崩れゆく
言の粒子が
夜明け前
空なる床に
音もなく散る

深い世界とは、視覚的に「下へ潜る」メタファーだけではもはや捉えきれません。むしろ、深さは「多次元振動」「複雑な干渉パターン」「重ね合わせ状態」として把握されるべきかもしれません。量子力学的発想や、波動・振動モデルは、世界を固有の実体ではなく無数の確率振幅や波動的可能性の交錯として描き出します。
優れた芸術は、既知の解釈パラメータを超えた周波数帯へ意識を同調させ、観者が日常的には検知できない振動や位相を「感じる」よう促します。それは世界を震動的ネットワークとして体感することであり、深さは「ある地点へ降下する」のでなく「豊かな振動スペクトラムへ同調する」経験となるのです。

深さとは、内的世界と外的世界の鏡映的プロセスでもあります。優れたアーティストは、受け手の内なる宇宙を刺激し、その内的空間を拡張させると同時に、それが外部世界へと投射される回路を開きます。結果、観者は外界を見ながら自己の深層を覗き、自己の深層を感じることで外界が拡張されているのを知ります。
ここで世界の深度は「内なる無限と外なる無限が相互に映し合う、鏡面廊下のような終わりなき反射」であり、アーティストはその反射の位相関係を微妙に調整して、終わりなき深みへと人を導きます。