じっきゅうみったださんノーマークだったのにいきなりブッ刺してきたんです、危険ですこの人辻斬りで一目惚れさせてきた罪で訴えます。しかもcv子安なんです、声良すぎの罪で二重に訴えさせていただきます。

でも最後の言葉を紡ごうとした唇は、巴さんによって重ねられた唇で塞がれる。きっと巴のさらさらした黒髪がカーテンみたいに長谷部の顔半分を覆って、長谷部の額や頬にも垂れている。長谷部の唇は鉄錆で渇き切っていて、本能的に生命源の審神者を求めて舌をくぐらせそうになる。巴のまつ毛が長いこと、実は軽い白粉をしてること、いつも精油の香りがすること、意外に手のひらは小さいこと、何もかもが初体験なんだろうな。審神者の舌で湿されて、長谷部の四肢に力が戻り始め、力ずくで引き剥がすことも、何なら逆に押し倒すことだってできるんだけど、ただ巴さんの背に手袋を取った素手を添えるだけで耐えると思うんだよ、長谷部。

たぶん長谷部はそんな取り乱したりしないけど、ただ急激に自分の身体が冷えていくのと、力が抜けていくのと、どんどん自分の呼吸の音が大きくなっていくのに、はじめて【刀剣破壊】を意識するんだと思うのね。ただ眼を閉ざすなと言われたから審神者の言われるがまま横たわりながら頭上の審神者の顔と、その背後の景色【今の季節だったら紅葉かな】を溢れんばかりに眼を見開いて焼き付けているよ。暫く巴が傷口に当ててたお札をとって、暗い顔で『許せ、長谷部』と言うから、ああ自分は死ぬんだな、もう助からないんだな、意外とあっけなかったな、と感じながら最後の感謝を述べるつもりで口を開くのよ。

高速槍なもんで長谷部も避け切れなくて最初は自分もやられたことに気づいてなくて、玉鋼回収して帰途につくあたりで不意に吐血して脚がもつれて息ができなくなって鞘に寄りかかって後方で蹲る長谷部が想像つく。ふと見たら急所のすぐ近くに極上の穴が空いてるんだけど、穴の小ささに対して滲んでく血の量が半端じゃないんだ。何しろ異なる時代から来たから現地人は頼れないし、なるべく人気のないところで果てるしかないんだよね。巴は【長谷部、眼を閉ざすなよ】ってあくまで穏やかに呼びかけながらてきぱきとストラ取り外して息を楽にさせてあげるんだろうね。ああいいな、シンプルなカソック姿で横たわる長谷部ってレアだよ。