2024年展覧会ベスト10
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2024年映画ベスト10
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旧館は近代数寄者の最後世代という畠山一清の茶道具コレクション。初めて観たときその大胆な造形に衝撃を受けた古田織部旧蔵の割高台茶碗が出ていて、また見惚れてしまった。
新館は現代の数寄者・杉本博司の作品とコレクション。お得意の掛軸と古美術の取合わせだが、やはりこの人の美意識というか数寄者らしいセンスが凄すぎて、いちいち感心してしまう。百鬼夜行図とそこに描かれた目のある高杯を臨御台と義眼で再現したり、もう何なんだこの人はという感じ(褒めてます)。十一面観音像と来迎図の取合わせや、須田悦弘の木彫の草木を生けた取合わせも良かった。
旧館は近代数寄者の最後世代という畠山一清の茶道具コレクション。初めて観たときその大胆な造形に衝撃を受けた古田織部旧蔵の割高台茶碗が出ていて、また見惚れてしまった。
新館は現代の数寄者・杉本博司の作品とコレクション。お得意の掛軸と古美術の取合わせだが、やはりこの人の美意識というか数寄者らしいセンスが凄すぎて、いちいち感心してしまう。百鬼夜行図とそこに描かれた目のある高杯を臨御台と義眼で再現したり、もう何なんだこの人はという感じ(褒めてます)。十一面観音像と来迎図の取合わせや、須田悦弘の木彫の草木を生けた取合わせも良かった。
生誕1200年!という在原業平の和歌を中心に恋物語を綴った『伊勢物語』にまつわる書や絵画、工芸を集めた展覧会。ほんとは現存最古の「伊勢物語絵巻」が展示される前期に行きたかったのですが、諸事情で伺えず後期に伺いました。それでも伊勢絵のコレクションで知られる和泉市久保惣記念美術館を始め、東博や逸翁美術館、出光美術館など他館所蔵の作品も多く並び大変充実。ここまで関連の作品が揃うことはそうそうないのでは。絵画化されたモチーフや構図パターンを様々な作品を通し繰り返し観ることで伊勢絵の理解も深まります。岩佐又兵衛の作品が4点も出ていたのには驚きました。
生誕1200年!という在原業平の和歌を中心に恋物語を綴った『伊勢物語』にまつわる書や絵画、工芸を集めた展覧会。ほんとは現存最古の「伊勢物語絵巻」が展示される前期に行きたかったのですが、諸事情で伺えず後期に伺いました。それでも伊勢絵のコレクションで知られる和泉市久保惣記念美術館を始め、東博や逸翁美術館、出光美術館など他館所蔵の作品も多く並び大変充実。ここまで関連の作品が揃うことはそうそうないのでは。絵画化されたモチーフや構図パターンを様々な作品を通し繰り返し観ることで伊勢絵の理解も深まります。岩佐又兵衛の作品が4点も出ていたのには驚きました。
ホン・サンス監督とイザベル・ユペールの3度目のコンビ作。韓国を訪れたフランス人女性がフランス語を教えながら、年下の青年の家で暮らすという話だが、生徒とのぎこちないコミュニケーション、風変わりなフランス語学習メソッド、“友人”という青年との曖昧な関係、不思議ちゃん的なイリスの謎に満ちた過去と日常、どれも絶妙でクスッと笑えるものがある。これをコメディというかは迷うところがあるが、ユーモラスでちょっとシュールで、軽い浮遊感が心地良い。後半、息子が親子ほど離れた女性と暮らすことを知った母親の怒りが一気に現実に引き戻す。そしてラストの余韻。ユペール様の自然体の演技がとても良い。
ホン・サンス監督とイザベル・ユペールの3度目のコンビ作。韓国を訪れたフランス人女性がフランス語を教えながら、年下の青年の家で暮らすという話だが、生徒とのぎこちないコミュニケーション、風変わりなフランス語学習メソッド、“友人”という青年との曖昧な関係、不思議ちゃん的なイリスの謎に満ちた過去と日常、どれも絶妙でクスッと笑えるものがある。これをコメディというかは迷うところがあるが、ユーモラスでちょっとシュールで、軽い浮遊感が心地良い。後半、息子が親子ほど離れた女性と暮らすことを知った母親の怒りが一気に現実に引き戻す。そしてラストの余韻。ユペール様の自然体の演技がとても良い。
セレブばかりの豪華ヨットに招待されたジャーナリストが消えた女性の謎を追う客船版バルカン超特急のような密室サスペンス。富豪役のガイ・ピアースが最初から胡散臭くて、途中でだいたい結末も見えてしまうのだが、90分という短さと、起承転結がはっきりした展開で最後まで一気に観られる。
ジャーナリスト役のキーラ・ナイトレイはセレブの集まりの中で場違い感と敵対心みたいなものがあったり、元彼が偶然ゲストの中にいたりして、戸惑ったり悩んだり怒ったりと始終緊張した演技が続くが、彼女だからこのサスペンスも成り立ったと思う。最後はかなり強引にまとめた感じになったのが残念。
セレブばかりの豪華ヨットに招待されたジャーナリストが消えた女性の謎を追う客船版バルカン超特急のような密室サスペンス。富豪役のガイ・ピアースが最初から胡散臭くて、途中でだいたい結末も見えてしまうのだが、90分という短さと、起承転結がはっきりした展開で最後まで一気に観られる。
ジャーナリスト役のキーラ・ナイトレイはセレブの集まりの中で場違い感と敵対心みたいなものがあったり、元彼が偶然ゲストの中にいたりして、戸惑ったり悩んだり怒ったりと始終緊張した演技が続くが、彼女だからこのサスペンスも成り立ったと思う。最後はかなり強引にまとめた感じになったのが残念。
正体不明の大陸間弾道ミサイルが米国本土に着弾するまでの18分間。ミサイルを巡る軍や政府の対応を3つの視点で描くドキュメンタリータッチの政治スリラー。楽観的だった軍も迎撃ミサイルが失敗すると一気に緊張感が高まる。混乱する政府、私情を優先する国防長官、判断に揺れる大統領。米国の政府中枢は右往左往するだけで成す術もなく崩壊していく。いざという時に機能しない危機管理の脆さは戦慄を覚えるほどで、妙にリアルなのがまた恐ろしい。
骨太な演出はさすがキャスリン・ビグロー。特に最初のパートの緊迫感が凄い。大佐役のレベッカ・ファーガソンが素晴らしかった。
正体不明の大陸間弾道ミサイルが米国本土に着弾するまでの18分間。ミサイルを巡る軍や政府の対応を3つの視点で描くドキュメンタリータッチの政治スリラー。楽観的だった軍も迎撃ミサイルが失敗すると一気に緊張感が高まる。混乱する政府、私情を優先する国防長官、判断に揺れる大統領。米国の政府中枢は右往左往するだけで成す術もなく崩壊していく。いざという時に機能しない危機管理の脆さは戦慄を覚えるほどで、妙にリアルなのがまた恐ろしい。
骨太な演出はさすがキャスリン・ビグロー。特に最初のパートの緊迫感が凄い。大佐役のレベッカ・ファーガソンが素晴らしかった。
デルトロの美学が詰め込まれた美しくも哀しいホラーファンタジー。博士の語りと怪物の語りの羅生門スタイルの二部構成にしたことで二人の関係を掘り下げられ、物語がより壮大さと深みを増している。怪物の造形は圧巻で、ジェイコブ・エルロディの演技が怪物の暴力性と醜さとは裏腹な優しさと繊細さを際立たせています。人間を理解することで自分が異形の存在であることも理解する怪物の悲しみが胸を打つ。こだわり抜いた美術と造形、ゴシックな世界観もまた素晴らしい。
「花嫁」役のミア・ゴスは理想的な配役だが、二人の関係をもっと官能的に描いてほしかったとも思う。
デルトロの美学が詰め込まれた美しくも哀しいホラーファンタジー。博士の語りと怪物の語りの羅生門スタイルの二部構成にしたことで二人の関係を掘り下げられ、物語がより壮大さと深みを増している。怪物の造形は圧巻で、ジェイコブ・エルロディの演技が怪物の暴力性と醜さとは裏腹な優しさと繊細さを際立たせています。人間を理解することで自分が異形の存在であることも理解する怪物の悲しみが胸を打つ。こだわり抜いた美術と造形、ゴシックな世界観もまた素晴らしい。
「花嫁」役のミア・ゴスは理想的な配役だが、二人の関係をもっと官能的に描いてほしかったとも思う。
バーグマンは4人の男の子の家庭教師。家の主人の会社が世界恐慌で傾いたり、奥さんが急死したりで暇を出させるが、戦争特需で復興した一家に再び戻り、家族を支えるという話。知性と気品を兼ね備えた美人というステレオタイプな役柄がバーグマン本人は気に入らなかったようですが、誰からも好かれる溌剌とした女性を見事に演じて、これはこれで良い(この品行方正なバーグマンのイメージがのちのちロッセリーニとの不倫劇で仇となるのですが…)。次男の嫁役で若きスーザン・ヘイワードが出ていて、バーグマンとは真逆の悪女で強烈な印象を残します。
バーグマンは4人の男の子の家庭教師。家の主人の会社が世界恐慌で傾いたり、奥さんが急死したりで暇を出させるが、戦争特需で復興した一家に再び戻り、家族を支えるという話。知性と気品を兼ね備えた美人というステレオタイプな役柄がバーグマン本人は気に入らなかったようですが、誰からも好かれる溌剌とした女性を見事に演じて、これはこれで良い(この品行方正なバーグマンのイメージがのちのちロッセリーニとの不倫劇で仇となるのですが…)。次男の嫁役で若きスーザン・ヘイワードが出ていて、バーグマンとは真逆の悪女で強烈な印象を残します。
実はイングリッド・バーグマンは一番好きな女優。高校の頃、まわりが聖子だ明菜だKYON2だと言ってるとき、ぼくの部屋はバーグマンの大きなポスターを貼ってました(笑)
50本近くあるバーグマンの映画はほぼ観ているのですが、これまで一度も観る機会のなかった『四人の息子』と『天国の怒り』がなんと上映されるのです!ビデオやDVD化もされてないぐらいですから、たいした映画ではないのですが、長年の願いが叶いました。
実はイングリッド・バーグマンは一番好きな女優。高校の頃、まわりが聖子だ明菜だKYON2だと言ってるとき、ぼくの部屋はバーグマンの大きなポスターを貼ってました(笑)
50本近くあるバーグマンの映画はほぼ観ているのですが、これまで一度も観る機会のなかった『四人の息子』と『天国の怒り』がなんと上映されるのです!ビデオやDVD化もされてないぐらいですから、たいした映画ではないのですが、長年の願いが叶いました。
民藝100年の展覧会は東京でも観たけど、京都ならでは、とのことで、京近美まで来たので京都市美にも寄りました。
冒頭、木喰仏が並びますが、そのあとは河井寬次郎や濱田庄司、上田恒次といった京都ゆかりの作家の作品や、黒田辰秋ら上加茂民藝協団の家具や工芸品も多く展示され、弘法市で蒐集したという雑器もあったり、東京で観た民藝展とはまた違った趣き。そもそも関東大震災で被災した柳宗悦が京都に転居したことが民藝誕生のきっかけになったそうで、「京都での出会いがなかったら、民藝は生まれなかったやろなぁ」的な解説があって、京都つよいと思いました(笑)
民藝100年の展覧会は東京でも観たけど、京都ならでは、とのことで、京近美まで来たので京都市美にも寄りました。
冒頭、木喰仏が並びますが、そのあとは河井寬次郎や濱田庄司、上田恒次といった京都ゆかりの作家の作品や、黒田辰秋ら上加茂民藝協団の家具や工芸品も多く展示され、弘法市で蒐集したという雑器もあったり、東京で観た民藝展とはまた違った趣き。そもそも関東大震災で被災した柳宗悦が京都に転居したことが民藝誕生のきっかけになったそうで、「京都での出会いがなかったら、民藝は生まれなかったやろなぁ」的な解説があって、京都つよいと思いました(笑)
堂本印象の大規模な回顧展。とりわけ好きな画家でもないし、宋元仏画を観たついでぐらいのつもりだったのですが、これが予想外の素晴らしさ。印象が変わりました(堂本印象だけに笑)
多くが堂本印象美術館の所属作品で、10代の頃の作品から絶筆まで、充実したコレクションからその長い画業を追うことができます。まず驚いたのが、初期作品の完成度の高さ。大正時代は竹下夢二の影響や、デロリ風の作品もあって面白い。早い時期から帝展で高い評価を受けただけのことはあり、その優れた筆技といい、構図のバランスといい、センスの良い配色といい、特筆に値するものがあリます。
堂本印象の大規模な回顧展。とりわけ好きな画家でもないし、宋元仏画を観たついでぐらいのつもりだったのですが、これが予想外の素晴らしさ。印象が変わりました(堂本印象だけに笑)
多くが堂本印象美術館の所属作品で、10代の頃の作品から絶筆まで、充実したコレクションからその長い画業を追うことができます。まず驚いたのが、初期作品の完成度の高さ。大正時代は竹下夢二の影響や、デロリ風の作品もあって面白い。早い時期から帝展で高い評価を受けただけのことはあり、その優れた筆技といい、構図のバランスといい、センスの良い配色といい、特筆に値するものがあリます。
今年イチ楽しみにしてた展覧会の一つ。ガラガラと聞いてましたが、ガラガラでした…。休日の開館30分前に着いたら、あまり行列もなく、ちょうど門が開いて予定より30分早く館内へ。ミャクミャクやイタリアの彫刻には人が押し寄せるのにこの差は何でしょうね。東京だったら混雑必至だと思うんだけどな。2時間半たっぷり混雑に悩まされることなく観られたから良かったのですが。
中国絵画を紹介した展示などでもざっくり宋元でまとめられがちなところを、北宋・南宋・元と時代を追ってしっかり観られたし、時代時代の特徴や歴史的背景も含め、いろいろ勉強になり、満足度の高い展覧会でした。
今年イチ楽しみにしてた展覧会の一つ。ガラガラと聞いてましたが、ガラガラでした…。休日の開館30分前に着いたら、あまり行列もなく、ちょうど門が開いて予定より30分早く館内へ。ミャクミャクやイタリアの彫刻には人が押し寄せるのにこの差は何でしょうね。東京だったら混雑必至だと思うんだけどな。2時間半たっぷり混雑に悩まされることなく観られたから良かったのですが。
中国絵画を紹介した展示などでもざっくり宋元でまとめられがちなところを、北宋・南宋・元と時代を追ってしっかり観られたし、時代時代の特徴や歴史的背景も含め、いろいろ勉強になり、満足度の高い展覧会でした。
大竹しのぶが男性のリア王を演じるということで話題ですが、共演のキャストがまた豪華。三姉妹は宮沢りえ、安藤玉恵、生田絵梨花。エドマンドに成田凌、弟エドガーに鈴鹿央士。ベテランから若手まで人気役者が揃います。
演出はイギリス人演出家フィリップ・ブリーン。パンフレットを読むまですっかり忘れてましたが、大竹しのぶ主演で観たテネシー・ウィリアムズの『地獄のオルフェウス』と『欲望という名の電車』もユージン・オニールの『夜への長い旅路』もこの演出家なのでした。割と趣味が合うのかも。
大竹しのぶが男性のリア王を演じるということで話題ですが、共演のキャストがまた豪華。三姉妹は宮沢りえ、安藤玉恵、生田絵梨花。エドマンドに成田凌、弟エドガーに鈴鹿央士。ベテランから若手まで人気役者が揃います。
演出はイギリス人演出家フィリップ・ブリーン。パンフレットを読むまですっかり忘れてましたが、大竹しのぶ主演で観たテネシー・ウィリアムズの『地獄のオルフェウス』と『欲望という名の電車』もユージン・オニールの『夜への長い旅路』もこの演出家なのでした。割と趣味が合うのかも。
第二部Bプロは仁左衛門の「木の実〜小金吾討死〜すし屋」。義経千本桜は何度も観てますが、なぜか仁左衛門の「すし屋」を観てないのです。
これまで観た「すし屋」は音羽屋ばかりなので、上方の味わいがたまらない。無法者なのに愛嬌があって憎めないキャラクターは仁左衛門ならでは。迷惑かけてばかりなのに滲み出る妻子への深い情愛。「木の実」から通しで観ることで悲劇に巻き込まれる家族の物語が浮かび上がります。最後の権太のどこか満ち足りた表情が涙を誘う。正に至芸。
小金吾初役の左近も若さと勇ましさがあり良い。歌六と梅花も安定の芝居。
第二部Bプロは仁左衛門の「木の実〜小金吾討死〜すし屋」。義経千本桜は何度も観てますが、なぜか仁左衛門の「すし屋」を観てないのです。
これまで観た「すし屋」は音羽屋ばかりなので、上方の味わいがたまらない。無法者なのに愛嬌があって憎めないキャラクターは仁左衛門ならでは。迷惑かけてばかりなのに滲み出る妻子への深い情愛。「木の実」から通しで観ることで悲劇に巻き込まれる家族の物語が浮かび上がります。最後の権太のどこか満ち足りた表情が涙を誘う。正に至芸。
小金吾初役の左近も若さと勇ましさがあり良い。歌六と梅花も安定の芝居。
大倉集古館で評判の良かったインド更紗の展覧会(別企画)に行けなかったので気になってました。世界屈指のインド更紗コレクターのコレクションということで、インド更紗の歴史と技術、世界への広がりを丁寧な解説とともに観ることができます。インド更紗の文様に込められた意味、それが流行や輸出先に合わせ変化し、ヨーロッパで大流行しヨーロッパ人好みの柄になる。その変遷が興味深い。数百年経てもなお美しい色彩、気が遠くなるような手作業に驚く。
最後にウィリアム・モリスの「イチゴ泥棒」があって、ここに辿り着くのかと納得。
大倉集古館で評判の良かったインド更紗の展覧会(別企画)に行けなかったので気になってました。世界屈指のインド更紗コレクターのコレクションということで、インド更紗の歴史と技術、世界への広がりを丁寧な解説とともに観ることができます。インド更紗の文様に込められた意味、それが流行や輸出先に合わせ変化し、ヨーロッパで大流行しヨーロッパ人好みの柄になる。その変遷が興味深い。数百年経てもなお美しい色彩、気が遠くなるような手作業に驚く。
最後にウィリアム・モリスの「イチゴ泥棒」があって、ここに辿り着くのかと納得。
修理後初公開作品や万博など過去の博覧会出品作を中心にした展覧会。国宝や重文が多く出品されるという宣伝だが、展示替えがあるので一度に観られるのはそれほど多くない。少し渋めだが、渋いなりに優品が揃う。
面白かったのは未来の国宝。明の山水画家・謝時臣の「四傑四景図」が素晴らしい。驚くのは菊池容斎の二幅の巨大な掛軸。大きさもさることながら、劉邦の正妻が側室の四肢を切断し見せ物にするという、その残虐さにビックリ。もう一枚も元帝を守るため熊の前に立ちはだかる女傑が描かれていて、なかなかのインパクト。
最後の部屋は渡辺崋山。後期は宗元絵画になる模様。
修理後初公開作品や万博など過去の博覧会出品作を中心にした展覧会。国宝や重文が多く出品されるという宣伝だが、展示替えがあるので一度に観られるのはそれほど多くない。少し渋めだが、渋いなりに優品が揃う。
面白かったのは未来の国宝。明の山水画家・謝時臣の「四傑四景図」が素晴らしい。驚くのは菊池容斎の二幅の巨大な掛軸。大きさもさることながら、劉邦の正妻が側室の四肢を切断し見せ物にするという、その残虐さにビックリ。もう一枚も元帝を守るため熊の前に立ちはだかる女傑が描かれていて、なかなかのインパクト。
最後の部屋は渡辺崋山。後期は宗元絵画になる模様。
処刑前夜、メアリー・スチュアートが語る過去の記憶と心の叫び。表情を殺した、まるで死化粧のような蒼白な顔。畳みかけるように繰り返される詩的な独白。舞台奥からゆっくり前に進む動きは能のようでした。音楽と照明だけの観念的でミニマルな舞台。女優イザベル・ユペールの圧倒的なエネルギーに慄く。
席が2列目で前過ぎて字幕がよく見えなかったのですが、悲劇の女王メアリー・スチュアートの威厳と気品と覚悟は伝わってきました。圧巻の90分。
処刑前夜、メアリー・スチュアートが語る過去の記憶と心の叫び。表情を殺した、まるで死化粧のような蒼白な顔。畳みかけるように繰り返される詩的な独白。舞台奥からゆっくり前に進む動きは能のようでした。音楽と照明だけの観念的でミニマルな舞台。女優イザベル・ユペールの圧倒的なエネルギーに慄く。
席が2列目で前過ぎて字幕がよく見えなかったのですが、悲劇の女王メアリー・スチュアートの威厳と気品と覚悟は伝わってきました。圧巻の90分。
ポール・トーマス・アンダーソンは世間が評価する程あまりハマらないのだが、この作品は滅茶苦茶面白かった。極右と極左の対立を軸に、いまのアメリカを取り巻く様々な問題への批判と皮肉も効いて痛快。アクションと笑いの緩急といい、脚本の巧さといい、快楽的な映像といい、とても良い。『ブリット』を想起させる最後のカーアクションは素晴らしすぎて身震いしました。
何よりポンコツなディカプリオが最高で、変態マッチョのショーン・ペンと、おいしい役どころのセンセイことデルトロもこれ以上の配役はないのではという濃さ。レディオヘッドのジョニー・グリーンウッドの音楽がまたいい。
ポール・トーマス・アンダーソンは世間が評価する程あまりハマらないのだが、この作品は滅茶苦茶面白かった。極右と極左の対立を軸に、いまのアメリカを取り巻く様々な問題への批判と皮肉も効いて痛快。アクションと笑いの緩急といい、脚本の巧さといい、快楽的な映像といい、とても良い。『ブリット』を想起させる最後のカーアクションは素晴らしすぎて身震いしました。
何よりポンコツなディカプリオが最高で、変態マッチョのショーン・ペンと、おいしい役どころのセンセイことデルトロもこれ以上の配役はないのではという濃さ。レディオヘッドのジョニー・グリーンウッドの音楽がまたいい。
日韓国交正常化60周年を記念し、三国時代から朝鮮時代にかけて朝鮮半島の歴史を、考古、美術、民族作品を通して展観するという特集展示。東洋館の4階・5階を使ってます。5階10室は朝鮮半島の石器や陶磁など考古・工芸品を常設展示しているので、正直展示替えくらいの印象でしたが、普段中国の書画を展示することの多い4階8室は全て朝鮮にまつわる書画が展示されていました。
朝鮮時代の絵画はトーハクでもあまり展示されることがないので貴重な機会。日本と同じく中国絵画に影響されてるので共通の画題も多く、同時代性も感じます。なぜか猫の絵が多い。
日韓国交正常化60周年を記念し、三国時代から朝鮮時代にかけて朝鮮半島の歴史を、考古、美術、民族作品を通して展観するという特集展示。東洋館の4階・5階を使ってます。5階10室は朝鮮半島の石器や陶磁など考古・工芸品を常設展示しているので、正直展示替えくらいの印象でしたが、普段中国の書画を展示することの多い4階8室は全て朝鮮にまつわる書画が展示されていました。
朝鮮時代の絵画はトーハクでもあまり展示されることがないので貴重な機会。日本と同じく中国絵画に影響されてるので共通の画題も多く、同時代性も感じます。なぜか猫の絵が多い。
千葉の古刹・飯沼観音圓福寺所蔵の嵯峨本や寺宝を紹介する展覧会。嵯峨本は本阿弥光悦の筆跡とその美術的意匠を造本したもので、能の謡本や、伊勢物語、源氏物語などの古典物語が美しい料紙に木版摺りされた古活字本です。俗に光悦本と呼ばれますが、近年光悦ではなく光悦に書を学んだ角倉素庵が主体だったという説があり、展覧会ではそのあたりについても触れられていました。流麗な文字にこれが木版なの?と驚くばかり。どれも状態も良く、美しく、字は読めませんが、大変勉強になりました。
入場無料。しかもアンケートに応えると立派なカタログがいただけます。
千葉の古刹・飯沼観音圓福寺所蔵の嵯峨本や寺宝を紹介する展覧会。嵯峨本は本阿弥光悦の筆跡とその美術的意匠を造本したもので、能の謡本や、伊勢物語、源氏物語などの古典物語が美しい料紙に木版摺りされた古活字本です。俗に光悦本と呼ばれますが、近年光悦ではなく光悦に書を学んだ角倉素庵が主体だったという説があり、展覧会ではそのあたりについても触れられていました。流麗な文字にこれが木版なの?と驚くばかり。どれも状態も良く、美しく、字は読めませんが、大変勉強になりました。
入場無料。しかもアンケートに応えると立派なカタログがいただけます。
三井美は何度か応挙展を開催しているが、本展は開館20周年の特別展ということで、所蔵作品だけでなく、京博や東博、静嘉堂、サン美など他館の作品も多い。見どころは、三井家が援助したという金比羅宮の重文の襖絵や、先日まで大阪で公開され話題になった応挙と若冲の合作の屏風で、国宝「雪松図」と入れ替えで根津美の「藤花図」まで出る力の入れよう。初期の眼鏡絵もあれば、珍しい仏画や応挙デザインの陶器もあるし、応挙の幽霊まであって、正に「革新者」から「巨匠」になる様を幅広い作品を通して知ることができる。
流石にここまで名品が揃うと早くも混雑。会期末はかなり混むのでは。
三井美は何度か応挙展を開催しているが、本展は開館20周年の特別展ということで、所蔵作品だけでなく、京博や東博、静嘉堂、サン美など他館の作品も多い。見どころは、三井家が援助したという金比羅宮の重文の襖絵や、先日まで大阪で公開され話題になった応挙と若冲の合作の屏風で、国宝「雪松図」と入れ替えで根津美の「藤花図」まで出る力の入れよう。初期の眼鏡絵もあれば、珍しい仏画や応挙デザインの陶器もあるし、応挙の幽霊まであって、正に「革新者」から「巨匠」になる様を幅広い作品を通して知ることができる。
流石にここまで名品が揃うと早くも混雑。会期末はかなり混むのでは。
区立美術館とはいえ国内有数の江戸狩野派コレクションを誇る板美の館蔵品展。江戸狩野派の絵師の作品をちょっとしたネタを交えつつ見どころを紹介していて楽しい。奥絵師、表絵師の違いや、弟子入りから一人前になるまでどのぐらいかかるのかなど、パネル解説も分かりやすく、自分でも勉強になる。
探幽から英一蝶や河鍋暁斎まで。狩野派の祖・正信や桃山の秀頼もある。常信の「四季花鳥図屏風」と栄信の「雪月花図」が秀逸。典信の「大黒図」もインパクトがあった。
無料かつ写真撮影可のサービスぶりだが、駅から離れているという立地の悪さ故か、休日なのにかなり空いていたのが残念。(会期終了)
区立美術館とはいえ国内有数の江戸狩野派コレクションを誇る板美の館蔵品展。江戸狩野派の絵師の作品をちょっとしたネタを交えつつ見どころを紹介していて楽しい。奥絵師、表絵師の違いや、弟子入りから一人前になるまでどのぐらいかかるのかなど、パネル解説も分かりやすく、自分でも勉強になる。
探幽から英一蝶や河鍋暁斎まで。狩野派の祖・正信や桃山の秀頼もある。常信の「四季花鳥図屏風」と栄信の「雪月花図」が秀逸。典信の「大黒図」もインパクトがあった。
無料かつ写真撮影可のサービスぶりだが、駅から離れているという立地の悪さ故か、休日なのにかなり空いていたのが残念。(会期終了)
井上有一の没後40年の記念展。回顧展ではないとあったし回顧展のような構成ではないけど、生誕100年のとき東京では大きな回顧展はなかったので(金沢の21美には行けなかった)ちゃんと観るのは久しぶり。
自分はセゾン文化の洗礼を受けて育ったので、井上有一もその中で知ったのですが、本展は井上の作品をその80年代以降の広告の世界で持て囃されたグラフィックデザイン的な視点で再検証するというもので、懐かしくもあり興味深かったです。やはり井上の躍動する書の圧倒的な迫力というか、漲る生命力というか、あらためて凄いなと思う。
井上有一の没後40年の記念展。回顧展ではないとあったし回顧展のような構成ではないけど、生誕100年のとき東京では大きな回顧展はなかったので(金沢の21美には行けなかった)ちゃんと観るのは久しぶり。
自分はセゾン文化の洗礼を受けて育ったので、井上有一もその中で知ったのですが、本展は井上の作品をその80年代以降の広告の世界で持て囃されたグラフィックデザイン的な視点で再検証するというもので、懐かしくもあり興味深かったです。やはり井上の躍動する書の圧倒的な迫力というか、漲る生命力というか、あらためて凄いなと思う。
A24製作のメランコリック・スリラーということだが、スリラーという感じはしない。親の目が厳しく見られない夜のテレビ番組「ピンク・オペーク」に夢中になる少年と先輩女子の交流が軸で、まわりから見られる自分とまわりに見せない本当の自分が「ピンク・オペーク」の物語と重なり、現実と虚構が絡み合い、自分の生きている世界が現実なのかテレビの世界のような虚構なのか分からなくなる。
監督がトランスジェンダーだそうで、映画もどこかクイアなところがあって、監督のインタビューなどを読むと意図は分かるが、映画はちょっと感傷的過ぎて、自分には正直刺さらなかった。
A24製作のメランコリック・スリラーということだが、スリラーという感じはしない。親の目が厳しく見られない夜のテレビ番組「ピンク・オペーク」に夢中になる少年と先輩女子の交流が軸で、まわりから見られる自分とまわりに見せない本当の自分が「ピンク・オペーク」の物語と重なり、現実と虚構が絡み合い、自分の生きている世界が現実なのかテレビの世界のような虚構なのか分からなくなる。
監督がトランスジェンダーだそうで、映画もどこかクイアなところがあって、監督のインタビューなどを読むと意図は分かるが、映画はちょっと感傷的過ぎて、自分には正直刺さらなかった。