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断然文庫派. 本とその周辺. 岩波文庫/講談社文芸文庫/学術文庫/光文社古典新訳文庫/ちくま学芸文庫/平凡社ライブラリー
小島毅『朱子学と陽明学』ちくま学芸文庫, 2013年 #読了

『仏教と陽明学』(法蔵館文庫)を読む下準備として。
非常によくまとまっててわかりやすい。
February 19, 2025 at 9:01 PM
大内兵衛, 茅誠司 他『私の読書法』岩波新書, 1960 #読了

この本は「読書法」についての本ではない。「私の読書法」についての本である。
雑誌「図書」での連載を纏めたのが本書だが、岩波書店という文化と昭和30年代という時代相をよく反映した一冊である。
執筆者は錚々たる面々なのだが、皆口を揃えて「人に教えられるような読書法は持ってない」と答える。なので技術的な話は殆ど出てこない。
むしろ、これまでの読書遍歴や筆者の本との関わり方に重点が置かれている読書随筆と言った方が良い。
この本が「読書法」ではなく「私の読書法」である所以である。
January 29, 2025 at 8:11 PM
荒木浩『方丈記を読む-孤の宇宙へ』法蔵館文庫, 2024 #読了

最近、「男がただ一人でご飯を食べるだけ」の映画が話題らしい。
『方丈記』はある意味で男がただ一人で暮らすなかで考えたことや、自らの来し方を振り返った「孤独について」の本である。
鴨長明が生きた時代は平安末期から鎌倉初期の時代の転換点であり、災害や飢饉などが続く怒涛の時代である。
そうした不安の時代の中で生まれた『方丈記』は後の読者たちによって自らの生きる時代と重ね合せながら読み継がれていった。
本書は、今を生きる新たな読者が現代と『方丈記』を重ね合せながら読むための格好の材料となるだろう。
January 28, 2025 at 7:07 PM
橋本麻里, 山本貴光, 三井嶺『図書館を建てる、図書館で暮らす 本のための家づくり』新潮社, 2024 #読了

個人的に話題だった連載がやっと書籍化した。
雑誌やテレビの取材でみた方もいるかもしれない橋本、山本両氏のご自宅もとい「森の図書館」を建てるまでの経緯を綴ったのが本書であるが、それだけにとどまらず本書後半では「書物と人がよき隣人として」切り結ぶ関係について、自身が関わってきた仕事とリンクさせながら幅広く語られる。

建物内部の写真も多数。眺める度に溜息が出る、羨ましい。
January 9, 2025 at 7:22 PM
清水茂『中国目録学』ちくま学芸文庫, 2024 #読了

年末年始はこの本を読んでいたのだが、自分の興味関心にドンピシャ。

古代中国における書物の誕生からその変遷を辿る過程で生まれた書籍を分類して解題目録を作る学問「目録学」の入門書とも言える本書は、目録学の解説以外にも古代中国の蔵書家や書籍市場など、書物について自由に論じた、著者の広い見識のうかがえる好著。
個人的に興味を惹いたのは「紙の発明と後漢の学風」の章で、印刷術の発明が及す学問の方法や態度への影響について触れられている。一種のメディア論としても示唆に富む。

書物を編むということは世界を編むという行為に等しいのかもしれない。
January 3, 2025 at 6:57 PM
アリストテレス/岩崎勉 訳
『形而上学』
講談社学術文庫, 1994年

〈万学の祖〉といわれるギリシア古典哲学の最大の巨人アリストテレス。本書は、彼の思想の根幹をなす『形而上学』を、哲学者・岩崎勉がギリシア語原本から初めて日本語に翻訳したものである。
「存在するものとは何か」を追究して、アリストテレスは、〈質料〉〈形相〉など、個体の本質と属性を表わす用語と概念をつくり、万学の基礎を築いた。あらゆる学問の最高峰に位置づけられた古典中の古典が、いま甦る。
解説 小山宙丸
March 16, 2024 at 1:04 PM
カール・マルクス
今村仁司, 三島憲一, 鈴木直 訳
『資本論 第一巻 上』
ちくま学芸文庫, 2024年

貨幣の増殖を自己目的とする終わりなき運動、資本主義。
なぜ等価交換に見える商品流通のなかから、富裕化する階級と貧困化する階級との絶対的対立が生じるのか。この矛盾に満ちた資本主義社会の運動法則全体を、マルクスは19世紀イギリスの産業社会を素材に解明しようとした。
全4巻を構想しながら、生前に刊行されたのはこの第1巻だけだった。しかしそれは独立性の高い著作として、以後の知的・政治的世界に巨大な影響を与え続けた。全2巻。
March 12, 2024 at 2:54 PM
江藤淳
『なつかしい本の話』
ちくま文庫, 2024年

「本とは、むしろ存在である」
『アーサー王騎士物語』『モンテ・クリスト伯』『谷崎潤一郎集』……。
自身の虚弱さや母との死別といった、堪えがたい現実から幼き著者を解放してくれたのは、病床の枕元に積み上げられた本だった。昭和を代表する文芸評論家が、第二次世界大戦の戦中から戦後の重苦しい空気とともに、本だけが支えであった自身の幼少期から青年期を回想する。
解説 先崎彰容
March 10, 2024 at 5:48 PM
佐多稲子/佐久間文子 編
『キャラメル工場から-佐多稲子傑作短篇集』
ちくま文庫, 2024年

少女工員の労働の日々を描いたデビュー作「キャラメルエ場から」、非合法の地下政治活動での女性の心の傷を描く「疵あと」、女ともだちとの数十年ぶりの再会と過去の事件を描く「時に佇つ その五」……
労働、地下活動、戦争、東京や長崎の町、懐かしい友人たちについて自らの経験をもとに書き続け、昭和を駆け抜けた作家、佐多稲子。その最良の16篇を厳選した文庫オリジナルの短篇選集。
March 9, 2024 at 4:07 PM
飯沢耕太郎
『少女古写真館』
ちくま学芸文庫, 2001年

いつでもちょっぴり不機嫌で、どうにも手に負えない、小さな存在——少女たち。
この捉えどころのない生きものは、幼児から女へと変貌するあわいの瞬間に奇跡のごとくたちあらわれ、やがて幻のようにうつろってゆく。
かたや、写真というものは、つねに儚いものの姿を追い求めつづけてきた。だから、まるで捕虫網で美しい蝶をつかまえようとするように、写真が少女という一瞬の姿を捕らえてきたのは当然の成りゆきなのだ。
洋の東西を問わず撮りつがれてきた少女写真を厳選し、小さなサイズに閉じ込めた、手のひらに載るコレクション。
March 7, 2024 at 3:11 PM
安部公房
『砂漠の思想』
講談社文芸文庫, 1994年

可能性を完全開花させずに永逝した文学者安部公房が、衝撃作『砂の女』『他人の顔』を続けて刊行した時点で、自身の初期思考をエッセイの形で発表したものを精選し、全エッセイとして刊行した話題の大著。
初期安部公房が孕む、”ヘテロ“的思考への新たな再評価。
早く来すぎた思想者・安部公房の”可能性の中心“。
解説 沼野充義
March 6, 2024 at 3:13 PM
阿佐田哲也
『無芸大食大睡眠』
集英社文庫, 1988年

著者の交友範囲の広さには、ただただ敬服するほかない。作家はもとより編集者、映画俳優、舞台俳優、作曲家、作詞家、歌手、漫画家、スポーツ選手、酒場のママ等々。
酒、賭け事、映画、芝居、病気等等、ありとあらゆるものを通じて彼等との交際エピソードや、時代の流れを愉快に綴る、風俗エッセイ。
解説 伊集院静
March 5, 2024 at 3:24 PM
秋山虔
『源氏物語-若い人への古典案内』
現代教養文庫, 1971年

「源氏物語」は、世界に誇る古典として、だれにもその名は知られているが、その実、我々がこれに親しみ、内容を解するのは容易なことではない。
本書は、物語としてのあらゆる要素をもった高雅な一大長編を、原作のイメージを損わず、登場人物の性格、心理、事件の葛藤等、興味あるように配慮し、若い人向けにやさしく書きおろしたもの。
March 4, 2024 at 6:27 PM
ジル・ドゥルーズ, フェリックス・ガタリ
財津理 訳
『哲学とは何か』
河出文庫, 2012年

この時代に逆らって、来たるべき時代のために」書かれたドゥルーズ=ガタリの最後の共著にして、その思想の総決算。
内在平面 - 概念的人物 - 哲学地理によって「哲学」を総括し、カオスに立ち向かう三つの平面として哲学 - 科学 - 芸術の連関を明らかにする。
世界への信をうちたてながら、人間をこえる限りなき生成/創造へと思考を開く絶後の名著。
March 3, 2024 at 3:25 PM
杉田久女
『杉田久女全句集』
角川ソフィア文庫, 2023年

女性が社会進出を始めた大正デモクラシーの時代、俳句の海へと船出した久女。
「花衣ぬぐやまつはる紐いろいろ」
「足袋つぐやノラともならず教師妻」
「谺して山ほととぎすほしいまま」
良妻賢母の思想との葛藤を抱えながら斬新さと美意識を放ち、女性俳句の先駆として頂点を極めた。師・虚子からの破門という悲劇は世に知られるが、後年も自己表現に挑み続けた姿が句から立ち上る。未発表句や随筆選も掲載する決定版。
解説 坂本宮尾
March 2, 2024 at 3:25 PM
井伏鱒二
『厄除け詩集 特装版』
講談社文芸文庫, 1994年

コノサカヅキヲ受ケテクレ
ドウゾナミナミツガシテオクレ
ハナニアラシノタトヘモアルゾ
「サヨナラ」ダケガ人生ダ
(于武陵「勧酒」より)

解説 河盛好蔵, 大岡信
March 1, 2024 at 3:46 PM
城市郎
『発禁本』
福武文庫, 1991年

志賀直哉『濁った頭』、秋田雨雀『骸骨の舞踏』、伊藤晴雨『責の研究』、高橋鉄『人性記』、ピチグリリ『貞操帯』、ヴァン・デ・ヴェルデ『完全なる結婚』——
治安維持法違反、風俗壊乱などの罪に問われて発禁処分となった百余冊の一部抜粋と数々のエピソードで綴る「裏」の文学史!
解説 青木正美
February 29, 2024 at 3:21 PM
山川方夫/高崎俊夫 編
『親しい友人たち-山川方夫ミステリ傑作選』
創元推理文庫, 2015年

34年という短い生涯に於いて「三田文学」の編集に携わったほか、自作5編が芥川賞の候補作となるなど、純文学に大きな足跡を残した山川方夫は、一方で「ヒッチコック・マガジン」連載の〈親しい友人たち〉が探偵小説読者から高く評価される、謎を扱ったショートストーリ一の達人でもあった。夏と海、戦後と虚無を描き続けた
“早世の天才”の才気を示す、文庫オリジナル傑作選。
解説 法月綸太郎, 岡谷公二
February 28, 2024 at 3:13 PM
高原英理
『ゴシックハート』
立東舎文庫, 2017年

これから私はゴシックな意識について語ろうと思う。ゴシック建築、ゴシック・ロマンス、ゴシック・ロックから現在の「ゴス」まで、いくつかの飛躍と変質はありながらも一貫した世界を作り上げてきたのが「ゴシック」という名の感受性だ。それは主義ではない。また思想や理論として構築されているのでもない。言ってみれば好悪の体系のようなものだ。しかし自己の必然にもとづいた命懸けの好みなのだと言いたい。ロックがそうであるように、それは生き方なのだ(本文より)。
解説 浜崎容子(アーバンギャルド)
February 27, 2024 at 3:18 PM
多木浩二
『写真論集成』
岩波現代文庫, 2003年

伝説の写真雑誌『プロヴォーク』の理論的支柱であった著者の三〇年にわたる写真論を集成。内容は、写真の形而上学的考察、写真史を画した写真家論、人間の知覚を変容させた科学写真論、写真メディアの誕生と崩壊、ファッション写真論に及ぶ。
写真に何が可能かを問いながら、世界を認識する手がかりを求めた写真論の極致。
February 26, 2024 at 4:10 PM
阿部昭
『新編 散文の基本』
中公文庫, 2022年

短篇は他のどんなジャンルよりも発想や展開において、また構成や叙述において自由で柔軟なものだ——。
「私の文章作法」「短篇小説論」を中心に日本語論、自作解説を増補した新編集版。『短編小説礼讃』の著者による小説作法の書。
巻末に荒川洋治との対談「短篇小説を語る」を収録する。
解説 荒川洋治
February 25, 2024 at 4:42 PM
川上弘美 選
『精選女性随筆集 武田百合子』
文春文庫, 2024年

武田百合子が夫・泰淳と過ごした富士山麓での十三年間。友人や編集者と交流し、愛犬の死に悲しみ、四季の移ろいを澄明な目で見つめる。日々の生活の美しさと陰を克明に描いた「富士日記」のほか、
ユーモラスな交遊録や、娘と過ごした晩年期など、天衣無縫ながらも丹念に綴られた名文を川上弘美が厳選した一冊。
解説 阿部公彦
February 24, 2024 at 3:31 PM
西村賢太
『どうで死ぬ身の一踊り』
角川文庫, 2019年

不遇に果てた大正期の私小説家・藤澤清造。その負の存在に心の支えを見出し“歿後弟子”を目指す男の捨て身日々。
“師”に明け暮れ墓守りを行い、資料探しに奔走して全集作りに注力する情熱は、自らの人生を完全に賭した、不屈で強靭な意志と同義のものであった。
同人誌発表の処女作「墓前生活」、商業誌第一作の「一夜」を併録。現在に至るも極端な好悪、明確な賞賛と顰蹙を呼び続ける問題の第一創作集、3度目の復刊。
参考文献 久世光彦, 坪内祐三
解説 勝又浩
February 23, 2024 at 3:38 PM
古井由吉
『この道』
講談社文庫, 2022年

祖先、肉親、自らの死の翳を見つめながら、綴られる日々の思索と想念。
死を生の内に、いにしえを現在に呼び戻す、幻視と想像力の結晶。
終末の気配を濃く感じながらも、「未だ時ならず」と言い聞かせて筆を揮い、文学の可能性を極限まで拡げつづけたトップランナーが生前最後に遺した、濃密な連作小説集。
解説 松浦寿輝
February 22, 2024 at 5:09 PM
カーソン・マッカラーズ
ハーン小路恭子 編訳/西田実 訳
『マッカラーズ短篇集』
ちくま文庫, 2023年

再評価が進むマッカラーズの短篇集。
奇妙な片思いが連鎖する「悲しき酒場の唄」、アルコール依存症の妻に対する夫の愛憎を描いた苦みのある佳品「家庭の事情」、思春期の少女が必死に失うまいとする親密さと愛の形を細やかに描いた「そういうことなら」。
異質な存在とクィアな欲望が響きあう触発の物語八編を収録。
角野栄子氏・藤野可織氏、推薦。
解説 ハーン小路恭子
February 21, 2024 at 3:45 PM