本城あきら
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本城あきら
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三度の飯とおやつが好き
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今日のマイスィートキューティ近侍を見てってよ
November 20, 2025 at 4:03 AM
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(3/3)
「さっき髭切さんが言ってたことなんですけど……『嫌な予感』って、何ですか」 「……ああ」 電気が消えるみたいに、髭切さんが表情を消した。にこやかな雰囲気を取り払うと、『膝丸』と顔立ちが似ているのがよくわかる。 髭切さんが、舌先で下唇を舐めた。 「ううん、そうだなあ。説明が難しいんだけど。君にわかる言葉で言うなら……なんだろう。お告げ？」 「兄者、それはむしろわかりにくいのではないか？たとえば直感、無意識の暗黙知、宇宙より届く大いなる声、明け方の荷蕖、星図、あるいは世界にただ一つきりのひらかれた窓」 「そうかもね。えーっと……」 「膝円の膝丸だ、兄者」 また増えた。なんとなく慣れてきたぞこの流れ。 薄丸さんが「あれは207番の俺だ。引継係所属の俺の中では最も古株だな」と教えてくれた。 わたしは薄丸さんに耳打ちする。 「……あと何口いるか訊いてもいいですか？」 「引継係に|膝丸《おれ》はあと四口いる。うち三口は別の調査中だから今回の話には出てこない」 「なるほど」 つまり最大であと一口出てくるんだな。 今のところ見分けがつかないし覚えられる気もしない。だいたい、同じ部署に七口も同じ男士がいて混乱しないのだろうか。人員調整でもっとばらけさせたりしそうなものだけれど。 まあでも、刀剣男士特有の超常現象を扱う部署には御神刀霊刀ばっかり詰めていると聞くし、きっと『膝丸』が特別引継に強いとか、そういう理由があるに違いない。 薄丸さんが咳払いをした。 「話を戻すぞ。端的に言えば、予感の詳細は兄者にもわからんのだ。犬に吠えられる程度から——それこそ命の危機まで範疇に入る。だがここでもっとも大事なのは、兄者は『雪室は行くべきではない』と断じた、ということだ。兄者の『嫌な予感』は|中《あた》る」 「僕は止めたんだけどねえ、かにだんす不足だって断られちゃった」 「事実人手は足りていないから仕方がないな。そこにある任務は誰かがこなさねばならない。余所から人員を引っ張るなら尚の事、皆が納得する|確証《エビデンス》が必要だ、兄者」　 「むしろ危機があるとわかっていればこそ、身の振り方にも気を配れるというものだ。さすがは兄者だ。そして君が利口で助かる」 「そうだぞ。兄者がついているのだ、何も不安に思うことはない。大船に乗ったがごとく、よらば大樹の影、夏場の三尺寝、老猫の薄毛、そして二度と聞こえない晩鐘」 『膝丸』が口々に喋る。聞き取るので精一杯で内容がよく入ってこなかったけど、要約すると髭切さんがフォローするけど危ないことがあるから気をつけてね、ってことで、いいんだよね、多分。 おんぶに抱っこは申し訳ないけれど、新人だし、どう頑張っても面倒はかける。なら堂々と頼る腹を決めておいた方がよさそうだ。わたしは密かに拳を握る。 「他はないかな？それじゃあ——調査開始だ」 髭切さんは軽やかに職員ジャンパーを翻し、ロッカー室を出て行く。 「兄者！そちらには厠しかないぞ！転移ゲートは逆方向だ！！そして俺は蛇次郎の膝丸だ！！！」 「出た、4口目！」
November 17, 2025 at 3:04 AM
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(2/3)
長義さんがそうまとめる。わたしはまだわからないことがわからないので、とりあえず頷いて見せた。 隣の鶴丸さんは資料をぱらぱらめくっている。 「既に二度引継済み。初代からいるやつらは……お、ぼちぼち残ってそうだな。なら相手方も慣れてるか。確かに研修にはちょうどいい」 「ちなみに前回の引継担当は俺だ。何かあれば遠慮なく頼ってくれて構わない」 「さっすが、係長代理は抜け目ないな。だがちょっと甘やかしすぎじゃないかい。聞き取りまでなら基本は意思確認だけだぜ？」 「人間職員にはそのくらいしていいだろう。手塩にかけて育てたところを、独り立ち間際で異動願を出されるのに比べれば……いや、異動ならまだいいが退職届だった日には……おっと、君に聞かせる話ではなかったね」 長義さんがこちらを見て口をつぐんだ。 心中お察しします……わたしが辞めないのが一番なんだろうけれど、そう簡単には辞められないから安心してほしい。 歴防本部の仕事は機密情報を多分に含む。辞職の自由は一応あるけど、辞める時は情報漏洩防止のために記憶処理を施されることになる。それはちょっと怖いし、何より頼れる親族や貯金がなくても住める家具家電付き職員宿舎と、安くておいしい社食を手放せるほどお財布にゆとりはないので。 マネーイズパワー。力がなければハッピー無職を押し通せぬ世の中さ。 世知辛いね。本当にね……。 話がまとまりそうな雰囲気の中、髭切さんはひとり、眉根を寄せている。 「……ねえ、この件本当にこの子に任せるの？なんだか嫌な予感がするよ」 「どこか懸念点が？」 「どこっていうのはわからないけど。ざわざわするなあ」 「具体性の欠ける不安では対策が立てられないな。貴方の勘を蔑ろにしたくはないが……他の職員に回そうにも人手が足りないから、できる範囲で対策を絞りたい」 「そうだよねえ」 長義さんは腕を組んでそう言った。髭切さんも、首を捻って唸っている。ただ仕事したくないとか、わたしに任せたくないって話じゃなさそうだ。 髭切さんの姿勢がだんだん斜めに傾いていく。 「うーん……じゃあせめて、そこの丸鶏じゃなくて僕を連れて行ってほしいな」 急に名指された……これって名指されているのかな？とにかく鶴丸さんはムッとした。 「鶴丸な。それ、きみがこの子と行きたいだけじゃないのか」 「違うよ」 「どうだか」 鶴丸さんは鼻を鳴らしてそっぽを向いた。 もしかして鶴丸さんと髭切さん、あんまり仲良くないのかな。仕事の中身以上にこのふたりに挟まれるのが大変かも。 長義さんはもう慣れっこらしく、呆れ顔でやり取りを眺めるだけで仲裁に入る感じじゃない。 もしかしてこれが人員不足の原因の一つになっているのでは？わたしは訝しんだ。 というか、わたしもちょっと嫌な予感がしてきたぞ。 長義さんが目を伏せて、ため息をひとつ、ついた。 「……怪異斬りの直感を切り捨てる材料もない、が……」 鶴丸さんと髭切さんを交互に見た長義さんの視線が、わたしで止まる。 「君はどちらと組みたい？」 ほら！丸投げだ！責任者のすることじゃないぞ係長代理！ 首を振って拒否を示すけど、長義さんは完璧に美しい微笑みを浮かべたまま動かない。 もー、人員不足の原因絶対これだと思う……。 三口分の視線を受け止めながら考える。 鶴丸さんと髭切さんだったら、正直言って鶴丸さんがいい。鶴丸さんはイタズラ仕掛けてくるし別にプラス要素があるわけじゃないけど、マイペースすぎる髭切さんに比べたらまだまともそう。 でも髭切さんは怪異斬りで、助言には従った方がいいのかも。 どうしよう？ ◆◆ 髭切さんを選ぶ 「ええと、髭切さん……ですかね……」 わたしは勇気を振り絞ってそう言った。少なくともこの瞬間、わたしより偉業を成し遂げた政府職員はいるまい。 だって無理だよ、初仕事の障壁はなるべく潰しておきたいし、ここで怪異斬りの意見を無視できるほど覚悟はキマッていない。長義さんも気にしてたしね。 ごめんなさい鶴丸さん、あなたは悪くないけど心中はちょっと……！ ちらりと様子をうかがうと、髭切さんはわかりやすく喜んでいる。 「うんうん、僕に任せておいてよ！」 「きみがそう言うなら俺は構わないが……こいつがあんまり迷惑かけるなら引きずり戻しに行くからな、いつでも言ってくれよ」 「嫉妬はみっともないんじゃない」 「何だって？」 「はいはいそこまで。……本当にすまないね」 長義さんが声を落として、眉をハの字にした。今までお澄ましキメ顔だったのが崩れると、途端に生っぽく見えて、まあ、そのきれいな顔に免じて許してもいいかな……って気持ちなりますね。 「そうと決まれば、善は急げ。準備を終えたら早速調査に向かってもらいたい」 長義さんはわたしと髭切さんを見て、力強くそう言った。 髭切さんに連れられて、ロッカー室に入った。 ロッカー室には、そっけないスチールのロッカーがいくつも並んでいる。 ロッカー室には先客がいた。薄緑色の斬新なヘアスタイルをキメた刀剣男士——『膝丸』だ。 入ってきた髭切さんに気がつくと、弾かれたように立ち上がる。 「兄者！今から調査に向かわれると聞いたぞ」 「うん。今からこの子とふたりでね」 「そうか。俺が供できないのが残念だが……しかし兄者なら俺の助けがなくとも立派に務めを果たせることだろう。君、運がいいな」 「アッハイ」 「そのことなんだけど、えーと……」 「ススキ丸の膝丸だ、兄者」 「そうそう。おまえにお願いがあるんだけど、この子の戦支度を手伝ってもらえるかい？初陣でねえ」 「無論、光栄だ。他ならぬ兄者の頼みとあらばこの膝丸、骨身を惜しまぬ所存」 そう言って自分の胸を叩くススキ丸さん——でいいのかな？はとっても頼もしい。言葉遣いはとっても仰々しいけれど。 ススキ丸さんはわたしの方を向いて目礼した。わたしもお辞儀を返す。 「君……君とだけ呼ぶのも変だな。名は？」 「えっと。雪室です」 「そうか、俺は544番の膝丸だ。兄者に『|薄《ススキ》丸』の名を賜っている。兄者の主候補に恥はかかせられないからな。万全の支度を整えよう」 「エッ主候補って何ですか聞いてないですよ」 わたしが目を丸くすると、薄丸さんも「何だと？」と訊き返す。 きりりとした顔つきの薄丸さんにそう返されると結構な圧力を感じる。 「兄者は己の主となるにふさわしい人間を探しているのだ。てっきり既に話を聞いているものと思ったが……否、君ならばいずれ兄者直々に声がけがあるだろう。失礼したな、忘れてくれ。……では雪室。君のロッカーを案内する。こちらだ」 なんだか聞き捨てならないことを言われた気がするけど、忘れてくれと言われたので一旦流すことにした。 薄丸さんに促されて、案内されたロッカーに手をかざすと小さくカチッと音がしてロックが外れた。開けてみても何も入っていない。 特に入れるものも思いつかなかったので、わたしは空っぽのロッカーを閉めて薄丸さんの方へ向き直った。 「この面布は支給されたか？」 見せられたのは面布。審神者さんたちもよくつけている、あの短いふんどしみたいな——いや、その連想はやめておこう。 面布にはうずまきみたいな模様の上に、読めそうで読めないぐにゃぐにゃした字が書いてある。 「まだです」 「ではこれは君が持っていくといい。刃材管理課の備品だ」 渡された面布をつけてみると、すうっと透き通って前が見えるようになった。なのに鏡で見るとちゃんと面布で顔が隠されていて、さらにうずまき模様の上にわたしの職員番号が出ている。謎技術……。 「その面布は、間違いなく政府職員であるという証だ。本丸訪問時は着用義務がある。紛失時は罰則があるからくれぐれも取り扱いには注意してほしい。ああ、それから、面布には呪い避けの機能が付与されていて、つけておけばある程度呪詛の類を受け流せる。だが顔を知られた相手には効果がなくなるから、めくられたり剥がされたりしないように気をつけてくれ」 「呪詛避けが必要なんですか……？」 「何、君には兄者がついているのだ。規則で着用せねばならないが、その機能が必要になることはなかろう」 薄丸さんは胸を張る。よほど髭切さんのことを信頼しているようだ。 髭切さんって鶴丸さんたちの前だとああだけど、もしかして案外まともなのだろうか。だとしたらちょっと失礼なことを考えてたなあ。 第一印象の話は絶対薄丸さんには言わないようにしようと決めて、髭切さんの方を振り向いた。 「もういいぞ兄者。今日もよくお似合いだ」 「ふふ。ありがとう、えーと……」 「鳩尾切の膝丸だ」 いつのまにか『膝丸』が一口増えていた。ぱっと見は同じだから薄丸さんが分裂したのかと思ったけど、何度目を擦ってもいなくならない。別個体なのだろう。 まだわたしの隣にいた薄丸さんが「あれは339番の俺だ」と親切に教えてくれる。 髭切さんは肩掛けにしていた上着の代わりに、濃いグレーのジャンパーを鳩尾切さんに着せてもらっていた。 「ああこれね、うちの刀剣職員の制服。調査に行く時の身分証の代わりだよ」 例によって、薄丸さんが「正規職員が着れば背に職員番号、胸に刀帳番号が出る。不正対策だな」と補足する。滲むように胸に浮き出た110の文字を指した。半身を捻って見せてくれた背中には、81と出ている。 髭切さん、職員番号二桁なんだ……政府に『髭切』が何口いるか知らないけど、薄丸さんが500番台なことを考えると結構古参ってことだよね？ 「その子の支度はできたかな？」 「既に万全だ、兄者」 「うんうん。君もいいかい？」 「あー、えっと。一つ訊いておきたいことがあって」 この和やかな空気に水を差すのは忍びない。でも訊いておかなきゃいけないことがある。 わたしは意を決して口を開いた。
November 17, 2025 at 3:04 AM
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霜月だしケツ叩きに今書いてる安達サンド夢ゲームブックの髭切√の序盤を上げます
主募集中♡なバーサーカー寄り個体髭切＋元気印ド新人政府職員＋ダメだこいつら俺がなんとかしないと…な怖がり鶴丸国永によるオバケが出る本丸探訪。オバケの正体を解き明かせたらトゥルーエンド、の予定
(1/3)
空は雲ひとつない快晴だった。——わたしはこんなに緊張してるのに！ うっかり天気に八つ当たりしそうになって、支給された鞄をぎゅっと握る。 なんといったって今日は初仕事だ。どうしたって緊張する。 『刃財管理課引継係』。 歴防本部が所有する馬鹿みたいにでかい建物の、南館D棟三階にあるのが、わたしが配属された部署だった。 事前研修で何度か行ったから、道順はなんとなくわかる。 ちょっとだけ迷子になりつつもだだっ広い廊下を進む。目指しているのは会議室だ。周りを見渡せば朝が早いひと達が結構もう働いているけど、さすがに業務中に比べれば閑散としている。 部屋にかかったプレートをひとつひとつ確かめながらゆっくり歩く。 目的の部屋を見つけて、書類に書かれた部屋番号とプレートとを見比べること十回。意を決して扉に手をかけた。 よーし、開けるぞ、よし、と勢いをつけて、指定された会議室の扉を開けた。 思っていたよりは狭い部屋だった。モニターも兼ねた大きめのホワイトボードが一つと、コの字型に並べた長机に椅子が四つ。開始時間の十五分も前だから、まだ誰もいない。 念のために十一回目の確認をして、一番手近な席に座った。 ふうと息を吐く。流石に緊張しすぎだと思う。我ながら、朝からこんな感じで今日一日乗り切れるんだろうか。もう帰りたい。まだ何もしてないけど。 ふと、なにかの気配を感じて扉の方を振り向いた。 気のせい、かもしれないけど。視線を感じた、ような。 そろりと気配をうかがう。外はしんと静まり返っていて、人がいそうな感じはしない。 まあでも一応確認しようと扉から顔だけ出して左右を見回したけど、やっぱり誰もいなかった。 緊張のあまり見えないものを見ようとしちゃったかな。人間って愚か……。 自意識過剰を人類全体に押し付けて、部屋に引っ込もうとした時、 「————わっ！！」 上から白い塊が降ってきた。 えっ何？何？敵襲？思わず頭をかばってしゃがみこんじゃったせいで視界が狭い。何も見えないけど見るのも怖い。 完全にフリーズしたわたしに、しかし白い塊はくつくつと満足げに笑う。 「ここまでいい反応をしてくれると驚かし甲斐があるなあ」 あれ。知らないはずなのに聞き覚えのある声がする。 そっと腕をどけて、笑うそのヒトを見上げた。 「よっ。初めまして、963番の鶴丸国永だ。|九六三《クルミ》の鶴丸と呼ぶ奴もいるが、引継係に鶴丸は俺だけだから『鶴丸』でいい。きみが噂の新入りだな？」 きらきらの笑顔で手を差し出したのは、そう、『鶴丸国永』。 資料で見たし、なんなら研修担当にも一羽——違う、刀の数え方は「一|口《ふり》」——いた。研修でお世話になった『鶴丸国永』さんはもっとこう、親切で大人っぽくて、こんなイタズラはしそうになかった。これが個体差ってやつだろうか。 出された鶴丸さんの手を掴むと、「よっと」と助け起こしてくれた。眩しさで白飛びしそう。照明背負っているし。 ふと気がつくと、肩に入ってた力はずいぶん軽くなっていた。 「こら、新入りをいじめるんじゃない」 「あでっ」 死角から伸びてきた黒い手が鶴丸さんの頭を叩いた。結構派手な音がした気がしたけど、鶴丸さんは普通にしている。 びっくりしていると、わたしが見てることに気づいて空より深い青の瞳が優しげに細められた。 「待たせたかな」 「いえ！わたしが早く着きすぎちゃっただけで」 配属前に挨拶したからこのヒトは知っている。2763番、係長代理の『山姥切長義』。 グレーのシャツに白いクロスタイがさまになっている。極、というらしい。 歴防本部には『山姥切長義』がたくさんいて、ほかのヒトと服が違うのが気になって訊いてみたら「俺は修行を終えたからね」と教えてくれた。 歴防本部の個体で極ということは、政府の所有じゃなくて個人として主がいるか、本丸から移籍してきたということなんだそう。この長義さんは主がいる方。 笑うと怜悧なつり目の目元がゆるんで、印象がぐっと幼くなる。……こういうのもギャップ萌えっていうんだろうか。 長義さんはにこやかに、でも手元はてきぱき準備を進める。手を出すと逆に邪魔になりそうだから、鶴丸さんと並んで大人しく座っていることにした。 鶴丸さんはぜんぜん大人しくなかったけど。 「なあ、きみ名前は？なんて呼べばいい？」 「163—ハ—1192ですね」 「それは職員番号だろ？通称とかそういうのは」 「初配属なのでまだ……」 政府職員は戸籍に記された本名は使用不可。割り振られた番号で管理されている。歴史修正対策のためだ。目障りな職員がいる！そうだ先祖を殺そう！となっても、簡単に辿られないようにするための安全装置。 職員同士で呼び合う分には|通称《ビジネスネーム》を付ける人も多いけど、正式な書類は全部職員番号で通すから、なくても問題ない。 研修の時点で名付けて呼び合ってるひとたちもいたものの、わたしは付けなかった。残念ながら社交性がなかったので。 鶴丸さんは目をぱちくりさせて、「本当に新人なんだなあ」と呟いた。 「じゃあ今まで呼ばれてたあだ名は」 「ないですね」 「好きな花」 「詳しくなくて」 「ご趣味は？」 「見る専でSNSを少々」 「おとといの夕食は思い出せるかい？」 「食べずに寝ました」 「『山』といえば？」 「なんですか？」 「……そうか。うーん、俺が名付けて構わないかい？」 「……変なのじゃないなら」 矢継ぎ早の質問の末、鶴丸さんは首を捻った。呼び名がないと不便、なのは伝わるけれど、後半の質問とさっきのイタズラでちょっと信用がない。 そう思ったのが伝わったのか、鶴丸さんはホールドアップの姿勢をとって「名付けはちゃんとやるさ」と言った。 鶴丸さんは真面目くさった顔を作って、椅子の上にまっすぐ座り直した。睫毛まで白い金の両目がじいっとわたしを覗き込む。 そんな風にしてるとすごく神様っぽい。なんだか何もかもを見透かされているようで、わたしは無意識に身を捩った。 ふっとその目が伏せられて、鶴丸さんは心得たように頷いた。 「うん。『かまくら』なんてどうだい？」 資料の片隅に『雪室』と書く。 薄い唇で紡がれた音を、かまくら、かまくら、と口の中だけで転がす。響きは悪くない気がする。 「いいですね」 「よし、じゃあ改めて雪室、よろしく頼むぜ」 鶴丸さんが握手した上からぱしぱしと軽く手を叩く。 すごくフレンドリーだ。仲良くなれそう。なんて思うのはちょろいんだろうか。 わたしたちがそんな感じでじゃれていると、長義さんが備え付けの時計をちらりと見上げた。 「そろそろ開始時間だが……」 机に置かれた資料は四部。だからあとひとり来るはず。 「おはよう。おや？もう揃っているのかな。みんな早いねえ」 「きみが遅いんだ、髭切」 「あ、きみが聞いてた新入りの子？僕は源氏の重宝、髭切さ。よろしく頼むよ」 「聞け」 「……なんでも構わないが、早く座ってくれ」 鶴丸さんが飛ばしたヤジを完全に無視して、髭切さんがおっとり微笑んだ。長義さんは絶対零度の眼差しで地を這うような声を出したけれど、それにも髭切さんは肩をすくめるだけだ。 髭切さんはわたしの対面の席に座る。目が合うと、ニコッと笑って手を振った。笑顔がふわふわしている。 長義さんが軽く咳払いをして、改めてわたしたちを見渡す。 「では始めるよ」 ＊　＊　＊ 新入職員もいることだし、おさらいもかねて概要から説明する。 髭切。耳にタコだろうが寝るんじゃない。いいね？ まずはこの、引継係へようこそ。 引継係は読んで字の如く、本丸と刀剣の引き継ぎにかかわる部署だ。本丸所属審神者の引退、または死亡時に、所有していた刀剣を適切に引継処理することが主な業務。 より具体的に言えば、刀剣の希望を聞いて新しい本丸へ配布したり政府職員に引き抜いたり——刀解したり、だね。そこに残りたいものが多ければ、本丸空間ごと引き継いでくれる審神者を探すのも俺たちの仕事になる。 そう、待たせたね、ここからは君に任せる仕事の話だ。 君の最初の仕事は、『本丸の聞き取り調査』。 聞き取り調査は引継処理の基本の基本だ。 審神者不在の本丸自治を刀剣に委ねられる期間は、特例が認められない限り最大で二ヶ月。それが終われば本丸空間に貯蓄された審神者の霊力が切れ、政府の直轄管理に切り替えられる。 期間内に本刃の意向を聞き取ること。これが君の仕事。 ……鶴丸、髭切を起こしてくれ。 さて、ここからが調査先の本丸についてだ。 本丸の本拠は備前サーバー。引継理由は審神者の死亡。原因は病死。もともと高齢で持病があったことから事件性はない。 発足は十年前だが、これまでに二度、審神者が代替わりしている。だから死亡した審神者は三代目だね。初代は時空転移ゲート事故による行方不明、二代目は霊力減退による引退だ。 あちらの加州清光が窓口役をやってくれるそうだから、まずは彼に話を聞くといい。 聞き取り調査は刀剣職員と人間職員のペアで動く。刀剣側の担当は鶴丸国永、貴方にお願いしたい。 今回は|実地研修《ＯＪＴ》だからサポートにもう一口ついてもらう。こちらは髭切が担当だ。事務所に残って資料集めや書類作成を手助けしてほしい。本来ならば人間職員をつけるべきだが……すまない、人員都合だ。人間職員は数が少なくてね。 「——対象本丸の刀帳や戦績情報、その他詳細は配布資料にある。ここまでで何か質問は？」
November 17, 2025 at 3:04 AM
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松井 桑名はまだ修行中なので帰ってきてから
幾人も焼いた証であろうこの涙を拭う手が熱いこと
November 11, 2025 at 4:28 AM
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今週の活動報告
JR東日本の特急列車あずさの写真 松本市立博物館の特別展「日本刀は美しい」の展示看板。大きな刀の刃先の写真と「Japanese Swords Are Beautiful」「日本刀は美しい」の文字。開催期間は2025年10月2日〜11月16日。 鹿肉のポワレに濃厚なソースがかかり、上にタイムが添えられている。付け合わせにインゲンと薄切りのりんごが盛り付けられている。 ガトーショコラに生クリームがのせられ、黒い皿に盛り付けられている。隣に黒いカップのコーヒーがある。
October 26, 2025 at 12:10 PM
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安達〜〜〜〜！会話してくれ〜〜〜〜！でほかの全てを放り出して夢小説書き始めたので刺してほしい
October 21, 2025 at 4:14 AM
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松井のパフェうまかったな〜〜っていうのとか清麿饅頭…清麿饅頭!?みたいなのとか
October 19, 2025 at 10:12 AM
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今週の活動記録 鉄分が高め
松井文庫創立40周年記念「文武に生きた筆頭家老・松井家ただいま参上！」幟と抜丸 御伴撮影 883系ソニックの写真 「豊後行平ー「祈り」の刀剣ー」立て看板と水心子正秀 御伴撮影 885系ソニックの写真
October 19, 2025 at 10:03 AM
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やったはいいけどレタッチめんどくさくて上げてなかった今年の零秋チャレンジの写真
October 7, 2025 at 8:22 AM
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名月
白い皿に乗った月餅と、わんぱく！刀剣乱舞ほうちょうとうしろうのぬいぐるみの写真
October 6, 2025 at 12:20 PM
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. せ〜〜〜〜〜〜のっ

＼\ カ ン ス ト 〜！ /／
刀剣乱舞ONLINE 戦闘結果画面スクリーンショット 歌仙兼定 包丁藤四郎 刀剣乱舞ONLINE 戦闘結果画面スクリーンショット 小夜左文字 にっかり青江 堀川国広 太鼓鐘貞宗 今剣 博多藤四郎
October 1, 2025 at 2:19 PM
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扇パカ見れなくなるのがさみし〜！つってこの状態なのでレベル上限解放は素直に嬉しいですね また博多を大阪城以外にも出せる
刀剣乱舞ONLINEゲーム画面スクリーンショット
September 26, 2025 at 12:26 PM
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はい
刀剣乱舞ONLINE ゲーム画面スクリーンショット 倶利伽羅江 初回入手
September 14, 2025 at 3:10 PM
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本日の活動記録
KASHIWA PALOOZA tacica TOUR 2025 'Jellyfish Bones'
September 13, 2025 at 12:39 PM
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脈絡なくミスドの新作食べました報告をします
わんぱく！刀剣乱舞 ほうちょうとうしろうのぬいぐるみが机の上のドーナツを見つめている様子。ピンクの袋に「さつまいもド」と書かれたミスタードーナツのさつまいも風味のドーナツが2種類並んでいる。
August 29, 2025 at 12:40 AM
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そして明日は周回する時間の確保が難しいので弊本丸はここでフィニッシュです
刀剣乱舞ONLINE ゲーム画面のスクリーンショット 迎撃ポイント200,314pt
August 24, 2025 at 12:39 PM
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本日の活動記録
永青文庫の建物外壁に設置された木製の館名看板と、「文房四宝の美」展のポスター。会期は2025年7月5日〜8月31日。 コレクションを中心とした特集「記録をひらく 記憶をつむぐ」のパネル 2025年7月15日〜10月26日、主催：東京国立近代美術館 焼き網の上で赤身の牛肉が2切れ焼かれている様子。背景には茶色とグレーのタイルが並ぶ壁が見える。
August 24, 2025 at 12:35 PM
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はぴばわたし〜〜！
色とりどりのフルーツ（ラズベリー、マンゴー、ブルーベリー、キウイ、グレープフルーツなど）とバラの花びらを飾ったタルトケーキの写真。上部のチョコプレートには「おたんじょうびおめでとう」と書かれている。
August 18, 2025 at 12:05 PM
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そういうわけで四周年を迎えました
August 15, 2025 at 3:20 PM
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五度目の夏
あさがおと書かれた札へ水遣りをするように恋　朝顔は咲く 盾として笑い抜く日のきらめきはどこまで真水 蛍は空へ 嫌んなるくらい暑いね。そっちどう？　わたしの叙情はさっき溶けたよ！ 羊水よ満ちよ待っても来やしないひとをただ待つ盆のあらしよ 燃焼を見てる手元を見てる　落ちる　でもさきみとは此世かぎりを 絡めたかった指の代わりに己が手を握ればわかる　祈りたいんだ 根源に語がありき　八月に生まれたきみが生きる八月 点描の点ひとつ打つようにまた日記をつける　きょうはごちそう
August 15, 2025 at 3:12 PM
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いつもありがとう、愛してるよ
刀剣乱舞 歌仙兼定と包丁藤四郎のファンアート
August 15, 2025 at 3:00 PM
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包丁ハイパーキュート藤四郎
August 14, 2025 at 3:25 PM
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頼み込めば何でも着てはくれるだろうけど、何なら着せても怒られないか
August 14, 2025 at 6:54 AM
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今回の麺 ピエトロでパスタ食ったのに愚かにも写真を撮り忘れました
薄切りの牛肉、青梗菜、刻みネギが乗った醤油ベースのスープのラーメンが白い器に盛られている。 豚骨ラーメン。チャーシュー2枚、煮卵、刻みネギがトッピングされ、白い丼に盛られている。スープは濃い茶色で泡立ちがある。 うどんの上に大きなごぼう天と丸天がのった温かい汁うどん。刻みねぎが添えられている。
August 14, 2025 at 1:04 AM