「貴方にこんな趣味があるとは思いませんでしたね」
「何の話だ」
「今の話ですよ。この体を抱くだなんて、死体とまぐわうようなものだ。随分素敵なご趣味なことで」
「どうせ俺もお前も等しく死人だろうが」
丁度死んでてよかった、と口にして、口にしてから、言わなければよいこともあることを、俺は思い出したのだった。
「……そんな泣きそうな顔しないでくれや」
「してませんよ、存外想像力が逞しいようで」
どうせ死んでいるのなら、いっそ言葉もなければいいのに、どうして俺もこいつも減らず口ばかり。話したいことは、きっともっとあったはずなのに。
「本当に馬鹿だな、俺ら」
「……それだけは同意してあげますよ」
「貴方にこんな趣味があるとは思いませんでしたね」
「何の話だ」
「今の話ですよ。この体を抱くだなんて、死体とまぐわうようなものだ。随分素敵なご趣味なことで」
「どうせ俺もお前も等しく死人だろうが」
丁度死んでてよかった、と口にして、口にしてから、言わなければよいこともあることを、俺は思い出したのだった。
「……そんな泣きそうな顔しないでくれや」
「してませんよ、存外想像力が逞しいようで」
どうせ死んでいるのなら、いっそ言葉もなければいいのに、どうして俺もこいつも減らず口ばかり。話したいことは、きっともっとあったはずなのに。
「本当に馬鹿だな、俺ら」
「……それだけは同意してあげますよ」
この行為に感情は必要ないと割り切っている原に対し、人恋しさを誤魔化すために行為に及んでいることに対する後ろめたさを感じている藤は、「原を好きにならなければならない」というある種の強迫観念のようなものを抱くようになる。
どうして好きになれないのか、貴方はなってくれないのか、と考えが混線していくうちにおかしくなっていく藤と、ならば関係を断つべきであり、その責任があることは解っているのに手放せない原の原藤。
この行為に感情は必要ないと割り切っている原に対し、人恋しさを誤魔化すために行為に及んでいることに対する後ろめたさを感じている藤は、「原を好きにならなければならない」というある種の強迫観念のようなものを抱くようになる。
どうして好きになれないのか、貴方はなってくれないのか、と考えが混線していくうちにおかしくなっていく藤と、ならば関係を断つべきであり、その責任があることは解っているのに手放せない原の原藤。
「ごめん」調子乗った、と続けようとした瞬間、藤がちょいちょいと手招きするので顔を寄せたら、噛み付くように口付けられて、「これなら大歓迎ですよ」って艶めいた微笑みを向けられるので、「お、おう……」って原は動揺する。
「でも、食べ物では遊ぶな」
「はい」
「ごめん」調子乗った、と続けようとした瞬間、藤がちょいちょいと手招きするので顔を寄せたら、噛み付くように口付けられて、「これなら大歓迎ですよ」って艶めいた微笑みを向けられるので、「お、おう……」って原は動揺する。
「でも、食べ物では遊ぶな」
「はい」
今日は鍋の予定だったのに、まったく違う夕飯になり、「これはこれで美味しいけど!好きだけど……!」と少し不満そうな藤。「明日こそは鍋にしましょう、明日こそは!約束ですよ」って言うので、明日の約束が藤と出来るという、当たり前の日常が嬉しい原は「約束な」って顔を綻ばせるけど、藤には「鍋そんなに楽しみなのかな」くらいにしか伝わってない。
それでも、原はそれくらいでちょうど良いと思っている。藤がやたら思考をぐるぐるさせて切羽詰まってしまうよりも、のほほんと呑気にしている方が嬉しいため。
今日は鍋の予定だったのに、まったく違う夕飯になり、「これはこれで美味しいけど!好きだけど……!」と少し不満そうな藤。「明日こそは鍋にしましょう、明日こそは!約束ですよ」って言うので、明日の約束が藤と出来るという、当たり前の日常が嬉しい原は「約束な」って顔を綻ばせるけど、藤には「鍋そんなに楽しみなのかな」くらいにしか伝わってない。
それでも、原はそれくらいでちょうど良いと思っている。藤がやたら思考をぐるぐるさせて切羽詰まってしまうよりも、のほほんと呑気にしている方が嬉しいため。
どうか僕を見てほしい、誰かずっと見つけていてほしい、離さないでほしい、と泣く少年を、男は抱きしめて言いました。ずっと見ているのは難しい、お前の行きたい場所に何処までも駆けていってほしい、けど許されるってんなら、それでもお前の隣にいさせてほしい。それじゃ駄目か、俺はいらねぇか。少年は首を振りました。わからない、でもいてほしい。男は少年の背をなでてやり、そうか、そうかとほほえみました。
その夜、少年は男の腕の中で、久しぶりに深く暗い眠りにつきました。それは彼にとって脅かすものはなく、何の恐れもなく、そしていつになく温かく優しい暗闇でした。
どうか僕を見てほしい、誰かずっと見つけていてほしい、離さないでほしい、と泣く少年を、男は抱きしめて言いました。ずっと見ているのは難しい、お前の行きたい場所に何処までも駆けていってほしい、けど許されるってんなら、それでもお前の隣にいさせてほしい。それじゃ駄目か、俺はいらねぇか。少年は首を振りました。わからない、でもいてほしい。男は少年の背をなでてやり、そうか、そうかとほほえみました。
その夜、少年は男の腕の中で、久しぶりに深く暗い眠りにつきました。それは彼にとって脅かすものはなく、何の恐れもなく、そしていつになく温かく優しい暗闇でした。
のを、永は知っているので、「何をしてもいいって言ってるのに何もしてこないんです」と相談してくる藤を相手しながら、二人揃って難儀な懸想してんなあ……と少し同情している。※ただし巻き込まれたくはない。
のを、永は知っているので、「何をしてもいいって言ってるのに何もしてこないんです」と相談してくる藤を相手しながら、二人揃って難儀な懸想してんなあ……と少し同情している。※ただし巻き込まれたくはない。
「や、やっぱり迷惑でしたか!?」
「違う……つか、そういうこと絶対俺以外に言うなよ」
「?貴方以外に言う必要あります……?」
「や、やっぱり迷惑でしたか!?」
「違う……つか、そういうこと絶対俺以外に言うなよ」
「?貴方以外に言う必要あります……?」
「あー……あの……あの、おま、……おまえ、さあ……」
「?はい」
「顔にでないにも程があるし、むっつりなのもどうかと思う」
「!?だ、誰がむっつりなんですか誰が!」
「お前だよ!」
「あー……あの……あの、おま、……おまえ、さあ……」
「?はい」
「顔にでないにも程があるし、むっつりなのもどうかと思う」
「!?だ、誰がむっつりなんですか誰が!」
「お前だよ!」
「おかえりなさい、据え膳です」
って帰宅早々言われるから、ペラっとシーツの中を覗いたら本当に全部準備済みになっていたため、原は少しツボに入ってしまい、笑いを噛み殺しながら「自ら据えられる奴いるんだな」って答える。
「据え膳どうしますか」
「いただきます」
なお、終わったあとに準備は自分がしたかったな、と原が言うので、あまり気乗りはしないが大切な人の願いも叶えるのが恋人の役目だろう、と思った藤、次回、準備無しでいつも使っている品だけ持って原のベッドに転がり、
「おかえりなさい、据え膳です」
って帰宅早々言われるから、ペラっとシーツの中を覗いたら本当に全部準備済みになっていたため、原は少しツボに入ってしまい、笑いを噛み殺しながら「自ら据えられる奴いるんだな」って答える。
「据え膳どうしますか」
「いただきます」
なお、終わったあとに準備は自分がしたかったな、と原が言うので、あまり気乗りはしないが大切な人の願いも叶えるのが恋人の役目だろう、と思った藤、次回、準備無しでいつも使っている品だけ持って原のベッドに転がり、
最終的に優しくされすぎて「もう良いです大丈夫です本当に大丈夫なんで」って音を上げる藤が負ける。
最終的に優しくされすぎて「もう良いです大丈夫です本当に大丈夫なんで」って音を上げる藤が負ける。