作家・学生・ノン・シリーズが入ったお得な短編集。学生アリスは読んでました。信長さんがモチさんの心情を説明するところ、論理がない!ハードボイルドファンか!と。否、ただの仲良しです。表題作から読み始めたんだけど、殺人事件の捜査の最中に、秩序のある世界に帰って来たのだなあと噛み締めてしまい、我ながら変な感想だなぁと思いました。文学的なホワイダニット、フーには描かれなかった場面がないとたどり着けないような……?そういうものか。理解不足やも。「海よりも深い川」、前書きにとある事情が書かれているのですが、世界が変わってゆく故に、私を含め、その意味に思い当たる人も増えたのではないかなと思いました。
作家・学生・ノン・シリーズが入ったお得な短編集。学生アリスは読んでました。信長さんがモチさんの心情を説明するところ、論理がない!ハードボイルドファンか!と。否、ただの仲良しです。表題作から読み始めたんだけど、殺人事件の捜査の最中に、秩序のある世界に帰って来たのだなあと噛み締めてしまい、我ながら変な感想だなぁと思いました。文学的なホワイダニット、フーには描かれなかった場面がないとたどり着けないような……?そういうものか。理解不足やも。「海よりも深い川」、前書きにとある事情が書かれているのですが、世界が変わってゆく故に、私を含め、その意味に思い当たる人も増えたのではないかなと思いました。
タイトル通り廃遊園地が舞台で、かなり特殊な現場になるのが面白い。廃墟のクローズドサークルなんて楽しいの合わせ技だよねえ。見知らぬ人間の命より、大事な人の未来を優先する決断には、人間のエゴが出ていて、それから逃げずに描くのが斜線堂作品っぽいなあと思いました(あまりたくさん読んでないので偏ったイメージかもしれませんが)。少しずつ明らかにされて行く語り手兼探偵役のパーソナリティがなかなかぶっ飛んでで、え?っと思っている間に気になる存在になり、惹かれて行くのがすごい。物語としても、死体が増えてから加速度的に面白くなって、先が気になる。廃墟探偵シリーズで続編も出るとのこと、たのしみ。
タイトル通り廃遊園地が舞台で、かなり特殊な現場になるのが面白い。廃墟のクローズドサークルなんて楽しいの合わせ技だよねえ。見知らぬ人間の命より、大事な人の未来を優先する決断には、人間のエゴが出ていて、それから逃げずに描くのが斜線堂作品っぽいなあと思いました(あまりたくさん読んでないので偏ったイメージかもしれませんが)。少しずつ明らかにされて行く語り手兼探偵役のパーソナリティがなかなかぶっ飛んでで、え?っと思っている間に気になる存在になり、惹かれて行くのがすごい。物語としても、死体が増えてから加速度的に面白くなって、先が気になる。廃墟探偵シリーズで続編も出るとのこと、たのしみ。
カーで個人宅じゃなくてオフィスビルって、新鮮な気がする。7階建てエレヴェーター付き出版社のビルが舞台。語り手の検察医先生の、「君のもっともらしい説明に乗せられて僕はいつも後悔する云々」と警部に言わしめる説明は本当にもっともらしく、何かこれでいいのでは?という気が。どちらが探偵役か迷うほど対等な関係で、ふたりで右往左往してました。仮説をたくさん浴びたせいで、真相もまたまぜっ返されるのではという気がして乗り切れなかったのが勿体なかったです(自分のせい)。解説編であの瞬間の描写を煽って描いてくれたらもっと好みかも。アリバイ工作が愚直ですき。どのあたりまで共作なんでしょう?
カーで個人宅じゃなくてオフィスビルって、新鮮な気がする。7階建てエレヴェーター付き出版社のビルが舞台。語り手の検察医先生の、「君のもっともらしい説明に乗せられて僕はいつも後悔する云々」と警部に言わしめる説明は本当にもっともらしく、何かこれでいいのでは?という気が。どちらが探偵役か迷うほど対等な関係で、ふたりで右往左往してました。仮説をたくさん浴びたせいで、真相もまたまぜっ返されるのではという気がして乗り切れなかったのが勿体なかったです(自分のせい)。解説編であの瞬間の描写を煽って描いてくれたらもっと好みかも。アリバイ工作が愚直ですき。どのあたりまで共作なんでしょう?
これは最早ディズニーでは?と思ったのですが、その訳を上手く言語化出来ずにいます。故郷を離れていた元放蕩息子が爵位を継いだ。数年後、その男は偽物で、自分こそ正当な後継者だと男が名乗りを上げる。証明に連れて来られた元家庭教師の身が危ないと誰もが思っていたのだが。事件が起こるまで胃の痛い居心地の悪さがありますが、すごい作品。ひとつでも大き過ぎる事件・小道具のごった煮で、どう落とし所を着けるのよと心配になりますが、最後まで読み、全てが真相を裏打ちしていたことがわかると、その感動たるや。……最初の問い、何人かの登場人物の一途さが、現実離れしている気がするけどとてもすき、という意味かも。
これは最早ディズニーでは?と思ったのですが、その訳を上手く言語化出来ずにいます。故郷を離れていた元放蕩息子が爵位を継いだ。数年後、その男は偽物で、自分こそ正当な後継者だと男が名乗りを上げる。証明に連れて来られた元家庭教師の身が危ないと誰もが思っていたのだが。事件が起こるまで胃の痛い居心地の悪さがありますが、すごい作品。ひとつでも大き過ぎる事件・小道具のごった煮で、どう落とし所を着けるのよと心配になりますが、最後まで読み、全てが真相を裏打ちしていたことがわかると、その感動たるや。……最初の問い、何人かの登場人物の一途さが、現実離れしている気がするけどとてもすき、という意味かも。
語り手サンダース博士を最初勝手に年配で想定し、現場の「卓子を囲んでホームパーティー」をタンスと思い込んだまま読み通しましたごめんなさい。雨降る深夜にお嬢さんに呼び止められて見知らぬお宅に上がるって、博士全然頭回ってない……寝たほうがいい。このお嬢さん、父親が容疑者だからイマイチ行動が信用ならんと言われてるんだけど、父親を庇う可能性があると明示されてればそこまで不可解な行動でもないような。一番わくわくしたのは意味深な小道具たちが揃うところだったかも。あと毎度おなじみH.Mのわけわからん登場シーン。トリックは古典的だけど(そもそも古典)、特にアンフェア感はなかったように思います。
語り手サンダース博士を最初勝手に年配で想定し、現場の「卓子を囲んでホームパーティー」をタンスと思い込んだまま読み通しましたごめんなさい。雨降る深夜にお嬢さんに呼び止められて見知らぬお宅に上がるって、博士全然頭回ってない……寝たほうがいい。このお嬢さん、父親が容疑者だからイマイチ行動が信用ならんと言われてるんだけど、父親を庇う可能性があると明示されてればそこまで不可解な行動でもないような。一番わくわくしたのは意味深な小道具たちが揃うところだったかも。あと毎度おなじみH.Mのわけわからん登場シーン。トリックは古典的だけど(そもそも古典)、特にアンフェア感はなかったように思います。
皆様にとって良い年でありますように
今年もよろしくお願いします
皆様にとって良い年でありますように
今年もよろしくお願いします
どうしてこんなに鮮明に人間を描き出せるのか。いっそ全部経験談なんじゃないかと思うほど。明確な目的無き「おしゃべり」がうますぎる。人物が映える場面設定(昼間の無人のビーチ、雪降る夜の室内、豪雨の喫茶店)もすき。物語としては、光が見える「ディンギーで」「エズメに、」がすきだけど、刺さるので止めてくださいは「コネチカット」「ド・ドーミエ=スミス」かな……。ふだん本格ミステリ(ここでのルビはエンタメもしくは犯人当て)ばかり読んでいる身には、どう読んだらいいのか悩む作品でした。普通の人間こそ、暴力を皮一枚で飼い慣らしてるってことはない?(たぶん読み手の問題)アーサーがかわいい。
どうしてこんなに鮮明に人間を描き出せるのか。いっそ全部経験談なんじゃないかと思うほど。明確な目的無き「おしゃべり」がうますぎる。人物が映える場面設定(昼間の無人のビーチ、雪降る夜の室内、豪雨の喫茶店)もすき。物語としては、光が見える「ディンギーで」「エズメに、」がすきだけど、刺さるので止めてくださいは「コネチカット」「ド・ドーミエ=スミス」かな……。ふだん本格ミステリ(ここでのルビはエンタメもしくは犯人当て)ばかり読んでいる身には、どう読んだらいいのか悩む作品でした。普通の人間こそ、暴力を皮一枚で飼い慣らしてるってことはない?(たぶん読み手の問題)アーサーがかわいい。
ペンおじさんもエシーおばさんも緑樹館でずっと暮らしていたからどんどん味が濃くなってしまったんだろうな。幼いまま、家族に囲まれたまま、年月だけが流れた歪な性格。ちゃんとした大人とは言えないかもしれないが、彼らだけが異常というわけではない。初代ニコラスのように家を出ればよかったのかな。小道具から犯人の性格を推察するのは興味深いし、これでもかとごたごたした家族の話も面白かったけど、そもそもあまり現場の状況が不可解じゃない気がします。幽霊話も最初から誰も本気じゃないと言うか、人間のいたずらだと思っているし。犯人は大胆だなあとは思ったけど。人間描写に重きを置きたかった作品なのかなあ?
ペンおじさんもエシーおばさんも緑樹館でずっと暮らしていたからどんどん味が濃くなってしまったんだろうな。幼いまま、家族に囲まれたまま、年月だけが流れた歪な性格。ちゃんとした大人とは言えないかもしれないが、彼らだけが異常というわけではない。初代ニコラスのように家を出ればよかったのかな。小道具から犯人の性格を推察するのは興味深いし、これでもかとごたごたした家族の話も面白かったけど、そもそもあまり現場の状況が不可解じゃない気がします。幽霊話も最初から誰も本気じゃないと言うか、人間のいたずらだと思っているし。犯人は大胆だなあとは思ったけど。人間描写に重きを置きたかった作品なのかなあ?
主義主張のあるものを読んだらバランスを、ということで、対極にありそうな本を。作家本人の語る創作の舞台裏。秘密の一部だけをのぞき見ると、かえって神秘的な雰囲気が増すような気がします。生活の中で出会う情報がどんどん繋がって物語ができて行くなら、確かに「作家は小説のいちばん後ろを追いかけている」という感覚になるのかも。そのアンテナを、膨大なインプットが支えてるんだろうな……。例に出てくる話がどれも辛かった。きっと、人の哀しみから目を背けないで来た人なんだろう。自分を救った物語、誰しもが持っていると思うけれど、作家の人のそれを聞けるのは貴重な機会だなあ。『トムは真夜中の庭で』読みたい。
主義主張のあるものを読んだらバランスを、ということで、対極にありそうな本を。作家本人の語る創作の舞台裏。秘密の一部だけをのぞき見ると、かえって神秘的な雰囲気が増すような気がします。生活の中で出会う情報がどんどん繋がって物語ができて行くなら、確かに「作家は小説のいちばん後ろを追いかけている」という感覚になるのかも。そのアンテナを、膨大なインプットが支えてるんだろうな……。例に出てくる話がどれも辛かった。きっと、人の哀しみから目を背けないで来た人なんだろう。自分を救った物語、誰しもが持っていると思うけれど、作家の人のそれを聞けるのは貴重な機会だなあ。『トムは真夜中の庭で』読みたい。
再読。死体とふたり、鍵のかかった部屋にいた被告は有罪なのか?正統派の素晴らしい密室。ほぼ忘れてない(と思っていた)状況からスタート。プロローグからひとりもだもだしながら読み始め、なのに最終盤の下りをすっかり忘れていて新鮮に驚きました。H.Mが何だかんだ言いつつ裁判長や司法長官を認めているのもよくて、いっそ爽やかな読後感だなあと思っていたら。油断した……。そうだよ、最初の状況と同等とまで言わないけどなかなかの不可能状況が残っていたじゃん……。でもきっちりカタはつきます。法廷ものだから最初の劣勢がなかなか辛いのですが、その分こちらの攻撃が決まると爽快です。ユダの窓は、実感できる密室。
再読。死体とふたり、鍵のかかった部屋にいた被告は有罪なのか?正統派の素晴らしい密室。ほぼ忘れてない(と思っていた)状況からスタート。プロローグからひとりもだもだしながら読み始め、なのに最終盤の下りをすっかり忘れていて新鮮に驚きました。H.Mが何だかんだ言いつつ裁判長や司法長官を認めているのもよくて、いっそ爽やかな読後感だなあと思っていたら。油断した……。そうだよ、最初の状況と同等とまで言わないけどなかなかの不可能状況が残っていたじゃん……。でもきっちりカタはつきます。法廷ものだから最初の劣勢がなかなか辛いのですが、その分こちらの攻撃が決まると爽快です。ユダの窓は、実感できる密室。
三つ子の誰が犯人なのか?翻訳ミステリみたいですが、普段特殊設定ものを書いていらっしゃる方が、フランス革命直後の欧州を設定として採用したということのようです。潔癖な世界にはノイズがなく、まさしくそのために造られた世界でした。公爵夫人や伯爵がなかなかに訳わかんない人ですき。手掛かりは言われるとぱっと思い出せるので、フェアプレーに徹してらしたと思います。真相に真相を重ねて行くのですが、個人的には第一の次元で勝負して欲しかったかも。シンプルな回答であり、そのための世界だったのだという説得力はあるものの、そこまでハマらなかったかな……。私にとっては、ある意味SFっぽい読み心地でした。
三つ子の誰が犯人なのか?翻訳ミステリみたいですが、普段特殊設定ものを書いていらっしゃる方が、フランス革命直後の欧州を設定として採用したということのようです。潔癖な世界にはノイズがなく、まさしくそのために造られた世界でした。公爵夫人や伯爵がなかなかに訳わかんない人ですき。手掛かりは言われるとぱっと思い出せるので、フェアプレーに徹してらしたと思います。真相に真相を重ねて行くのですが、個人的には第一の次元で勝負して欲しかったかも。シンプルな回答であり、そのための世界だったのだという説得力はあるものの、そこまでハマらなかったかな……。私にとっては、ある意味SFっぽい読み心地でした。
再読。合理的振る舞いを取る人間をロジックで追い詰める表題作、さすが。惚れ惚れする。17歳から17年生きた34歳達の青春小説でもあるのかなあ。「シャイロックの密室」、再々読?なのにそんなものないんじゃ……と思ってた。目の前に盲点!「女彫刻家の首」、おぉ……。シンプルながら、因果応報的な画が衝撃。有栖川先生の感想は一般的感覚だと思うけど、火村先生はシニカル。「あるYの悲劇」、もしかしたらの話だけど、詞を書く者同士の通じ合いはみずみずしいと言うか、その年代の中には真実としてある感性だよなあと。解説でちょっと鼻がつんとした。本格ミステリは人を救う。有栖川作品は人を救う本格ミステリ。
再読。合理的振る舞いを取る人間をロジックで追い詰める表題作、さすが。惚れ惚れする。17歳から17年生きた34歳達の青春小説でもあるのかなあ。「シャイロックの密室」、再々読?なのにそんなものないんじゃ……と思ってた。目の前に盲点!「女彫刻家の首」、おぉ……。シンプルながら、因果応報的な画が衝撃。有栖川先生の感想は一般的感覚だと思うけど、火村先生はシニカル。「あるYの悲劇」、もしかしたらの話だけど、詞を書く者同士の通じ合いはみずみずしいと言うか、その年代の中には真実としてある感性だよなあと。解説でちょっと鼻がつんとした。本格ミステリは人を救う。有栖川作品は人を救う本格ミステリ。
十歳で大道具の門下に入り、第一線で仕事をしてきた方が、八十五歳で振り返る回顧録。十歳の時にすきになったものは一生物だとは言いますが、きっと天職だったんだろう。役者はそれで稽古しているから寸法や位置はいつもの通りが大切、その上役者ごとにいつもの通りがある、なんて話は、実際そうなんだろうけど大変……。物理的に難しくても舞台上なら役者はやってのけてるというのも、これぞ本物という感じがしました。古くから伝わるものも大事にしつつ、新しい機構も積極的に取り入れる姿は本当に仕事ができる人は、無闇に変化を厭ったりしないんだなあ、と思いました。尺で示された舞台の話は、聞くだけでたのしいです。
十歳で大道具の門下に入り、第一線で仕事をしてきた方が、八十五歳で振り返る回顧録。十歳の時にすきになったものは一生物だとは言いますが、きっと天職だったんだろう。役者はそれで稽古しているから寸法や位置はいつもの通りが大切、その上役者ごとにいつもの通りがある、なんて話は、実際そうなんだろうけど大変……。物理的に難しくても舞台上なら役者はやってのけてるというのも、これぞ本物という感じがしました。古くから伝わるものも大事にしつつ、新しい機構も積極的に取り入れる姿は本当に仕事ができる人は、無闇に変化を厭ったりしないんだなあ、と思いました。尺で示された舞台の話は、聞くだけでたのしいです。
再読。作家アリスシリーズに突如出現する大仕掛け密室!?アリバイか密室かの表題作、有栖川先生の推理、やっぱりテンション上がりますよね!と思ったけど、本人は意外と冷静……。きちんとした大人……。この場にふさわしい名演技ではないか、他者を安易に腐さない考え方が有栖川作品だなあと思いました。最後の余韻が後を引きます。「雪と金婚式」、童話のようにしあわせな老夫婦が微笑ましい。教育者であったゆえとは思いますが、年若い人に向ける視線はこうありたい。「天空の眼」、誇ることだってできるのに、関係した人間達を想い、静かに苦い思いを噛み締めるのは、火村先生の隣に立ち続けていたからこそなのかも。
再読。作家アリスシリーズに突如出現する大仕掛け密室!?アリバイか密室かの表題作、有栖川先生の推理、やっぱりテンション上がりますよね!と思ったけど、本人は意外と冷静……。きちんとした大人……。この場にふさわしい名演技ではないか、他者を安易に腐さない考え方が有栖川作品だなあと思いました。最後の余韻が後を引きます。「雪と金婚式」、童話のようにしあわせな老夫婦が微笑ましい。教育者であったゆえとは思いますが、年若い人に向ける視線はこうありたい。「天空の眼」、誇ることだってできるのに、関係した人間達を想い、静かに苦い思いを噛み締めるのは、火村先生の隣に立ち続けていたからこそなのかも。
家族の死体でも即状況確認を始める姿は、捜査パートに切り替わったゲームのよう。これは医三郎論が濃淡こそあれ全家族共通見解なのか。抜け穴潰しが厳重で「そこまで考えつかないです……」と逃げ腰に。蔵の密室で、思わず「何でそこまで密室にしたいんだよ」と思った時、この世界を実感しました。だからみんなすごい検証するのか。あとはみんな密室のプロだからお仕事モードなのか。……と、たぶん全ての疑問に答えてくれてるんだけど、小説としてなかなか、ブツ切りの生野菜くらい食べにくい。この世界を読みたくば喰らいつくしかない。唯一無二だから噛み応えばりばりでも読みたいけど。別荘の密室がシンプルですき。
家族の死体でも即状況確認を始める姿は、捜査パートに切り替わったゲームのよう。これは医三郎論が濃淡こそあれ全家族共通見解なのか。抜け穴潰しが厳重で「そこまで考えつかないです……」と逃げ腰に。蔵の密室で、思わず「何でそこまで密室にしたいんだよ」と思った時、この世界を実感しました。だからみんなすごい検証するのか。あとはみんな密室のプロだからお仕事モードなのか。……と、たぶん全ての疑問に答えてくれてるんだけど、小説としてなかなか、ブツ切りの生野菜くらい食べにくい。この世界を読みたくば喰らいつくしかない。唯一無二だから噛み応えばりばりでも読みたいけど。別荘の密室がシンプルですき。
知識としてあっても実際はなかなか上手く使えていない、そんな創作術同士の関係性をわかりやすく説明してくれるのがよかったです。テーマ・モチーフ・素材はそれぞれ別物であるとか、ただ履歴書をつくるのではなく、核となる人物の性質に結びつけて考えるなど、ようやく腑に落ちたこともあり、今までやみくもにやってたなあと思いました。「主人公は一貫した行動を取る」のと「主人公の人間関係は変化する」のはもちろん両立する別の話ですが、なぜか昔混同していたので整理できてよかった。プロの方や書ける方には当たり前のことなのかもしれませんが、自分でも書けそうな気にさせてくれる本でした。
知識としてあっても実際はなかなか上手く使えていない、そんな創作術同士の関係性をわかりやすく説明してくれるのがよかったです。テーマ・モチーフ・素材はそれぞれ別物であるとか、ただ履歴書をつくるのではなく、核となる人物の性質に結びつけて考えるなど、ようやく腑に落ちたこともあり、今までやみくもにやってたなあと思いました。「主人公は一貫した行動を取る」のと「主人公の人間関係は変化する」のはもちろん両立する別の話ですが、なぜか昔混同していたので整理できてよかった。プロの方や書ける方には当たり前のことなのかもしれませんが、自分でも書けそうな気にさせてくれる本でした。
再読。世間も好きな娘も舐めきったボンボン小説家が語り手。彼の無銭飲食から話は始まる。犯人、動機と、ひとつの事実を覚えた状態での読み直し。最初読んだ時は「それありなの?」と思ったけど、いざ読み返すとかなりがっちり伏線が張られていました。フェル博士のたどった筋道通りに問いを並べることができれば、全ての「なぜそれができたのか?」「なぜそれをしなくてはならなかったのか?」がストレートに犯人を指し示す、ロジック度の高い作品。犯人と被害者の人格描写、共に容赦ないなあ。容疑者達も癖強め。ロジックと個性的な登場人物を備えたホワイダニットの良作でありながら、初読はつい壁投げしちゃうよね本。
再読。世間も好きな娘も舐めきったボンボン小説家が語り手。彼の無銭飲食から話は始まる。犯人、動機と、ひとつの事実を覚えた状態での読み直し。最初読んだ時は「それありなの?」と思ったけど、いざ読み返すとかなりがっちり伏線が張られていました。フェル博士のたどった筋道通りに問いを並べることができれば、全ての「なぜそれができたのか?」「なぜそれをしなくてはならなかったのか?」がストレートに犯人を指し示す、ロジック度の高い作品。犯人と被害者の人格描写、共に容赦ないなあ。容疑者達も癖強め。ロジックと個性的な登場人物を備えたホワイダニットの良作でありながら、初読はつい壁投げしちゃうよね本。
再読。短編版もあるからもっと読んでる気がする。老判事が、以前有罪にした男に襲われた。銃声の数秒後には警官が到着したが、現場は非常に不可解な状況だった。無実であると思えば庇うし、罪を犯していると思えば告発するドライな雇用関係は、ある意味健全かも。余分なものが多過ぎてただただ不可解だった現場だが、ある一点を考慮するだけで冷酷な犯行計画が浮かび上がって来る。その上で実際行われたことはとてもシンプル。とっ散らかった全てがあるべき場所へと収まる。ホワイト評はいろんな人から聞けたから、アイダ評も恋する警部以外から欲しかった。自分自身を白くするために一度自ら黒くなるって言い回しがかっこいい。
再読。短編版もあるからもっと読んでる気がする。老判事が、以前有罪にした男に襲われた。銃声の数秒後には警官が到着したが、現場は非常に不可解な状況だった。無実であると思えば庇うし、罪を犯していると思えば告発するドライな雇用関係は、ある意味健全かも。余分なものが多過ぎてただただ不可解だった現場だが、ある一点を考慮するだけで冷酷な犯行計画が浮かび上がって来る。その上で実際行われたことはとてもシンプル。とっ散らかった全てがあるべき場所へと収まる。ホワイト評はいろんな人から聞けたから、アイダ評も恋する警部以外から欲しかった。自分自身を白くするために一度自ら黒くなるって言い回しがかっこいい。
あのバンコランが年を取り、昔の栄華今いずこ……という話ではないです。田舎に引っ込んではいるものの、一緒に捜査をしていた警部が現場にいて、捜査の指揮を頼まれたりして、実力も影響力も健在。少々丸くなったかな?語り手の弁護士は、依頼人の婚約者に一目惚れでそわそわしてまして、ちょっとカーこの「有力容疑者に横恋慕パターン」すきじゃない?死因がわかった時、この手の方法イマイチ乗れないよねえと思ったんだけど、そこはまだ物語半ば。前提条件が揃ったに過ぎませんでした。そこから、タイトル通り四つも凶器があるもんだからややこしい。むつかしい。賭博場の場面、空気が濃厚で息が詰まる感じがかっこよかった。
あのバンコランが年を取り、昔の栄華今いずこ……という話ではないです。田舎に引っ込んではいるものの、一緒に捜査をしていた警部が現場にいて、捜査の指揮を頼まれたりして、実力も影響力も健在。少々丸くなったかな?語り手の弁護士は、依頼人の婚約者に一目惚れでそわそわしてまして、ちょっとカーこの「有力容疑者に横恋慕パターン」すきじゃない?死因がわかった時、この手の方法イマイチ乗れないよねえと思ったんだけど、そこはまだ物語半ば。前提条件が揃ったに過ぎませんでした。そこから、タイトル通り四つも凶器があるもんだからややこしい。むつかしい。賭博場の場面、空気が濃厚で息が詰まる感じがかっこよかった。
これはすごく面白い作品だと思いながら読みました。警察を挑発する謎めいた予告状。それは二年前の事件の再来なのか?潔白かに思われた当時の関係者達が、続々と捜査線上に浮上して来る。警察官が周りを取り囲む中、事件はいかにして起きたのか。同行を断るため家の契約を即決した被害者。H.Mが東屋で会見した旧友。マスターズをも手玉に取る?ファム・ファタール。ひとつひとつのシーンがとても印象的で、何だろう、夢みたいな、おとぎ話みたいな話だなあと思いました。一室だけ家具の運び込まれた空き家が現場なのも、事件のために作り上げられた世界を感じます。その上でトリックは正面突破なんだよなあ。……すきだなあ。
これはすごく面白い作品だと思いながら読みました。警察を挑発する謎めいた予告状。それは二年前の事件の再来なのか?潔白かに思われた当時の関係者達が、続々と捜査線上に浮上して来る。警察官が周りを取り囲む中、事件はいかにして起きたのか。同行を断るため家の契約を即決した被害者。H.Mが東屋で会見した旧友。マスターズをも手玉に取る?ファム・ファタール。ひとつひとつのシーンがとても印象的で、何だろう、夢みたいな、おとぎ話みたいな話だなあと思いました。一室だけ家具の運び込まれた空き家が現場なのも、事件のために作り上げられた世界を感じます。その上でトリックは正面突破なんだよなあ。……すきだなあ。