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chigi(ちぎ)です。本を読んだり、映画を観たり。創るひとたちを見ているのが好きです。
note:https://note.com/chigi/(映画や読書の感想まとめ)
透の固い決意に触れた秋生が、改めて透を手伝うと言い出すシーンが好きなんですよ。そうして差し出した秋生の手を、細く小さな透の手が強い力で引いた瞬間が。
これからの彼らもぜひ見たい。

登場するのは悲しい魂ばかりでもなくて、秋生の派遣先のひとつ、若宮家のエピソードもお気に入りです。 3/3
November 23, 2025 at 2:40 AM
透が胸の内に秘めるものは何か。また、透との出会いが“二度目の分岐点だった”という秋生に何があったのか。引きつけられたんです。

透のお祓いがまた興味深くて。
人の一生は物語と同じ――魂を吸い込み、出来事の全てを著した一冊の本にする。
そこには何故亡くなったのか、何が繋ぎ止める『楔』となっているのかのヒントもあって。
紐解き、解き明かすことが、呪縛から解く一歩でもある。

そして……縛りつけられているのは、なにも魂だけではない。
誰かを喪い、遺された者も、ときにその過去に縛られたままでいる。
だから透のお祓いは、生きている者が前へ進むためでもあります。 2/3
November 23, 2025 at 2:40 AM
右から左から忙しなく通り過ぎる車を見つめて、何を思うんだろうな
September 20, 2025 at 1:38 AM
でもそれが、強く揺すぶられる。殺し屋たちと出会ってしまってから。

鳥井の置かれた状況はまさに綱渡り。同時にその綱は、境界線のようにも思えたんです。渡り切ってしまったら、きっと戻れなくなるような。でも渡り切らなければきっと脱落するような。

続編でないかな。もっと読みたい物語。 3/3
September 10, 2025 at 12:56 PM
鳥井はあくまで営業で――どこまでも営業。
ノルマ達成に加え、競合との攻防……彼がどんな策で切り抜けるのか、気になってページを繰る手が止まらなかった。

そして、その中で鳥井が見せる変化も惹かれたところなんです。
彼は強い虚無を感じていた。厳しいノルマを達成しても、表彰されようとも。
その彼が、殺されようという場面で恐怖を感じ、激痛には絶叫する。結局は平凡な人間なのか。しかし、それ以外に何か鳥井の中に生じる感情がある。自身でも気付かぬうちに浮かべる表情がある。

越すまいという一線があった。命が惜しくて殺し屋の営業をやっているという前提があった。
でも。 2/3
September 10, 2025 at 12:56 PM
ほかに、森を飼うのが流行る世界で交わる少女ふたりの「森」や、凄惨な日常のなかで校舎裏に見つけた指を育てる「ゆび」、身体のどこかが結晶になる病に蝕まれる「結晶少女」など。

「貝をたべる」は、食と生と死のからみあう文章に引き込まれて満たされるようなエッセイで。

紡がれる言葉、描かれる世界がやっぱり好きだな、素敵だなと感じた作品集でした。 2/2
September 7, 2025 at 12:24 PM
“わたしたちは、たぶんまだ、大人になりきれていないのだ。成熟したからだに幼く脆い精神をなんとか詰めこみ、ちぐはぐなままで生きている”

これは「崩れる春」から。夕紀の秘密を知る同級生・栞の物語であり、夕紀の「ジェリーフィッシュ」以後が描かれてもいる、お気に入りの一編なんです。

裕輔の甥・琥珀が主役の「エクレール」は文庫版書き下ろし。

ひとつひとつの作品が魅力的なのはもちろん、それらの繋がりで広がってゆく物語世界にいっそう魅了された一冊でした。

ほかの著書も読んでみたい。そう思える作家さんに出会えて嬉しいです。 3/3
September 1, 2025 at 2:44 PM
どうしようもなく転げていくふたりから、目が離せなかった。

「果肉と傷痕」は叶子が、「夜の国」は叶子の友人・眞子が、「エフェメラ」は叶子と交際した裕輔が、という風に主役を変えつつ繫がっている作品たち。
うつくしい言葉が描き出すのは、彼らが感じる鮮やかな色彩や光、匂い、質感などと、彼らが抱える傷や、痛みや、呪いや、脆さや、醜さなどと。それらが相まって、すっかりわたしを引き込んでしまったんです。
残るページが減るたびに、終わらないで、と思った。まだ、この世界を漂っていたいと。 2/3
September 1, 2025 at 2:44 PM
それから、彼女はパトリックに近寄ろうとしなくなったと言うんです。クジラを知ることに熱中するあまり、築いた信頼と関係が変化してしまった。
ただ、終わりではなく、次に再会したときのエピソードがまた、印象深かったんです。

あと数年もすればクジラの翻訳機が完成するかもしれないという。
でも、クジラへの知見もなく推し進められているのではと、パトリックは危惧する。
彼がクジラを知りたいのは、クジラたちのため。しかし、知ることを優先するあまり傷付けてしまった経験がある。だからこそクジラに寄り添い、絆を深め、知ってゆけるだろうとも思う。

青の世界に魅せられた一本。 3/3
August 31, 2025 at 2:18 PM
海と空、二つの青のあわいで、クジラとパトリックもまた交わっている。

驚いたのは、クジラたちの絆の深さ。時おり起こる集団座礁の謎や、槍と小舟の人間が巨大な彼らを多く捕獲できた理由も実は繫がっている。仲間が危機に陥ったときに見捨てたりしないからなのだと。

そんなクジラと長らく接してきたパトリックも、さぞ深い絆で結ばれているのだろう。そう思っていたけれど、そこには失敗が潜んでいた。
クジラが大半の時間を過ごす深海、人間の辿り着けぬ領域での様子を知るために、カメラをクジラに取り付けることに。
特に親しい一頭を狙い、成功した。けれど。 2/3
August 31, 2025 at 2:18 PM