暴力を解決手段とすることを絶対許さないのはそれでいい、それなら彼のこと都合よく引用しなければいいのに

有名出版社の編集者でもない私があなたの文章には光るものがあります、ぜひ本を書いてくださいと言ったところでどうしようもないことだし、彼はすでに身体を張って社会に大きな問いを投げかけている。
そんな彼に更に何か要望するなんて厚かましいことだが…
拘置所で日誌的なものでも何か書いているだろうか。

彼の文章に強く引き込まれ何度も読んだのは、共感したためではなかった。
むしろ徹頭徹尾これまでの自分とは違った視点、逆の意見、感じ方だった。
それでも彼の文章に魅力を感じるのは大事件を起こした人のものだからか？
例えばどんな安物の服でもセレブが一度袖を通せばプレミアがつくように？
私はしばらく考えて、ある意味ではそうだが（事件がなければ彼の文章には出会えなかったし、内容も事件と切り離せない）、しかしそれだけではないという結論を出した。

疲弊した彼に対して勝手な要望だけど、彼に文章を書いてほしい…
事件後、彼の人生の足跡を追うように縁の地へ出かける人たちがいた。
私は自由に身動きがとれない状況だったがその人たちの気持ちはよく分かる気がした。
彼の目で、物事を見たいのではないか。
一定の人が彼の目で物事を見、感じたいと願っているなら…彼に文章を書いてほしい。