新井康平(専門:管理会計)
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新井康平(専門:管理会計)
@araikohei.bsky.social
大阪公立大学商学部・経営学研究科准教授。専門は,管理会計,原価管理,経営計画など。博士(経営学)。
④では、たまには自身の研究を。コストリーダーシップ戦略や差別化戦略に特徴的な戦略的投資を実施してきた企業は、中長期に渡る利益の持続性を確保しているよという研究。
www.jstage.jst.go.jp/article/jma/...
「(ポーターの意味での)戦略的な投資」→「利益の持続性」という検証ですね。このように、会計研究と言いつつ、会計現象をとりまく多様な概念が登場しているのが会計研究の特徴となります。(4/4)
企業の戦略的行動が持続的な競争優位に与える影響の検証
近年,企業の戦略的な行動が財務諸表から統計的に推定可能となり,管理会計の視点からも,それら行動についての理解が深まりつつある.代表的なものとして,コストリーダーシップや差別化といった「ジェネリック戦略」,組織が見えざる資産を有して収益を獲得するための資源である「組織資本」の会計情報からの測定という研 …
www.jstage.jst.go.jp
February 14, 2024 at 3:03 AM
続いて、X→Z(会計現象の帰結型)の研究の例示を。③は、東北大学の尾関先生の研究。
www.jstage.jst.go.jp/article/jaa/...
不正会計による修正再表示を行った企業は、会計的裁量行動(発生高の操作など)が減少し、財務報告の品質改善を示すことを明らかにした研究です。「修正再表示」→「利益の質の改善」という帰結をもたらしているといえるでしょう。(3/n)
不正会計に起因する修正再表示が会計的裁量行動にもたらす変化の実証分析
本稿の目的は、不正会計の発覚に起因して修正再表示を行った企業において,その発覚後に生じる会計的裁量行動の変化を明らかにすることである。企業の会計的裁量行動を反映する異常会計発生高について,日本における不正会計に起因して修正再表示を行った企業と不正を開示していない企業の差に生じる開示前後の変化(di …
www.jstage.jst.go.jp
February 14, 2024 at 3:01 AM
②は慶應義塾大学の横田先生の研究。 www.jstage.jst.go.jp/article/jcar...
いくつかの発見がありましたが、例えばXの一つである「予算・戦略リンクの強化」に影響を与えていたのは、「社長の配慮型リーダーシップ」(正の影響)と「環境の不確実性」(負の影響)などが示されています。(2/n)
予算管理への影響要因 : 予算編成・目標の困難化と戦略リンクの強化への影響分析
本稿の目的は,東証一部上場企業を対象とする郵送質問票調査に基づき,予算管理が直面する状況・問題への対応に影響する要因を分析・考察することである。分析の結果,予算管理の特徴,他のマネジメントツールの利用,戦略,環境要因が対応の違いに一部影響を与えていること,社長のリーダーシップが様々な影響を与えている …
www.jstage.jst.go.jp
February 14, 2024 at 3:00 AM
さらには、「→」の推論部分についても知識が必要です。統計的な推論を行うなら統計学や計量経済学、数学モデルによる推論を行うならミクロ経済学やオペレーションリサーチ、史料にもとづいて推論を行うなら歴史研究の方法を習得せねばなりません。これらの訓練をしていると、ついつい会計学から離れたような感覚になりモチベーションが下がってしまいます。逆にこれらのトレーニングを終えて研究論文を書けるようになると、研究者として認められていくわけです。会計研究はいわゆる会計の知識だけでは成り立ちにくい点を意識しましょう!(3/3)
February 14, 2024 at 1:37 AM
もちろんすべての会計研究がそうではないのですか、研究は、Xだけを扱うのではなく、Y→Xの型(影響要因を探る)、X→Z(帰結を探る)というタイプが多いです。例えば、「企業が採用している戦略」→「標準原価計算の採用」や、「期末から決算締めのスピード」→「利益の質」のように。そうなると、研究においては会計学の知識だけでなく、他の学術的概念を知っておかないといけない。経営学やファイナンスのような知識も必要なんですね。「会計学の研究をしようと思ったのに、他分野の知識を学ばないといけないなんて!」となるわけですね。(2/n)
February 14, 2024 at 1:22 AM
ここにきて、研究を報告するための「論文」の最小限の組み合わせが「(レビューを含めた)問」、「方法」、「答え」であることがわかります。論文というのは、研究成果を発表する上でしっかりと構造を持っています。ここまでのことから、twitter(現X)やこのBlueskyなどで研究内容を議論すると、どうしても内容に限りがあることがわかるかと思います。ある研究上の主張をするためのミニマムが論文だから、この文字数での議論には限界があります。以上が、研究者としてSNSを利用する際の注意点であり、自戒を込めて。(5/5)
February 9, 2024 at 3:54 AM
ただ、論文が説得するのは答えだけではありません。「問」そのものの価値も説得します。先行研究の残された課題であったりといった学術的価値や、実務上の重要な問題を扱うと行った実践的価値を示すことも必要でしょう。そこで、論文では「はじめに」や「レビュー」などのパートが必要なのです。分野によっては問うべき問題がはっきりしており、ここがあっさりしているものあれば、我々の分野のように、ここを相当厚くしないと価値を説得できないものもあります。これは、学術的な蓄積と分野の科学的な成熟度に依存するのではと考えております(4/n)
February 9, 2024 at 3:35 AM
つまり、論文とは「問と答えを読者に明示する」だけでなく、「なぜ、その答えにたどり着いたのかについて読者を説得する」という特性も必要になります。そのために、私の分野では財務データを使ったりサーベイをしたり事例研究をしたり、とにかく妥当なエビデンスを用意して論文を作成する場合が多い。あるいは、経済学などにもとづいて数学的な分析モデルを構築し、答えを説得するなんて方法もあります。(3/n)
February 9, 2024 at 3:23 AM
ただ、「問:明日の天気は」、「答:晴れ!」という論文があったときに、なぜその答えにたどり着いたのかを明示する必要があります。でなければ、占いや夢見になってしまいます。そこで、論文ではその答えがどのような「方法」でたどり着いたものかを明示する必要があるのです。この時点で、論文の構成要素が「問」、「方法」、「答え」の3つになりました。研究では、方法が妥当なものであれば、答えも自ずと妥当なものと考えられるわけです。(2/n)
February 9, 2024 at 3:13 AM
まずは、論文のイメージを。論文の最小要素は、「問」と「答え」を備えていることだと思います。そのどちらかが欠けているようでは、それは調査報告など論文に似た別のものです。もちろん、答えは完璧でないのが当たり前で、「今回はここまでわかったよ」というタイプが多くの論文でみられるものでしょう。(1/n)
February 9, 2024 at 3:11 AM