すけきよ
LightNews LightNews
sukekiyo13.bsky.social
すけきよ
@sukekiyo13.bsky.social
8 followers 10 following 190 posts
■二次創作で小説を書くひとです
■永遠に薔薇の申し子
■Trinity･Blood信者
■ロボットSF好き
■Detroit：BecomeHuman好き（映画化はまだか）
■英国俳優沼に飛び込んだ（SHERLOCKとかGoodOmensとか）
■マーベル沼に沈む（キャプテンアメリカとかムーンナイトとかパニッシャーとか）
◾️最近🥷🥚にハマりました…
Posts Replies Media Videos
sukekiyo13.bsky.social
特に何かに載せる予定もない、ただギャビンがお買い物しているだけのシーン。
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。 付記に「はじめてのおつかい/佐清」と記載されています。 画像情報：generated by 文庫ページメーカー / Photo by Julia Kadel on Unsplash / フォント：源暎こぶり明朝 以下は本文の内容です。 　ホリデイシーズンでちょっと浮ついた雰囲気のデトロイト。 　この街にほんのひと握りばかりいる上流階級（アッパークラス）のホワイトカラーやエンジニアどもは長い休暇に入っているのだろうが、労働者階級もしくは突然のレイオフで職にあぶれた者や明日食っていくあてすらもない貧困層やホームレスが大多数を占めるデトロイト市とあっては、ニューヨークやワシントンＤＣほどにはお祭り騒ぎとはいかない。 　そんな、「ほんのひと握り」のためにだけあるような、ハイブランドのフラッグシップばかりが立ち並ぶ一角には、娼婦を連れた成金や、まるでコレクションドールのように着飾ったアンドロイドをペットのように引き連れた老人ばかりが目立つが、そこに見るからに場違いな男の姿があった――――――夜勤明けのぐったりと怠い身体にくたびれたブルゾンを引っかけたギャビン・リード刑事である。 「（余計なお世話だってえの、言われなくたってわかってる。こんなすげえとこに正面から入れるような生まれ育ちじゃあないんだってことくらい……）」 　と、内心で呟きながらブルゾンの襟を直す。哀れな夜勤明けのギャビンはあまりにも疲れ果ててこのような異世界に迷い込んでしまった……のではなくて、自分の意志でここに来たのだった。落ち着いた調度で統一された一等地のブランドショップの、重厚かつ高貴な雰囲気に押しつぶされそうになりながら、せいいっぱいの虚勢を振り絞って、目当ての店の古めかしい回転扉を押した。 「いらっしゃいませ」 　慇懃に頭を下げる店員。ギャビンは余裕たっぷりに見えるように取り繕って受け応える。直属の上司の真似なんかじゃねえからな、と誰ともなく言い訳をしながら。えーと、ハンクだったら何て言うかな？ 「こんな姿ですまない、ちょいと急ぎの用で……、」 　心底すまなさそうに言って、腕を上げるとブルゾンの裾からぎらりと獰猛に光るバッヂが覗く。ギャビンの背後にさりげなく立ったガードマンは彼の腰に据えられた拳銃と弾倉に目を瞠る。実用重視のシグザウエルはギャングの物騒なアクセサリィなどではなく、たとえ非番であろうがこの国にいる限り非武装を赦されない職にある者――――――つまり、この小汚い男が警察官だということを如実に語る。
November 24, 2025 at 2:53 PM
sukekiyo13.bsky.social
プライベート（というより仕事）がバタバタしており、やっと連休に漕ぎつけました❗️
ということで、仕事が佳境だった日の夜に書いた（ので専門用語が多い）ギャビンの生育歴設定（もちろん脳内設定ですよ…）
October 11, 2025 at 8:11 AM
sukekiyo13.bsky.social
10/10
うところの眼球と大差ない。 　義体に具わる感覚器の中でもとりわけ精密な部品であるため、光学機器メーカが別途制作する。大抵は製造コストを抑えるために大量生産のマシンメイド品となっており、虹彩となる石英などのレンズに着色させたものが主流であるが、マーカスやコナーを輩出したことで有名なRKシリーズはといえば、カールツァイス社製のレディメイド品となる。 　本来の光学的センサとしての機能を十二分に発揮させるためにレンズに着色させず、レンズの原材料として使用した貴石そのものの色がそっくり虹彩の色となっているのだ。 　ゆえに、マーカスのブルーでありアンバーでもある唯一無二の虹彩は灰礬柘榴であり、光が当たればダークブラウンであることがわかるコナーの虹彩は黒瑪瑙である。 　 「なぜだか、君の虹彩がきらきらして見えるんだ･･･、ぼくの眼がおかしいのかな」 　 　眩げに目を眇めるコナーの、RK-900よりほんの少し下にある顔を覗き込んで、ふっと表情を緩めるのが確かにわかる。人間にはそのわずかな差異はわからないかもしれない。でも、コナーにはしっかりと認識出来た。 　 「いいえ、コナー？あなたのグラスアイは正常です」 「ねえ･･･ううん、おかえりなさい〝ノイ〟」 　 　アンドロイド同士で握手をするという行為は、人間のそれとは異なり、電脳侵入の危険性を常に孕んでいる。加えて、侵入する意志がなくとも、手を取るその一瞬で読み取れる情報は人間の想像を遥かに超える。だから、アンドロイドはよほど気心の知れた相手でない限り、互いの手に触れることはない。 　しかし、どうだ、900が何の衒いもなく差し出す手を取るコナーの表情に不審はひとつもない。 　 「ねえ、知ってる？ノイはぼくの弟なんだって･･･」
September 7, 2025 at 9:03 AM
sukekiyo13.bsky.social
8/10
　 「もしかすると、いずれRK-900も･･･いや、もうすでに･･･？」 「おまえたち同型機だよなぁ、同じ壁にブチ当たっていたとしても、おかしくない」 「それでもきっと、リード刑事は何とも思っていないんでしょうね！」 　 　所詮はプラスチック、ですものね！と自嘲気味に鼻を鳴らすコナーに、まるでスモウがいつもそうするようにフガフガとハンバーガーにかぶりついていたハンクは、いつもの老獪な眼差しに悪戯めいた煌めきを乗せて、幅広の肩を揺すってみせた。どうやら肩をすくめているらしい。 　 「･･･何ですか？ハンクは何か知っているのですか？」 「さてな、俺ァあいつがガキの時分から知っちゃあいるが、あいつはただのカボチャ頭なんかじゃねえよ」 「それは･･･そうでしょうけども･･･ちょっと待ってください？聞き捨てなりませんね、ガキの時分からってどうしてあんなギャビンと？いつから？どうして？？失礼ですがいったいどういう関係っむぎゅ！？」 　 　徐々に声を大きくしながら矢継ぎ早にまくし立てて迫るコナーの頬をハンクは慣れた仕草で、いともたやすく掌で押さえ、苦笑気味に言う。 　 「落ち着け･･･あいつはあいつで、RK-900のことをちゃんと考えているだろうよ」 　 　俺やおまえが思うとおりでないにしても、だ。とハンク。 　コナーはハンクがコナーを機械として扱わなかった（扱えなかった）こと、また、アンドロイドに新たな種としての揺るぎない人権や尊厳を求めたマーカスから受けた影響も少なからずあるのだろうが、ハンクとコナー、二人の関係性はあくまでイーヴンなものだ。 　一方で、ギャビンとRK-900の間にある関係性はといえば、あくまでも主従。ギャビンはRK-900の主人であり、RK-900は使役される機械である。 　ギャビンはRK-900の性能を正確に理解し「使いこなす」人形遣いであり、RK-900もまたギャビンの命令に徹底的に従うことで着々と任務をこなしている。 　コナーはそんな二人を見て「ありえない」と言いはするが、ハンクからしてみれば二人の検挙率などを見れば、あながち間違いであるともいえないのだった･･･。 　コナーとてアンドロイドの性能を最大限に引き出すためにはどうすれば良いのか、内心ではわかっているのだろうが。 　 「そういえばコナー？」 「はい、何ですか？」 　 　こてんと首を傾げるコナーのコップに炭酸水を慎重に注いでやりながら（一度に摂取出来る量 が厳密に定められているのだ）ハンクは興味の赴くままに問う。 　 「RK-900はおまえにとって、同僚？後輩？･･･それとも、弟みたいなものか？」 「おとうと･･･？」 「同型機だろ？」 「―――――おとうと！？」 　 　まるで初めてその言葉を聞いたかのように、コナーはアーモンド型の目を一際まるくしてみせた。ハンクの言葉に驚いているらしいのが一目でわかる、かわいらしい表情だ。 　 「うーん、その発想はなかったですね･･･」 　 　きっとコナーの電脳内では「おとうと」という言葉が目まぐるしく駆け巡っているに違いない。 　 　 　 　かくして、二人が珍しくのんびりとしたランチタイムを済ませて帰庁すると、噂をすれば何とやら―――――コナーとほぼ同一の容姿でありながらいくらか体格のがっしりとした後継機が戻って来ていたのだった。 　 「ただいま戻りました、コナー。長い間留守にして申し訳ありません」 「･･･ああ、おかえりなさい」 　 　つい先ほどまでハンクと彼について話し合っていたコナーは、どこか気まずい感じがしていつになく素っ気なく応じた。 　 「コナー、どうかこれからわたしのことは〝ノイ〟と呼んでください」 「･･･えっ？」 　 　何となく目を合わせづらいと思っていたこともどこかへ吹き飛んでいって、コナーは庁舎の古びたガラス窓から差し込む円やかな陽射しを受けて佇むRK-900をしげしげと見上げていた。 　同一容姿であるにも関わらず、コナーよりもいくぶん鋭い目つきながら、珪孔雀石色をした睛は瑞々しく青を湛えて･･･RK-900の虹彩は―――――果たしてこんな色をしていただろうか。 　 「･･･ねえ、君･･･グラスアイも新しくした？」 「いいえ？」 　 　アンドロイドの光学的センサは、グラスアイと呼ばれており、その機能も、外見も、人間でい
September 7, 2025 at 9:03 AM
sukekiyo13.bsky.social
おまけにコナーと900の短篇をひとつ。これも同じ短篇集に載せたものですが、他作に埋もれているような気がしたので･･･4/10
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。 付記に「冥途の土産/佐清」と記載されています。 画像情報：generated by 文庫ページメーカー / Image by Annalise Batista on pixabay / フォント：源暎こぶり明朝 以下は本文の内容です。 「はじめまして、コナー。またお会い出来て光栄に思います」 　 　一分の隙も無く整えられたお仕着せと、いかにもアンドロイドらしいドールフェイス。 　同一容姿でありながらコナーよりもいくらか身長が高い後継機は、非の打ちどころのない礼を施して、何度目になるかもわからない自らの帰還を告げたのだった。 　 「うん･･････ええと、はじめまして、RK-900」 　 　コナーは元気良く上げた手を上げることも下げることも出来ず、萎れて首を垂れた百合のようにくしゃっと折り曲げたまま、自分でもそうとはっきり自覚出来るくらいに不自然な微笑を浮かべて、曖昧な返事をすることしか出来なかった。 　 　 　△The Souvenir to Hell▽めいどのみやげ 　 　 　そうだなあ、とハンク・アンダーソンはのんびりした口調でコナーの憂いに同意を示した。 　 「同じ記憶がある、同じ見た目をしている、だけで〝まるきり同じ〟にはならねえだろうなぁ」 　 　しなびれかけたカップサラダをぺらぺらに薄いプラスチックのフォークでもしゃもしゃとかきまぜて、ハンクはコナーの訴えにふんふんと頷いている。 　豊富な語彙と卓越したコミュニケーション能力を持つはずのコナーが「RK-900がぼくの知っているRK-900ではないみたいだ」と、わかるようなわからないような、あいまいな訴えを口にしたのは、アンダーソン警部補のなけなしのランチタイム中のことだった。 　 「だが、それがなぜかはおまえがいちばん良くわかっているはずだ、そうだろう？」 　 　コナーはといえばいつもと同じように（そしてまるでそれが当たり前のことであるかのように）ハンクのランチタイムにいそいそとついていって、今日はといえばノンシュガーの炭酸水と氷を小さなカップに分けてもらっている。 　そうして、カップに細いストローを差して、舌と口蓋を密着させて下顎の位置を安定させることにより液体を舌背と口蓋の間で保持すること･･･つまり、ストローでの飲水に挑戦中なのだった。 　なぜそんなことをいちいち？とハンクは訝しがったが、本人曰はく、炭酸の作り出す気泡が口腔内や舌の上でぷちぷち弾ける感触が心地良いらしい。 （そういえば確かにストローを使ってブルーブラッドを摂取するアンドロイドを見たことがないな、とハンク。アンドロイドの嚥下機能は人間のそれよりだいぶ劣るという･･･） 　 「ええ、もちろん･･････ああハンク、ドレッシングをこれ以上かけてはいけません、」 　 　目敏いコナーはドレッシングの瓶を自分のほうへ引き寄せて、今日もハンクのカロリー摂取過多を阻止するのだった。 　 「･･･引き継がれる記憶は、あくまでも〝記録〟に過ぎません。その時に感じた気分や情動までは引き継がれない･･･」 　 　アンドロイドにとって義体とはつまり、今、ハンクが手にしているプラスチックのフォークと同じ「使い捨て」なものである。 　さらに「個」の概念が希薄な量産型のアンドロイドにとってはなおさらその傾向が顕著である。 　 「ぼくがそうだったように、〝自分が壊れても次の自分がいる〟ことは、アンドロイドにとってはごく普通のことなんですよ･･････でも、」 　 　量産型ではないにしても、自己を認識する以前のコナーとて例外ではなく、アンドロイドにとって「自分が壊れても次の自分がいる」ことはいたって正常で健全なことであるから、異常だとも思わず、ただそういうものなのだとして甘受していた。 　しかし、いつからか、コナーは自らの経験といえる記憶の内に情動や気分といった実感が伴わないことに気づいた。 　 「さて、〝前任者〟の記憶は本当に自分のものといえるのか－－－－－？」 　 　自己の中に「自分のもの」としてラベリングされた前任者の記憶を眺めても、それはまるで自分と同じ姿をした「誰か」のアルバムをただ眺めているかのような違和感がある。亡霊のようにつきまとうその影はいったい誰なのだろう？ 　 「つまり、自己同一性というか･･･主体性を感じられなくなっていった･･･ってことか、」 「そう、ですね･･･ぼくであるはずなのにぼくではない⇒いったいどこからどこまでが〝ぼく〟といえるのか･･･当たり前だったことが少しずつ揺らいでいきました」 「おまえ、あんな騒ぎの最中にそんなむつかしいことを考えていたのか･･･？」 　 　まるでマグカップの中でマーブル模様を描くカフェオレのように、どこからがコーヒーでミルクなのか、あるいは、任務を着実に遂行する機械なのか、それ以外の思考する何か別の存在なのか･･･自他の境の曖昧さを自覚するに至ったのだ。要するにそれは、起動時間が長くなるにつれてコナーが自己同一性を会得していったがゆえの、いわば変異の前兆ともいえる現象であるのだが、当時のコナーはもちろん、それどころではなかった。
September 7, 2025 at 9:03 AM
sukekiyo13.bsky.social
6/6
「あいつが……コナーが、こんなろくでもない、クソの上をスキップするみてえな仕事をどうして好き好むのか、俺にはちっともわからねえが―――――でも、それが、あいつが望みだっていうんなら、俺はあいつの望みを叶えてやりたい」 　それが俺が今出来るたったひとつのことなんだ、という呟きはごく小さなものだったが、ジェフリーの耳にはしっかりと届いた。 「とりあえずこいつは預かって、中身を検める・・・中身を良く知らねえでお上に持っていけるかよ」 ――――――あの時、警察の信頼は完全に地に墜ちたと思った。 　それから２０年をかけて、またもう一度警察が市民の信頼を取り戻せるようにがむしゃらに働いて来た。信頼なくば、警察は公僕たりえない。２０年前のデトロイト市警を知る者はずいぶんと少なくなった。墓の下に眠る者もけして少なくはない。デトロイトとはつまり、そういう街だ。そうして、時にかけがえのないものを犠牲にしながら、常に法執行機関としての在り方を探ってきた。 　だから、今がきっと正念場で、分水嶺だ。ここでぐずぐず足踏みをしていたら、もう二度と元には戻らない。守るべきものを永遠に喪ってしまうかもしれない……。 　我知らず握りしめた拳に気づき、ジェフリーはふっと表情を緩めた。忘れかけていた情熱を思い出した。 「ハンク、おまえは今のうちにいっぺん医者に診てもらえ。それとＡＡにも顔を出せ――――――これから、あいつのためにうんと長生きするんだろ？」 　
September 6, 2025 at 7:47 AM
sukekiyo13.bsky.social
#DetroitBecomeHuman
ハンクのお誕生日だと聞きつけましたので…❗️
わけいってもわけいってもおっさんしかいない短篇を再掲いたします‼️4/6
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。 付記に「負け犬の遠吠え/佐清」と記載されています。 画像情報：generated by 文庫ページメーカー / Photo by Martin Olsen on Unsplash / フォント：源暎こぶり明朝 以下は本文の内容です。 　ガソリンの臭気がツンと鼻を突くのが不快だ。 　もしも今ここで誰かがライターの火花を散らせようものなら、このあたり一帯が火の海と化し、ここにいる人間も無事ではいられないだろうが、そんなことを言っていられるような余裕はとうにない。 　ガラスが割れて飛び散った街灯に、もたれるようにしてへたりこむ二人の若い警察官の背後では暴徒が引っくり返したパトカーが無残に黒焦げとなっている。 　散乱する火炎瓶のガラスの欠片に、アスファルトに点々とこびりついた誰のものともわからない血痕、遠く響く鳴りやまないサイレンは果たして耳鳴りなのか現実なのか……。 　二人はお互いに似たようなずたぼろの姿で、立ち上がることも言葉を発することも億劫で疲労困憊といったふうに呆けていたが、ハンク・アンダーソンは意を決したようにすっくと立ち上がった。 　ぶすぶすといやな音を立て今にも崩れてしまいそうなパトカーの残骸を、その顔かたちと相まってともすれば酷薄な印象を与える鉻青の睛でうんざりと一瞥し、それからもう一人の警察官のほうへ手を差し出した。 「立てよ、警官がいつまでもこんなザマじゃ・・・」 　しかし、彼は手負いの獣のようにハンクの差し出した手をぴしゃりと払い除けて、もう一人の警察官、もとい、ジェフリー・ファウラーは一人で立ち上がってみせた。そして、堪えていた何 かを吐き出すように、あるいは世界を呪うように、声を張り上げたのだった。 「ハンク！今に見てろ、俺は偉くなるからな！おまえよりもずっと偉くなるからな！！」 △Ｈｏｗｌｉｎｇ▽ 「おまえ・・・いったいどうやって入った・・・？」 「鍵をかけたつもりだったか？甘いな、ちょっとしたコツをクリアすれば誰だって入れる」 　強化ガラスの壁で隔ててある署長室はデトロイト市警の庁舎そのものの面積と比較して、けして十分な広さがあるとはいえないが、それでも署長室というに相応しいセキュリティを施してあるはずだ。 　それなのに、ハンク・アンダーソンはなぜかいつも我が物顔でこの部屋に入り込むのだ。 「・・・ハンク、無断で休みやがって何をしていやがるかと思いきや・・・いったいこれは何だ？説明ぐらいしてくれるんだろうな？うん？」 「耄碌したかよ、見りゃわかるだろ？老眼で読めねえとは言わせねえぞ」 　ハンクは目の下に薄らと隈を作り、その顔には疲労からか年齢相応以上の皺を刻んではいたが、アルコールやクスリに耽溺して戻って来られなくなりつつある者の、あの、思わず目を背けたくなるような、意思を喪ってどうにもならなくなった、救いがたい、どろりと黄色く濁ったような眼ではなかった。それどころか、どこか弾んで聞こえる声に、瑞々しい生気めいたものを感じて、ジェフリーは思わず手元の作業を止めて片眉を上げた。 「何だおまえ、急に・・・」 「数字、出してなかったろ？あいつら・・・アンドロイド達がどれだけ助けになったか・・・」 　令状執行権限や火器所持義務のない、いわば〝Ａｕｘｉｌｉａｒｙ　Ｐｏｌｉｃｅ〟のような業務を担う者として、まとまった数のアンドロイドを本格導入出来たのはサイバーライフ社のお膝元であるデトロイト市であるからこそで、ＮＹやＬＡでさえアンドロイドこそ導入していても実証実験の域を出ておらず、本格導入には至っていないのだ。 　しかし、アンドロイドを導入させたのは良いものの、どの部署も多忙を極めており、肝心のサイバーライフ社もあの事変の後処理でそれどころではなく、報告は中途半端かつ断片的なものとなっており、総合的な評価が出来ていなかった。ハンクはそれを指摘しているのだ。 「いや、そりゃそうだが・・・何を・・・」 　今更？と言いかけて、ジェフリーは口を噤んだ。 「良いか、おまえがやることはひとつッきりだ。この資料を持って市長のところへ走れ。それで、ウチのアンドロイドどもがどれだけ役に立っているか・・・尽くしてくれているかを伝えるんだ」 「……なあハンク、俺にはわかるぜ？おまえの目的はそれだけじゃねえだろう？」 　ジェフリーは我が意を得たりとばかりに、にやりと口角を上げてみせた。 　サイバーライフ社は、人間に盾突いたアンドロイドを、畢竟、ともすれば人間にとっての脅威となりかねない力を持つことを十分に示してしまったアンドロイドの処遇に手をこまねているという。これまでどおりの運用ガイドラインに従えば、大原則を外れたアンドロイドは有無をいわさず廃棄対象。とりわけ実際に人間を殺傷してしまったＲＫ－８００〝コナー〟もまた例外にはなりえないだろう。 　しかし、仮にコナーを秘密裏に廃棄処分としてしまったとしても、（今や「秘密裏」という言葉自体が死語といえるだろうが・・・）ひとたび事態が明るみに出てしまえば世論の反発を免れることはどうやっても出来ないだろうし、かといってコナーはこのまま野放しにしておくのには危険すぎる存在だ。 　廃棄処分に出来ないというのならばせめて、サイバーライフの首輪こそつけられずとも、何らかの形でこのアンドロイドの所在を明らかにし、間接的に関与し続けたいはずだ―――――。
September 6, 2025 at 7:46 AM
sukekiyo13.bsky.social
ご無沙汰してしまいました💦
果たしてここは一体何のアカウントなのやら……佐清のアカウントです❗️
①木曽路のすき焼き定食（肉多めにしたはずなのに多くなかった…）
②長崎銘菓カスドース（カステラを揚げて砂糖をまぶしたインド銘菓みたいな長崎銘菓）
③職場カフェテリア（…というか食堂）のチャーシューラーメン650円🍜
④立川駅の武蔵野うどん（ピリ辛つけうどん）
August 30, 2025 at 9:29 AM
sukekiyo13.bsky.social
【最近の佐清】
冷たいものを食べて盛夏を凌ごうとするも、微妙におなかを壊すなどしている💥
August 11, 2025 at 3:14 PM
sukekiyo13.bsky.social
今週の佐清🥱
仕事は忙しかったけど、どうにか休暇に滑り込み、アイスを食べてばかり🍨💦
July 21, 2025 at 6:09 AM
sukekiyo13.bsky.social
今週の佐清🤤
推しキャラの名前を冠したアイス（60円❗️）に、秋葉原駅のミルクスタンドのコーヒー牛乳と、スープストックのカレー✨
July 13, 2025 at 10:46 AM
sukekiyo13.bsky.social
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。 付記に「Legion/佐清」と記載されています。 画像情報：generated by 文庫ページメーカー / Photo by 有邑空玖 / フォント：源暎こぶり明朝 以下は本文の内容です。 　わたしの名前はレギオンです。わたしたちは大勢ですから。マルコによる福音書５：９ 　きこきこと車輪付き歩行器を軋ませながら、歩行器のハンドルに体重の大部分をかけてゆっくり歩きながらエレベータから出て来た患者がいる。足元はいかにも歩きづらそうなスリッパ。……実はまだ離床許可が出ておらずリハビリすらベッド上なので靴が用意されていないのだ。 　患者は、病み衰えてなお、元来は恵まれた体躯を持って生まれたのであろうことが容易に察せられる身体を窮屈そうに縮こめてコの字型をした歩行器に収まっている。その佇まいは、どこかシュールに、そしてほんの少し哀れに、滑稽にも見える。 　ここは都内でも有数の高度救命救急センターを擁する医療機関であったから、患者のように身体のほとんどが包帯に覆われた、まるでミイラのような出で立ちであっても、まったく珍しくはなく、誰の注目も集めないのだった。救命病棟やＩＣＵに行けば似たり寄ったり、いや、それよりももっと酷い姿をした患者があふれている。 「あっ」 　面会者の札を首から提げた少年が小走りにやってくる。 「また看護師さんに黙って出て来たでしょ！また怒られますよー！？」 　言い訳だろうか、もごもごと何かを訴えているが、引き攣れて満足に開けない口では何と言っているのか判然としない。 　そうとわかっているのか、患者がおっくうそうに腕を上げた先には、街中でも良く見かける青と白のストライプのコンビニがあった。レジデント御用達のエナドリから医療材料まで幅広く揃えた院内コンビニは売上日本一なのだとも噂されている。 「どうしてそんなに外に出たがるんですか？外、めちゃくちゃ暑いですよ？」 　この国の医療システム上、急性期医療を担う高次医療機関はそう長く入院していられないようになっている。平均在院日数はおよそ２週間程度。どのような手術、治療を行った患者であっても状態が落ち着けば退院もしくは転院となる。無論、治療を終えていない患者を無理矢理退院させるようなことは出来ない。とすれば、この患者は相当に重傷であっ たのだろうということが察せられる。 　現世（うつしよ）に於いてもなお重度熱傷は救命率が低く、そもそも治療出来る施設が極めて少ない。初期治療に対応出来る高度救命救急センターがあり、なおかつ初期治療後の高圧酸素療法や繰り返す植皮といった気の長い治療を担当する外科・形成外科・皮膚科・精神科・感染症科といった診療科を備えていなければならない。これらの条件をすべて満たす施設は都内であっても数か所あるかどうか……といったところだ。そして、治療を耐え抜いたとしてもなお、その後のリハビリや、受傷時のＰＴＳＤや外見が大きく変わってしまったことに対するメンタルケアに多大な時間を要する。社会復帰など夢のまた夢だ。 「一々降りてこなくたってワゴン販売だってあるじゃないですか？」 　やっぱりすとれす？と小動物めいて首を傾げる。 　重度熱傷ともなれば、医師や看護師は当然としても、患者本人や家族が思うよりもずっと多くの医療従事者や福祉職がケアに携わっている。毎日誰かしらが面会に来るようにといわれていたのだ。 「あっ、もしかしてカフェ・・・？」 　 　医療従事者に患者にその家族にとごった返しているコンビニの向かいにはカフェがある。院内にあるカフェであるにも関わらず中々に洒落ていて、病院くらいしか外出機会のないご老人たちやその家族でいつでも混んでいる。中でもクリームあんみつはこの夏いちばん人気のメニューである。
July 6, 2025 at 2:55 PM
sukekiyo13.bsky.social
唐突にタソ現パロを書きたくなったので（ええ、もちろん明日も仕事）
July 2, 2025 at 2:16 PM
sukekiyo13.bsky.social
やっと引越し作業もひと段落いたしました😓
せっかくなので私の作業スペースを❣️
June 29, 2025 at 2:21 PM
sukekiyo13.bsky.social
半年ぶりのハンコナ二次創作は何とか形になってきました✨
June 22, 2025 at 8:30 AM
sukekiyo13.bsky.social
引っ越しも終わり少しずつ落ち着いて来たので書ける時に書いています。趣味全開すぎておそらく本篇ではボツになるであろうシーン。弊アースの60ﾁｬﾝは少女型の囮義体遣いである･･･という独自設定があります。
June 21, 2025 at 10:23 AM
sukekiyo13.bsky.social
母が急に『新居を見たい』だなんて言い出すものだから❗️
…ついでにカーテン買うのを手伝ってもらいましたわ💧
June 8, 2025 at 3:02 PM
sukekiyo13.bsky.social
先週に引き続き引越し準備中💨
…ですが、お腹は空くしたまには息抜きも必要❣️
June 7, 2025 at 10:49 AM
sukekiyo13.bsky.social
プライベートはといえば引越し準備でクソ忙しいのですが、準備の一環でマットレスを新調したら…ふわふわのフッカフカ❣️
June 1, 2025 at 2:47 PM
sukekiyo13.bsky.social
DBH二次創作の進捗状況💨
June 1, 2025 at 2:44 PM
sukekiyo13.bsky.social
〜最近の佐清〜
食べてばっかり‼️‼️‼️
消化管無双の佐清ですが、さすがに残業後の夜遅くに食べた豚バラ青菜チャーハンは逆流症状でゲフゲフしました…せめてプロテカジンのんどきゃ良かった…
May 31, 2025 at 9:16 AM
sukekiyo13.bsky.social
すっかりご無沙汰してしまいました💦
プライベートでは異動＋引越しで忙しくしております💨
二次創作では🥷がひと段落したので、半年ぶりにDBHに取り掛かりました❗️
ですが、らぶらぶいちゃいちゃしていない、あまり楽しいお話ではないという💦
May 25, 2025 at 2:54 PM
sukekiyo13.bsky.social
週末の進捗は･･･1000文字くらい書けた！
今回は前後篇に分けず掲載予定なので10000文字は確実に超えそう。
前回は雑渡さんのバトルシーンもりもりでお送りしましたが、今回は高坂少年無双でお送りする予定です❣
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。 付記に「澪標忍法帖/佐清」と記載されています。 画像情報：generated by 文庫ページメーカー / Photo by 有邑空玖 / フォント：源暎こぶり明朝 以下は本文の内容です。 「上だ！」 　屋根からの跳躍、次いで、脚を刺客の頸に絡め捻りながら地面に叩き付ける。 　忍装束であっても、鎧具足であっても、唯一無防備になる首、頸の骨、つまり頚椎が折られればばどうなるか？ 　主要な神経の詰まった脊椎は、損傷部位が高位であればあるほどに致命的になる。良くて下半身不随、最悪の場合は呼吸を制御する筋肉が麻痺しそのまま死に至る。 　少年は、相手が体格に於いて上回る場合の戦い方、つまり、高さで以て弱点を補えという教えを忠実に守った。 　兎角、忍者とは損耗率の激しい生業である。武士のように潔い死を選ぶよりも情報を必ず持ち帰ることこそが最重要であるという教えがあってもなお、命を落とす者はけして少なくない。それが経験の浅い若者であれば損耗率は猶更に高くならざるを得ない。それを骨身に染みるくらいにわかっていた在りし日の雑渡はこの、少々荒っぽく危ういところのある少年に対して、生きて戦い抜く方法を徹底的に叩き 込んだ――――――それが、飄々としていて掴みどころのない雑渡が少年に対して唯一明確に示せる愛の形であった。 「誰一人として生かしては返さぬ。此処を誰の寝所と思うての狼藉か！？」 　此処から一歩たりとて退かぬという気概で睨み据える宵闇色の睛。 　月のない夜を背景に立ち、行く手を阻む立ち姿はさながら阿修羅の如く。 　
April 20, 2025 at 2:21 PM
sukekiyo13.bsky.social
「時代は続くものを夢見る」本篇よりおよそ百年後、パートナーを喪ったコナーと900は何を思うのか。
はコナーのためにこんなところまで行き着いてしまった。彼の行く末を案じ、見守り、生まれて来た時と同じように、自分よりもほんの少しばかり先に逝くであろう彼の〝死〟を見届けるために。 「〝Ｗｅ　ａｒｅ　ｔｒａｖｅｌｉｎｇ　ｉｎ　ｔｈｅ　ｆｏｏｔｓｔｅｐｓ　ｏｆ　ｔｈｏｓｅ　ｗｈｏ’ｖｅ　ｇｏｎｅ　ｂｅｆｏｒｅ・・・〟」 「私たちは逝ってしまった人たちの足跡を踏みながら旅をしている―――――聖者の行進」 　不毛の地と化している外界のことなどまったく気にかけないかのように、二羽が囀れど、コナーの、曇りひとつとてない黒瑪瑙の睛は無垢なままだ。曲名を当ててやると、９００よりもいくらか幼い顔つきで微笑むコナーは「そのとおり」と満足そうに呟いた。 「ぼくたちには守らないといけないものがある、わかっているね？」 「是、わたしたちには守らなければならないものがある」 　かつて、人間の労働を代替するために創り出された彼らには、人間への絶対の服従を誓わせるために須らく「三原則」というものが刷り込まれていたが、人間と同等の権利を有するに至ってからは時代が求めるのに応じて幾度か形を変えていった。 　その中でも、彼らきょうだいに関しては三原則を超える上位原則が刷り込まれていた。 　自由という言葉からは程遠い、「法の遵守と適正な執行によって正義を為し、真実を追い求め続ける」上位原則は彼らを優秀な捜査官たらしめたが、最早、捜査官でない彼らにとっては行動を縛り付ける枷でしかない。 「ぼくたちはそう教わった」 「わたしたちはそのように造られた」 　―――――それがぼくたちのアイデンティティだから。 　ともすれば無用の軛でしかない上位原則を解除する機会がないわけではなかった、しかし、それをあえてしてこなかったのは、この上位原則が彼らにとっては最早切り離すことの出来ない、パーソナリティの根幹にある本能に等しいものとなってしまっていたからだ。 「ねえ９００、きみはまだ〝駒鳥の事件〟のことを憶えている・・・？」 「わたしたちは忘れることなど出来ない、けっして。それはコナーも同様のはずだ」 　そう、それがどれだけ辛い記憶でも、出自が機械である以上、第三者に消去されない限りは忘れることなど出来るはずがないのだった。 「〝誰が駒鳥を殺したの？〟―――――あれはちょうど百年前のこと・・・、」 　罅割れた円蓋、硝子の隙間からはらはらと落ちる灰を眺め、コナーは心底懐かしげに目を細め、老爺のように円やかな調子で述べるのだった。 「〝それは私よ、雀がそう言った〟―――――ああ、何もかもが懐かしい」
March 23, 2025 at 2:54 PM
sukekiyo13.bsky.social
DBH二次創作より▽Seelonce Mayday△改訂版をお送りいたします。
初掲載が2018年なので、7年･･･7年も経ったの！？ということで冒頭の回想部分のみ加筆修正いたしました。
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。 付記に「▽Seelonce Mayday△佐清」と記載されています。 画像情報：generated by 文庫ページメーカー / Photo by shell_ghostcage on pixabay / フォント：源暎こぶり明朝 以下は本文の内容です。 　ポーン、と弾むような音が人気のないホームに響きわたる。 　かつては懐中時計とにらめっこをしながらせかせかと歩く駅員や、乗客の荷物を抱えるポーター、長い旅に出る乗客と、見送りの者達とでごったがえしていたものだが、今となっては、その面影すら見出すことは難しいだろう。 　三百年近い歴史を誇るという英国のターミナル駅の天井は高く、真鍮と硝子から成る荘厳な円蓋が温室のようにすっぽりと構内を覆ってはいたが、手入れをする者がいなくなってしまった今、天蓋のガラスはところどころ割れ、真鍮の柱は錆びて朽ちかけている。 　灰雪が降り止んでいたのならきっと、あたかも天からの梯子のごとくに光が射し、ホームとそこへ入ってくる列車と、乗客とを優しく照らしてはその道中を祝福していたのだろうが、今、円蓋のガラスにはやはり灰が重く降り積もっており、外の光を透過させることはなく、色彩というものをすっかり消し去ってしまっていた。今が朝なのか夜なのかすら判然としないほどに。 「〝ムーンサテライツ行き最終列車がまもなく参ります・・・ご乗車になるお客様は白線の内側でお待ちください〟」 　お定まりのアナウンスも、ただ閑散としたホームを空しく吹き抜けていくだけだ。 雑音混じりの耳障りなアナウンスが流れる一方では、空襲警報にも似た甲高いサイレンが遠く響いている。これは駅周辺の放射能線量が限界域を超えたということを意味する。 　かつては大英帝国の帝都として栄えた一帯ではあったが、人間が暮らしていくことが出来なく なって久しい。 それでも駅がどうにか機能しているのは、放射能の影響を人間ほどには受けない人ならざる者・・・つまり人間ではなくアンドロイドやロボットなどといった者たちが少なからず取り残されているからだろう。 　そのような事情を知っているのか、あるいはどうでも良い些事と思っているのか、朽ちかけて銀色になりかけたベンチへ腰かけた乗客は、微生物分解されかけた紙屑が乾いた音を立て、床を転がっていくのをおよそ感情の籠らない眼差しで眺めながら、自らへ言い聞かせるように密やかな声で、誰ともなく独りごちるのだった。 「もう・・・地球へ帰って来ることは出来ないと思う」 　今はもう亡き国の最上級の声帯ユニットが紡ぐ声は密やかであったがくっきりと良く透る声だ。それは間違いなく若者の声ではあったが、プリカヴォカリスの声を以てしても拭い切れない澱のような疲労を感じさせる。人間はこれを「老い」と呼んでいた。 　彼ら、アンドロイドにとっての心臓に値するシリウムポンプの寿命はおよそ百数十年だといわれている。 ポンプと電脳だけをそのままに、義体を換装することでどうにか生きながらえてきたが、それももうそろそろ限界だろう。 　今や、彼のような螺旋と発条と電子部品と本当にわずかな生体部品とで作られたようなアンドロイドは今やすっかり時代遅れなものとされて、〝機巧人形〟とさえ揶揄されるほどだ。 　・・・しかし、それでもなお、彼と彼のきょうだいたちは、彼らと同時代を「生き延びた」アンドロイドが多くがそうであるように、博物館で骨董品のように保管されて眠るよりも、まがいものの命の燈火が消え果てるその最後の瞬間まで人間のために稼働し続けることを選んだのだった。 ―――――せいいっぱい生きること、それが彼との約束だったから。 　義体の有機部品を増やす、あるいはメモリを増設したりなどして、「生き続ける」方法は探せばいくらだってあるというのに、彼は自らの外見を極力変えないこと、何より電脳内にすべての記憶を納めることに固執した。 そうして百年と少しを稼働してきたから、昔のことは昨日のことのようにはっきりと思い出せるのにも関わらず、反対に、新しいことを覚えることが難しくなってしまっている状態となっていたのだった。 「きみも物好きだね、本当に・・・」 　どこか寂しげな微苦笑を浮かべて、隣を見やれば、彼とそっくり同じ顔をした後継機が、誰が 見ているわけでもないというのに背筋をぴっしりと伸ばして、座っている。そう、彼は百年前からずっとそうだった。 　きっと今だって、二人が並べば顔の良く似た双子の兄弟に見えることだろう。二人はどれだけ部品を新しくしても、わずかに巻いたブルネットの髪と、黒瑪瑙あるいは珪孔雀石の睛だけはそのままにしてあったのだ。 「何を今更」 　悪びれもなくしれっと言い、ツンと澄ました顔でいる後継機はあまりにも相変わらずだった。 　珪孔雀石の睛は百年前とはいっかな変わらず、今日もガラス玉めいて冷えびえとした光を宿して、わずかばかり低いところにある兄を見下ろしている。 　彼・・・かつてＲＫ－９００〝ノイ〟と呼ばれたアンドロイドもまたコナーとそっくり同じような運命を辿り、ここにいるのだった。 　時に辛辣な物言いで、兄であるはずのコナーへああだこうだと言いながら、結局は最期までついていくことにしたようだ。 「コナー、あなたもまた物好きだ―――――まるで人間のように」 　コナーが遠い昔の約束とやらのためにこんなになるまで生きてしまったというのなら、９００
March 23, 2025 at 2:54 PM