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Twitterでは@rote_traumeだったひとです。
夏に松山へ旅したので、あの山の上のお城か、なるほど山裾のあの場所あたり、とぼんやり想像しながら読む。個人的に新島襄の行動力にニコニコしてしまった。幕末の動乱の中、学問によって借財を整理し、武力ではなくその知識と人柄で人心を掴んだ山田方谷とその時代を、取り巻く人びとの目から描く。
それにしても男の世界は肩肘張った馬鹿馬鹿しいもの、と、現代の眼差しから感じてしまうギャップ。幼子を泣かせて良しとする社会はまともとは思えない。だがしかし、人が国だと尽力した人の力で今のわたしたちがある。その努力を知ることが肝要なのだろうなあ。
今年の鮎川賞重賞作は前評判が高いぞ、と聞いてはいたものの、異様に平台を覗きがちなわたしですら本当にびっくりするくらい本屋で見かけず、ようやく買えたら3刷で仰天。赤坂の舞台を彷彿とさせるタイトルだなと思っていたら、なるほど"禁忌の子"が登場する。とある人物の過去に思わず胸を掴まれるし、とある一節に深く首肯する。探偵のキャラクターは馴染み深く安心できるし、しんどくて重たい内容ながらミステリとしての出来が頭抜けていて、これが処女作とは、と感嘆。現役医師による緻密な描き方も素晴らしい。でもこの手の作品は続くたびどんどん重くなるから続編が不安と期待で……笑
共感しかないタイトルに惹かれて読み進めると、なるほど近現代労働論であり近現代の読書論である。読書がノイズであるというのは感覚的に分かる。仕事が立て込むと再読中心になるのも同じ文脈だろう。ラストの提言まで非常に納得がいくし、かろうじてわたしの読書が続いている理由も理解できた。気持ち良くまとまっていた。
ところで、読書が朗読から黙読に移行する中に、多少なりラジオというメディアの登場は関わらないかしら。耳で聴くという歴史について……識字率とも関わるだろうが……
共感しかないタイトルに惹かれて読み進めると、なるほど近現代労働論であり近現代の読書論である。読書がノイズであるというのは感覚的に分かる。仕事が立て込むと再読中心になるのも同じ文脈だろう。ラストの提言まで非常に納得がいくし、かろうじてわたしの読書が続いている理由も理解できた。気持ち良くまとまっていた。
ところで、読書が朗読から黙読に移行する中に、多少なりラジオというメディアの登場は関わらないかしら。耳で聴くという歴史について……識字率とも関わるだろうが……
こんな風に呼ばれたら、わたしでも泣き崩れてしまう。道標になり得たということだから。次を示すことができたのだから。自分よりもっと先へ飛べる存在の、背中を押せる、しあわせときたら!
#springわたしの推し文
www.chikumashobo.co.jp/special/spri...
こんな風に呼ばれたら、わたしでも泣き崩れてしまう。道標になり得たということだから。次を示すことができたのだから。自分よりもっと先へ飛べる存在の、背中を押せる、しあわせときたら!
#springわたしの推し文
www.chikumashobo.co.jp/special/spri...
本屋大賞で翻訳小説部門1位となり、ついに手を伸ばした。世界本の日に読みたい一冊。
ソウルの架空の町(なんだって!?)ヒュナム洞に開店した、コーヒーも飲める書店。そこに集う人々はどこかに傷を抱え、それでも、導かれるようにしてこの書店で巡り合う。
韓国は日本以上に学歴社会だとも聞くけれど、なるほどと思えるような世知辛さ、そこからこぼれ落ちてしまう人たちが生きていて良いと思える、そのきっかけを書店で見つけられるなら、そんな良いことはない。書店にはその力もある。短い章の区切りの向こうに生活があり、わたしもこの書店に行きたくなる。
本屋大賞で翻訳小説部門1位となり、ついに手を伸ばした。世界本の日に読みたい一冊。
ソウルの架空の町(なんだって!?)ヒュナム洞に開店した、コーヒーも飲める書店。そこに集う人々はどこかに傷を抱え、それでも、導かれるようにしてこの書店で巡り合う。
韓国は日本以上に学歴社会だとも聞くけれど、なるほどと思えるような世知辛さ、そこからこぼれ落ちてしまう人たちが生きていて良いと思える、そのきっかけを書店で見つけられるなら、そんな良いことはない。書店にはその力もある。短い章の区切りの向こうに生活があり、わたしもこの書店に行きたくなる。
『RRR』が爆発的ヒットを飛ばすインド映画であることは周知のとおりであり、年明けから宝塚で舞台化されていたこともあり、最近までナートゥ漬けだったため興味を惹く。あれだけ政治的メッセージの強い作品なのに、ラストのエッタラジェンダでガンジーが出てこなかったなあなどと思っていたが、そこも含めて丁寧に説明しており、特に初学者に優しい。新宿中村屋のカレーの話にも触れており、新宿で買い、読んでいたため、個人的にタイムリーで楽しめた。コンテンツ消費に留まらず、今の世界も含めて、関心を持つことが、まず何より必要だと痛感する。
『RRR』が爆発的ヒットを飛ばすインド映画であることは周知のとおりであり、年明けから宝塚で舞台化されていたこともあり、最近までナートゥ漬けだったため興味を惹く。あれだけ政治的メッセージの強い作品なのに、ラストのエッタラジェンダでガンジーが出てこなかったなあなどと思っていたが、そこも含めて丁寧に説明しており、特に初学者に優しい。新宿中村屋のカレーの話にも触れており、新宿で買い、読んでいたため、個人的にタイムリーで楽しめた。コンテンツ消費に留まらず、今の世界も含めて、関心を持つことが、まず何より必要だと痛感する。
本屋大賞受賞を機に、キノベス受賞時に梅田で買っていた本作を読む。琵琶湖のほとりに住む女子高生、成瀬とその周囲の人々の物語。成瀬は奇怪に見えるがそれ故に浮き彫りになる社会もまた奇怪かもしれない。連作短編で、視点人物が変わることで成瀬の印象も変わるのが良い。何より西武ライオンズの協力を得ていて驚いた。郷土愛と言って良いのか、住んでいる町と人の……いわゆる半径500m以内の物語だが、だからこその密度がある。成瀬を成瀬たらしめている視線にちょっと怖さを覚えた。でも友人関係とは概ねこういうものかもしれない。これが、青春のにおいだったかもな。
本屋大賞受賞を機に、キノベス受賞時に梅田で買っていた本作を読む。琵琶湖のほとりに住む女子高生、成瀬とその周囲の人々の物語。成瀬は奇怪に見えるがそれ故に浮き彫りになる社会もまた奇怪かもしれない。連作短編で、視点人物が変わることで成瀬の印象も変わるのが良い。何より西武ライオンズの協力を得ていて驚いた。郷土愛と言って良いのか、住んでいる町と人の……いわゆる半径500m以内の物語だが、だからこその密度がある。成瀬を成瀬たらしめている視線にちょっと怖さを覚えた。でも友人関係とは概ねこういうものかもしれない。これが、青春のにおいだったかもな。
SNSでバズったのを機に、文庫化復刊した一作。あちこちの本屋さんで平台に並んでいてにやにやしてしまう。待ちきれず、先行販売していた紀伊國屋書店新宿本店で購入。昼休みに少しずつ味わって読んだ。
上皇陛下の従兄弟(昭和天皇の弟)三笠宮寛仁親王の長女、彬子女王のオックスフォード留学記。この帯文がまず秀逸である。日本国憲法の対象外である存在が留学先でひとりの人間として勉学に打ち込む姿は眩しいし、誠実な語り口とユーモアに混じるプライドも良い。徳仁親王の作品も最近読んで親近感湧いたこともあり、この機に『トモさんのえげれす留学』も復刊してくれて良いのですよ?
ベーカー街221bの主要人物、ハドスン夫人のレシピ本という体の本作は、書泉の復刊シリーズのひとつ。マリガトーニースープセットでの販売もあり、まんまと購入。カレー風味の羊肉スープ、おいしかった。
思い出話も込みのレシピ本、当時は文章で書くばかりで、幼少期はそれが読みにくくて挫けたものの、今回は楽しく読めた。表記がなくとも食は生きるために必要不可欠、ホームズたちがこんな風に味わっていたと夢想できるのは楽しい。どれか作ってみたくもあるけれど、手間がかかっていてなかなか真似できそうにないなあ。
ベーカー街221bの主要人物、ハドスン夫人のレシピ本という体の本作は、書泉の復刊シリーズのひとつ。マリガトーニースープセットでの販売もあり、まんまと購入。カレー風味の羊肉スープ、おいしかった。
思い出話も込みのレシピ本、当時は文章で書くばかりで、幼少期はそれが読みにくくて挫けたものの、今回は楽しく読めた。表記がなくとも食は生きるために必要不可欠、ホームズたちがこんな風に味わっていたと夢想できるのは楽しい。どれか作ってみたくもあるけれど、手間がかかっていてなかなか真似できそうにないなあ。
なかなか評判だったので気になり読み始め、まさしく巻措く能わず。一気読みしてしまった。竜が現実に存在する世界で、生き延びるためなどの理由で竜の医師を目指す少年たち。老いた竜の、非常に親近感の湧く気まぐれ(わがまま)に振り回されつつも、人の世の安寧のため治療する者と、竜の健康長寿のため治療する者と。個性的な仲間と、火山と地震の多い国で生きるが故に共感しやすい語り、説得力のある診療内容(作者のひとりは現役医師という!)に、これから先が楽しみでならない。構造に強度のある物語を求めて止まない。とても好きだった。
岸田奈美さんのエッセイはよく読む機会があり、そこに出てくる車いすでがしがし運転するお母さん。そのお母さんが書いたエッセイ(説明の仕方が酷い)
外野から見ると悲劇の連続のような一家、それでも愛と笑いに満ちているのはそれぞれのひとの力と気持ちあってのこと。この家族が可能な限りずっと笑顔で暮らし続けられるように願い、そしてそれが可能な社会であるべきなのだ。
いわた書店の一万円選書で手元に来た一冊。ありがたい。
岸田奈美さんのエッセイはよく読む機会があり、そこに出てくる車いすでがしがし運転するお母さん。そのお母さんが書いたエッセイ(説明の仕方が酷い)
外野から見ると悲劇の連続のような一家、それでも愛と笑いに満ちているのはそれぞれのひとの力と気持ちあってのこと。この家族が可能な限りずっと笑顔で暮らし続けられるように願い、そしてそれが可能な社会であるべきなのだ。
いわた書店の一万円選書で手元に来た一冊。ありがたい。
SNSで話題になっていたので、本屋Titleさんで購入。新潟の山熊田という集落に、ひょんなことから嫁いだ方による、山熊田の四季の暮らしと失われかける伝統の残し方への奮闘。都会育ちには絶句するしかない厳しい自然と、そこで暮らす人びとの生きる知恵、共存というには荒々しい関係性。人同士、対自然、今このときに文字で残らなければ消え失せていたかもしれない、あちこちですでに消えていたかもしれないものに思いを馳せる。
SNSで話題になっていたので、本屋Titleさんで購入。新潟の山熊田という集落に、ひょんなことから嫁いだ方による、山熊田の四季の暮らしと失われかける伝統の残し方への奮闘。都会育ちには絶句するしかない厳しい自然と、そこで暮らす人びとの生きる知恵、共存というには荒々しい関係性。人同士、対自然、今このときに文字で残らなければ消え失せていたかもしれない、あちこちですでに消えていたかもしれないものに思いを馳せる。
再読率の一番高い作家のひとり、恩田陸。久々に読んだこの本は、内側の物語と外側の物語、そしてさらにその次の物語へと、たくさんの物語が織り込まれた意欲作で、今に至るまでの"恩田陸"の要素が詰まっている。同名の一冊の本をめぐる、無数の物語の欠片。それぞれに解決と見えるものはあれど、そこからはみ出るしっぽも見えて。ああ、なんて面白いのだろうか。理瀬シリーズのはじまりであり、紅い夢のきっかけでもある。いや、赤い夢は江戸川乱歩だが……読了後、胸に抱いて過ごしたくなる作品。やっぱりどうしたって大好きだ。
再読率の一番高い作家のひとり、恩田陸。久々に読んだこの本は、内側の物語と外側の物語、そしてさらにその次の物語へと、たくさんの物語が織り込まれた意欲作で、今に至るまでの"恩田陸"の要素が詰まっている。同名の一冊の本をめぐる、無数の物語の欠片。それぞれに解決と見えるものはあれど、そこからはみ出るしっぽも見えて。ああ、なんて面白いのだろうか。理瀬シリーズのはじまりであり、紅い夢のきっかけでもある。いや、赤い夢は江戸川乱歩だが……読了後、胸に抱いて過ごしたくなる作品。やっぱりどうしたって大好きだ。
旅窓に合う本を探してふと。表紙にも写っている、絶版となった同名単行本の文庫化。未来から届いた古書目録より、毎月一冊ずつ注文する面白い形の連載をまとめた本で、商會らしい味わいがあるとともに、いくつかは既に刊行されていると気づいて不思議な気持ちになった。読み終えた今、単行本を改めて手に入れたいなあ。古本屋さんを巡るときに探す本の仲間入り。もしかしたららくだこぶ書房の目録や挙げられている本が見つかるかもしれないしね。笑
旅窓に合う本を探してふと。表紙にも写っている、絶版となった同名単行本の文庫化。未来から届いた古書目録より、毎月一冊ずつ注文する面白い形の連載をまとめた本で、商會らしい味わいがあるとともに、いくつかは既に刊行されていると気づいて不思議な気持ちになった。読み終えた今、単行本を改めて手に入れたいなあ。古本屋さんを巡るときに探す本の仲間入り。もしかしたららくだこぶ書房の目録や挙げられている本が見つかるかもしれないしね。笑
紹介本ほど面白いものはない。大矢さんの文章がまた読みやすく分かりやすくかつ鮮烈で目から鱗も多くなるほど首肯。完全攻略もそうだけれど、改めてクリスティを読み返したくなるしクリスティー文庫で統一するようにしているのに創元推理文庫版も欲しくなる。底本の違い、訳の違いで変わるなんて!読み比べたくなる!
他意はないがライバル?社のサロンで、クリスティのローストビーフをいたただきながら楽しく読んだ。同時期故に言及の多いドロシー・L・セイヤーズも読みたくなるね!黄金期のミステリは素晴らしい。古びない魅力は、やはり人の感情が描かれる故なのだなあ。
大量印刷前、本がそれぞれ個別に製本され、貴重なものとして伝えられていた頃。実在のユダヤ教の祈祷書のようなものが見つかる。その修復を任されたオーストラリア人の専門家とサラエボの博物館学芸員。ふたりを取り巻く家族の関係と共に、この伝説的古書が辿った道筋が振り返られていく。美しい一冊の本が現代に伝わるまで、どれだけ多くの者の"さまざまな"思いと魂がつないでいるか。そしてその多くは宗教と、何より家族の、やりきれない物語を内包している。片鱗しか残らない、多くは後世に知りようのない、物語。実在の本を基にした見事なフィクション。
大量印刷前、本がそれぞれ個別に製本され、貴重なものとして伝えられていた頃。実在のユダヤ教の祈祷書のようなものが見つかる。その修復を任されたオーストラリア人の専門家とサラエボの博物館学芸員。ふたりを取り巻く家族の関係と共に、この伝説的古書が辿った道筋が振り返られていく。美しい一冊の本が現代に伝わるまで、どれだけ多くの者の"さまざまな"思いと魂がつないでいるか。そしてその多くは宗教と、何より家族の、やりきれない物語を内包している。片鱗しか残らない、多くは後世に知りようのない、物語。実在の本を基にした見事なフィクション。
「東京の台所」という連載をまとめたシリーズの(当時)最新作らしい。身近な人の死や別れを経験して、それでも、日常生活を送る。そのために、食べて、生きてゆく。人の強さというか、自分自身の手を動かして、出来上がったものが、自分を形作る、そんな日常の強度を感じた。これからは喪失の経験の方が増えていくだろうが、その穴を埋められずとも、やすりがけして痛みを減らして共存していけるような、そんな人びとの生きる知恵にも感じる。連載当初以来の方もおり、時の流れを感じる。移ろい変わって、それでも、食べて、生きてゆく。
「東京の台所」という連載をまとめたシリーズの(当時)最新作らしい。身近な人の死や別れを経験して、それでも、日常生活を送る。そのために、食べて、生きてゆく。人の強さというか、自分自身の手を動かして、出来上がったものが、自分を形作る、そんな日常の強度を感じた。これからは喪失の経験の方が増えていくだろうが、その穴を埋められずとも、やすりがけして痛みを減らして共存していけるような、そんな人びとの生きる知恵にも感じる。連載当初以来の方もおり、時の流れを感じる。移ろい変わって、それでも、食べて、生きてゆく。