ゆる
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んじんしょ、富稲　20↑　相手左右固定
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聖夜のんじんしょ
主曰く、二振りの真っ白なサンタクロースは何故か同じ香りを纏っていたらしい
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。 以下は本文の内容です。 　雲類の朝は早い。そもそも大抵の刀剣男士の朝は早いのだが、雲類は休みの日でも生活リズムを維持する、真面目な男士が揃う刀派だった。　たとえ前日に酒もありなパーティーがあったとしても、彼らはいつも通りの時間に目を覚ましていつものように朝の支度をする。それが、雲生と雲次という男士の性格である。 「おはようございます、雲次」 　サンタさんからプレゼントが届いていますよ、と雲生が柔らかく微笑みかける。雲次は寝ぼけまなこを擦りつつ、サンタさんねえと密かに呟く。雲次は聖夜の賢者をサンタクロースと呼んでいたが、祖が「サンタさん」と呼ぶなら自分もそれに倣うまで。雲生といる時は、彼もサンタさん、と親しみのある呼び方をするのだ。 「雲生、君は？」 「私にも届いていましたよ」 　雲生が小さな箱を持って見せる。雲次のものより小さいが、プレゼントは大きさではない。雲次は、雲生の一挙一動に期待が見え隠れしていることに気付き苦笑した。 　雲生も雲次も、まだ若い成人男性のような見た目をしているものの、実際のところは八〇〇年ほど前に生まれた付喪神である。いくらその性根が純粋と言えど、幼子のようにサンタクロースの存在を信じている、というわけではない。彼らが信じているのは、サンタクロースという形で現れる人の善性である。 　彼らはサンタクロースの正体を知っている。粟田口におけるサンタクロースは一期一振を始めとした太刀だし、来派は明石国行（なお面影は信じて貰う側である）、江の刀達は稲葉江と富田江である。なお江については、稲葉が顕現する前は審神者がサンタ役をしており、そこから稲葉達が引き継いだとか。では鵜飼派のサンタクロースは誰かといえば、雲生と雲次の二振 りである。互いに互いのサンタクロースをやっているのだ。それも、お互いにそのことは知らないという体で、茶番をやっているのである。 「雲次、あなたは何を貰ったのですか？」 　なんて、用意した男が訊ねる。中身も、包装も全部雲生が手がけたのだ。知らないはずがない。しかしあくまでもこれはサンタクロースという、聖夜に現れる賢者からの贈り物。その体を崩さないためにも、雲生は道化を演じているのであった。 「ええと……あ、手帳だ」 　中を開けば、一年分の予定なんかが記すことができるようになっている。ちょうど今は年の瀬、一年の目標や予定を立てるのに相応しい時期だ。サンタクロースは中々センスが良い。そう笑う雲次に、雲生は「よかったですね」と目を細める。兄であり父でもある、そんな表情だった。 「そっちは？」 「私は……これは、ヘアミルクでしょうか？」 「そうだね」 　雲生が小さなボトルを手に、パッケージを眺める。雲次は柔らかな笑みを浮かべ、彼の元に贈られたプレゼントの解説を始めた。 「雲生はくせ毛だろう？　確かこの製品は雲生の髪質に合っているタイプだったはずなんだ。ドライヤーで乾かす前に使ってみなよ、きっと朝の寝癖に困ることも減ると思うよ。ああ、セットする前に使ってもいいからこの後使ってみる？」 「なるほど……」 　では早速使ってみるとしましょう。雲生がボトルを抱き締めるように、胸の内へ収める。それを見て雲次は密かに安堵するのであった。 「そうだ、雲生。主はそろそろお目覚めでしょうか」 「ん？　ああ、たぶん今頃短刀達の突撃に遭ってるんじゃないかな？」 「なら起きていると見て良さそうですね」 　私達はサンタクロースではありませんが、主に贈り物を渡しに行きましょう。そう、雲生が部屋に置いていた小箱を見ながら促す。サンタクロースではないなんてどの口が言うのだか。だが、雲生も雲次もその茶番を崩すつもりはない。成熟した精神を持つからこそ、馬鹿げた茶番を全力で楽しみたいものなのだ。雲次も雲次でまた、サンタクロースではない雲次から主への贈り物を用意している。それが損なわれずあることを確認して、それじゃあ着替えなきゃね、と笑うのであった。
December 25, 2025 at 1:15 AM