「う゛〜…」拗ねた声をだしながら窓に額を当てて唸る。まるで楽しみを奪われた子供だ。いい歳をしてこんなことをして恥ずかしくないのか、と普段の自分ならば律することも出来ただろうけれど、今日ばかりは無理だった。折角🧂が誘ってくれたのに、僕のばか、あほ、まぬけ。何度も繰り返しながらまたひとつ重い息を吐き出せば、冷たい窓と額の間に暖かくて硬いものが差し込まれる。そのまま頭を後ろに引かれると、バランスの崩した身体ごとぽすりと抱きとめられた。
「いつまで窓辺に居るつもりだ?風邪を引くぞ」
「れー🧂…」
少し冷えた身体を温めるようにぎゅう、と強く
「う゛〜…」拗ねた声をだしながら窓に額を当てて唸る。まるで楽しみを奪われた子供だ。いい歳をしてこんなことをして恥ずかしくないのか、と普段の自分ならば律することも出来ただろうけれど、今日ばかりは無理だった。折角🧂が誘ってくれたのに、僕のばか、あほ、まぬけ。何度も繰り返しながらまたひとつ重い息を吐き出せば、冷たい窓と額の間に暖かくて硬いものが差し込まれる。そのまま頭を後ろに引かれると、バランスの崩した身体ごとぽすりと抱きとめられた。
「いつまで窓辺に居るつもりだ?風邪を引くぞ」
「れー🧂…」
少し冷えた身体を温めるようにぎゅう、と強く
「はぁ…」
つい恨みがましい重い溜め息がでてしまう。……折角、🧂が誘ってくれたデートだったのに。僕のつまらない欲ひとつのせいで台無しにしてしまった。
「はぁ…」
つい恨みがましい重い溜め息がでてしまう。……折角、🧂が誘ってくれたデートだったのに。僕のつまらない欲ひとつのせいで台無しにしてしまった。
「……うん。🧂、君はいい子だね」
腕を伸ばして🧂の髪飾りを外し、彼の白衣の胸ポケットに隠す。今だけは凡人の天才でも何でもない、ただの皮肉屋で頑張り屋さんなべりタス・レイ🧂として居られるように。青紫色の髪に手を差し込んで髪を梳くように流す。最初よりもぎこちなさを無くした手の動きはあの日のお姉ちゃんに少しでも近づけているだろうか。遠い記憶に思いを馳せながら、僕は問う。
『ねえ、カカわーシゃ』
「ねえ、レイ🧂」
『今日はどんな面白いことがあったの?』
「今回はどんな新しい発見があったんだい?」
「……うん。🧂、君はいい子だね」
腕を伸ばして🧂の髪飾りを外し、彼の白衣の胸ポケットに隠す。今だけは凡人の天才でも何でもない、ただの皮肉屋で頑張り屋さんなべりタス・レイ🧂として居られるように。青紫色の髪に手を差し込んで髪を梳くように流す。最初よりもぎこちなさを無くした手の動きはあの日のお姉ちゃんに少しでも近づけているだろうか。遠い記憶に思いを馳せながら、僕は問う。
『ねえ、カカわーシゃ』
「ねえ、レイ🧂」
『今日はどんな面白いことがあったの?』
「今回はどんな新しい発見があったんだい?」
「……また無茶したのかい?」
そこで目に入った🧂の疲労に塗れた顔を見て結局また何も言えなかった。うっすらと隈のできた目元を親指でなぞると気持ちよさそうに瞳が細められ、こちらの問い掛けに答えることもなく彼が「🦚」と僕の名前を呼ぶ。
「なんだい?」
彼が言いたいことは分かっている。だって、態々仕事関係でもないのに🧂が僕を呼び出す理由は一つだけだから。けど、僕は気付いていないフリをして彼に言わせる。甘え下手な彼の背を押すように。慣れさせるために。きっと🧂にもその事はお見通しで。彼は案外躊躇することもなく言う
「僕を褒めてくれ」
「……また無茶したのかい?」
そこで目に入った🧂の疲労に塗れた顔を見て結局また何も言えなかった。うっすらと隈のできた目元を親指でなぞると気持ちよさそうに瞳が細められ、こちらの問い掛けに答えることもなく彼が「🦚」と僕の名前を呼ぶ。
「なんだい?」
彼が言いたいことは分かっている。だって、態々仕事関係でもないのに🧂が僕を呼び出す理由は一つだけだから。けど、僕は気付いていないフリをして彼に言わせる。甘え下手な彼の背を押すように。慣れさせるために。きっと🧂にもその事はお見通しで。彼は案外躊躇することもなく言う
「僕を褒めてくれ」
初めてこうやって力任せに引っ張られた時は驚きに喉が引き攣ったものだが、もう片手では数えられなくなった頃には流石に慣れてしまったので、自分からも身体を少し傾けて滑り込みやすいように調節する。不本意ながら、この時だけは自身の身体の薄さに感謝する。教授もしたほうがいい。絶対に。
力を込めて引っ張られたせいで目の前の分厚い身体にぶつかりそうになるのを寸でのところで何とか踏みとどまる。慣れたとはいえ、いつもいつも乱暴
初めてこうやって力任せに引っ張られた時は驚きに喉が引き攣ったものだが、もう片手では数えられなくなった頃には流石に慣れてしまったので、自分からも身体を少し傾けて滑り込みやすいように調節する。不本意ながら、この時だけは自身の身体の薄さに感謝する。教授もしたほうがいい。絶対に。
力を込めて引っ張られたせいで目の前の分厚い身体にぶつかりそうになるのを寸でのところで何とか踏みとどまる。慣れたとはいえ、いつもいつも乱暴
長く、酸素を全て吐き出すように静かに息を吐き出しながら、僕はこの後にくるであろう甘やかな時間に思いを馳せてしまい、少し噎せた。
いけないいけない…こんなことで動揺するなんてギャンブラー失格だぞ。自分に言い聞かせながら、いつもは気にならない長すぎる廊下を進んでいく。
「教授、来たよ」
ノックを3回。開けるのは相手の返事が聞こえてから。マナーに厳しい彼に合わせてしっかりと言いつけを守って待つが、この時の教授から入室の返事が返ってきたことはない。
長く、酸素を全て吐き出すように静かに息を吐き出しながら、僕はこの後にくるであろう甘やかな時間に思いを馳せてしまい、少し噎せた。
いけないいけない…こんなことで動揺するなんてギャンブラー失格だぞ。自分に言い聞かせながら、いつもは気にならない長すぎる廊下を進んでいく。
「教授、来たよ」
ノックを3回。開けるのは相手の返事が聞こえてから。マナーに厳しい彼に合わせてしっかりと言いつけを守って待つが、この時の教授から入室の返事が返ってきたことはない。
【大学】とだけ表示された最新のメッセージに溜息を吐きながら、コツ、と指先で端末の画面つつく。
「僕が無茶したらお説教するくせに、自分は無理するんだからなー…」
「はぁ…」もう一度だけ溜息を漏らして腰掛けていたデスクチェアから立ち上がる。展開していた仮想ディスプレイも全て閉じてから自身に宛てられている執務室の扉の前に立つ。自動でスライドされた扉に気付いた廊下で待機中の部下に「少し出てくるよ」と伝え待機命令を解除する。付き添いを申し出る仕事熱心な部下に断りを入れて一人
【大学】とだけ表示された最新のメッセージに溜息を吐きながら、コツ、と指先で端末の画面つつく。
「僕が無茶したらお説教するくせに、自分は無理するんだからなー…」
「はぁ…」もう一度だけ溜息を漏らして腰掛けていたデスクチェアから立ち上がる。展開していた仮想ディスプレイも全て閉じてから自身に宛てられている執務室の扉の前に立つ。自動でスライドされた扉に気付いた廊下で待機中の部下に「少し出てくるよ」と伝え待機命令を解除する。付き添いを申し出る仕事熱心な部下に断りを入れて一人
だってその時の🧂の顔があまりにも油断していて、それでいて可愛らしかったから仕方ないだろう?
「君ほど人々から賞賛の声を浴びせられる人も居ないだろうけど…ふふ、流石に頭を撫でられるのは慣れていなかったかな?」
なんの反応も示さない彼に物足りなさは感じるものの、なんともレアな姿を見られたことには違いはない!楽しくなってしまった僕は🧂の頭から月桂樹の髪飾りを引き抜いてグチャグチャとかき混ぜる。癖毛も相まってまるで鳥の巣のようになってしまった🧂にまた笑った。
それが全ての始まりだった。
だってその時の🧂の顔があまりにも油断していて、それでいて可愛らしかったから仕方ないだろう?
「君ほど人々から賞賛の声を浴びせられる人も居ないだろうけど…ふふ、流石に頭を撫でられるのは慣れていなかったかな?」
なんの反応も示さない彼に物足りなさは感じるものの、なんともレアな姿を見られたことには違いはない!楽しくなってしまった僕は🧂の頭から月桂樹の髪飾りを引き抜いてグチャグチャとかき混ぜる。癖毛も相まってまるで鳥の巣のようになってしまった🧂にまた笑った。
それが全ての始まりだった。