、最晩年に長く交際するが結婚は固辞し実はソ連のスパイだったムーラ、などなど。そして夫の不貞をゆるし仕事の手伝いもして支え続けた2番目の妻キャサリン。こうした女性たちについてもっと知りたくなり読みたい本リストがまた長くなったのだった。
January 7, 2025 at 12:48 AM
ウェルズは今で言うポリアモリーを理想としていたようなんだけど嫉妬心を克服できず結局は彼だけが一方的に浮気を繰り返す形になったという。そんなしょうもないところも人間だものと思って読むことができ、彼の才気や魅力が想像できるような小説だった。
January 7, 2025 at 12:48 AM