やまち
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やまち
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🌟🍒／GO／たまに字を書きます（二次）。
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300字も書けるから短い話を直接アップするのもありかも。
試しに既存の作品を画像で。クロアジです
ちょっと失礼、と断って目の前を横切ったウエストコートは、行儀良く並んだボタンホールの一番上から裾にかけて、すり切れていた。 長い足を放り出すようにして座っている男は、ウエストコートの行方を目で追いつつ考える。かなり前から傷んでいると気づいていたが、長く愛用しているもの特有の趣と品があるので、気になったことは一度もない。それは、彼の持つ性質ゆえかそれとも、唯の欲目なのか。 よくめ。 自分で思い浮かべた言葉を改めて舌に乗せた男は、苦い物を食んだように眉をしかめて言葉を飲み込む。駄目だ、今のはナシ。 「ええと、あれはどこに置いたんだったかな」 呟きながら、ウエストコートの主のまろやかな身体が奥へ消える。 男は、椅子の背にだらしなく預けていた身体を起こして、膝の上に肘をのせ頬杖をつく。薄い唇をへの字に曲げて、本が所狭しと積まれた部屋の薄暗い奥をじっと見つめる。闇の中も光の中と同じように見通せるその瞳は、月のように鮮やかな黄色だ。 男は、悪魔だった。とはいえ誰もが想像する「悪魔」からだいぶはみ出ているが。 はみ出し者の悪魔は、薄暗い奥を睨みつけながら唇を僅かに動かして三つ数える。いち、 に、さん、でパチリと指を鳴らせば、たちまちランプが灯り部屋の中が明るくなった。 夢中になって明かりの事など忘れていたのだろう、棚の陰から「ありがとう」と顔を覗かせたウエストコートの主へ気だるげに手を振るが、興味のない素振りとは裏腹に瞳は熱心に棚を見つめている。 彼にしてみれば、棚なんて始めから無いようなもの。つまり悪魔の視線は、ずっと棚の陰の彼へ注がれ続けているというわけだ。 しばらくして、あった！　と弾む声が聞こえた。 悪魔は僅かに口角を上げ、サングラスの奥の目を細める。 それから、彼がこちらへ戻る前に頬杖を外して再び足を投げ出し、だらしなく座り直す。頭の後ろで腕を組み、興味がなさそうな顔を作って彼を待つ。 「何を探していたんだ、天使様は」 エンジェルと呼ばれたウエストコートの主は、これだよと本を掲げて見せる。身を乗り出して表紙を見た悪魔は「誰でも簡単にプロ顔負けの美味しいケーキが作れる本」と読み上げ、胡散臭い物を見るように片眉をつり上げた。 「またケーキでも作るつもりか」 そのとおり、と本を掲げたウェストコート の彼——悪魔がそう呼ぶのだからつまりは本物の天使が、厳かに顎を引く。 「以前電話で、私がケーキを焼いた話をしただろう？」 ああ、と頷いた悪魔は、あの退屈すぎる日々を思い返して本物のうんざり顔をした。 「なにごとも、回数を重ねるのは良いことだよ。おかげで、私の腕は大変上達した」 「ケーキ作りの腕がか？」 「そう。もはやプロフェッショナルと言っても過言ではないね」 胸を反らす天使を前に悪魔の脳裏へ浮かんだのは、似合わない髭を描きシルクハットを手にした天使の姿だった。袖の中には、瀕死の鳩が一羽。 「今すぐケーキが食いたいんなら買ってきてやる」 立ち上がりかけた悪魔を制した天使が「そうじゃない」と首を振った。 「私が作ることに、意味があるんだよ」 ふっくらした頬が、いつもよりほんの少しだけ赤い。 「きみの、ために」 滅多に聞かない、とてもとても小さな声だった。 悪魔が、目を瞬かせた。それからハッとして、うわずった声で言った。 「もう一度いってくれ、エンジェル」 「二度はないよ」 ふいと背中を向けたその耳も頬と同じようにほんのり赤いことに目ざとく気づいた悪魔は、椅子から飛び上がって天使の後を追いかけた。口元が勝手に緩んでしまうのを抑えられない。さっき飲み込んだ言葉が胸の辺りで跳ねている。欲目、それも「惚れた欲目」だ大いに結構。 「本当によく聞こえなかったんだ、アジラフェル。だからもう一回」 「なにか一言たりないとは思わないか、クロウリー」 足を止めた天使は振り向きもしない。なあその顔を今すぐ見せてくれ！叫びたいのを堪えて悪魔は薄い唇を開く。 「頼む……マイエンジェル」 アジラフェルと呼ばれた天使が、そっと振り返る。 いつの間にか、廊下のランプが全て消えていた。けれど、クロウリーと呼ばれた悪魔には陽の下と変わらず、ちゃんと見えている。 アジラフェルの頬が、まるでリンゴのように赤く染まっているのを。
February 17, 2024 at 4:16 AM
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どういうふうに使うか悩む🤔
February 7, 2024 at 8:03 AM