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まったくここは廉夫人がみずから刃に伏したところで、昔からある油樹も母の形見か、と油ならぬ身を絞って涙がこぼれて袖は湿った。
 誰であろうか、同じ嘆きを抱いたものが立てたらしい、まだ新しい卒塔婆を見ても悲しく、見知らぬ誰かの供養の功徳が身に染みて、しばらく念じて伏し拝み、ゆこうとしても幾度もまた立ちもどっては、樹下の陰の青葉もいつか暗くなる夕暮れとなり、誰のことを嘆いているのか、鳴く山鳥とともに塒を捜し求めた。

曲亭馬琴『椿説弓張月5』
January 1, 2026 at 2:55 PM