Harano T
tharano34.bsky.social
Harano T
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動物の生態や進化。岡山/福岡/神奈川/愛知
本研究の結果は、ラッコでは、子のサイズの増大、トレードオフを通した子の数の減少、出産あたり子への投資の増大といった生活史形質の急激な進化が起こってきたことを示しています。これらの生活史形質の進化は、生涯を通したほぼ完全な水生への適応と考えられます。[終]
November 12, 2025 at 3:14 PM
さらに、ラッコ特異的な方向性選択によって、リター総重量(新生児体重×リターサイズ)が増大し、リターサイズとのトレードオフの影響を除去しても新生児体重が増大する進化が起こっていることが示されました。このことは、子の数を減らして資源を回す以上に子のサイズを増大させるように投資する進化が、ラッコで起こったことを支持します。
ラッコ特異的な方向性選択によって妊娠期間が長くなる進化も示されました。しかし、妊娠期間の長さの影響を除去しても、ラッコで新生児体重とリター総重量が増大する進化は支持されました。この結果は、妊娠中の子のサイズ成長率が大きいことを示しています。
November 12, 2025 at 3:11 PM
系統種間比較によって、まず、イタチ科における新生児体重とリターサイズ(1回に生む子の数)の進化的トレードオフの存在を明らかにしました。
そして、イタチ科系統樹上の形質進化のモデルを適用して、カワウソ類で特異的あるいはラッコのみで特異的な方向性選択によって、イタチ科の標準レベルから逸脱した形質の進化が起こっているかどうかを検証しました。
その結果、ラッコのみで特異的な方向性選択によって、新生児体重が増大し、リターサイズが減少する進化が検出されました。
November 12, 2025 at 3:09 PM
イタチ科では陸生から水生への移行が起こっており、カワウソ類は水域に依存して生活しています。カワウソ類の中でも、ラッコはほぼ完全な水生で、水中で出産し、子が出生時から海で生活します。これらの生息場所の移行は、比較的近年に起こったものであり、それに伴って、水生環境下での選択による進化が起こっている可能性が考えられます。
本研究では、イタチ科における子のサイズと数のトレードオフに関わる形質が、カワウソ類あるいはラッコのみで特異的な選択によって進化しているかどうかを検証しました。
November 12, 2025 at 3:08 PM
〔概説〕
大きな子を生むと子の数が少なくなるというトレードオフは、生活史を形作るうえで主要な役割を果たします。子のサイズと数の進化は重要な課題ですが、生物の歴史の中で、子のサイズと数の急激な進化がいつ起こるのか、どんな要因によって起こるのかは、ほとんど解明されていません。
哺乳類では一般的に、水生への移行に伴って体サイズが大型化します。その有力な原因は、体が小さいと水中で体温を保持しにくいことにあります。幼体は、成体よりも体サイズが小さいので、体温保持の問題が深刻であると考えられます。そのため、水生環境で生活する哺乳類では、成体の体サイズの割に大きな子を産むように選択を受けるかもしれません。
November 12, 2025 at 3:03 PM