X避難所兼140字妄想こぼれ話置き場。
支部:https://www.pixiv.net/users/2621969
140字SS等:http://privatter.net/u/uzuki_77
DL:http://uzuki77.booth.pm
マシュマロ:https://marshmallow-qa.com/uzuki_77
ずっとのおうちに迎えてくれた時、嬉しくて沢山遊びに誘った。
部屋中を駆け回っては質問する私に、希は「元気一杯すぎるやろ…」と笑っても、ダメとは絶対言わなくて。益々好きになった。
一緒に遊んで一緒に寝て。毎日楽しいのに、最近何だかおかしくて。
だって、希が私よりずっと細くて小さくて。匂いを嗅ぐとそわそわするようになったから。
「希、もっと舐めていい?」
いつも通りに遊んだ後、抱き着きながらそう聞けば、赤くなる顔といきなり甘くなった匂いに我慢ができなくなった。
はつじょうき?が何かは知らないけど。
希が慌てる顔が可愛いから、きっといい事に違いない。
ずっとのおうちに迎えてくれた時、嬉しくて沢山遊びに誘った。
部屋中を駆け回っては質問する私に、希は「元気一杯すぎるやろ…」と笑っても、ダメとは絶対言わなくて。益々好きになった。
一緒に遊んで一緒に寝て。毎日楽しいのに、最近何だかおかしくて。
だって、希が私よりずっと細くて小さくて。匂いを嗅ぐとそわそわするようになったから。
「希、もっと舐めていい?」
いつも通りに遊んだ後、抱き着きながらそう聞けば、赤くなる顔といきなり甘くなった匂いに我慢ができなくなった。
はつじょうき?が何かは知らないけど。
希が慌てる顔が可愛いから、きっといい事に違いない。
私からも同じ香りが漂っている筈だけど、より馨しく感じるのは視覚効果が相まっているせいか。
まだ湿っている髪も上気した肌も、果実を思わせる瑞々しさで。
呼び寄せて生乾きの髪をドライヤーで乾かしていれば、さらに強まる香りと髪の間から覗く白い項とに思わず噛り付きたくなる。
「とても美味しそうな匂いがするわ」
そう言いつつ指先で項を撫で上げると、くすぐったそうに肩を竦めつつ「齧ったらあかんよ」と牽制する彼女。
勿論無遠慮に噛り付いたりしないけど、希から強請るよう仕向けるのは止められていないから。
「そうね。まだ、ね」
一年で一番長い夜は、まだ始まったばかり。
私からも同じ香りが漂っている筈だけど、より馨しく感じるのは視覚効果が相まっているせいか。
まだ湿っている髪も上気した肌も、果実を思わせる瑞々しさで。
呼び寄せて生乾きの髪をドライヤーで乾かしていれば、さらに強まる香りと髪の間から覗く白い項とに思わず噛り付きたくなる。
「とても美味しそうな匂いがするわ」
そう言いつつ指先で項を撫で上げると、くすぐったそうに肩を竦めつつ「齧ったらあかんよ」と牽制する彼女。
勿論無遠慮に噛り付いたりしないけど、希から強請るよう仕向けるのは止められていないから。
「そうね。まだ、ね」
一年で一番長い夜は、まだ始まったばかり。
MPがみるみる回復する…✨
MPがみるみる回復する…✨
帰る時間が近付き、絵里がごねだす。
就職を機に遠距離恋愛となった私達が会えるのは週に二日だけ。
互いの部屋に行ったり中間地で会ったりと、過ごし方は様々だけど、別れ際は毎回こうだ。
勿論、私だって彼女と会えない時間は寂しいし、会えたら今度は離れ難い。
でもその反面、もし毎日会えていたなら彼女はこんなに私に執着してくれるだろうか、などと思う自分もいて。
「もうじき年末やし、がんばろ?」
そう慰めつつ、この恋しさがいつまでも絶えぬよう、種火を繋ぐようなキスをする。
こんな自分でも嫌になるような試し行動がいつか自信に変わるまで。
今の会えない時間は、きっと私に必要な覚悟の糧。
帰る時間が近付き、絵里がごねだす。
就職を機に遠距離恋愛となった私達が会えるのは週に二日だけ。
互いの部屋に行ったり中間地で会ったりと、過ごし方は様々だけど、別れ際は毎回こうだ。
勿論、私だって彼女と会えない時間は寂しいし、会えたら今度は離れ難い。
でもその反面、もし毎日会えていたなら彼女はこんなに私に執着してくれるだろうか、などと思う自分もいて。
「もうじき年末やし、がんばろ?」
そう慰めつつ、この恋しさがいつまでも絶えぬよう、種火を繋ぐようなキスをする。
こんな自分でも嫌になるような試し行動がいつか自信に変わるまで。
今の会えない時間は、きっと私に必要な覚悟の糧。
時刻を見て腰を上げかけると、そう呼び掛ける彼女。
外は寒いし温まってから出た方がいいと言われたらその通りで、再び座り直すと希がマグカップを回収してキッチンに向かった。
その足取りが少し嬉しそうなのは多分気のせいではないだろう。
一人暮らしには慣れても寂しさに慣れた訳ではないと思うし、慣れて欲しくないとも思うから。
そうして淹れてくれた二杯目のココアを味わいながら、取り留めのない話をして。
いい加減帰らないといけない時間になり、空になったマグカップを流しに運ぶ。
勿論明日もまた会えるのだけど。
「帰りたくないな」
そんな本音を底にこびりついた汚れと一緒に水に流した。
時刻を見て腰を上げかけると、そう呼び掛ける彼女。
外は寒いし温まってから出た方がいいと言われたらその通りで、再び座り直すと希がマグカップを回収してキッチンに向かった。
その足取りが少し嬉しそうなのは多分気のせいではないだろう。
一人暮らしには慣れても寂しさに慣れた訳ではないと思うし、慣れて欲しくないとも思うから。
そうして淹れてくれた二杯目のココアを味わいながら、取り留めのない話をして。
いい加減帰らないといけない時間になり、空になったマグカップを流しに運ぶ。
勿論明日もまた会えるのだけど。
「帰りたくないな」
そんな本音を底にこびりついた汚れと一緒に水に流した。
さらに夜毎囁かれる「愛してる」は、まるで蕩けた鉄のような熱を孕んでいて。
嬉しいけど、これ以上は私から溢れてしまうから。
「もうわかったから」
そう制止すれば、声に出す代わりに甘く噛み付いてくる彼女。
指に、腕に、肩に、首に、歯型と共に刻まれるのは、言葉より雄弁な情と欲。
「動物みたいやね」
「人も動物でしょ」
言葉を使わない愛情表現にも長けている彼女は、あっさりとそう返し次は唇越しにそれを伝えてくる。
そうして今夜も受け取り切れないほどの愛を注がれて。
いつか同じだけの愛を返せるようにと思いながら、溺れるようなそれに身を任せた。
さらに夜毎囁かれる「愛してる」は、まるで蕩けた鉄のような熱を孕んでいて。
嬉しいけど、これ以上は私から溢れてしまうから。
「もうわかったから」
そう制止すれば、声に出す代わりに甘く噛み付いてくる彼女。
指に、腕に、肩に、首に、歯型と共に刻まれるのは、言葉より雄弁な情と欲。
「動物みたいやね」
「人も動物でしょ」
言葉を使わない愛情表現にも長けている彼女は、あっさりとそう返し次は唇越しにそれを伝えてくる。
そうして今夜も受け取り切れないほどの愛を注がれて。
いつか同じだけの愛を返せるようにと思いながら、溺れるようなそれに身を任せた。
くたりと甘える様もとろりと蕩けた瞳も、酒ではなく彼女に酔うには十分で。
お酒の代わりにその唇を啜り、チーズの代わりに白い肌を食んで。体中に所有印を刻み込み心地好い眠りについた翌朝、この充足感は夢かと思いきや脳裏に蘇るむせ返るような記憶に緩む頬。
昨日までの親友で今朝からの恋人はまだ眠っているだろうかと伺えば、盛り上がったシーツの塊に笑みが零れた。
「どんな顔で話せばいいんよ」
小さく聞こえる声は、希も覚えている事の表れで。
どんな話よりまずは恋人としてのキスをしようと、そのベールを剥ぎ取りにかかった。
くたりと甘える様もとろりと蕩けた瞳も、酒ではなく彼女に酔うには十分で。
お酒の代わりにその唇を啜り、チーズの代わりに白い肌を食んで。体中に所有印を刻み込み心地好い眠りについた翌朝、この充足感は夢かと思いきや脳裏に蘇るむせ返るような記憶に緩む頬。
昨日までの親友で今朝からの恋人はまだ眠っているだろうかと伺えば、盛り上がったシーツの塊に笑みが零れた。
「どんな顔で話せばいいんよ」
小さく聞こえる声は、希も覚えている事の表れで。
どんな話よりまずは恋人としてのキスをしようと、そのベールを剥ぎ取りにかかった。
「えりち、どうしたん?」
「うん?希の声が聞きたくなって」
夜遅い時間だったのもあるだろう。理由を聞かれてそう答えれば、息を呑む気配にそのまま反応を待つ。
何かしている最中だったかなとは思っても、迷惑だったかなとは欠片も思わないのは、多分希も私と同じ事を考えていただろうと確信しているからだ。
いつもの分かれ道で立ち話をして、夕焼けチャイムに後ろ髪を引かれるような心地で帰宅して。
寝る前に少しでもあなたの声が聞きたくて。
早く話がしたいと思いつつ待っていると、期待通りの答えに破願する。
「うちも、ちょうどそう思っていた所よ」
「えりち、どうしたん?」
「うん?希の声が聞きたくなって」
夜遅い時間だったのもあるだろう。理由を聞かれてそう答えれば、息を呑む気配にそのまま反応を待つ。
何かしている最中だったかなとは思っても、迷惑だったかなとは欠片も思わないのは、多分希も私と同じ事を考えていただろうと確信しているからだ。
いつもの分かれ道で立ち話をして、夕焼けチャイムに後ろ髪を引かれるような心地で帰宅して。
寝る前に少しでもあなたの声が聞きたくて。
早く話がしたいと思いつつ待っていると、期待通りの答えに破願する。
「うちも、ちょうどそう思っていた所よ」
30本溜まったのでアップ。
X(旧ツイッター)とBlueskyに載せていたSSです。大体140字と300字ですが、たまに書き足してます。
30本溜まったのでアップ。
X(旧ツイッター)とBlueskyに載せていたSSです。大体140字と300字ですが、たまに書き足してます。
自信満々に言ったくせに、出来上がったオムライスはひどく不格好だった。
「失敗してもうた」
せめて少しでも見栄えのいい方を食べて欲しくて破れ目を修復しても、粗は隠し切れない。
「希が作ってくれた時点でご馳走よ」
そう優しく言ってくれるけど、なまじ練習していただけにがっかり感も一入で。意地になって形を整える事に奮闘していれば、それならと手を叩く彼女。
「ねぇ、破れた所に絵を描いてくれる?」
そうして請われるままに描いたハートマークを掬い、口に運ぶ絵里の幸せそうな顔に二重の意味で失敗を悟る。
次は見た目よりまずは食べてもらう事。
だって味が同じなら、熱々なのが一番でしょ。
自信満々に言ったくせに、出来上がったオムライスはひどく不格好だった。
「失敗してもうた」
せめて少しでも見栄えのいい方を食べて欲しくて破れ目を修復しても、粗は隠し切れない。
「希が作ってくれた時点でご馳走よ」
そう優しく言ってくれるけど、なまじ練習していただけにがっかり感も一入で。意地になって形を整える事に奮闘していれば、それならと手を叩く彼女。
「ねぇ、破れた所に絵を描いてくれる?」
そうして請われるままに描いたハートマークを掬い、口に運ぶ絵里の幸せそうな顔に二重の意味で失敗を悟る。
次は見た目よりまずは食べてもらう事。
だって味が同じなら、熱々なのが一番でしょ。
あの世界をどうやって?と思っていたらがっつりしっかりミュージカルに。
セリフも歌になっているので、初見だと良く分からないかも。原作習得前提だなと思いつつもすごく楽しかった。
演出が特に良くて、簾のようなモップのような幕がそのまま世界を分ける境であり、プロジェクターのスクリーンであり、場面の奥行きを示す壁でありと柔軟な作りに感心しきり。
楽俊はそうきたか!と思う可愛さと半獣の理解のしやすさに手を打ったし、妖魔のデザインも切り絵チックで、あれなら饕餮もできるなあと。次は風の万里~にもぜひ挑戦してほしい。
全体的にしっかり世界観を作ってくれているので
あの世界をどうやって?と思っていたらがっつりしっかりミュージカルに。
セリフも歌になっているので、初見だと良く分からないかも。原作習得前提だなと思いつつもすごく楽しかった。
演出が特に良くて、簾のようなモップのような幕がそのまま世界を分ける境であり、プロジェクターのスクリーンであり、場面の奥行きを示す壁でありと柔軟な作りに感心しきり。
楽俊はそうきたか!と思う可愛さと半獣の理解のしやすさに手を打ったし、妖魔のデザインも切り絵チックで、あれなら饕餮もできるなあと。次は風の万里~にもぜひ挑戦してほしい。
全体的にしっかり世界観を作ってくれているので
道草の作法や寄り道して食べた肉まんの温かさ。
そして泊まりに行った時、真夜中に出して来た大きなアイスの味。
こんな時間に?とか、スプーンで直接?とか。
私の常識をそれはそれ、とアイスの蓋ごと脇に置いた彼女に大きなスプーンを渡されて。
まだ戸惑っていると「でも、楽しくない?」と問う希の目がキラキラと輝くのも、この状況も楽しくない訳がなくて。
「…楽しい」
小さく返すと同時に含まされたスプーンと、口内に広がるバニラの甘さ。
この味を鮮烈に覚えているから。
「えりち、アイス何にする?」
「バニラがいいわ」
あれから何年経っても、アイスはチョコよりバニラがいい。
道草の作法や寄り道して食べた肉まんの温かさ。
そして泊まりに行った時、真夜中に出して来た大きなアイスの味。
こんな時間に?とか、スプーンで直接?とか。
私の常識をそれはそれ、とアイスの蓋ごと脇に置いた彼女に大きなスプーンを渡されて。
まだ戸惑っていると「でも、楽しくない?」と問う希の目がキラキラと輝くのも、この状況も楽しくない訳がなくて。
「…楽しい」
小さく返すと同時に含まされたスプーンと、口内に広がるバニラの甘さ。
この味を鮮烈に覚えているから。
「えりち、アイス何にする?」
「バニラがいいわ」
あれから何年経っても、アイスはチョコよりバニラがいい。
じとりと睨みつつそう言う彼女に両手を振る。
「そんな事ないわよ」
だって許されないと大変だからこそ、頭を捻って手を打つのだ。
ちなみに希が好むのは凝った演出よりもベタなくらい真っ直ぐで典型的なシチュエーションだという事も、経験を重ねるうちに分かってきた。
だから今日も帰りに花を、それも花束ではなく希が好きそうな鉢植えを買って来たのだ。
そうしてまだ怒っていますというポーズを取りつつも両手が鉢植えで塞がっている彼女に改めてごめんねのキスをする。
それなら最初から怒らせなければいいのは分かっているけど。ぷりぷり怒る希はとても可愛いから。
我ながら懲りそうにない。
じとりと睨みつつそう言う彼女に両手を振る。
「そんな事ないわよ」
だって許されないと大変だからこそ、頭を捻って手を打つのだ。
ちなみに希が好むのは凝った演出よりもベタなくらい真っ直ぐで典型的なシチュエーションだという事も、経験を重ねるうちに分かってきた。
だから今日も帰りに花を、それも花束ではなく希が好きそうな鉢植えを買って来たのだ。
そうしてまだ怒っていますというポーズを取りつつも両手が鉢植えで塞がっている彼女に改めてごめんねのキスをする。
それなら最初から怒らせなければいいのは分かっているけど。ぷりぷり怒る希はとても可愛いから。
我ながら懲りそうにない。
「希のかしら?」
別の部屋で荷解きしていた彼女へ声を掛ければ、それを見て「うちの宝箱や」という嬉しそうな声に興味を引かれて。
「開けてええよ」とのお許しの声にワクワクしながら蓋に手をかける。
「あれ?これって…」
「わかる?全部えりちがくれたものよ」
ロシアの飴の包み紙、ビーズ細工のアクセサリー、シャープペン。
そして、端の方に小さく『好き』と記した付箋。
どれも他人から見たらどこにでもあるような物ばかりだけど、それを宝物だとずっと慈しんでくれていた彼女が愛しくて。
これからはこの部屋が二人の宝箱になるように、その場でぎゅっと抱き締めた。
「希のかしら?」
別の部屋で荷解きしていた彼女へ声を掛ければ、それを見て「うちの宝箱や」という嬉しそうな声に興味を引かれて。
「開けてええよ」とのお許しの声にワクワクしながら蓋に手をかける。
「あれ?これって…」
「わかる?全部えりちがくれたものよ」
ロシアの飴の包み紙、ビーズ細工のアクセサリー、シャープペン。
そして、端の方に小さく『好き』と記した付箋。
どれも他人から見たらどこにでもあるような物ばかりだけど、それを宝物だとずっと慈しんでくれていた彼女が愛しくて。
これからはこの部屋が二人の宝箱になるように、その場でぎゅっと抱き締めた。
お玉を回しながら節を付けて言うそれは、祖母の口癖だったもので。
今日も鍋を掻き回していれば、「希は『おいしい』の魔法が使えるのね」と笑う彼女へ「一番の調味料は愛情よ」と笑み返す。
おいしくなってほしいのは食べさせたい人がいるから。
おいしいと笑う顔が見たいから。
でも、その魔法は私だけが使えるものじゃないことも知っている。
「じゃあ、私も調味料たっぷりで魔法をかけるわね」
そう言いつつ私に代わってキッチンに立つ絵里を、今度は私が見守る番。
「おいしくなぁれ」
そうして同じ呪文を唱えつつ仕上げられたクレープは、勿論極上の味がした。
お玉を回しながら節を付けて言うそれは、祖母の口癖だったもので。
今日も鍋を掻き回していれば、「希は『おいしい』の魔法が使えるのね」と笑う彼女へ「一番の調味料は愛情よ」と笑み返す。
おいしくなってほしいのは食べさせたい人がいるから。
おいしいと笑う顔が見たいから。
でも、その魔法は私だけが使えるものじゃないことも知っている。
「じゃあ、私も調味料たっぷりで魔法をかけるわね」
そう言いつつ私に代わってキッチンに立つ絵里を、今度は私が見守る番。
「おいしくなぁれ」
そうして同じ呪文を唱えつつ仕上げられたクレープは、勿論極上の味がした。
でも、何も気にしない訳でもなくて。だからといってその理由も言えなくて。
「お付き合いは卒業まで内緒って、うちから言ったんやもん」
だけど。
尖る唇を隠すように引き結んだ所へ、投げかけられた問いに頭が真っ白になった。
「絢瀬さん、心に決めてる人がいるんだって。知ってる?」
知ってる?と言いつつ、その視線に滲む『あなたじゃないの?』という声に慌てて首を振る。
「えりち!何言ったん?」
渦中の人物へ会うなりそう問えば、涼しい顔で「誰かは言ってないもの」なんて笑う彼女。
確かに言っていないけど。世間ではそれを匂わせと言うんです。
でも、何も気にしない訳でもなくて。だからといってその理由も言えなくて。
「お付き合いは卒業まで内緒って、うちから言ったんやもん」
だけど。
尖る唇を隠すように引き結んだ所へ、投げかけられた問いに頭が真っ白になった。
「絢瀬さん、心に決めてる人がいるんだって。知ってる?」
知ってる?と言いつつ、その視線に滲む『あなたじゃないの?』という声に慌てて首を振る。
「えりち!何言ったん?」
渦中の人物へ会うなりそう問えば、涼しい顔で「誰かは言ってないもの」なんて笑う彼女。
確かに言っていないけど。世間ではそれを匂わせと言うんです。
「高校からやもん」
テーブル一杯に広げた写真を眺めていれば背後からかかる声。
被写体として登場率が一番高い彼女は、並べられた自分の過去を見ては「若いわね」などと笑っていて。
その対比が楽しくて、即スマホのカメラで写し取った。
「あ!」
お化粧してないのに、と頬を膨らませる様も可愛くて。抗議をよそに再度画面に収める。
「えりちだけのアルバムができそうや」
なんて言いつつ笑みを零せば、お返しの様にスマホを取り出す彼女。
「私だけじゃダメでしょ。一緒に撮るわよ」
そう続く言葉が嬉しくて、ぎゅっと抱き着いた。
多少ぶれても関係ない。大事なのは、二人のアルバムがこの先も増え続ける事。
「高校からやもん」
テーブル一杯に広げた写真を眺めていれば背後からかかる声。
被写体として登場率が一番高い彼女は、並べられた自分の過去を見ては「若いわね」などと笑っていて。
その対比が楽しくて、即スマホのカメラで写し取った。
「あ!」
お化粧してないのに、と頬を膨らませる様も可愛くて。抗議をよそに再度画面に収める。
「えりちだけのアルバムができそうや」
なんて言いつつ笑みを零せば、お返しの様にスマホを取り出す彼女。
「私だけじゃダメでしょ。一緒に撮るわよ」
そう続く言葉が嬉しくて、ぎゅっと抱き着いた。
多少ぶれても関係ない。大事なのは、二人のアルバムがこの先も増え続ける事。
今日の窓には小さなチョコと『いってらっしゃい』の文字。
「ふふ…可愛い」
一昨日から開け始めた飴やチョコなどが収められているそれは希と送り合った物で。作る時にあらかじめ予算を決めたから、私も希もどこに何を入れるか相手に内緒で考えた。
でもだからこそ、互いに一番の大物はイブに入れていると分かるのだ。
「喜んでくれるかしら」
チョコの甘さを味わいつつ、共に過ごすだろうその日を思う。
一つきり収められたアクセサリーは、できればイブ翌日の朝に私から贈りたいのだけど。
まずはその日までのカウントダウンを楽しむべく、ぐっと気合を入れ直した。
今日の窓には小さなチョコと『いってらっしゃい』の文字。
「ふふ…可愛い」
一昨日から開け始めた飴やチョコなどが収められているそれは希と送り合った物で。作る時にあらかじめ予算を決めたから、私も希もどこに何を入れるか相手に内緒で考えた。
でもだからこそ、互いに一番の大物はイブに入れていると分かるのだ。
「喜んでくれるかしら」
チョコの甘さを味わいつつ、共に過ごすだろうその日を思う。
一つきり収められたアクセサリーは、できればイブ翌日の朝に私から贈りたいのだけど。
まずはその日までのカウントダウンを楽しむべく、ぐっと気合を入れ直した。
まあ、初恋も告白もお付き合い始めも同棲も初夜も何回何パターンあってもいいですからね!!!
まあ、初恋も告白もお付き合い始めも同棲も初夜も何回何パターンあってもいいですからね!!!
「えりちと眠るのとお喋りするのと遊ぶ時間が同じだけ欲しいなぁ」
希の部屋に泊りに行った際、床を並べながらも眠るのが惜しい理由をしみじみと語って。
もしも願いが叶うなら、一日の時間を倍にして欲しいなんてぐずる彼女を「可愛いお願いね」と宥めつつ、頭の中では絶対実現させると決めたのだ。
だって、そう思っていたのは私も同じだから。
同じ大学への進学を前に、全て整ってから同居を持ちかければ目を丸くする希へ合鍵を手渡す。
「願い、叶えたわよ」
一日が二十四時間なのは変えられないけど。一緒に居る時間を増やすのは、互いにその気があれば容易い事。
「えりちと眠るのとお喋りするのと遊ぶ時間が同じだけ欲しいなぁ」
希の部屋に泊りに行った際、床を並べながらも眠るのが惜しい理由をしみじみと語って。
もしも願いが叶うなら、一日の時間を倍にして欲しいなんてぐずる彼女を「可愛いお願いね」と宥めつつ、頭の中では絶対実現させると決めたのだ。
だって、そう思っていたのは私も同じだから。
同じ大学への進学を前に、全て整ってから同居を持ちかければ目を丸くする希へ合鍵を手渡す。
「願い、叶えたわよ」
一日が二十四時間なのは変えられないけど。一緒に居る時間を増やすのは、互いにその気があれば容易い事。
そんな野望を胸にボーナスをつぎ込んだホームシアターを完成させて自宅デートを提案すれば、配信されたばかりの新作を見たいと喜ぶ彼女。
そうしてふかふかのソファーに並んで座って。映画を観ながらまずは触れ合いをと伸ばした手は、期待に反し制止された。
「今日は映画見る日やろ」
そう言う希は既に映画に没頭していて。キスだけでもと寄せた唇はポップコーンに遮られ。
映画は勿論楽しかったけど。少しばかり拗ねていれば、エンドロールの後で押し当てられた唇。
「夜はまだ長いやろ?」
そうね、ここからは互いが主演のレイトショーの始まり。
そんな野望を胸にボーナスをつぎ込んだホームシアターを完成させて自宅デートを提案すれば、配信されたばかりの新作を見たいと喜ぶ彼女。
そうしてふかふかのソファーに並んで座って。映画を観ながらまずは触れ合いをと伸ばした手は、期待に反し制止された。
「今日は映画見る日やろ」
そう言う希は既に映画に没頭していて。キスだけでもと寄せた唇はポップコーンに遮られ。
映画は勿論楽しかったけど。少しばかり拗ねていれば、エンドロールの後で押し当てられた唇。
「夜はまだ長いやろ?」
そうね、ここからは互いが主演のレイトショーの始まり。
しっぽのふわふわ加減や髪型、肌の質感がもうもう!こんな可愛いネコちゃんに起こされたらいつまでも寝てなどいられない!💨
さらにはご飯食べてるそばからちゅ~ってするのもまた堪らないですね!!
朝はちょっと気が抜けてるエリチカさんの表情も素晴らしく…毎朝スコのんたんの方が早起きなのかな~とか、構ってちゃん攻撃されまくってるのかな~とか、幸せな日常が想像できる素敵な一コマをありがとうございます!🙏🙏🙏
しっぽのふわふわ加減や髪型、肌の質感がもうもう!こんな可愛いネコちゃんに起こされたらいつまでも寝てなどいられない!💨
さらにはご飯食べてるそばからちゅ~ってするのもまた堪らないですね!!
朝はちょっと気が抜けてるエリチカさんの表情も素晴らしく…毎朝スコのんたんの方が早起きなのかな~とか、構ってちゃん攻撃されまくってるのかな~とか、幸せな日常が想像できる素敵な一コマをありがとうございます!🙏🙏🙏
そう言って訪れた絵里は緊張した面持ちで。多分言いたい事があって来たのだろうと思った。
頂き物と言う割に包みは絵里の最寄り駅の店の物だし。改まった話なら食後がいいだろうと、まずはすき焼きを楽しむ事にした。
普段より確実に上等な肉に満足感に浸っていれば、同様に寛いでいた絵里がぽつりと言う。
「このままここに住んじゃおうかしら」
その軽い口調の割に真剣な表情に、これが彼女の『言いたい事』なのだろうと確信する。
「ええんやない」
なので同様に軽く返せば「いいの?」と驚く彼女。
まあ、今でも十分住んでるようなものだけど。
「ええよ」
そんな訳で、『いい肉の日』は私達の同棲記念日。
そう言って訪れた絵里は緊張した面持ちで。多分言いたい事があって来たのだろうと思った。
頂き物と言う割に包みは絵里の最寄り駅の店の物だし。改まった話なら食後がいいだろうと、まずはすき焼きを楽しむ事にした。
普段より確実に上等な肉に満足感に浸っていれば、同様に寛いでいた絵里がぽつりと言う。
「このままここに住んじゃおうかしら」
その軽い口調の割に真剣な表情に、これが彼女の『言いたい事』なのだろうと確信する。
「ええんやない」
なので同様に軽く返せば「いいの?」と驚く彼女。
まあ、今でも十分住んでるようなものだけど。
「ええよ」
そんな訳で、『いい肉の日』は私達の同棲記念日。
洗濯物を畳みながら希が呟いた言葉に身体ごと振り向く。
「希は似合うからいいのよ!」
卒業なんてとんでもない。服装は年より似合うかだ、そう力説すればジト目でこちらを見る彼女。
「いつもむちむちやって笑うくせに」
「誉めてるの!」
それはまあ、いつも脱がせる時にニーハイとの合わせ目をなぞりながら、そのもっちり感について色々表現するけれど。全部いい意味であって。
唯一無二の光景を守るため必至に言い募ると、大きな溜息の後「じゃあ、家の中でだけね」との妥協点に安堵する。
本当はそれも少し惜しいけど。
私だけが見られるのなら、落とし所としては申し分ない。
洗濯物を畳みながら希が呟いた言葉に身体ごと振り向く。
「希は似合うからいいのよ!」
卒業なんてとんでもない。服装は年より似合うかだ、そう力説すればジト目でこちらを見る彼女。
「いつもむちむちやって笑うくせに」
「誉めてるの!」
それはまあ、いつも脱がせる時にニーハイとの合わせ目をなぞりながら、そのもっちり感について色々表現するけれど。全部いい意味であって。
唯一無二の光景を守るため必至に言い募ると、大きな溜息の後「じゃあ、家の中でだけね」との妥協点に安堵する。
本当はそれも少し惜しいけど。
私だけが見られるのなら、落とし所としては申し分ない。
お風呂も済んだし今日は平日だけど、できればちょっと触れあいたくて。
でもそんな不躾なまでの視線のアピールに知らないふりを続ける彼女。
きっといつもついやり過ぎてしまう私を牽制しているのだろう。
だけど意識している事は背後から見ていてもバレバレだから。
ならばと軽く袖を引き、直接アピールに切り替える。
「ねぇ、まだ構ってくれないの?」
じっと上目遣いで覗き込めば、希の表情が根負けしたそれに変わって。
しゃあないなあとか、今夜はほんまに一回だけやで、なんて言葉に頷きつつベッドへ連れ立つ。
でも私は知っているのだ。
こうして仕方ない、を装う時の希が嬉しそうだって事。
お風呂も済んだし今日は平日だけど、できればちょっと触れあいたくて。
でもそんな不躾なまでの視線のアピールに知らないふりを続ける彼女。
きっといつもついやり過ぎてしまう私を牽制しているのだろう。
だけど意識している事は背後から見ていてもバレバレだから。
ならばと軽く袖を引き、直接アピールに切り替える。
「ねぇ、まだ構ってくれないの?」
じっと上目遣いで覗き込めば、希の表情が根負けしたそれに変わって。
しゃあないなあとか、今夜はほんまに一回だけやで、なんて言葉に頷きつつベッドへ連れ立つ。
でも私は知っているのだ。
こうして仕方ない、を装う時の希が嬉しそうだって事。